文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
当社は、社是として、経営の考え方の根幹であり社名の由来でもある『夢現』(夢を現実に)を掲げ、お客さまの夢を実現することで会社としても成長し、ステークホルダーを含めたすべての人の夢の実現を目指しております。
そのために、ミッションを、『不動産に新たな価値を創造し、すべての人の豊かな暮らしと夢に挑戦する』とし、事業活動を通して地球温暖化、少子高齢化、空き家問題や住宅ストックの老朽化等、不動産業界が抱える数々の社会課題の解決に取組み、持続的な企業価値の向上を目指しております。
また、ミッションの実現に向けた、行動の基軸として『速さを追求』『あくなき挑戦』『多様な連携』『先を見通す』『貫く責任』の5つのバリューを定めております。
[経営環境]
当社グループが属する不動産業界では、継続する低金利環境を背景に、不動産価格は安定的に上昇してきました。
居住用不動産に関しましては、テレワークの増加や定着に伴う、より広い物件への住み替えニーズの高まりに加え、首都圏新築マンションの供給が減少したことによるマンション価格の高騰が、比較的、低価格な中古マンションへの高い需要につながったこと、中古マンション事業者のリノベーション力が向上したことによりデザイン性・機能性に優れた新築マンションと遜色ない物件が供給されるなど、中古マンションの需要は年々高まっております。その結果、2016年以降、首都圏においては中古マンションの契約件数が新築マンションの契約件数を上回る状況が続いております。
投資用不動産に関しましては、インバウンド向け投資需要は依然として回復には至らないものの、低金利が続くなか、国内の不動産投資家の投資意欲は変わらず高い需要を維持してきました。
新型コロナウイルス感染症の影響は、緊急事態宣言が繰り返されるなど、収束の見えない状況が続いておりますが、海外でのロックダウンによる住宅設備の大幅な納期遅延、一方で、世界的な生産活動の回復に伴う原油価格の高騰、輸入木材の高騰などの影響を受け、内外装工事事業の工事遅延や材料価格の高騰など、予断を許さない状況が続いております。
[中期的な会社の経営戦略]
当社グループでは、2019年12月期から2021年12月期までの第1次中期経営計画を実行しました。この第1次中期経営計画では、これまで以上に多様なアセットタイプやサービスの提供を行うことで不動産投資家の裾野を拡大するため、「事業基盤を支える商品づくり」「収益基盤を支えるネットワークづくり」「経営基盤を支える人材・システムづくり」を経営方針の軸とし、財務戦略として自己資本比率を中心に財務健全性を強化し、手元資金の一定額の確保及びキャッシュ・フローを重視した経営を行うことを目指しました。
その結果、投資家向け融資の厳格化や感染症の拡大等、外部環境の変化もあり、当初の業績目標に対して大きく下回る結果となりました。一方で、新規事業の立ち上げや販売チャネルの拡大、財務健全性の向上における自己資本比率30%以上の確保など一定の成果が得られました。
この第1次中期経営計画の振り返り、及び将来の経営環境からバックキャストで考え、2022年12月期から3カ年の第2次中期経営計画を策定しました。
この3カ年では、「事業拡大に向けた収益基盤の強化」「収益機会を捉えるネットワークの構築」「事業成長を支える組織力の向上」「事業拡大・成長を支えるDXの推進」を経営の基本方針として掲げ、大きく飛躍することを目指してまいります。
具体的には、主力の買取再販事業は、引き続き高い需要が見込まれる居住用不動産に注力することで更なる拡大を図ります。2021年度に新たに首都圏に開設した5店舗の営業所を軌道に乗せるとともに、新たな営業所の開設も検討してまいります。
成長事業の一つである不動産開発事業は、これまで当社グループが長年培ってきたノウハウを活かしつつ、ESGやSDGsを意識した賃貸マンションやオフィスビルの開発を当社グループ間のシナジーを活かし拡大を図ります。もう一つの成長事業である不動産特定共同事業は、販売ネットワークの拡充をしつつ、組成商品の多様化、規模の拡大を図り大きく成長させてまいります。
これらの事業戦略を支える、経営基盤の強化として、人材の採用・拡充と育成、ガバナンスの強化、DXの推進、財務健全性の確保、株主還元の強化に加えて、新たに策定したサステナビリティ基本方針のもと、プライム市場上場企業に求められるサステナビリティ水準を充足してまいります。
当社グループは、財務の健全性を重視しており、連結自己資本比率30%以上を維持することを経営指標としております。当連結会計年度における経営指標の実績につきましては、連結自己資本比率が前連結会計年度末36.0%に対して、当連結会計年度末37.4%となりました。
また、2022年12月期を初年度とする3ヶ年の第2次中期経営計画では、初年度で連結売上高388億円、連結経常利益20億円、最終年度で連結売上高532億円、連結経常利益44億円を目指してまいります。第2次中期経営計画を完遂するべく、財務の健全性とともに、事業の成長性・効率性・健全性・株主還元も重要な経営指標と認識しております。
(2)に記載の経営環境を背景に、(1)及び(2)に記載の経営方針及び中期的な会社の経営戦略を実行する上で、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりであります。
2021年12月期における不動産業界は、新型コロナウイルス感染症の拡大により緊急事態宣言が繰り返されるなど、厳しい状況下にある中、持ち直しの動きが出てまいりました。
