文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営基本方針
当社グループは、ミッションとして「住まいを通して人を幸せにする世界を創る」を掲げており、このミッションを実現するために、家主様からお預かりした賃貸物件を介して、入居者様には快適な暮らしを、家主様には安定した賃貸経営を提供して、入居者様・家主様の満足度を高めることを追求しております。
また、事業活動における具体的な指針とするため、経営方針として、①お客様第一主義に徹する、②重点主義に徹する、③お客様の要望に合わせ、我社を創造する(造り変える)、④高能率・高賃金主義に徹する、以上の4項目を定めています。これらはそれぞれ、CS重視の経営、経営資源の重点的な投入、市場環境への適応、高い生産性と成果主義の人事処遇を企図したものであります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、継続的かつ安定的な収益の向上を目的とし、今後も賃貸住宅への旺盛な需要が見込まれる地域、具体的には世帯数の増加が見込まれる大都市圏及び人口の流動性の高い中核都市を中心に新規出店を進めてまいります。また、店舗数の増加を通じて、規模の利益による経営の効率化と関連事業の成長機会獲得に注力するとともに、新商品・新規事業による収益源の多様化にも取り組んでまいります。このような方針で事業を展開する上で、当社グループとしては、成長性として営業収益、収益性として営業利益・経常利益を重要な経営指標として考えております。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループはこれまで不動産賃貸仲介を事業の柱として成長を遂げてきました。その事業規模の拡大は、店舗数の増加をベースとして、周辺商品・周辺事業に収益の間口を広げながら、IT技術の活用と人材の質を競争力の礎とすることで実現してきたものでした。一方で、新型コロナウイルス感染症の広がりによる転居需要の減少に直面したときに営業収益の減少を補いきれずに減益になったことは、事業ポートフォリオの見直しの必要性を示唆するものでありました。
このような状況を踏まえ、今後の更なる発展のためには、事業領域の拡大及び競争力の強化等による成長の加速と、継続収入型サービスによる安定収益基盤の構築を含めた新たな事業ポートフォリオの構築が中長期的な経営戦略として重要であると認識し、「新成長戦略~3ヵ年目標値及び2030年3月期に向けた目標~」を策定して2021年12月24日に公表いたしました。新成長戦略においては、新たな成長のための戦略において以下の4項目を重点方針として定めるとともに、定量目標として、2025年3月期は連結営業収益167.0億円、連結営業利益11.9億円、想定ROE10.9%、2030年3月期は連結営業収益196.0億円、連結営業利益21.3億円、想定ROE12.3%を提示しております。
① 既存事業の競争力強化(不動産テック活用のその先のフェーズへ)
事業成長のためには、店舗の競争力の維持・強化は重要な要素となります。当社では、これまでも不動産テックと呼ばれるIT技術やAI(人工知能)を積極的に活用することで、反響・集客の強化とお客様の利便性の向上、社内の生産性の向上を推し進めてまいりました。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)時代においてはデータの蓄積と活用が継続的な顧客接点の確保とサービス提供における競争優位性の確保に極めて重要であると認識の下、基幹システムの刷新を進めて新たな時代に備えてきました。今後に向けては、賃貸不動産DXが一層進歩することを想定し、更なるIT技術の導入・活用によりDX時代の競争優位を確保することを目指します。また、DX時代には業界内外の過去の垣根が意味を失い、データで結びついた新たな顧客向けサービス・内部向けツールが従来の分断されたサービス等に置き換わる可能性を視野に入れ、業界内外の企業との協業を積極的に図りながら当社グループの競争力の向上を図り続けてまいります。
② 既存事業の店舗数増加による規模の拡大(新規出店・M&A)
