当連結会計年度(2021年5月16日~2022年5月15日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、北海道を含む全国各地で緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置が断続的に発出され、社会経済活動が制限されるなど、厳しい状況が続きました。また、社会経済活動の正常化に向けた動きはあるものの、感染再拡大の懸念、ウクライナ情勢の緊迫、原油価格や原材料価格の上昇が個人消費に与える影響など、依然として先行き不透明な状況が続いております。
当社グループが主に事業を行うドラッグストア業界においては、新型コロナウイルス感染症の影響により、マスクなど衛生関連用品の需要は引き続き堅調に推移したものの、前年同期に急増した買い溜め需要の反動減の影響を受けました。また、非接触志向の高まりなどにより、キャッシュレス決済の利用が増加するなど、消費者のデジタルシフトは引き続き進んでおります。上記に加えて、リモートワークの普及といったライフスタイルの変化に伴う化粧品需要の減少や感染予防策の定着に伴う感冒薬需要の減少、インバウンド需要の消失、業界の垣根を越えた競争の激化や業界再編の動きなど、経営環境は大きく変化しております。
このような状況のもと、当社グループは地域社会のインフラとして、地域における商品供給の役割を果たすべく、新型コロナワクチンの職域接種を実施するなど、感染予防策や衛生管理の徹底に取り組みながら店舗の営業を継続いたしました。なお、北海道内の一部地域に対しワクチン接種支援のために薬剤師を派遣することなどにも取り組んでおります。このほか、2021年12月17日には、当社の事業価値を向上させ、持続的な成長と中長期的な企業価値向上の実現において必須であるとの考えから、株式会社東京証券取引所の新市場区分においてプライム市場を選択するとともに、新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書を提出しております。
当社グループは、2026年5月期を最終年度とする中期経営計画において「地域の生活総合グループへの進化」をテーマに、店舗の生活総合化戦略、地域プラットフォーム戦略、コラボレーション戦略の3つの成長戦略と、組織戦略に取り組んでおります。
店舗の生活総合化戦略としては、商品カテゴリーの拡大に向けたラインロビングの一環として、生鮮食品の取り扱い店舗の拡大に取り組むほか、管理栄養士による店頭での栄養相談会の継続的な開催など、生活サービスの提供にも総合的に取り組むことにより、地域住民から支持される店舗づくりに取り組んでおります。
地域プラットフォーム戦略としては、2021年8月に北海道共通ポイントカード「EZOCA」会員数が200万人を突破し、提携店も164社、747店舗にまで拡大するなど、EZOCA経済圏は成長を続けております。また、江差町との包括連携協定に基づく取り組みの一環として運用を開始した「江差EZOCA」には、買い物金額の一部を町に還元する仕組みが導入されており、地域経済の活性化に寄与することを目指しております。同町においては、公共交通の維持・確保を目指したMaaSの実証実験にも取り組んでおり、江差EZOCAから取得したデータなどを活用することで、持続可能なサービスとして確立することを目指しております。
コラボレーション戦略としては、生活協同組合コープさっぽろとの包括業務提携の一環として、2021年5月にコープさっぽろ店舗事業の日用品部門とフランチャイズ加盟店契約を締結いたしました。これにより、お客さま及び組合員をはじめとする道民の皆さまに、より支持される商品展開をしていくことで利便性向上に繋げてまいります。また、新たに函館市、大樹町、及び学校法人札幌大学等と各種協定を締結し、地域の活性化及び住民サービスの向上や社会的課題の解決などに資することを目指しております。
組織戦略としては、D&I委員会を設置し、多様な人材が活躍できる環境整備を進めるとともに、CHO(Chief Health Officer)の設置や、サツドラグループ健康経営宣言の制定など、健康経営の推進にも積極的に取り組んでおります。また、当社グループの持続可能な事業運営や社会づくりに向け、重要課題(マテリアリティ)の特定を行い、経営戦略を進めるうえでの基盤として位置づけております。
以上の結果、売上高は829億5百万円(前年同期比 0.4%減、3億35百万円減)、営業利益は7億47百万円(同 16.7%増、1億6百万円増)、経常利益は7億93百万円(同 30.5%増、1億85百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は3億16百万円(同 44.9%減、2億57百万円減)となりました。
なお、当連結会計年度の期首から「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載しております。
セグメント業績などの概要は、次のとおりであります。
<リテール事業>
