業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績

(単位:百万円)

 

2021年3月期

実績

2022年3月期

実績

前期比

 

増減額

増減率

売上高

152,204

172,860

+20,656

+13.6%

売上原価

67,798

76,607

+8,809

+13.0%

売上利益

84,406

96,253

+11,847

+14.0%

販売費及び一般管理費

82,836

91,240

+8,404

+10.1%

A:のれん及びその他の無形固定資産減損損失

2,685

△2,685

営業利益(△損失)

△1,115

5,013

+6,128

その他の収益・費用 ※B以外

1,517

2,874

+1,357

+89.5%

B:有価証券・投資評価損益(純額)

10,390

△641

△11,031

税引前当期純利益

10,792

7,246

△3,546

△32.9%

当社株主に帰属する当期純利益

7,025

4,608

△2,417

△34.4%

 

参考情報 ①:Aを考慮しない営業利益

1,570

5,013

+3,443

+219.3%

参考情報 ②:AとBを考慮しない税引前当期純利益

3,087

7,887

+4,800

+155.5%

 

 当連結会計年度(2021年4月1日~2022年3月31日)における当社グループの経営環境は、米国や欧州は新型コロナウイルス感染症(以下、感染症)による経済活動の制限緩和に伴い改善し、売上の回復を支えました。他方、日本においては度重なる緊急事態宣言の発出やまん延防止等重点措置の適用によって、経済活動が長期的に制限された結果、厳しい状況が続きました。

 このような状況のもと、当社グループは、お客さま・従業員・お取引先の健康と安全を最優先に事業活動を行いつつ、高収益な経営体質の構築に向けた構造改革に取り組みました。また、感染症の拡大をきっかけに大きく変化した消費者の生活様式に対応する商品やサービスの開発・提供を継続的に行うとともに、「オンラインとオフラインの融合」、「顧客データの活用」などを通じて顧客体験価値の向上に向けた独自のCX戦略を推進し、お客さま一人ひとりとの「深く、広く、長い」関係の構築に努めました。

 中期経営計画の最終年度となる当期の連結売上高は、1,728億60百万円(前期比13.6%増)、連結営業利益は、50億13百万円(前期は11億15百万円の営業損失)となりました。連結税引前当期純利益は、有価証券・投資評価損益(純額)について評価損6億41百万円(前期は103億90百万円の評価益)を計上したことから、72億46百万円(前期比32.9%減)となりました(当社は米国会計基準を採用しており、当社及び連結子会社が保有する持分証券につきましては、公正価値で評価し、期初からの変動を「有価証券・投資評価損益(純額)」として「その他の収益・費用」で計上しております)。

 以上の結果、当社株主に帰属する当期純利益は46億8百万円(前期比34.4%減)となりました。なお、当該期間の為替換算レートは、1米ドル=112.38円(前期106.06円)、1英ポンド=153.56円(同138.68円)、1中国元=17.03円(同15.48円)です。

 オペレーティング・セグメントの経営成績を示すと次のとおりであります。

(単位:百万円)

 

 

2021年3月期

2022年3月期

前期比

 

 

実績

構成比

実績

構成比

増減額

増減率

売上高合計

152,204

100.0%

172,860

100.0%

+20,656

+13.6%

 

ワコール事業(国内)

86,133

56.6%

88,128

51.0%

+1,995

+2.3%

 

ワコール事業(海外)

41,355

27.2%

59,678

34.5%

+18,323

+44.3%

 

ピーチ・ジョン事業

12,200

8.0%

12,528

7.3%

+328

+2.7%

 

その他

12,516

8.2%

12,526

7.2%

+10

+0.1%

 

(単位:百万円)

 

 

2021年3月期

2022年3月期

前期比

 

 

実績

売上比

実績

売上比

増減額

増減率

営業利益(△損失)

△1,115

5,013

2.9%

+6,128

 

ワコール事業(国内)

627

0.7%

2,319

2.6%

+1,692

+269.9%

 

ワコール事業(海外)

△2,603

2,351

3.9%

+4,954

 

ピーチ・ジョン事業

1,591

13.0%

1,651

13.2%

+60

+3.8%

 

その他

△730

△1,308

△578

 

(参考)主要子会社の売上高・営業利益(△損失)

(単位:百万円)

売上高

2021年3月期

2022年3月期

前期比

実績

構成比

実績

構成比

増減額

増減率

 

ワコール

79,877

52.5%

81,184

47.0%

+1,307

+1.6%

 

ワコールインターナショナル(米国)

17,649

11.6%

25,282

14.6%

+7,633

+43.2%

 

ワコールヨーロッパ

9,896

6.5%

16,305

9.4%

+6,409

+64.8%

 

