① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国の経済は、雇用や所得環境の改善を背景に、緩やかな回復基調で推移したものの、消費税率引き上げ後の個人消費の落ち込みに加え、新型コロナウイルス感染症が世界経済へのマイナスのインパクトを与えるなど、先行きは不透明な状況となっています。 当社グループの属するドラッグストア業界におきましては、市場規模が拡大する一方、業種・業態を超えた出店や価格競争は激化しており、企業の統合や再編の動きも強まっています。
このような環境のもと、当社グループでは「当社の強みである未病対策を、お客様に提案すること」「お客様の利便性を高めるための品揃え、サービスを提供すること」を基本方針とし、収益性の向上を第一の目標に掲げ、新たな企業価値を創造して他社との差別化に取り組んでまいりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
<小売事業>
当連結会計年度におきましては、7月の長梅雨や秋から冬にかけて気温が高い日が続き、シーズン商品の需要が落ち込みました。年度終盤においては、新型コロナウイルス感染症の影響により、マスク、除菌用品などの需要が急激に増加しました。同時にインバウンド需要は大きく低下しましたが、当社グループ事業におけるインバウンドへの依存度は低いため、その影響はわずかにとどまりました。その結果、セグメント売上高は増収となりました。
セグメント利益につきましては、増収による売上総利益の増加に加え、ヘルス&ビューティケア強化に伴うPB商品の販売増と調剤事業拡大や効率的な販売促進策により、売上総利益率の改善により増益となりました。
出退店状況におきましては、ドラッグストア8店舗(内、調剤薬局併設型3店舗)、調剤薬局4店舗の計12店舗を出店し、ドラッグストア12店舗、調剤薬局2店舗の計14店舗を閉店いたしました。また、調剤事業の強化の観点から、調剤薬局4店舗を他社から取得いたしました。
結果、当連結会計年度末の当社グループ国内店舗数は371店舗となりました。
この結果、小売事業の売上高は1,319億1百万円(前期比3.4%増)、セグメント利益は33億62百万円(同38.5%増)となりました。
<その他>
その他事業におきましては、売上高は13億78百万円(前期比31.6%減)、セグメント利益は60百万円(同59.2%減)となりました。
以上の結果、当連結会計年度における業績は、売上高1,332億79百万円(前期比2.8%増)となりました。営業利益は27億97百万円(同37.5%増)、経常利益は37億11百万円(同26.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は17億87百万円(同21.5%増)となり、いずれも過去最高となりました。
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ27億35百万円増加し、532億96百万円となりました。これは主に、現金及び預金の増加30億43百万円、受取手形及び売掛金の増加9億81百万円、建物及び構築物(純額)の減少10億34百万円などによるものであります。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ12億79百万円増加し、369億30百万円となりました。これは主に、支払手形及び買掛金の増加6億82百万円、未払法人税等の増加5億19百万円などによるものであります。
純資産合計は、前連結会計年度末に比べ14億55百万円増加し、163億66百万円となりました。これは主に、利益剰余金の増加13億73百万円などによるものであります。
当連結会計年度における現金及び預金同等物(以下「資金」という。)の残高は、 115億77百万円 となり、前連結会計年度末と比較して32億27百万円の増加となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、 52億74百万円 ( 前年同期は30億63百万円の収入 )となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益29億51百万円、減価償却費14億48百万円、減損損失8億40百万円、たな卸資産の減少3億32百万円、仕入債務の増加6億43百万円などの増加要因と、売上債権の増加9億81百万円などの減少要因によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、 8億60百万円 ( 前年同期は19億65百万円の支出 )となりました。これは主に、新規出店や改装等に伴う有形固定資産の取得による支出11億69百万円、有形固定資産の売却による収入4億37百万円、投資有価証券の取得による支出1億21百万円、事業譲受による支出1億32百万円、貸付けによる支出1億39百万円、貸付金の回収による収入4億31百万円、店舗敷金及び保証金の差入による支出1億75百万円などによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、 11億87百万円 ( 前年同期は13億13百万円の支出 )となりました。これは主に、長期借入金の収支による支出超過4億47百万円、リース債務の返済による支出2億64百万円、配当金の支払額4億13百万円などによるものであります。
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は製造原価によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当社グループ(当社及び連結子会社)は見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.小売事業における品目別売上高は次のとおりであります。
(注) 小売事業の「その他」は、ネット通販売上高等であります。
3.小売事業における地域別売上高は次のとおりであります。
(注) 1.( )内の店舗数は、2020年2月29日現在の店舗数を示しております。
2.小売事業の「その他」は、ネット通販売上高等であります。
4.主要顧客別売上状況
主要顧客(総売上実績に対する割合が10%以上)に該当するものはありません。
5.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第一部 企業情報 第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。これらの見積りについては過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、見積りには不確実性が伴い、実際の結果と異なる場合があります。
a. 既存店の活性化