不動産賃貸仲介においては店舗数の増加が事業規模拡大のベースになりますが、その構造が急速に変わることは当面はないものと予想しております。これまでは世帯数の増加が見込まれる大都市圏及び人口の流動性の高い中核都市に積極的に店舗展開してきましたが、出店機会の増加と地域需要変動の吸収余力を高めることを考慮し、地方都市も視野に入れた出店を推し進めてまいります。また、当業界では地域に優良な不動産会社が多く存在しており、成長施策の一環としてM&Aによる会社の取得も視野の一部に入れて、適宜、適切と考えられる取り組みを進めてまいります。
③ 事業領域拡大による収益構造の転換(新たな事業ポートフォリオの構築)
不動産賃貸仲介を起点とした従来の事業に加えて、データや資本財を通じたサービスや継続収入型サービスに事業領域を拡大し、安定収益基盤を含んだ新たな事業ポートフォリオの構築を目指してまいります。なお、事業領域の拡大においては、自前資源による取り組みに限定せず、異業種を含めた優れた経営資源を持つ他社との業務提携・資本提携も積極的に推し進めてまいります。
④ グループ経営を前進させるための内部体制の強化
当社は2019年4月にジューシィ出版株式会社(現ハウスコムテクノロジーズ株式会社)を子会社化して以降、エスケイビル建材株式会社、株式会社宅都を子会社化し、当社グループの拡大を進めてまいりました。グループ経営を進める上では、グループ全体の統制とグループ各社の活発な事業展開を両立することが重要であり、それらを実現するかたちで内部体制を強化することが必要であると認識しています。その担い手となる人材については多様な働き手・多様な働き方を受容して人的資源の厚みを増すことで充足を図り、グループ経営を前進させるための組織や仕組みの構築に注力してまいります。また、サービスの提供・消費においては顧客体験が重要性を持つ時代が到来しているとの時代認識の下、新たな顧客体験を創出できるように、従業員自らが体験の価値を感じ取り入れていくことを促進し、これからの時代にフィットした人材を涵養してまいります。
(4)経営環境
当社グループの現時点での事業の中心は不動産賃貸仲介業務であり、その主となる居住用物件の賃貸仲介の潜在的な需要規模は、地域における世帯数の動向や人口流出入の状態、持ち家と賃貸住宅に係る志向の状態に基づき、家族構成の変化、生活改善、転勤・転職、進学等による引っ越しニーズにより顕在化すると考えられています。また、経済情勢に伴う企業活動の活発さや雇用環境により、その顕在化の程度は影響を受ける傾向にあります。
競争環境においては、店舗網の規模や地域的な広がり等の出店戦略の巧拙だけでなく、インターネット上のサービスの拡充とスマートフォンの普及による部屋探しの仕方の変化が広まったことにより、不動産テックと呼ばれるIT技術を活用して部屋探しのお客様のニーズを満たすことが競争力の重要な要素になっています。また、そうした技術に基づくサービスに加えて、地元に根ざした地域情報を豊富に持ち、リアリティのある新生活のストーリーをお客様に提案する力も重要性を増しており、企業としての総合的な対応力が業績を左右し得る事業環境が続いております。
このような市場における需要環境、技術革新の動向と競争環境を考慮して、「(3)中長期的な会社の経営戦略」において中長期的な戦略の要所を示すとともに新たな成長のために必要な4項目を挙げております。そして、それぞれの項目について足元の外部環境・内部環境や各地域の状況に合わせて機敏に対応することが、経営において肝要であると認識しています。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、「(3)中長期的な会社の経営戦略」に示した新成長戦略の実現に向けて、重点方針4項目の取り組みを中心とした事業運営を進めております。そして、今後の発展に向けて事業を前進させていく上では、コンプライアンスやお客様満足度向上の追求等は揺るがせてはならない必要不可欠なものであると受け止めております。
このような状況認識に基づき、優先的に対処すべき課題は以下のとおりです。
① コンプライアンスの徹底
当社は、宅地建物取引業法に基づき、国土交通大臣免許(免許証番号:国土交通大臣(5)第6094号)を取得しており、当社が属する不動産賃貸仲介業界は、当該法規制等の下に事業展開しております。法令遵守は企業存続の基本であり、前提であることから、宅地建物取引業法のみならず、関係諸法令を遵守することは当然のことであるとの認識で事業活動しております。これは将来においても変わることのない方針であるため、全社的に更なる徹底が必要であると考えており、全従業員を対象としたEラーニングシステムを活用し、コンプライアンス意識の更なる醸成を進めてまいります。
② お客様満足度の向上
