(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大や変異株の発生、エネルギー資源価格の高騰により不透明な状況が続きました。2021年9月末には、2021年1月から発出、適用された緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置が解除されました。またワクチン接種率は約80%となり、3回目の接種も開始されたことにより、社会経済活動の正常化への期待感が高まりました。しかし、感染力が強いとされるオミクロン株により感染が再拡大し、依然として新型コロナウイルス感染症の収束時期は不透明な状況であります。
当社グループの属する不動産業界においては、賃貸マンションについては、景気動向やコロナ禍の影響を受けにくいことから、稼働率、賃料水準及び物件売買価格のいずれも堅調に推移しております。またホテル業界においては、緊急事態宣言解除に伴い停滞していた人の流れが緩やかに戻り回復傾向にあります。
このような事業環境のもと、当社グループは、41棟約2,600戸の賃貸マンション「S-RESIDENCE」シリーズを竣工させ、安定した収益基盤の構築を進めました。またホテル業界については、今後も大きな成長が見込まれる分野であると考え、徐々に宿泊観光消費が増加すると予測しており、アフターコロナを見据えた取組みを実施いたしました。当連結会計年度におけるホテル投資への取組みとして、2021年5月に東京証券取引所市場第二部上場のウェルス・マネジメント株式会社とホテルREITやホテル開発ファンドにおける共同投資等の資本業務提携契約を締結し、当連結会計年度より持分法適用関連会社としております。10月にはホテル特化型のサムティ・ジャパンホテル投資法人に対してスポンサーとしてセイムボート出資を行うことを決定し、現在、東京証券取引所上場に向け準備を進めております。また、11月にはホテル開発プロジェクト「(仮称)シャングリ・ラ京都二条城」における特定目的会社を持分法適用関連会社といたしました。
この結果、当連結会計年度の業績は、売上高904億円(前連結会計年度比10.5%減)、営業利益94億円(前連結会計年度比45.5%減)、経常利益81億円(前連結会計年度比46.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益100億円(前連結会計年度比5.7%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分に基づいて記載しております。
不動産開発事業は、自社ブランド「S-RESIDENCE」シリーズ等の企画開発・販売を行っております。
当連結会計年度においては19物件、約347億円販売したほか、サムティ・レジデンシャル投資法人へ全国の主要都市を中心とした5物件、約42億円の販売用不動産を販売いたしました。またホテルアセットとして「アゴーラ京都四条(京都市下京区)」、「アゴーラ京都烏丸(京都市下京区)」を販売いたしました。
この結果、当該事業の売上高は388億円(前連結会計年度比33.3%減)、営業利益は98億円(前連結会計年度比33.3%減)となりました。
不動産ソリューション事業は、収益不動産等の取得・再生・販売を行っております。当連結会計年度においては、オフィスビル等を販売したほか、サムティ・レジデンシャル投資法人へ21物件、約234億円の賃貸マンションを販売いたしました。
この結果、当該事業の売上高は371億円(前連結会計年度比22.7%増)、営業利益は30億円(前連結会計年度比17.4%減)となりました。
海外事業は、海外における投資、住宅分譲事業を行っております。当連会計年度においては、ベトナム国最大手の不動産デベロッパーであるVINHOMES JOINT STOCK COMPANYと同国ハノイ市において共同で行うスマートシティ開発プロジェクトにおいて、分譲住宅の販売を開始いたしました。
この結果、当該事業の売上高は5億円(前連結会計年度比19.1%増)、営業利益は2億円(前連結会計年度比22.8%減)となりました。
不動産賃貸事業は、マンション、オフィスビル、商業施設等の賃貸を行っております。当連結会計年度において物件取得が順調に推移し、49物件、合計約421億円の収益物件を取得したほか、43棟の開発物件を竣工いたしました。
この結果、当該事業の売上高は79億円(前連結会計年度比2.1%増)、営業利益は37億円(前連結会計年度比8.0%減)となりました。
(ホテル賃貸・運営事業)
ホテル賃貸・運営事業は、ホテルの賃貸及び管理を行っております。当連結会計年度においては、「エスペリアホテル福岡中洲(福岡市博多区)」、「アロフト大阪堂島(大阪市北区)」を含む5棟を開業、取得し、保有・運営は18棟となりました。当社グループ保有・運営のホテルにおいても、新型コロナウイルス感染症の影響を受けておりますが、新規感染者数は低水準で落ち着いており、今後は停滞していた人流の活発化による需要の回復を見込んでおります。