中国ワコール

8,755

5.8%

12,157

7.0%

+3,402

+38.9%

 

ピーチ・ジョン

12,200

8.0%

12,528

7.3%

+328

+2.7%

 

ルシアン

4,614

3.0%

3,484

2.0%

△1,130

△24.5%

 

七彩

5,312

3.5%

6,042

3.5%

+730

+13.7%

※外部売上高のみを記載しております。

(単位:百万円)

営業利益(△損失)

2021年3月期

2022年3月期

前期比

実績

売上比

実績

売上比

増減額

増減率

 

ワコール

△2,022

△729

+1,293

 

ワコールインターナショナル(米国)

△914

433

1.7%

+1,347

 

ワコールヨーロッパ

666

6.7%

1,804

11.1%

+1,138

+170.9%

 

中国ワコール

625

7.1%

260

2.1%

△365

△58.4%

 

ピーチ・ジョン

1,591

13.0%

1,651

13.2%

+60

+3.8%

 

ルシアン

221

4.8%

△642

△863

 

七彩

△358

△249

+109

※主要子会社の売上高・営業利益(△損失)は各国会計基準に基づく数値

 

ワコール事業(国内)

 当該セグメントの売上高は881億28百万円(前期比2.3%増)、営業利益は23億19百万円(前期比269.9%増)となりました。営業利益については、前期の雇用調整助成金の受け取りによる利益貢献の裏返しがありましたが、増収効果に加え、不動産の売却益が寄与したことなどもあり、増益となりました。

<ワコール>

 ワコール事業(国内)の中核事業会社であるワコールの売上高は、1.6%の増収となりました。前期に大きく伸長した自社EC「ワコールウェブストア」は、新規顧客の獲得に苦戦したものの、既存顧客への販売が好調に推移したことから、過去最高の売上を更新しました。また、他社ECについても前期の水準を上回りました。他方、百貨店や量販店、直営店などの主要チャネルの店頭ベースの売上高は、感染症の再拡大やオミクロン株の急速な感染拡大に伴う外出自粛の影響を強く受け、低調に推移しました。

 営業損益は、収益構造改革の一環として販促費や人件費等の固定費の削減を進めた結果、前期に比べて改善しましたが、感染症の長期化に伴う売上の低迷が響き、7億29百万円の営業損失(前期は20億22百万円の営業損失)となりました。なお、雇用調整助成金や不動産の売却益につきましては、それぞれ営業外収益、特別利益として計上されているため、上記の営業利益の金額や前期差には含まれておりません(連結経営成績上は米国会計基準に基づき営業損益に組み替え表示しております)。

 

ワコール事業(海外)

 邦貨換算後の当該セグメントは、欧米の売上が伸長したことから、売上高は596億78百万円(前期比44.3%増)、営業利益は23億51百万円(前期は26億3百万円の営業損失)と大幅な増収増益となりました。なお、中国ワコールにおける百貨店等の売上について、当期より店頭価格ベースに変更しておりますが、遡及修正はしておりません。また、当該変更により、当期の売上高、販売費及び一般管理費がそれぞれ同額(20億44百万円)増加するため、営業利益額に影響はありません。

<ワコールインターナショナル(米国)>

 ワコールインターナショナル(米国)の現地通貨ベースの売上高は、前期に比べ35.2%の増収(邦貨換算ベース43.2%増)となり、過去最高を更新しました。

 「Wacoal」や「b.tempt’d」などのブランドを展開する米国ワコールの売上高は、下半期にオミクロン株の感染拡大に伴う外出自粛の影響や生産遅延に伴う販売機会のロスが生じたものの、個人消費の力強い回復を背景に1年を通じてEC・店頭ともに高い売上水準を維持した結果、前期に比べ39.1%の増収となりました。「LIVELY」ブランドを展開するIntimates Online, Inc.(以下、IO社)は、SNS広告のコスト高騰を受け広告投資を抑制したことなどにより、自社ECの売上が伸び悩みましたが、卸売や直営店舗の売上拡大が寄与し、14.9%の増収となりました。

 現地通貨ベースの営業利益は、3.9百万ドル(邦貨換算ベース4億33百万円)となりました(前期は8.6百万ドル(邦貨換算ベース9億14百万円)の営業損失)。米国ワコールは増収効果により大幅な増益となりましたが、IO社は販売チャネル別の売上構成比の変化や、在庫適正化に向けた取り組みの強化などの影響で、赤字幅が拡大しました。

