課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において、当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針・経営戦略等

 当社は「味覚とサービスを通して都会生活に安全で楽しい食の場を提供する」という経営理念のもと、「あったら楽しい」「手の届く贅沢」を営業コンセプトとしております。「東京圏ベストロケーション」「女性ターゲット」「ライトフード・自社生産」という戦略に基づき、すべて直営店での店舗展開をしながら営業活動を行っており、生産カンパニーにおきましては3つの工場で製造するパスタソース・ドレッシング・珈琲豆・焼き菓子・生食パンなどの自社製品の店舗外販売も行っております。

 

(2)経営環境及び対処すべき課題等

外食業界は新型コロナウイルス感染症拡大による影響から回復期にありますが、リモートワークの導入や大人数での会食自粛、外国人観光客への渡航制限等により、都心部および夜間の人流回復は鈍く、コロナ前の完全回復は未だ見込まれない状況です。

一方、コロナ禍における長期の行動制限によって消費者の生活様式は変化し、「職住近接(郊外シフト)」や家庭中心の時間を楽しむ「おうち時間」等のライフスタイルが定着し、自宅で外食の味を楽しむ、家庭調理の負担を下げる食物販やデリバリー需要はコロナ回復後も落ち込みを見せておりません。

ロシアによるウクライナ侵攻、中国のゼロコロナ政策(ロックダウン)による「モノ不足」に、急速な円安の進行が重なり、資材・原材料の高騰と食材確保への対応は喫緊の課題です。

消費者においては、生活費の上昇による実質賃金の低下によって将来不安が高まり、コロナ回復後も生活防衛への志向は変わらず、個人消費は停滞が見込まれます。

このような環境下、当社においては「椿屋珈琲」を主軸とした高級喫茶業態のブランド認知の強化に努め、価格に見合ったQSCの基準向上、サービスの充実、メニューの商品力アップを通じて、お客様の「体験価値」を高め、生産性を向上させてまいります。また自社生産工場(セントラルキッチン)の経営資源を活用し、効率化を進める設備投資を行っていくほか、メニュー施策による内製化率の向上から食材高騰リスクを低減するほか、消費者の新たなライフスタイルに対応する新規の業態開発を推進します。また生産性およびサービスレベル向上を実現する機械化・DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進、職住近接を背景とした臨都心への出店・リロケーション、ライフスタイルの変化によって機会となる食物販事業の拡大を「成長投資」と位置づけ、変化に迅速に対応してまいります。

 

①食材高騰リスクへの対応(体験価値の向上・マージンミックス)

今夏より食材高騰リスクが急速に高まることから、購買・メニュー開発部署に権限移譲し、仕入れルートの多様化やレシピ改定を迅速かつ柔軟に実施できる体制を構築しています。また仕入れ価格の上昇が長期化するおそれのある食材においては、段階的に一部メニューの価格改定(値上げ)を見込んでいます。値上げ(物価上昇)による顧客の離反リスクを低減させるため、当社では、“ 物価(物の価値)=価格÷お客様の体験価値 ”ととらえ、コンセプトである「あったら楽しい・手の届く贅沢」「ゆとりとくつろぎの60分」に基づく、高付加価値メニューの開発と高品質のサービス提供を通じて、お客様の体験価値を向上させてまいります。

 

喫茶業態においては、自社ケーキ工房(コンフェクショナリー)や店舗のケーキスタジオで生産されるケーキを「戦略的商品」と位置づけ、前期ではメディアにも紹介され10万個の販売実績を得た「シャインマスカットのズコット」を好事例に、価格転嫁にも耐えうる高付加価値メニューの開発に努めてまいります。またドリンクとのセットメニューの強化により、食材原価率の高騰を抑制します。椿屋珈琲、ダッキーダック(一部店舗を除く)では、一律であったケーキセットの価格を3つの価格帯に分類し、お得感のある「シフォンセット」を軸としたマージンミックスにより、粗利益の改善を図ることができました。期間限定で販売する「シングルオリジンコーヒー(単一農家生産の希少豆)」の継続展開も好評をいただき、ドリンクの受注率が向上しています。

レストラン業態でもワインやお酒に合うメニュー展開とセットメニューの施策により、マージンミックスの改善に努めてまいります。イタリアンダイニング・ドナにおいては、自社製造の生パスタ(ソース)を中心に製造・物流過程における効率化を図り、仕入れコストの上昇を吸収するほか、メニュー改定により、自社製加工食材の構成比を高めるなどして、食材高騰リスクの総合的な対応にあたります。

 

②業態開発・リロケーション

在宅勤務やテレワークを背景とした「職住近接」の流れから、都心部への集中出店は避け、都心から30~40分圏内の「臨都心(商業+住居エリア)」への出店比率を高めます。前期オープンした「銀座和館 椿屋珈琲 たまプラーザ店」では、郊外シフトの流れから人流はコロナ前比較で微増が見られており、出店直後から安定的な収益化が図られています。周辺人口の世帯収入や商業規模と居住人口とのバランス、世代別前面通行量等をモデル化し、臨都心エリアへの出店を加速させ、リロケーションを推進します。

 またインターネット販売のさらなる普及により、商業施設の収益構造は不動産収益への依存度を高め、更新のない定期借家賃貸借契約による収益店の退店はリスクです。こうした対応として、前期は「みなとみらいコレットマーレ 椿屋カフェ」を改装し、和の美、抹茶をテーマとした「茶寮 SIKI ~TSUBAKIYA~」を新業態として開発し、デベロッパーとの契約更新につなげることができました。今後も商業施設のニーズには柔軟に対応し、退店リスクを低減させてまいります。

 

③食物販事業の拡充

当社は前期中に、政府がコロナによって影響を受けた企業の新たな事業分野への展開を支援する「事業再構築補助金」の採択を受けることができました。対象となる「食物販事業」の拡充はポストコロナにおける重点課題として経営資源を注いでまいります。コロナ前まで売上比1%に満たなかったテイクアウトを含む物販売上は直近の四半期では13%まで比率が上昇しており、イートイン売上の回復後も比率を維持しています。主力となる自社製ケーキの販売を中心に駅構内や商業施設の食物販フロアで展開する催事販売が好調に推移しており、自社工場(戸塚カミサリー)で生産する「冷凍食品」も安定した販売実績を重ねています。前期発売したレトルトカレー、ハヤシソースはイートイン店舗のレジ横商品としても定着し、累計販売数は15万個を超えました。

課題は食物販の「販路の拡充」です。引き続き、既存店と自社ECサイトによる販売強化と、物販専門店の出店・収益モデル化を進めます。今期は「リアルとネットの融合」をテーマに、実店舗とECサイトの連携を目的とした「全店共通ポイントアプリ」の開発に着手します。当社店舗の利用時に付与されるポイントはECを含む全業態店舗で利用が可能となるポイントサービスを今期中に展開いたします。

また生産においては、イートイン売上の回復によって工場稼働がひっ迫しないよう、事業再構築補助金を活用した生産設備の増強を行い、生産力の維持向上を図ります。引き続き、同業他社への一次加工食材の製造販売にも注力するとともに、スーパー、ネットスーパー等への販路開拓を推進し、中期的には食物販事業を第2の収益の柱となるよう育成を継続してまいります。

 

 

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得