この結果、当該事業の売上高は26億円(前連結会計年度比32.5%増)、営業損失は25億円(前連結会計年度は6億円の営業損失)となりました。
(不動産管理事業)
不動産管理事業は、マンション、オフィスビル、商業施設等の管理を行っております。
この結果、当該事業の売上高は32億円(前連結会計年度比41.4%増)、営業利益は5億円(前連結会計年度比78.6%増)となりました。
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比べ、983億円増加し、3,491億円となっております。当社グループは2021年1月に公表した中期経営計画「サムティ強靭化計画(アフターコロナ版)」に則りインカムゲインの最大化を企図し、完成物件を一定期間保有する方針としております。また「明治通りビジネスセンター本館、別館(福岡市博多区)」、「S-RESIDENCE天満Gracis(大阪市北区)」、「S-RESIDENCE円山表参道(札幌市中央区)」など順調に物件取得、竣工が進捗いたしました。これにより販売用不動産、仕掛販売用不動産、有形固定資産(収益物件等)が975億円増加、現金及び預金が8億円減少いたしました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末と比べ、730億円増加し、2,461億円となっております。主な増減要因は、開発用地、収益物件を合わせ100件超の物件取得に伴う借入金622億円の増加及び、新株予約権付社債120億円の発行によるものであります。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末と比べ253億円増加し、1,030億円となっております。主な増減要因は、第1回無担保転換社債型新株予約権付社債の転換に伴い資本金、資本剰余金88億円増加及び自己株式の12億円減少、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金100億円、S-VIN VIETNAM REAL ESTATE TRADING JOINT STOCK COMPANY(ベトナム国ハノイ市におけるスマートシティ分譲住宅事業プロジェクト会社)及び、合同会社アール・アンド・ケイ(アロフト大阪堂島を保有するSPC(特別目的会社))を連結子会社としたこと等による非支配株主持分80億円の増加であります。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動により67億円減少、投資活動により523億円減少、財務活動により576億円増加したことなどによる結果、前連結会計年度末と比べ、12億円減少し、当連結会計年度末には405億円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
当連結会計年度における営業活動により使用した資金は、67億円(前連結会計年度は119億円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益122億円、利息の支払額25億円、法人税等の支払額46億円などによるものであります。このうち、税金等調整前当期純利益の減少は、開発後一定期間保有する事業モデルに転換したことにより、資産の販売を控えたことなどによるものであります。
当連結会計年度における投資活動により使用した資金は、523億円(前連結会計年度は318億円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出344億円、投資有価証券の取得による支出51億円などによるものであります。
当連結会計年度における財務活動により獲得した資金は、576億円(前連結会計年度は174億円の収入)となりました。これは主に、短期借入れによる収入326億円、短期借入金の返済による支出372億円、長期借入れによる収入1,137億円、長期借入金の返済による支出628億円、社債の発行による収入40億円、配当金の支払額33億円などによるものであります。
当社グループは、不動産開発事業、不動産ソリューション事業及び不動産賃貸事業を主要な事業としており、生産実績を定義することが困難であるため、生産実績の記載はしておりません。
当社グループは、受注生産を行っていないため、受注実績の記載はしておりません。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針及び新型コロナウイルス感染症の影響に関する会計上の見積りの仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)及び(追加情報)に記載のとおりです。
