業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 ニッケグループは、中長期ビジョン「ニッケグループRN(リニューアル・ニッケ)130ビジョン(2017~2026年度)」(以下「RN130ビジョン」という。)において、各事業が魅力的な事業を創造し、今後の更なる企業価値向上に向けて、永続的な成長と発展を目指すことを掲げております。

 当連結会計年度は「RN130ビジョン」の具現化に向けて策定した「ニッケグループRN130第2次中期経営計画(2021~2023年度)」(以下「第2次中期経営計画」という。)の初年度として、海外ビジネスの拡大や資本効率の改善等、中長期戦略の推進に取り組むとともに、新型コロナウイルス感染拡大の影響を注視した事業運営に努めてまいりました。

 この結果、当連結会計年度の経営成績は、連結売上高106,619百万円(前年同期比1.6%増)、連結営業利益9,900百万円(前年同期比9.4%増)、連結経常利益9,784百万円(前年同期比22.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益8,308百万円(前年同期比16.7%増)となりました。産業機材事業の車載電装品他製造ラインのファクトリーオートメーション設備(以下「FA設備」という。)や人とみらい開発事業の通信関連分野で販売減少となるも、生活流通事業でEコマース関連販売が好調だったことや、産業機材事業で車両向けの不織布や縫製糸、結束紐等資材関連の販売が回復したことに加え、全社的な経費削減に取り組んだ結果、売上高は増収、営業利益は増益となりました。

 また、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、特別利益および特別損失において、新型コロナウイルス感染症にかかる損益や関係会社株式売却損、開発事業における先行投資などが発生したものの、持分法適用関連会社であった株式会社フジコーの完全子会社化に伴う負ののれん発生益の計上等により、過去最高値を更新しました。

 

 セグメントの概況は以下のとおりであります。

 

(a) 衣料繊維事業

 衣料繊維事業の当連結会計年度の売上高は29,872百万円(前年同期比4.9%減)、営業利益2,749百万円(前年同期比24.0%増)となりました。

(ユニフォーム分野)

 学校制服用素材の販売は、価格改定前の早期引取りが旺盛だった前年同期との比較では低調に推移しましたが、公立中学校の更改需要獲得でカバーし前年同期並みとなりました。官公庁制服用素材の販売は、警察用制服生地および製品の需要が回復し堅調でした。一般企業制服用素材の販売は、新型コロナウイルス感染拡大の影響が長期化しており、新規・更改物件の延期と中止が相次ぎ不調でした。

(テキスタイル分野)

 一般衣料用素材は、国内販売は新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴う市況悪化が長期化しており不調でした。海外販売は、市況回復の兆しが見え始めていますが、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり低調でした。

(ヤーン分野)

 売糸は、新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴う市況悪化が長期化しており不調でした。

 

(b) 産業機材事業

 産業機材事業の当連結会計年度の売上高は20,390百万円(前年同期比7.0%増)、営業利益1,235百万円(前年同期比4.2%減)となりました。

(自動車関連分野)

 自動車生産が半導体不足などの影響を受けながらも比較的堅調に推移する中、株式会社フジコーの連結が寄与した影響もあり、車両向けの不織布や縫製糸、結束紐などの受注は好調でした。

 FA設備の販売は、顧客の設備投資抑制の影響を受け不調でした。

(環境関連分野)

 株式会社フジコーが連結業績に寄与した影響もあり、フィルター資材などの環境・エネルギー関連資材の販売は堅調でした。

(その他産業関連)

 株式会社フジコーが連結業績に寄与した影響もあり、OA向け資材や工業用資材の販売は堅調でした。5Gやパソコンなどの需要増に伴い半導体関連装置の販売は堅調でしたが、画像検査装置の販売は低調でした。

(生活関連分野)

 ラケットスポーツ関連は、緊急事態宣言に伴う大会中止やクラブ活動の自粛など新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けましたが、ソフトテニスガットの新商品の販売が貢献し堅調でした。

 フィッシング関連は、新商品の販売が貢献し堅調でした。

 生活関連資材は、楽器用フェルトの受注が回復し堅調でした。

 

(c) 人とみらい開発事業

 人とみらい開発事業の当連結会計年度の売上高は34,059百万円(前年同期比1.2%減)、営業利益6,115百万円(前年同期比2.8%増)となりました。

(開発関連分野)

