業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績

 当連結会計年度のわが国においては、新型コロナウイルス感染症の影響が社会経済活動に大きな影響を与える状況が続きつつも、ワクチン接種の開始と浸透によって収束に向かう道筋が見出し得るようになり、その影響が緩まる方向に進みました。景気は全体としては回復の方向に進みながらも、新型コロナウイルスの感染の波が幾たびも発生したことに伴いストップアンドゴーを繰り返し、時期・地域によって回復度合いの濃淡が強く現れました。

 時期別の社会経済活動については、当初は昨年度ほどの全面的な抑制はない状態が続きましたが、7月以降の新型コロナウイルスのデルタ株の急速な広がりにより新規感染者数の著しい増加・医療崩壊を懸念させる事象がもたらされ、かつてない緊張感の下での生活を強いられる状況が生じました。その後、緊急事態宣言が9月30日に終了し急速に感染の波が沈静化して社会経済活動の持ち直しが進み出しましたが、11月末頃からオミクロン株への警戒が始まり、2022年1月から3月にかけて実施されたまん延防止等重点措置により一定程度の活動抑制がもたらされました。

 

 当社グループ(当社及び当社の連結子会社)が主力とする不動産賃貸仲介の業界におきましては、社会経済活動の持ち直しの動きに連動して、需要の回復プロセスが進行している地域が多いものと推測されます。そのなかでは、輸出向け製造業の盛んな地域では比較的堅調な転居需要がある一方で、飲食業・宿泊業等を中心としたサービス業従事者の需要の回復不足や新規来日の外国人居住者数の低迷は継続するなど、地域・時期による転居需要水準の変動要素は依然として存在しております。しかし、全体としては、昨年度の状態から跛行性を帯びながらも回復が進んでおります。

 

 このような事業環境の下で、当社グループは、需要状況の変化にスピーディーに対応することを重視して事業運営を推進してきました。また、「オンライン部屋探し」をはじめとして他社に先駆けて実現してきた不動産テックの活用についての組織的習熟が進んだだけではなく、オンライン上のやり取りによって店舗を訪れる前に入居決定の動機を高めて来店後の成約率を高めるマーケティングノウハウ蓄積など、リアルとデジタルをまたがる消費者のリアルな反応に対応するためのデータの蓄積も進み、DX(デジタルトランスフォーメーション)時代に向けたベースづくりも進めております。営業店舗・拠点については、地域の需要動向に合わせた店舗再配置を進めるとともに、底堅い法人需要(社宅扱いの賃貸契約)の獲得強化を目的に東京・名古屋・大阪に法人営業拠点を置いて連携して対応できる体制を整えました。事業領域の拡張という観点では、継続収入(リカーリング・レベニュー)型サービスとして、初期費用と賃料を利用者が自由に設定できる新サービス「スマートレント」(特許出願中)の上市、自主管理オーナー向けにWEBから共用部の清掃や法定点検などのBM(ビルメンテナンス)業務の発注が可能な「スマートシステムPLUS」の提供を開始いたしました。

 また、企業価値を継続的に高めるために不可欠なESG対応についても、環境省のCOOL CHOICEに賛同してエコカー導入・再生可能エネルギーへの切り替え促進、子育て支援企業として厚生労働省の「くるみん認定」(2021年認定)、令和3年度東京都障害者雇用優良事業所表彰において「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長努力賞」を受賞、任意団体「work with Pride」による職場でのLGBTQの取り組みを評価する「PRIDE指標2021」において最上位のゴールド認定を取得、「健康経営法人2022」(大規模法人部門)の認定を取得するなど、諸施策・諸制度を導入・実践してきており、今後も取り組みを充実させる予定です。そしてコーポレートサイト内にサステナビリティのページ(URL https://www.housecom.co.jp/sustainability/ )を開設し、ESG対応やSDGsなど当社のサステナビリティについての情報開示の拡充を進めました。

 

 中長期的な経営戦略については、2021年5月21日に「中期経営計画の見直し及び新成長戦略(概要)」を公表し、事業領域の拡大及び競争力の強化等による成長の加速と、継続収入型サービスによる安定収益基盤の構築を含めた新たな事業ポートフォリオの構築の2つの柱を重視することを示しました。新たな成長を実現する戦略においては、(1)事業領域拡大による収益構造の転換(新たな事業ポートフォリオの構築)、(2)既存事業の競争力強化(不動産テック活用のその先のフェーズへ)、(3)既存事業の店舗数増加による規模の拡大(新規出店・M&A)、(4)グループ経営を前進させるための内部体制の強化、以上の4項目が肝要になるとの考えを示し、同年12月24日公表の「新成長戦略~3か年目標値及び2030年3月期に向けた目標~」では、定量目標として、2025年3月期は連結営業収益167.0億円、連結営業利益11.9億円、想定ROE10.9%、2030年3月期は連結営業収益196.0億円、連結営業利益21.3億円、想定ROE12.3%を提示いたしました。

 また、2021年12月24日には、今後の事業拡大と企業価値の向上を図るという目的の下、東京証券取引所の新市場区分においてプライム市場を選択することを決定・公表し、「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」を開示いたしました。