この連結財務諸表の作成にあたり、資産及び負債や収益及び費用等の額に不確実性がある場合、過去の実績や取引の状況に照らし合理的と考えられる見積り及び判断を行っております。当該見積り及び判断について当社グループは継続的に評価を行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループは、特に以下の重要な会計方針が、連結財務諸表の作成において使用される見積り及び判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
a.販売用不動産の評価
当社グループは、「棚卸資産の評価に関する会計基準」に従い、収益性の低下により正味売却価額が帳簿価額を下回っている販売用不動産(仕掛販売用不動産を含む)の帳簿価額を、正味売却価額まで切り下げる会計処理を適用しております。
会計処理の適用に当たっては、個別物件ごとに販売価格、建築工事原価追加発生額及び販売経費等を見積もって正味売却価額を算定しており、正味売却価額が帳簿価額を下回った場合に、帳簿価額を正味売却価額まで切り下げる評価減を行っております。
経済情勢の悪化や不動産市況の悪化等により評価損の認識が必要となった場合、また、見積りの前提条件の変更等により正味売却価額が減少することとなった場合には、追加の評価減の処理が必要となる可能性があります。
b.固定資産の減損
当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」に従い、収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった固定資産の帳簿価額を、回収可能価額まで減額する会計処理を適用しております。
会計処理の適用に当たっては、継続的な営業損失や営業キャッシュ・フローの赤字、市場価格の著しい下落、経営環境の著しい悪化及び用途変更等によって減損の兆候がある場合に減損損失の認識の要否を検討しております。減損損失を認識するかどうかの検討には将来キャッシュ・フローの見積金額を用いており、減損損失の認識が必要と判断された場合は、帳簿価額が回収可能価額を上回る金額を減損損失として計上しております。なお、回収可能価額は正味売却価額又は使用価値のいずれか高い金額によって決定しております。
将来の継続的な営業損失や営業キャッシュ・フローの赤字、市場価格の著しい下落、経営環境の著しい悪化及び用途変更等により減損損失の認識が必要となった場合、また、見積りの前提条件の変更等により将来キャッシュ・フローの見積金額及び正味売却価格が減少することとなった場合には、追加の減損損失の計上が必要となる可能性があります。
また、以上の会計上の見積り等に関する新型コロナウイルス感染症の影響につきましては、収束が長引く場合、不動産開発事業において進行中のホテル開発計画の見直しや、ホテル賃貸・運営事業において保有中のホテル資産の評価の見直しにより、評価減や減損の処理が必要となる可能性があります。
(売上高)
当連結会計年度における売上高につきましては、前連結会計年度の 1,011億円 から 106億円減少 (前期比 10.5%減 )し、 904億円 となりました。これは主に、不動産開発事業における賃貸マンション、ホテル、オフィス等の販売に伴う売上高の減少によるものであります。
前期の計画変更によって売却を余儀なくされたレジデンスの補充を重点的に実施したこと、また、開発後一定期間保有する事業モデルに転換したことにより、 資産の販売を控えたため、売上高は前期と比べて減少したものの、不動産開発事業以外の売上高は増加傾向となっております。
(売上原価)
当連結会計年度における売上原価につきましては、前連結会計年度の 734億円 から 8億円減少 (前期比 1.2%減 )し、 726億円 となりました。これは主に、不動産開発事業における売上高の減少に伴う売上原価の減少によるものであります。詳細な要因は上記(売上高)に記載のとおりであります。
(販売費及び一般管理費)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費につきましては、前連結会計年度の 103億円 から 19億円減少 (前期比 18.6%減 )し、 83億円 となりました。これは主に、不動産開発事業における売上高の減少に伴う販売仲介手数料の減少、業績連動報酬を支給しなかったことによるものであります。
(営業外損益)
当連結会計年度における営業外収益につきましては、前連結会計年度の 1億円 から 19億円増加 し、 21億円 となりました。これは主に、当期においてウェルス・マネジメント株式会社の株式を取得したことに伴う持分法による投資利益の計上や、海外子会社の外貨建て負債について為替差益を認識したことによるものであります。
当連結会計年度における営業外費用につきましては、前連結会計年度の 22億円 から 12億円増加 し、 34億円 となりました。これは主に、有利子負債の増加に伴う支払利息や融資手数料の増加によるものであります。