投資用不動産は金融緩和政策の継続により、引き続き需要は高水準で推移しており、居住用不動産は昨今のマンション価格の高騰により、首都圏においては中古マンションの需要が新築マンションの需要を上回る状況となっております。その結果、不動産価格は高止まりを続け、これまで以上に仕入れの判断が難しく、また競合環境も厳しくなっております。
当社グループでは、ITを活用した仕入判断力の強化やスピード化を図ることで、仲介会社からの情報を増やし、新規物件の仕入を進めてまいります。
新型コロナウイルス感染症の拡大、働き方の変化によるオフィスの在り方、資材の高騰や供給遅延など、2022年12月期も不動産市況は不透明な状況が続くと想定しております。そのような環境において、在庫回転率を高め、不動産の保有期間を短期化することが必要であると考えております。
当社グループでは、これまで以上に稼働率改善のスピードを早め、内外装工事の短期化を図ることで早期の商品化に取り組んでおります。また、仲介会社向けの物件紹介サイトの機能の充実化や、不動産テックを利用した販売活動の効率化・顧客の購入意欲の向上を図る等、投資家・エンドユーザーに対して情報を提供する環境を整備していくことで、早期の販売を行ってまいります。
ここ数年の不動産価格の高止まりにより収益機会を得られる物件の取得が難しくなっております。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響による資材の高騰と供給遅延、建築業界の需要増に起因する労務費の高騰により、工事原価が膨れ上がる傾向にあります。
当社グループでは、常に調達先の拡充を行うことで調達コストの適正化を図り、また業務オペレーション見直しによる労務費単価の低減や工期短縮に努め、売上総利益率の維持に取り組んでまいります。
2020年4月に消費税法等の一部が改正され、2020年10月1日以後に行われる居住用賃貸建物の課税仕入れ等の税額については、仕入税額控除の対象としないことと改正されました。これにより、施行日以降に仕入れを行った居住用賃貸建物に関しましては、原則、その仕入税額を全額租税公課に計上することになります。
当社グループでは、仕入控除税額の対象となる仕入年度を含む第3年度の期間中に販売できるよう在庫期間の短縮を図り、在庫回転率の向上に努めてまいります。
当社グループは、主力の不動産売買事業の連結売上高が全体の90%程度、セグメント利益の80%以上を占めており、将来的な不動産市況の変化に備えるための安定収益の確保が課題となっております。
そのため、長期・安定的な収益確保の機会として、優良資産の獲得と管理戸数の増加に取り組んでおります。優良資産獲得に関しましては、各年度のキャッシュ・フローや手元資金の水準を考慮し取得を決定しております。管理戸数の増加に関しましては、当社保有不動産の売却時にアセットオーナーからの受託を得られるよう営業部門と連携し、契約獲得に取り組んでおります。
当社グループは、主力事業である不動産買取再販事業へこれまで以上に積極的な投資を行うとともに、外部環境の変化を踏まえた成長分野への新規参入を慎重且つ積極的に行うことにより、バランスの取れた事業ポートフォリオを構築することを目指しています。
足許では、成長事業である不動産開発事業・不動産特定共同事業の収益を拡大させて、新たな事業の柱として構築することを目指してまいります。開発事業は立地の選定や品質の向上だけではなく、ESG・SDGsを意識したプランニングを行い、付加価値の高い商品開発に取り組んでまいります。不動産特定共同事業は、組成商品・組成スキームの多様化や出口戦略の拡充、販売ネットワークの拡大を図り、年間組成数の増加、組成枠の拡大に取り組んでまいります。
新規事業に関しましては、全てを内製化し単独で事業推進するよりも事業化や収益化までの期間を考慮し、他社との業務提携やM&Aなどの戦略的投資も活用し推進してまいります。
当社グループは、持続的な成長を達成するためには、優秀な人材を継続的に確保・育成し、組織力を強化することが重要であると認識しております。採用面では新卒及び中途両面の採用強化に取り組むとともに、個人の多様性を尊重し登用することで、組織の生産性や企業競争力の強化を図ります。育成面では、社内外の教育研修プログラムの充実による人材の育成、OJT等を活用しマネジメントに長けた中核人材の育成・拡充、能力に応じた人事制度の確立、専門スキル取得の推奨、会社の価値観の共有等を通じて、人的資産及び組織力の向上に努めてまいります。
当社グループは、企業価値の最大化を図るためには、経営の透明性と健全性の確保及び環境の変化に迅速・適切に対応することが重要であると認識しております。コーポレート・ガバナンスはその重要な経営課題の一つと位置付けており、業務執行責任者に対する監督・牽制の強化、情報開示による透明性の確保、業務執行の管理体制の整備を推進して、ガバナンス機能の強化を図ってまいります。
2021年11月には、取締役会の監督機能の強化を図るとともに、経営の意思決定の迅速化及び機動的な業務執行の実現を推進することを目的に執行役員制度の導入を決議しました。また、取締役及び執行役員の指名・報酬に係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任の強化を図り、コーポレート・ガバナンス体制をより一層充実させることを目的に指名・報酬委員会を設置しております。
また、当社グループは2021年10月にプライム市場を選択・申請しておりますが、業績の向上・IR活動の強化・株主への利益還元強化とともに、コーポレート・ガバナンスの強化を図ることで上場維持基準の安定的な充足を目指してまいります。
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