 

 これらの事業運営を進めてきた結果として、当社グループの連結経営成績は、営業収益14,206百万円(前期比15.5%増、1,906百万円増)、営業利益418百万円(前期比18.9%増、66百万円増)、経常利益614百万円(前期比6.7%増、38百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益372百万円(前期比19.4%増、60百万円増)となりました。

 セグメントごとの業績は、次のとおりです。また、セグメント区分による各事業の内容・連結決算への反映期間は(注1)(注2)に記載しております。

 

① 不動産関連事業(注1)

 不動産関連事業は、営業収益は12,832百万円(前期比19.3%増)、セグメント利益は2,010百万円(前期比2.4%増)となりました。この営業収益の増加は、社会経済活動持ち直しの動きに連動して多くの地域で転居需要の回復プロセスが進行するなかで、同事業の中心であるハウスコム株式会社の仲介件数がきめ細かい営業施策の工夫の成果もあり前期比3,941件増加の76,220件(前期比5.5%増)となったこと、そして本年4月より連結損益計算書に業績が反映されることになった株式会社宅都の営業収益が1,431百万円となったことが反映されたことによるものであります。

 

② 施工関連事業(注2)

 施工関連事業は、営業収益は1,374百万円(前期比10.9%減)、セグメント利益は87百万円(前期比11.5%増)となりました。これらの業績は、ハウスコム株式会社内のリフォーム事業の営業収益が970百万円(前期比1.6%減)となったものの原価・経費低減による利益改善効果があったこと、エスケイビル建材株式会社の営業収益が404百万円(前期比27.4%減)となったことが反映されたものであります。

 

(注1)「不動産関連事業」は不動産仲介、広告・損害保険・各種サービス等に関する事業であり、同事業はハウスコム株式会社及び100%子会社のハウスコムテクノロジーズ株式会社・株式会社宅都により構成されています。また、当期の連結業績への反映期間は、以下のとおりです。

    ハウスコム株式会社 2021年4月1日より2022年3月31日迄。

    ハウスコムテクノロジーズ株式会社 2021年4月1日より2022年3月31日迄。

    株式会社宅都 2021年3月1日より2022年2月28日迄。

(注2)「施工関連事業」はリフォーム、請負建築工事等であり、ハウスコム株式会社内のリフォーム事業及び100%子会社のエスケイビル建材株式会社の事業により構成されています。また、当期の連結業績への反映期間は、以下のとおりです。

    ハウスコム株式会社内のリフォーム事業 2021年4月1日より2022年3月31日迄。

    エスケイビル建材株式会社 2021年1月1日より2021年12月31日迄。

 

 当社グループの当連結会計年度における経営成績は、以下の通りです。

(単位:千円)

 

 

2021年3月期

2022年3月期

増減額

(増減率)

営業収益

 

 

 

 

不動産関連事業

10,757,032

12,832,064

2,075,032

(19.3%)

施工関連事業

1,542,866

1,374,709

△168,156

(△10.9%)

合計

12,299,898

14,206,774

1,906,875

(15.5%)

営業利益

 

 

 

 

不動産関連事業

1,962,536

2,010,280

47,743

(2.4%)

施工関連事業

78,261

87,260

8,999

(11.5%)

調整額

△1,688,925

△1,679,159

9,765

 

合計

351,872

418,382

66,509

(18.9%)

経常利益

576,363

614,998

38,635

(6.7%)

当期純利益

312,256

372,970

60,714

(19.4%)

 

(参考)ハウスコム株式会社単体における経営成績は、以下のとおりです。

(単位:千円)

 

 

2021年3月期

2022年3月期

増減額

(増減率)

営業収益

 

 

 

 

不動産賃貸仲介収入

5,108,812

5,362,451

253,638

(5.0%)

仲介関連サービス収入

4,647,280

4,674,708

27,427

(0.6%)

その他の収入

1,598,698

1,546,678

△52,019

(△3.3%)

合計

11,354,791

11,583,838

229,046

(2.0%)

営業費用

10,848,900

11,236,628

387,727

(3.6%)

営業利益

505,890

347,209

△158,680

(△31.4%)

経常利益

709,260

542,940

△166,319

(△23.4%)

当期純利益

430,477

328,224

△102,253

(△23.8%)

(注) 完成業務高は、仲介関連サービスに含めております。

 

 ハウスコム株式会社単体における当事業年度の業績は、営業収益11,583百万円(前期比2.0%増)、営業利益347百万円(前期比31.4%減)、経常利益542百万円(前期比23.4%減)、当期純利益328百万円(前期比23.8%減)となりました。営業収益においては、上述のように、仲介件数の増加を主たる要因として、不動産賃貸仲介収入が253百万円増加(前期比5.0%増)、リフォーム事業の低下を周辺商品販売の増加が補うことにより仲介関連サービス収入が27百万円増加(前期比0.6%増)、その他事業が52百万円の減少(前期比3.3%減)となりました。また、費用においては、前期において抑制していた活動(研修・会議等)の再開、システム関連費用の増加、歩合給等の業績連動性のある部分を含めた人件費の増加等により、営業費用全体においては387百万円増加(前期比3.6%増)となりました。それらの結果、ハウスコム株式会社単体の営業利益は158百万円減少(前期比31.4%減)の347百万円となりました。