主に北海道内でのドミナント化を目指したドラッグストアフォーマット店舗と調剤薬局店舗のチェーン展開に加え、訪日外国人が多く訪れる観光地などでのインバウンドフォーマット店舗の運営を行っております。営業面では、エブリデー・セイム・ロープライス(ESLP)を中心とする低価格戦略を推進することで、お客さまから支持される店舗づくりや、作業平準化による業務効率の改善を目指すとともに、生鮮食品を含めたラインロビングの強化により、商品カテゴリーの拡大を図っております。また、エリア本部制による意思決定の質・スピードの向上や公式アプリを活用したデジタルマーケティングの推進にも取り組んでおります。調剤薬局においては、門前薬局の運営に加え、ドラッグストアフォーマット店舗での併設調剤も行っております。このほか、フィットネス事業や管理栄養士による特定保健指導といった生活サービスの提供にも取り組んでおります。
株式会社サッポロドラッグストアーにおいては、お客さまのご愛顧ならびに関係者のご支援もあり、1号店オープンから創業50年目の節目を迎えることが出来ました。この先の50年においても地域のくらしに寄り添うことで、皆さまに最も身近で愛される企業となるよう努めるとともに、50周年を記念したフェアを企画、実施しております。
当連結会計年度は、前年同期に発生した衛生関連用品の特需が落ち着くなか、ワンストップショッピングニーズの高まりなどを受け、お客さまの来店頻度の減少に伴い客数は減少したものの、買上点数の増加などにより客単価が上昇したことに加えて、店舗数が純増した結果、ドラッグストアフォーマットの売上高は、収益認識基準適用の影響を除外した実質ベースで前年同期を上回りました。インバウンドフォーマットにつきましては、訪日外客数が低調に推移したことにより、引き続き売上高は僅かなものとなりました。調剤薬局につきましては、コロナ禍における医療機関の受診抑制に緩和の傾向がみられるなか、前期に開設した併設調剤店舗の増収効果もあり、売上高は前年同期を上回りました。
店舗の出退店の状況につきましては、下表の通りとなりました。
(出店状況)
以上の結果、リテール事業の売上高は820億51百万円(前年同期比 0.9%減、7億9百万円減)、セグメント利益は6億59百万円(同 11.7%増、68百万円増)となりました。
<ITソリューション事業>
当社グループ向けに開発した技術をもとに、ユーザー目線での課題解決を目指したPOSアプリケーションなどの販売を行っております。
ITソリューション事業の売上高は1億57百万円(前年同期比 47.9%増、50百万円増)、セグメント利益は34百万円(同 78.5%増、15百万円増)となりました。
<その他事業>
北海道共通ポイントカード「EZOCA」を活用した地域マーケティング事業や決済サービス事業、小中学生向けのプログラミングスクールの運営、小売と地域をテーマに課題解決を目指す国内外の法人向け情報提供サービスなどを行っております。当社グループの強みである北海道共通ポイントカード「EZOCA」の会員数は、2022年4月末現在、200万人を超えております。決済サービス事業においては、インバウンド需要の消失を受け、海外向けキャッシュレス決済が低調に推移した一方、感染予防の観点から非接触型決済への需要が高まるなか、国内キャッシュレス決済は堅調に推移いたしました。
その他事業の売上高は10億69百万円(前年同期比 43.8%増、3億25百万円増)、セグメント利益は6百万円(前年同期はセグメント損失22百万円、28百万円増)となりました。
(仕入及び販売の状況)
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引については相殺消去しております。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.リテール事業における分類別売上高は次のとおりであります。
(注)当連結会計年度の期首より、「収益認識に関する会計基準」等を適用し、顧客に付与するポイント相当額については、純額で収益を認識しております。この純額により減少する売上高については、「その他」より控除しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表作成に際し、経営者は決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える様々な要因・仮定に対し、過去の実績等を勘案し合理的に判断して見積りを行っております。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があり、個々の「重要な会計方針及び見積り」については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
イ.繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産の計上にあたっては、回収可能性を考慮して、繰延税金資産総額から評価性引当額を減額しております。繰延税金資産の回収可能性については、当社グループの業績の推移などから将来の課税所得を合理的に見積り判断しておりますが、今後、課税所得の予測に影響を与える変化が生じた場合には、繰延税金資産の回収可能性が変動する可能性があります。
