文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは2010年2月1日にCHIグループ株式会社として、これからの日本の礎となる知の生成と流通に貢献することを共通の使命と考える丸善株式会社と株式会社図書館流通センターが、共同株式移転により経営統合し設立いたしました。その後、以下に掲げる価値観を共有する、株式会社ジュンク堂書店、株式会社雄松堂書店との株式交換による経営統合、各事業領域における体質強化を図るための分社化、さらには電子書籍事業へ対応するための新会社設立などを経て、2011年5月1日には、主要市場である出版流通市場における一層のブランド浸透のため、丸善CHIホールディングス株式会社に商号変更を行いました。
さらに、より効率的な運営とブランド力の発揮による成長と収益拡大を図るため、書店事業において、2015年2月1日付で丸善書店株式会社と株式会社ジュンク堂書店を合併(株式会社丸善ジュンク堂書店に商号変更)、大学等教育・研究機関および研究者向け事業において、2016年2月1日付で丸善株式会社と株式会社雄松堂書店を合併(丸善雄松堂株式会社に商号変更)しております。
これらの体制のもと、当社グループでは、次のような経営理念を各事業会社が共有し、知を求めるすべての人々と、知を提供する出版流通の接点の拡大をめざします。
①価値観:知は社会の礎である
私たちは、知が人に与える力を信じます。そして時代に即した最良の知のグローバルな循環が21世紀の創発的な日本の社会の礎であると考えます。
②グループビジョン:知の生成と流通に革新をもたらす企業集団となる
私たちは、「知は社会の礎である」という価値観を共有し、教育・学術機関、図書館、出版業界等と連携し、最良な知の生成・流通と知的な環境づくりにおいて、革新的な仕組みを創出、提供することにより、業界の活性化をリードし、日本の社会に貢献する企業集団となることを目指します。
(2)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは各事業会社が価値観を共有し、以下の3点を主要戦略テーマとして取り組んでおります。
Ⅰ.学びとともに生きる社会への取り組み
Ⅱ.地域創生への貢献
Ⅲ.新しい書店収益モデルの創造
グループ各社が持つノウハウの共有や、市場ごとに最適なブランドを活用することを通じ、これら主要戦略テーマのもとに各社のシナジー効果を最大化する取り組みを行っております。また、これら戦略テーマについては、デジタルトランスフォーメーション(DX)などのデジタル情報技術の急速な発展や、多様化する価値観や未来の社会像を踏まえた対応が不可欠となります。よって、当社では上記戦略テーマの推進にあたって、一人ひとりの学びやビジネスに役立つ知や情報を、これまで以上に活用しやすいかたちのコンテンツや仕組みとして提供していく新規事業の開発を進めることで、グループビジョン「知の生成と流通に革新をもたらす企業集団となる」ための事業革新を進めてまいります。
(3)目標とする経営指標
当社グループの主要な事業領域である出版流通市場は、書籍・雑誌の販売額が長期に亘り減少し、非常に厳しい環境下にあります。当社グループは、そのような環境下で持続的で安定的な成長基盤を構築するためには、利便性と専門性を兼ね備えた書籍流通販売チャネルとしての不断の革新が必要であると考えます。そのため当社グループでは、市場環境に応じた書店のスクラップ&ビルドやリニューアル、ITや物流面におけるサービス向上、継続的な原価およびコスト構造の見直し、顧客ニーズや社会変化を先取りした新規サービス開発を行うことで、市場シェアの拡大と収益性・資本効率の向上に努めてまいります。
(4)経営環境及び優先的に対処すべき課題
新型コロナウイルス感染症拡大は、生活者の行動様式に大きな変容をもたらし、これはこれからの個人の働き方や生き方、そして未来の社会像に大きな変化をもたらしていくものと考えられます。この状況下において当社では、これまで取り組んできたデジタルコンテンツを含む書籍を介した知とのより良い接点の創出、安全安心で快適な読書環境の提供を通じ、生活者の知的文化的生活に貢献する新たな付加価値を創造するための取り組みを、グループ各社のシナジーを活用しさらに強化促進していくことが最大の課題と認識しています。
さらに、第5世代移動通信システム(5G)やDXなどの情報技術の革新は、文教市場販売事業では、オンライン授業や、より多くのコンテンツの電子化需要が見込まれ、これらの市場変化は、ICTを活用した教育の質的向上を目指して文部科学省が提唱するGIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想によってさらに加速するものと考えます。また店舗・ネット販売事業では、映像や書籍データを活用した顧客の購買体験の向上や、購買データの詳細な分析とその活用もさらに発展していくと考えられますので、様々な視点から5GやDXがもたらす事業環境変化に対する取り組みに着手してまいります。
これらの課題認識のもとで事業別の戦略として、文教市場販売事業は、学校での学びに役立つ検索システムや、公共図書館向け電子雑誌閲覧サービス、大学教科書のオンライン販売などITシステム導入の強化や、紙と電子の両方のコンテンツの購入や貸出を統合的に扱えるハイブリッド型のプラットフォームシステムをさらに拡大してまいります。また、研究や教育の質の向上に資するため、貴重資料の電子化や、電子化された各種データベース商品、電子教材の開発に注力しております。
店舗・ネット販売事業は、新型コロナウイルス感染症拡大により、生活者の行動範囲の変化や、購買ルートの多様化など、さらに大きく市場環境が変化しております。当社では客層・地域性に基づいた販促や品揃えの充実、物販・飲食・サービスの複合業態の開発、出店エリアの見直しによるスクラップ&ビルド、さらに著者の講演会やセミナーなどのオンライン配信事業など、コロナ禍を経て、定着しつつある生活者の新しい行動様式に対応した施策を推進してまいります。
図書館サポート事業では、コロナ禍を経て、さらに安全安心な図書館業務運営への取り組みが重要となります。また、地域ごとの特色ある図書館サービスや、図書館と他の公共施設との複合的なサービス提供へのニーズも高まっております。これら、求められる新たなサービスへの対応や、図書館業務に精通した専門性を持続的に向上させるため、優秀な人材の確保・育成、エリアごとの拠点強化に一層注力してまいります。
出版事業においては、これまで培った優良なコンテンツを活用し、海外向けコンテンツ発信、オンライン授業等で需要が高まる教育用映像配信事業、電子コンテンツ化に注力します。また、既存出版領域においては、児童書では図書館、教育機関向けタイトルの一層の充実、専門書ではオンデマンド印刷(POD)を活用した少部数での重版などで、安定した収益基盤の確保に努めます。
また、主要事業領域に新たな価値創造を行うべく、その他事業の領域では、図書館を中心とした地域活性化のためのコンサルティング事業、図書館業務受託との連携効果の高い保育士派遣・保育所業務受託事業、PC・スマートフォン・タブレットの修理やネットワークサポート事業、書店を中心とした小売・サービス向け内装デザイン・設計・施工事業など、様々な事業が、当社の主要事業領域と連携し、引き続きグループ各事業の付加価値を高めてまいります。
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