 

 生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

① 生産実績

 該当事項はありません。

 

② 受注実績

 該当事項はありません。

 

③ 販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前期比(%)

不動産関連事業

12,832,064

119.3

施工関連事業

1,374,709

89.1

合計

14,206,774

115.5

(注)主な相手先別については、前連結会計年度及び当連結会計年度における相手先別の販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。

 

(2)財政状態

 当連結会計年度において、企業結合に係る暫定的な会計処理の確定を行っており、前連結会計年度の関連するものについては、暫定的な会計処理の確定による取得原価の当初配分額の重要な見直しが反映された後の金額によっております。

 

 当連結会計年度末における総資産は、10,178百万円(前連結会計年度末は9,853百万円)となり、前連結会計年度末と比べ325百万円増加しました。

(流動資産)

 当連結会計年度末における流動資産の残高は、5,459百万円(前連結会計年度末は4,976百万円)となり、前連結会計年度末と比べ482百万円増加しました。これは現金及び預金が374百万円増加したことが主たる要因であります。

(固定資産)

 当連結会計年度末における固定資産の残高は、4,719百万円(前連結会計年度末は4,876百万円)となり、前連結会計年度末と比べ157百万円減少しました。これはソフトウエア等の無形固定資産が124百万円減少したことが主たる要因であります。

(流動負債)

 当連結会計年度末における流動負債の残高は、2,557百万円(前連結会計年度末は2,528百万円)となり、前連結会計年度末と比べ28百万円増加しました。これは未払消費税等が112百万円増加したこと、及び未払金が91百万円減少したことが主たる要因であります。

(固定負債)

 当連結会計年度末における固定負債の残高は、832百万円(前連結会計年度末は812百万円)となり、前連結会計年度末と比べ19百万円増加しました。これは退職給付に係る負債が34百万円増加したことが主たる要因であります。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産の残高は、6,789百万円(前連結会計年度末は6,512百万円)となり、前連結会計年度末と比べ276百万円増加しました。これは剰余金の配当を69百万円行ったこと、並びに親会社株主に帰属する当期純利益372百万円を計上したことが要因であります。

 

 当社グループの当連結会計年度末における財政状態は、以下のとおりです。

(単位:千円)

 

 

2021年3月末

2022年3月末

増減額

流動資産

4,976,568

5,459,136

482,568

有形固定資産

482,849

427,767

△55,082

無形固定資産

1,987,252

1,862,778

△124,474

投資その他の資産

2,406,473

2,428,555

22,082

資産合計

9,853,143

10,178,237

325,093

 

 

2021年3月末

2022年3月末

増減額

流動負債

2,528,251

2,557,087

28,836

固定負債

812,333

832,094

19,761

純資産

6,512,559

6,789,055

276,495

 

 

2021年3月末

2022年3月末

自己資本比率

65.8%

66.4%

 

 当社グループの財政状態は、これまでの事業活動の結果として資金と資本の蓄積が進み、借入金等の有利子負債がなく高い水準の自己資本比率(66.4%)であり、安全性の高い状況にあると認識しています。企業環境と事業戦略により重視すべき基準が変わり得るため単独の指標による評価は行っておりませんが、現時点では、成長投資向け資金・株主還元用原資が確保されているとともに、不確実性に対応することのできる財務内容だと評価しております。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は、4,545百万円(前連結会計年度末4,170百万円)となり、前連結会計年度末と比べ374百万円増加しました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と主な要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果獲得した資金は、767百万円(前連結会計年度に獲得した資金252百万円)となり、前連結会計年度に対して514百万円収入が増加しました。主な収入増加の要因は、税金等調整前当期純利益590百万円、非資金取引である減価償却費250百万円であります。一方で主な収入減少の要因は法人税等の支払額226百万円であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は、228百万円(前連結会計年度に使用した資金1,737百万円)となり、前連結会計年度に対して1,509百万円支出が減少しました。主な支出の要因は、無形固定資産の取得による支払額136百万円であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、164百万円(前連結会計年度に使用した資金284百万円)となり、前連結会計年度に対して120百万円支出が減少しました。主な支出の要因は、自己株式の取得による支出88百万円であります。

 

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、重要な設備計画(資本的支出)を予定しておりません。

 

 

 

(キャッシュ・フロー関連指標の推移)

 

2021年3月期

2022年3月期

自己資本比率(%)

65.8

66.4

時価ベースの自己資本比率(%)

101.3

93.2

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

(注) 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

 

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成して

います。この連結財務諸表の作成にあたり、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定

を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況1 連

結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。なお、新型コロ

ナウイルス感染症の感染拡大の影響に関する会計上の見積りに関しては、「第5 経理の状況1 連結財務諸表等

 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)(新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響に関する会計上の見

積り)」に記載しております。

 

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