以下の記載事項のうち将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当連結会計年度末現在において判断したものです。なお、「(6) コンプライアンス・品質保証体制強化への取り組み」は、有価証券報告書提出日現在において判断したものです。
当社は企業理念の具現化において、社会の中で、お客様、社員、株主など数多くのステークホルダーによって支えられていることを認識し、それぞれに対して責任を果たし、広く社会に貢献していきます。
人口増加、高齢化、気候変動、水不足、資源の枯渇など世界が直面する「発展」と「持続可能性」の両立をめぐる地球規模の課題に対し、革新技術・先端材料の提供によって、本質的なソリューションを提供していくことが東レグループの使命と考えます。「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」は、「2050年に向け東レグループが目指す世界」、その実現に向けた「東レグループが取り組む4つの課題」及び「2030年度に向けた数値目標(KPI)」を定めております。
* 1.地球環境問題や資源・エネルギー問題の解決に貢献する事業
2.医療の充実と健康長寿、公衆衛生の普及促進、人の安全に貢献する事業
東レグループの長期戦略は、「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」に示す「2050年に向け東レグループが目指す世界」の実現に向けて、そのマイルストーンとしての「2030年度に向けた数値目標」の達成を目指します。今後の事業環境は、人口分布・環境問題・技術イノベーションなどで大きな変化が想定され、産業構造や社会システムの変化により事業機会が創出される一方で、これまで存在した事業が縮小するリスクもあります。私たちは産業の潮流の変化を的確に捉えて、「ビジネスモデルの変革」を進めながら「持続的かつ健全な成長」を実現することを目標としております。
中期経営課題“プロジェクト AP-G 2022”では、“TORAY VISION 2030”に示す「持続的かつ健全な成長」の実現に向け、「積極的な投資による事業拡大」という基本戦略を維持しつつ、成長戦略を可能にする事業構造改革や財務構造強化を両輪で推進することで、東レグループ全体で中長期に創出する価値を最大化していきます。
“プロジェクト AP-G 2022”では、「成長分野でのグローバルな拡大」「競争力強化」「経営基盤強化」を基本戦略として掲げ、地球環境問題や資源・エネルギー問題の解決に貢献するグリーンイノベーション(GR)事業及び医療の充実と健康長寿、公衆衛生の普及促進、人の安全に貢献するライフイノベーション(LI)事業の拡大に取り組んでおります。また、財務健全性を確保するために、従来よりも利益、キャッシュ・フロー、資産効率性のバランスに配慮した事業運営を行うほか、新たな成長軌道を描くために、低成長・低収益事業の事業構造改革を推進しております。
これらの基本戦略とともに、新事業の創出、デジタル活用による経営の高度化などに取り組み、「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」で示す「2050年に向け東レグループが目指す世界」の実現を目指します。
なお、“プロジェクト AP-G 2022”の財務目標及びサステナビリティ目標については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (4) 経営上の目標の達成状況」に記載しております。
2020年5月に“プロジェクト AP-G 2022”を策定した後、新型コロナウイルスによる事業活動の停滞から世界経済は一旦後退、移動制限による人々の行動や働き方の変容、経済のブロック化や供給制約により、不連続な事業環境変化が起きました。回復過程においても変異株の出現や感染の再拡大、更には2022年に入ってウクライナ情勢が緊迫化し、インフレ懸念もある中、今後も不確実性の高い状況は継続する見通しです。
一方で地球環境問題をめぐる動きは加速化しました。気候変動やエネルギー・水資源問題、新興国の人口増加や人権など、世界が直面している大きな課題に変わりはなく、それらの課題に、素材メーカーとして取り組んでいくという当社の姿勢は基本的に変わりません。“TORAY VISION 2030”で目指す「持続的かつ健全な成長」の実現に向けた事業方針の下、“プロジェクト AP-G 2022”で定めた基本戦略を推進します。
中長期的には、新型コロナウイルスが収束した後の事業環境変化を想定したうえで、サプライチェーンを始めとする様々な抜本的変化へ対応することが重要な課題と考えておりますが、これらの影響はセグメントごとに異なるため、一時的な環境変化によるものかどうかを見極めたうえで経営基盤強化に努めます。
当社グループは「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」において、2050年に温室効果ガス(GHG)の排出と吸収のバランスのとれた世界などを目指すことを掲げており、地球環境問題や資源・エネルギー問題の解決を通じて社会に貢献することを目指しております。
カーボンニュートラルの実現に向けては、再生可能エネルギー、電動化、水素・燃料電池関連の素材等、従来から取り組んでいるGR事業の拡大のほか、水の電気分解によるグリーン水素の製造及び産業・運輸用途での活用、二酸化炭素(CO2)利活用に貢献する製品の開発を進め、社会全体のGHG排出量の削減に貢献します。また、GR事業の拡大を通じて還元される持続可能なエネルギー・原料と、革新プロセス及びCO2を利活用する技術の開発・導入により、東レグループのGHG排出量削減を進めます。
循環型社会の実現に向けては、プラスチック製品のリサイクル・バイオ化等のカーボンリサイクル技術のほか、製造工程で発生した水の再利用等、様々な技術を創出することで、循環型社会の実現を目指します。
新規事業創出・拡大を目指す「FTプロジェクト(Future TORAY-2020sプロジェクト)」においては、次の成長ステージを担う大型テーマにリソースを重点的に投入しており、水素・燃料電池関連材料、バイオマス活用製品・プロセス技術、環境対応印刷ソリューションなどのテーマのほか、CO2やバイオガス、水素などを分離するためのガス分離膜の構造を支える支持層に利用可能な多孔質炭素繊維の用途開発などを進めていきます。
当社は、安全・防災・環境保全、倫理・コンプライアンスをはじめとしたCSR (Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)を重要な経営課題と認識し、中期経営課題と期間を同じくする3か年のCSR推進計画として、具体的な取り組みやKPIを定めた「CSRロードマップ 2022」を策定し、推進しております。また、2017年の、当社の子会社である東レハイブリッドコード㈱での品質保証検査データ書換問題を受けて、当社は、東レグループ全体の品質保証体制の整備推進と実効性を監督する品質保証本部を設立するとともにコンプライアンス意識の強化に取り組んできました。
こうした中、東レグループ全体で毎年実施している品質不正に関するアンケート「一斉調査」によって、米国の第三者安全科学機関であるUL LLC (以下「UL」という。)の認証登録における当社の不適正行為が判明、2022年1月31日に公表するとともに同日付で有識者調査委員会を設置し、徹底的な調査と原因究明を行い、4月8日に調査の結果判明した事実関係及び再発防止策などを記載した調査報告書を受領しました。
同報告書においては、不適正行為が長年にわたって継続されたこととその原因分析を指摘されたうえで、再発防止策の提言を受けました。当社はこの事態を重く受け止め、再発防止策の方針を固めて具体的施策に着手しており、再発防止を経営陣の責任の下、役員・従業員が一丸となって徹底的に遂行し、信頼を回復し、あるべき東レの姿をお示しできるよう努力してまいります。施策の進捗状況については取締役会、監査役が定期的に報告を受けてガバナンス機能を発揮します。製品の安全性に関しても、お客様の製品において東レ製品を起因として大きな問題が生じていないかの確認を今後も加速して進めます。また、UL以外の認証についても別途検証を行っており、問題があれば適切な対応を行います。
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