(特別損益)
当連結会計年度における特別利益につきましては、前連結会計年度の2億円から41億円増加し、43億円となりました。これは主に、S-VIN VIETNAM REAL ESTATE TRADING JOINT STOCK COMPANYの株式、及び合同会社アール・アンド・ケイの匿名組合事業出資持分を取得したことにより負ののれん発生益を計上したことによるものであります。
当連結会計年度における特別損失につきましては、前連結会計年度の 1億円 から 0億円増加 し、 2億円 となりました。これは主に、当社の大阪本社移転により、退去に伴い発生する違約金等を本社移転費用として計上したことによるものであります。
セグメントごとの概要は以下のとおりです。
a.不動産開発事業
インカムゲインの最大化を企図した「開発して保有する」戦略の推進に伴い、資産の売却を控えたことにより、売上高は前年比33.3%の減収、営業利益につきましては、前年比33.3%の減益となりました
b.不動産ソリューション事業
世界的な低金利を背景とした旺盛な不動産需要のもと、サムティ・レジデンシャル投資法人への物件供給、オフィスビルの売却などにより、売上高は前年比22.7%の増収、営業利益につきましては、前年比17.4%の減益となりました。
c.海外事業
2016年よりファンドを通じて出資している、開発・賃貸事業を営むホーチミンの不動産会社への投資案件の償還を受けたことにより、売上高は前年比19.1%の増収、営業利益につきましては、前年比22.8%の減益となりました。
d.不動産賃貸事業
前連結会計年度に多数の賃貸マンションの売却を行ったものの、全国の主要都市において、49物件、約421億円の収益不動産を取得しました。また、当社グループが保有する賃貸等不動産は、住居(マンション)を中心に稼働率、賃料水準ともに順調に推移し、また収益不動産の取得を積極的に進めたことにより、売上高は前年比2.1%の増収、営業利益につきましては、前年比8.0%の減益となりました。
e.ホテル賃貸・運営事業
連結会計期間のうち8割以上の期間で緊急事態宣言やそれに準ずる行動制限が生じた影響で営業損失が発生したものの、緊急事態宣言の解除後である2021年10月以降の稼働率は概ね60%以上の水準を回復したことにより、売上高は32.5%の増収、営業損失は前年に比べ増加しました。
f.不動産管理事業
サムティ・レジデンシャル投資法人の資産規模拡大に伴うアセットマネジメント・プロパティマネジメント報酬の増加により、売上高は前年比41.4%の増収、営業利益につきましては、前年比78.6%の増益となりました。
当社グループの主力事業である不動産開発事業及び不動産ソリューション事業においては、顧客への引渡し時期の変動、天災その他予期し得ない事態による建築工事の遅延、経済情勢の変動による業績への影響、有利子負債への依存による事業展開への影響等、経営成績に重要な影響を与える様々な要因が挙げられます。新型コロナウイルス感染症の影響を含め、詳細につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社グループの資金需要な主なものは、不動産開発事業における開発用地の取得資金及び建築資金、不動産ソリューション事業における販売用不動産の取得資金、不動産賃貸事業における賃貸用不動産の取得資金であり、その調達手段は主として金融機関からの借入金によっており、また、効率的な調達を行うため取引銀行と当座貸越契約及び貸出コミットメント契約を締結しております。なお、全社費用の運転資金につきましては、原則自己資金を充当しております。
2021年1月27日に公表した新中期経営計画「サムティ強靭化計画(アフターコロナ版)」において、本業の稼ぐ力として営業利益を、投資効率を図る指標としてROE及びROAを、財務健全性を図る指標として自己資本比率をそれぞれ重視することとしております。当該計画では2023年11月期のこれら指標について、営業利益20,000百万円以上、ROE12.0~15.0%水準、ROA6.0~7.0%水準、自己資本比率27.0~30.0%以上、2025年11月期においては、営業利益35,000百万円以上、ROE15.0%水準、ROA7.0%水準、自己資本比率30.0%以上という目標を掲げておりますが、当期は営業利益9,461百万円、ROE11.7%、ROA3.2%、自己資本比率が27.0%となりました。今後も投資効率と財務健全性の維持、向上に努めつつ、営業利益目標を達成してまいります。
また、各指標の推移は以下のとおりです。
(注)各指標はいずれも当社連結ベースの数値を用いて算出しております。
・ROE:当期純利益÷期首・期末平均自己資本
・ROA:営業利益÷期首・期末平均総資産
・自己資本比率:自己資本÷総資産
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