なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当事業年度の期首から適用し、当事業年度に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっています。
当事業年度の経営成績は、次の表のとおりです。
当社は、「夢に手足を。」つけて、歩き出させる会社であることを目指し、「やさしく、つよく、おもしろく。」を行動指針として、人びとが集う「場」をつくり、「いい時間」を提供するコンテンツを企画、編集、制作、販売する会社です。コンテンツとはクリエイティブの集積であり、読みもの、キャラクター、画像、動画、音声、イベント、モノのかたちの商品、全てがコンテンツであるととらえています。具体的には、ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」、渋谷PARCOで様々な「表現」を提供する場である「ほぼ日曜日」、ギャラリーショップの「TOBICHI」、様々なアーティストやブランドとつくるイベント「生活のたのしみ展」、人に会い、話を聞くことから、誰もがたのしく学べる場である「ほぼ日の學校」、犬と猫と人間をつなぐ写真SNSアプリ「ドコノコ」といった、人びとが集う他にはない「場」をつくり、商品やイベントなどのコンテンツを販売する事業を営んでいます。
当事業年度における当社をとりまく事業環境として、EC市場規模の拡大があげられます。経済産業省の調査によると、2021年の日本国内のBtoC-EC市場規模は、20.7兆円(前年比7.35%増)と拡大し、内訳として物販系分野で前年比8.61%と伸長しています。これは新型コロナウイルス感染症拡大に伴う巣ごもり消費から始まり、消費者の間で徐々にECの利用が定着しつつある中、物販系分野の市場規模の更なる拡大につながりました。また、越境EC購入額は日本・米国・中国の3か国間における市場規模がいずれの国でも増加しており、中でも米国は伸び率が19.30%と増加しています。
こうした環境のもと、主力商品の『ほぼ日手帳』は海外において直販・卸ともに好調に推移しました。『ほぼ日手帳』における海外売上高は前期比22.3%増(直販売上前期比21.3%増、卸売上前期比28.5%増)となり、その海外売上高構成比率は46.0%(前期比4.8pt増)と上昇しました。今後も、海外ユーザーの認知をより拡大させるため、海外向けのコンテンツの充実、英語版商品のラインナップ拡充などを行っていきます。また、『ひきだしポーチ』や「第31回 日本文具大賞2022」の機能部門優秀賞及び世界三大デザイン賞の一つ「Red Dot Design Award 2022」のプロダクトデザイン部門を受賞した『ほぼ日ノオト』をはじめとした手帳関連グッズも増加となりました。結果として、『ほぼ日手帳』全体の売上高は前期比9.5%増となりました。
手帳以外の商品については、スタイリストである伊藤まさこさんとコラボレーションしたブランド「weeksdays」や、当事業年度より販売を開始した寝具を扱うブランド「ねむれないくまのために」が好調に推移しました。また、4月29日から6日間に渡り、新宿で開催した「生活のたのしみ展」は、過去最大の販売金額となりました。一方で、収益認識会計基準の適用により、「生活のたのしみ展」の販売金額の一部が純額で表示されていることに加え、「HOBONICHI MOTHER PROJECT」やファッションの売上が減少した結果、前期比4.3%減となりました。
これらの結果、売上高は5,907,938千円(前期比4.8%増)となりました。
売上原価については、売上原価率 44.4%(前期比0.8pt減)と前年とほぼ同水準となりました。販売費及び一般管理費については、前期発生していた本社及び店舗等の移転新設に係る一時的な費用が当期は減少した一方で、直営販路での海外売上が増加したことに伴う販売・物流費用の増加、新型コロナウイルス感染症の影響による国際物流のコスト増加、また「生活のたのしみ展」の開催費用も発生したため、全体では前期に比べ増加しました。
その結果、当事業年度の営業利益は275,287千円(前期比76.7%増)、経常利益は290,745千円(前期比70.3%増)、当期純利益は205,708千円(前期比4.4%増)となりました。
その他の事業活動としては、2021年6月にリリースした動画サービス「ほぼ日の學校」(アプリ及びWEBで提供)では、「人に会おう、話を聞こう。」をコンセプトに、これまでの教育や制度の枠組みにとらわれない新しい学びの「場」をつくることを目指し、有名無名問わず様々なジャンルの講師による授業を配信しています。俳優のイッセー尾形さん、経済記者の高井浩章さんの授業や、ミュージシャンの矢野顕子さんとシンガー&ソング・ライターの大貫妙子さんの対談式授業など、2022年8月末までに200本以上の動画を公開し、新たに「ほぼ日の學校」をたくさんの方々に知っていただく機会となりました。また、全日本空輸株式会社(以下ANA)と業務提携し、「空で学ぶ!」をテーマに、2022年1月1日より国際線、2月1日より国内線の機内エンターテイメント内でANAのお客様への動画コンテンツを提供開始しました。ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」では書籍化もされた「編集とは何か。」や、學校派生コンテンツの中田敦彦さん対談「人生は後半のほうが長いんだから。」が多くの方に読まれました。