 商業施設運営関連は、新型コロナウイルス感染拡大防止対策として、飲食業を中心とした一部店舗で時間短縮営業の影響はあったものの、自社所有外の商業施設におけるプロパティマネジメント契約を受注したことで前年同期並みとなりました。ソーラー売電事業は前年同期並みとなりました。建設関連は、2020年7月に総合建設会社を新たにグループに加えたものの、大型案件のあった前年同期との比較では低調でした。

(ライフサポート分野)

 保育・学童保育関連は、新学年の入園者を獲得できたことで大幅な増収となりました。新型コロナウイルス感染拡大の影響はあったものの、介護関連は堅調、スポーツ関連は好調でした。

(通信及び新規サービス分野)

 通信関連は、携帯事業を取り巻く環境に対応すべく事業再編を行っており大幅な減収となりました。新規サービス関連は、菓子類販売等で新規出店による効果はあるものの、新型コロナウイルス感染拡大の影響により一部施設での営業中止や利用率低下で前年同期並みでした。

 

(d) 生活流通事業

 生活流通事業の当連結会計年度の売上高は18,685百万円(前年同期比11.3%増)、営業利益1,410百万円(前年同期比20.7%増)となりました。

(寝装品及び業務用品分野)

 Eコマース向け寝装品の販売は堅調でした。災害用備蓄毛布や航空機内膝掛け毛布の販売は新型コロナウイルス感染拡大の影響で不調でしたが、感染防護衣の販売が好調でした。

(生活雑貨分野)

 100円ショップ向け雑貨の販売は前年同期並みでした。在宅勤務向けの家具販売は好調でした。Eコマース向け生活家電は巣ごもり消費の需要が高まり空気清浄機やキッチン家電の販売が好調でした。またタブレット・パソコン用フィルム販売も好調でした。

(ホビー・クラフト分野)

 店舗販売が中心のスタンプ販売は新型コロナウイルス感染拡大の影響で不調でした。スタンプ用インクは海外向けが伸び堅調でした。一方、乗馬用品販売は新型コロナウイルス感染拡大の影響でEコマース販売が好調でした。

(その他)

 保険代理店の業績は前年同期並みでしたが、コンテナ販売は新型コロナウイルス感染拡大の影響で新規設置が減少し不調でした。

 

② キャッシュ・フローの状況

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の営業活動による資金の収入は、前連結会計年度に比べ、仕入債務の増加等により、1,088百万円増加して12,404百万円となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の投資活動による資金の支出は、前連結会計年度に比べ、固定資産の取得による支出の減少等により4,132百万円減少して2,093百万円となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の財務活動による資金の支出は、前連結会計年度に比べ、短期借入金の純増減額の増加等により、1,123百万円増加して1,483百万円となりました。
 以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比11,124百万円増加して41,052百万円となりました。

 

(キャッシュ・フロー関連指標の推移)

 当社グループのキャッシュ・フロー関連指標の推移は以下のとおりであります。

 

 

2019年度期末

2020年度期末

2021年度期末

自己資本比率(%)

61.8

63.8

62.9

時価ベースの自己資本比率(%)

52.0

51.4

37.8

キャッシュ・フロー対有利子負債比率

1.3

1.8

1.7

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

161.4

132.4

147.6

(注1)各指標は、いずれも連結ベースの財務諸表数値を用いて、以下の計算式により計算しております。

    自己資本比率           :自己資本/総資産

    時価ベースの自己資本比率     :株式時価総額/総資産

    キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

    インタレスト・カバレッジ・レシオ :営業キャッシュ・フロー/利払い

(注2)株式時価総額は、期末株価終値×自己株式控除後の期末発行済株式数により算出しております。

(注3)有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。

(注4)営業キャッシュ・フロー及び利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書に計上されている「営業活動によるキャッシュ・フロー」及び「利息の支払額」を用いております。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

 当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その形態・単位等は必ずしも一様でなく、また受注生産をとらない製品もあり、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

 このため生産、受注及び販売の状況については「①財政状態及び経営成績の状況」における、各セグメント業績に関連付けて示しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(a) 財政状態の分析

 当連結会計年度における総資産は163,632百万円(前連結会計年度比11.2%増)となりました。

 当連結会計年度における自己資本比率は62.9%となり、当連結会計年度における1株当たり純資産は1,398円04銭となりました。また、自己資本当期純利益率(ROE)は、8.4%(前連結会計年度比0.7ポイント増)となりました。

(流動資産)