ロ.固定資産の減損処理
当社グループは、重要な店舗資産を有しており、店舗の収益性が低下するなど、固定資産の回収可能価額が帳簿価額を下回った場合に減損処理を行っております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。
ハ.棚卸資産の評価
当社グループは、棚卸資産の評価について、売価還元法による在庫原価計上金額が正味売却価額を上回る場合には、正味売却価額までの簿価の切り下げを実施しております。将来の不確実な経済条件の変動などによって影響を受ける可能性があり、実際の販売実績が見積りと異なった場合、帳簿価額の切り下げに伴い、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
イ.財政状態
当連結会計年度末における流動資産は200億69百万円となり、前連結会計年度末に比べ18億2百万円増加いたしました。これは主に売掛金が3億17百万円、商品が3億63百万円、未収入金が7億30百万円増加したことによるものであります。固定資産は213億29百万円となり、前連結会計年度末に比べ12億99百万円増加いたしました。これは主に有形固定資産が7億81百万円、敷金及び保証金が2億63百万円増加したことによるものであります。
この結果、総資産は413億98百万円となり、前連結会計年度末に比べ30億99百万円増加いたしました。
当連結会計年度末における流動負債は183億66百万円となり、前連結会計年度末に比べ17億48百万円増加いたしました。これは主に買掛金が6億99百万円、1年内返済予定の長期借入金が6億38百万円、未払金が8億49百万円増加したことによるものであります。固定負債は141億43百万円となり、前連結会計年度末に比べ11億34百万円増加いたしました。これは主に長期借入金が5億85百万円増加したことによるものであります。
この結果、負債合計は325億10百万円となり、前連結会計年度末に比べ28億82百万円増加いたしました。
当連結会計年度末における純資産合計は88億88百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億16百万円増加いたしま した。これは主に、利益剰余金が剰余金の配当により1億28百万円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益により3億16百万円増加したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は21.2%(前連結会計年度末は22.5%)となりました。
ロ.経営成績
経営成績の分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
ハ.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
ニ.資本の財源及び資金の流動性
a.キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は、29億57百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は12億82百万円(前年同期は33億72百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益4億31百万円、減価償却費12億3百万円、仕入債務の増加額6億99百万円などの増加要因と、売上債権の増加3億17百万円、棚卸資産の増加3億35百万円などの減少要因によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は22億35百万円(前年同期は12億1百万円の獲得)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が18億84百万円、敷金及び保証金の差入による支出が5億14百万円などによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により獲得した資金は12億72百万円(前年同期は33億94百万円の支出)となりました。これは主に、短期借入金の純増加額2億円、長期借入れによる収入16億円、長期借入金の返済による支出3億75百万円、配当金の支払1億28百万円などによるものであります。
b.資金需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、店舗で販売するための商品の仕入、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、投資を目的とした資金需要は、主に自社店舗の建設費用及び店舗賃貸借契約に基づく差入保証金、敷金などであります。
c.資金の流動性
運転資金につきましては、自己資金を基本としており、設備投資資金につきましては、銀行借入によっております。
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