渋谷PARCO「ほぼ日曜日」では、2月中旬から3月後半まで「大嘘博物館カプセルトイ2億年の歴史」を開催しました。映像作家の藤井亮さんによってプロデュースされた全てが“嘘”の展覧会は、渋谷PARCOだけでなく、大阪・青森でも巡回展が開催され、多くの反響を呼びました。なお、渋谷PARCO「ほぼ日カルチャん」は2022年3月をもって閉店しました。今後は、WEBに場所を移し「文化の案内」を発信していきます。「TOBICHI」では「中川いさみ しあわせうさぎ展」や「ほぼ日のアパレル」などの多数のイベントを開催しました。これらのイベントは新型コロナウイルス感染症対策を行い、お客様に安心して楽しんでいただけるように実施しています。犬や猫の写真SNSアプリ「ドコノコ」は2022年8月までに約36万ダウンロードとなっています。また、当期はほぼ日のコンテンツをより多くの方に届けるために、Yahoo!やLINEアカウントメディアなどの外部媒体でアーカイブの人気記事などの配信を始めました。活字以外のメディアでもたくさんの方に楽しんでもらえるよう、オーディオブック「聞く、ほぼ日。」やYouTubeチャンネル「ほぼべりTUBE」等を立ち上げ、音声や動画としてのコンテンツ提供にも力を入れています。
このように、当社は運営する「場」において、生活のたのしみとなるような「いい時間」を過ごしていただけるよう、コンテンツを作り、編集し届けています。業績はこうした全ての活動の結果だと考えています。
なお、当社は単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。
当事業年度における販売実績は次のとおりです。なお、当社は単一セグメントのためセグメント別の記載はしていません。
(注) 1.主要な相手先別の販売実績は、総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先がいないため、記載を省略しています。
2.その他売上は主に送料売上、サービス売上、ライセンス収入等です。
(資産の部)
流動資産は、3,999,758千円と前事業年度末に比べて118,771千円の増加となりました。これは主に売掛金の増加90,049千円、商品の増加251,687千円、現金及び預金の減少155,222千円、前渡金の減少40,088千円、その他に含まれる未収入金の減少33,442千円によるものです。
有形固定資産は、333,736千円と前事業年度末に比べて51,649千円の減少となりました。これは主に減価償却による減少70,810千円、工具、器具及び備品の取得による増加15,264千円によるものです。
無形固定資産は、317,600千円と前事業年度末に比べて66,572千円の増加となりました。これは主に「ほぼ日の學校」などのソフトウエア取得による増加150,173千円、減価償却による減少63,838千円、ソフトウェア仮勘定の減少18,935千円によるものです。
投資その他の資産は、664,140千円と前事業年度末に比べて58,067千円の増加となりました。これは主に長期前払費用の増加83,859千円、投資有価証券の時価評価額の減少40,410千円、繰延税金資産の増加16,599千円によるものです。
(負債の部)
流動負債は、1,258,042千円と前事業年度末に比べて106,514千円の増加となりました。これは主に買掛金の増加17,390千円、未払法人税等の増加88,176千円によるものです。
固定負債は、193,624千円と前事業年度末に比べて12,604千円の増加となりました。これは主にその他に含まれる長期未払費用の増加14,413千円、店舗閉鎖に伴う資産除去債務の履行による減少2,315千円によるものです。
(純資産の部)
純資産の部は、3,863,568千円と前事業年度末に比べて72,642千円の増加となりました。これは主に利益剰余金の増加101,319千円と、その他有価証券評価差額金の減少28,461千円によるものです。
当事業年度における現金及び現金同等物は1,618,518千円と前年同期末と比べ155,222千円の減少となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、201,608千円の純収入(前年同期は466,587千円の純収入)となりました。これは主に税引前当期純利益290,745千円、減価償却費の計上153,066千円による増加要因と棚卸資産の増加276,867千円による減少要因によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、255,079千円の純支出(前年同期は291,416千円の純支出)となりました。これは主に有形固定資産の取得19,002千円、無形固定資産の取得132,412千円、長期前払費用の取得103,455千円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、106,836千円の純支出(前年同期は106,352千円の純支出)となりました。これは主に配当金の支払額104,028千円によるものです。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注1)株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しています。
(注2)キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しています。
(注3)有利子負債は貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債(リース債務を除く)を対象としています。
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。この財務諸表の作成にあたり、経営者による会計方針の選択・適用、当事業年度末日における資産及び負債、会計年度における収益及び費用並びに開示に影響を及ぼす見積りを必要としています。これらの見積りに関しては、過去の実績等を勘案して合理的に見積りを行っていますが、見積り特有の不確実性のため実際の結果とは異なる場合があります。
当社の財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。
新型コロナウイルス感染拡大の影響については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載のとおりです。
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