お客様のニーズは常に変化しており、求められる品揃えにお応えして利便性を向上させることを目的として、既存店の改装を積極的に行ってまいりました。当初、3年間で100店舗の改装を実施する計画でしたが、計画の2年目に、より効率的に売上高を伸ばし、収益の拡大につなげることを見込まれるため、新規出店より店舗改装を重視する方向に変更しました。その結果、改装店舗数は3年間で148店舗となりました。2019年2月期に改装を行った店舗の2020年2月期の売上高は前期比2.5%増、客数は0.6%増、客単価は1.8%増(特殊要因店舗は除く)となり、既存店全店の実績(売上高は2.1%増、客数は0.3%減、客単価は2.5%増)と比較すると、改装の効果が見られます。
また、スマートフォンアプリの導入などITを活用して、お客様ときめ細かなコミュニケーションをとることにより、来店機会を増やす諸施策を実行することで既存店の活性化を進めてまいりました。2018年10月に全店導入した電子マネー付きポイントカード「KiRiCa」は、2020年2月末時点で既存店の会員の20%以上が利用されており、「KiRiCa」を利用することで来店回数が3カ月に1回増えました。2019年10月にリリースしたキリン堂公式アプリの登録者数は、2020年2月末時点で32万人となりました。
b. ヘルス&ビューティの強化
当社グループは創業以来「未病」を事業の柱として、地域のお客様の健康と美容に貢献することを基本としてきました。比較的粗利率の高いヘルス&ビューティ部門の商品、なかでもPB商品を強化することで、利益率の改善を目指しています。健康・美容に関わるPB商品開発から、人材育成、売り場づくりに至るまで一気通貫で実行する部署を新設し、ヘルス&ビューティを強化しています。当社グループが長年培ってきた「未病」のノウハウを活かし、2019年11月にはスキンケアブランドをリニューアルしリブランディングを進めました。その他、機能性表示食品のPB商品の開発を加速し、2020年2月期の全商品売上高におけるPB商品の比率は10.4%(前期差0.7%pt増)、ヘルス&ビューティ商品に限るとPB商品の売上比率は11.3%(前期差0.6%pt増)となりました。
c. 作業システム改革
店舗における諸作業を効率化し、店舗スタッフの本来業務である接客の時間を増やすことを目的に、作業システム改革に取り組んでいます。新たに業務改革プロジェクトチームを立ち上げ、作業のひとつひとつをもう一度見直し、無駄をなくし、作業手順の標準化を徹底することで、作業効率を改善することを目指しています。店舗における作業の標準化や自動発注システムの精度の向上、自動釣銭機の導入に向けて準備を進めてまいりました。取り組みは進んでおり、次期以降にその効果が業績数値となって現れると見込んでいます。
d. 調剤事業の拡大
高齢者や在宅医療を受ける患者の増加から、地域に密着したかかりつけ薬剤師を拡充し、薬局機能の強化のために調剤事業を拡大してまいりました。当連結会計年度は、処方箋取扱店舗数が11店舗増え98店舗となり、調剤事業の売上高は前期比12.7%増となりました。全体の売上構成において、比較的粗利率の高い調剤事業の割合が増加したため、全体の粗利率の引き上げに貢献しました。
e. 関西ドミナントの推進
当社の創業の地である関西地区でのドミナントを推進しています。当初の中期計画では3年間でドラッグストア45店舗を出店する計画でしたが、新規出店よりも既存店の改装効果をより重視する方向に変更したたため、一時的に出店ペースを落としました。
2017年4月に発表した第2次中期経営計画においては、その最終年度である当連結会計年度の売上高目標を1,370億円に設定していました。新規出店を当初計画より抑制したことなどにより、2年経過後の2019年4月、売上高目標を1,330億円に変更しました。当連結会計年度においては、既存店舗の改装効果や電子マネー付きポイントカード「KiRiCa」の効果などにより、売上高は1,332億79百万円となり、修正した目標を達成しました。
当初の第2次中期計画では、最終年度の売上総利益率目標を27.2%としていました。当連結会計年度は、PB商品の販売増と調剤事業拡大や効率的な販売促進策などの売上総利益率の改善に取り組んだ結果、売上総利益率は前期比0.3%pt改善し、27.1%となりました。当初の目標水準には、わずかに達することはできませんでした。
当初の第2次中期計画では、最終年度の売上高販管費率目標を24.3%としていました。当連結会計年度においては、売上高が当初計画よりも減少していることに対応して販管費を充分に減少させることできず、売上高販管費率は25.0%となり、目標をオーバーしました。
上記要因により、当連結会計年度の営業利益率は2.1%となり、当初の第2次中期計画の目標であった3%、修正目標である2.4%のいずれも達成することができませんでした。
以上の結果、当連結会計年度を最終年度とする第2次中期計画は、当初の数値目標を達成することができませんでした。その過程において実行した取組には、効果をあげているものも多く、今後、その内容をさらに進化させるとともに、充分な効果が見られないものについては、見直しを行います。
当社グループは、2021年2月期を初年度とする「第3次中期経営計画(2021年2月期~2023年2月期)」を策定いたしました。この中期経営計画におきましては、人々が日常生活、健康生活を営むための拠点となることを目指し、6つの重点課題(①キリン堂公式アプリを活用した顧客戦略、②未病対策提案を軸としたヘルス&ビューティケアの強化、③作業の効率化、④お客様の「利便性」向上の売場改装、⑤処方箋取扱い店舗数の拡大、⑥関西ドミナントの深耕)に取り組み、地域の皆様から選ばれるドラッグストアになることで、業績の安定的拡大に努めてまいります。詳細につきましては「第一部企業情報第2 事業の状況1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。
なお、第3次中期経営計画および2021年2月期の事業計画には、昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大による影響につきましては、現時点では想定することが困難なため考慮しておりません。社会および経済情勢は先行き不透明な状況でありますが、収益性の改善に向けて6つの重点課題に取り組むことは変わりありません。「コロナ以後」は消費者の購買行動が変化する可能性もあり、消費者の動向を注視しながら臨機応変に対応してまいります。
当社グループは、持続的企業価値向上に向けた投資、株主への利益還元及び将来の更なる成長のための内部留保など総合的に最適なバランスを考え、財務の健全性維持と資本の効率的運用を基本としております。
これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金で賄うことを基本とし、資金調達を行う場合には、経済情勢や金融環境を踏まえ、あらゆる選択肢の中から当社グループにとっての最良の方法で行いたいと考えております。
なお、当連結会計年度のキャッシュ・フローの詳細につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
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