 当連結会計年度における流動資産は91,210百万円(前連結会計年度比16.1%増)となりました。その主な内容は、現金及び預金の増加10,901百万円や売上債権の増加2,850百万円等であります。

(固定資産)

 当連結会計年度における固定資産は72,421百万円(前連結会計年度比5.6%増)となりました。その主な内容は、土地の増加7,257百万円や投資有価証券の減少4,401百万円等であります。

(流動負債)

 当連結会計年度における流動負債は40,157百万円(前連結会計年度比8.4%増)となりました。その主な内容は、未払法人税等の増加803百万円、仕入債務の増加763百万円等であります。

(固定負債)

 当連結会計年度における固定負債は18,854百万円(前連結会計年度比30.7%増)となりました。その主な内容は、繰延税金負債の増加2,119百万円や退職給付に係る負債の増加545百万円等であります。

(純資産)

 当連結会計年度における純資産は104,620百万円(前連結会計年度比9.3%増)となりました。その主な内容は、利益剰余金の増加5,188百万円、自己株式の減少1,376百万円等であります。

 

(b) 経営成績の分析

(売上高)

 当連結会計年度における売上高は106,619百万円(前連結会計年度比1.6%増)となりました。

 セグメント別の売上高につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

(営業利益)

 衣料繊維事業につきましては、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたこと等によりビジネスユニフォーム分野やヤーン分野で減収となったものの、スクールユニフォーム分野での価格改定やテキスタイル分野やヤーン分野での再編効果等により、営業利益は増加いたしました。

 産業機材事業につきましては、資材関連需要の回復や持分法適用関連会社だった㈱フジコーの第4四半期からの完全子会社化はあったものの、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、自動車関連のFA設備販売が大幅に減少したこと等により、営業利益は減少いたしました。

 人とみらい開発事業につきましては、ゴルフ練習場等のスポーツ関連が好調だったこと等により、営業利益は増加いたしました。

 生活流通事業につきましては、新型コロナウイルス感染拡大に伴う巣ごもり消費の増加からEコマース向け販売が好調だったこと等により、営業利益は増加いたしました。

 以上の結果、当連結会計年度における販売費及び一般管理費は21,384百万円(前連結会計年度比1.9%増)となり、営業利益は9,900百万円(前連結会計年度比9.4%増)となりました。

(経常利益)

 営業外損益は、前期に㈱フジコーの持分法適用関連会社化に伴う負ののれんを持分法による投資利益に計上していたこと等により、収益減少となりました。

 以上の結果、当連結会計年度における経常利益は9,784百万円(前連結会計年度比22.7%減)となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 特別損益は、新型コロナウイルス感染症による損失や関係会社株式売却損、事業構造改善費用等が発生したものの、持分法適用関連会社だった㈱フジコーの完全子会社化に伴う負ののれん発生益の計上等により、収益増加となりました。

 以上の結果、当連結会計年度における税金等調整前当期純利益は10,997百万円(前連結会計年度比9.4%増)となり、法人税等の減少等により、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は8,308百万円(前連結会計年度比16.7%増)となりました。

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(a) キャッシュ・フローの分析

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

(b) 資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの運転資金需要は、主に衣料繊維事業における原材料の仕入や製造経費、販売費及び一般管理費等であり、投資を目的とした資金需要は、主に保有する不動産への設備投資等によるものであります。

 短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。

 なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は21,316百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は41,052百万円となっております。

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っていますが、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、以下のとおりであります。

(繰延税金資産)

 当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異等について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

(固定資産の減損)

 当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位でグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては、将来の利益計画に基づき慎重に検討を行っておりますが、その見積りの前提とした条件や仮定に変化が生じた場合、減損処理が必要になる可能性があります。

(退職給付会計)

 退職給付に係る資産及び負債のうち、確定給付制度に係る分については、割引率や年金資産の期待運用収益率等の数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しております。実際の計算が前提条件と異なる場合、または制度に変化や変更が生じた場合は、将来の退職給付に係る負債、及び退職給付費用に影響を与える可能性があります。

 

(3)経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、「売上高」、「営業利益」、「自己資本当期純利益率(ROE)」を重要な指標として位置付けております。当連結会計年度における「売上高」は106,619百万円(前連結会計年度比1.6%増)、「営業利益」は9,900百万円(前連結会計年度比9.4%増)、「自己資本当期純利益率(ROE)」は8.4%(前連結会計年度比0.7ポイント増)となりました。

 

 なお、今後の見通しにつきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

 また、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

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