部屋探しのお客様の満足度を高めるためには、仲介斡旋可能な賃貸物件の品揃え(幅広く多数の物件をご紹介できること)と、当社スタッフが高い提案力と好感の持てる接客でお客様に向き合うことが重要であると考えられます。それらをより良くしていくために、物件についての仕入れ・空室情報の入手と、各種研修やOJT等を通じたサービス水準の向上に努めてまいります。
③ 人材育成の強化
優秀な人材を確保することができなければ事業の発展は困難であり、お客様満足度の向上も企業価値の向上も、いずれも実現は困難になります。そのため、事業活動の要となる人材の確保・育成強化に努めます。具体的には、入社時からはじまり各職種・各階層別に策定された各種研修プログラムに基づき、計画的に研修を実施し、知識の向上ではEラーニングシステムを活用し人材育成を強化しております。また、経験の幅を広げ蓄積を重ねていくため、店舗間の異動や本社-店舗間の異動を適切なタイミングで行うように努めてまいります。
④ IT技術の積極的な導入と活用の浸透(店舗競争力の強化)
店舗競争力の強化は事業戦略の重要方針の1つであり、そのなかでも、現在、不動産テックと呼ばれるIT技術を活用して部屋探しのお客様のニーズを満たすことが、競争力の重要な要素になっています。当社グループは、早くよりAI(人工知能)を活用した部屋探し支援サービスやマイボックス(個人別連絡用WEBサイト)、AIを活用したチャット機能などを導入してきました。また、最近の社会情勢下で求められるオンラインサービスにも対応済みです。こうした技術の活用は、単に仕組みの導入だけでなく運用における習熟が快適な利便性の鍵になり得るとともに、常により利便性の高いものが求められる可能性があります。これら技術の導入について常に見直しを進めスピーディーに習熟して高い品質の実運用を行えるようにするとともに、業務フローやバリューチェーンの変更と一体化させた不動産DXの実現を進めてまいります。
⑤ ESGへの取り組みの強化と関連開示の整備
当社グループは、企業が継続的に企業価値を高めるためにはESGの各分野における取り組みの強化は必要不可欠であり、リスクと機会を想定しながら、望ましい形での事業発展を遂げていくことが求められていると認識しています。優先順位をつけながらも社会的期待に応えてESGへの対応強化を図るとともに、当社グループの同分野での取り組み・進捗と将来の姿をご覧いただけるように開示体制を整えてまいります。
⑥ 新型コロナウイルス感染症がもたらす影響への対処
新型コロナウイルス感染症の影響はワクチン接種の普及や治療薬の登場により収束方向に向かい、ダメージを受けた社会経済活動はストップアンドゴーを繰り返しながらも全体として回復していくことが予想されています。その社会経済活動の回復プロセスにおいては、これまで大都市部において雇用が損なわれていた飲食業・宿泊業等の業界への従業者の回帰や一時的に抑制・先送りされていた引っ越し・転居需要の顕在化等により、経済活動の活性化にあわせて転居需要の水準が回復・成長することが期待されます。また、テレワーク等による新しい働き方・居住環境の選好が浸透することで、これまでにない新たな労働環境及び居住空間を求める需要が発生する可能性もあります。一方で、繰り返される感染の波の大きさと頻度は、回復本格化の時期やペースについて不確実性をもたらし得る要因になると考えられます。
不動産関連事業においては、地域ごとの事業環境の変化に合わせて転居需要を確実に獲得するための各種施策を機動的に運営してまいります。そして2021年12月24日に公表した新成長戦略で示したように、DX活用による既存事業分野の競争力強化、店舗数増加による規模の拡大、継続収入型サービスの強化等による収益源の多様化、そしてグループ経営を前進するための内部体制の強化を推し進めてまいります。また、連結子会社の株式会社宅都については、2022年3月期は、その主たる出店地域である大阪中心部においてコロナ禍のダメージが他地域よりも大きな形で続いたこと等により業績が悪化していましたが、今後については同地域の社会経済活動の回復とグループ内のノウハウの活用等により、業績の回復に取り組んでまいります。
施工関連事業においては、転居市場の回復に伴って増加が期待されるリフォーム需要の取り込みに注力するとともに、子会社のエスケイビル建材株式会社の技術力・施工管理能力を活用した受注拡大に取り組みます。
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