<ワコールヨーロッパ>

 ワコールヨーロッパの現地通貨ベースの売上高は、個人消費の力強い回復を背景に英国、欧州、米国の各主要エリアで売上が感染症拡大前の水準を上回った結果、前期に比べ48.8%の増収(邦貨換算ベース64.8%増)となり、過去最高を更新しました。

 チャネル別では、主力の専門店や他社ECが好調に推移した他、英国で展開する自社ECについても35.5%の増収となり、好調を維持しました。百貨店については、一部百貨店の閉店影響で感染症拡大前の水準には届かなかったものの、新規得意先との取引開始などにより、前期に対しては大幅な増収となりました。

 現地通貨ベースの営業利益は、増収効果により、144.9%と大幅な増益(邦貨換算ベース170.9%増)となりました。

<中国ワコール>

 中国ワコールの現地通貨ベースの売上高は、前期に比べ26.2%の増収(邦貨換算ベース38.9%増)となりました。

 百貨店などの実店舗は、感染症拡大に伴う活動規制の影響で下半期(7月~12月)は苦戦しましたが、前期の店舗休業の裏返しによる上半期(1月~6月)の売上改善や、ショッピングモール等への直営店の出店増加などが寄与し、増収となりました。一方、中国国内ブランドの台頭により競争環境が激化するECについては、有名KOL (Key Opinion Leader)を活用したインフルエンサー・マーケティングなど新たな販促活動に取り組んだものの、効果が限定的なものに留まった結果、前期を下回りました。

 現地通貨ベースの営業利益は、増収効果はあったものの、前期の政府の支援策がなくなったことに加え、事業活動の再開に伴う諸経費の増加により、62.0%の減益(邦貨換算ベース58.4%減)となりました。

ピーチ・ジョン事業

 当該セグメントの売上高は、125億28百万円(前期比2.7%増)となりました。

 直営店は、前期の感染症拡大による店舗休業の反動に加え、有名タレントとのコラボアイテムの発売など話題性の高いマーケティング施策が来店客数の増加に寄与し、13.4%の増収となりました。一方、自社ECは、同じくコラボアイテムの貢献などがあったものの、大きく伸長した前期の水準には至らず、11.0%の減収となりました。

 営業利益は、16億51百万円(前期比3.8%増)となりました。前期の家賃減免などの裏返しがありましたが、増収効果により、高い利益水準を確保しました。

 

その他

 当該セグメントの売上高は、125億26百万円(前期比0.1%増)、営業損益は13億8百万円の営業損失(前期は7億30百万円の営業損失)となりました。

<ルシアン>

 ルシアンの売上高は、量販店や大手衣料品チェーン向けのプライベートブランド商品の売上が低調に推移したことに加え、ベトナム工場の休業により納品遅延が生じた結果、前期に比べ24.5%の減収となりました。

 営業損益は、減収の影響に加え、不採算子会社の整理に伴う一時的な費用を計上したことから、6億42百万円の営業損失(前期は2億21百万円の営業利益)となりました。

<七彩>

 七彩の売上高は、感染症拡大に伴う新規出店や各種イベントの中止により上期は苦戦しましたが、10月以降、改装工事などの受注活動に回復が見られたことから、前期に比べ13.7%の増収となりました。

 営業損益は、オペレーションの見直しによる経費削減を進めたものの、売上の低迷が響き、2億49百万円の営業損失(前期は3億58百万円の営業損失)となりました。

 

(2)財政状態

 当連結会計年度末における総資産は、借入金の返済による現金及び現金同等物が減少したことなどにより、前連結会計年度末に比して195億16百万円減少し、3,032億45百万円となりました。

 負債の部も、同様の理由で短期借入金が減少したことなどにより、前連結会計年度末に比して269億52百万円減少し、771億93百万円となりました。

 株主資本は、当期純利益の計上や年金債務調整勘定の変動などにより、前連結会計年度末に比して73億93百万円増加し、2,230億5百万円となりました。

 以上の結果により、当連結会計年度末における株主資本比率は、前連結会計年度末に比して6.7ポイント増加し、73.5%となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比し255億75百万円減少し、379億82百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、当期純利益45億41百万円に減価償却費や繰延税金などによる調整を加えた金額に対して、資産及び負債の増減などによる調整を行った結果、130億8百万円の収入(前期に比し87億48百万円の収入増)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得などにより、30億96百万円の支出(前期に比し5億34百万円の支出増)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の返済、配当金の支払及び自己株式の取得などにより、363億49百万円の支出(前期は336億5百万円の収入)となりました。

 

(4)生産、受注及び販売の実績

①生産実績

 当連結会計年度の生産実績をオペレーティング・セグメントごとに示すと、次のとおりであります。なお、 ピーチ・ジョン事業については、すべて販売会社のため該当事項はありません。また、その他のセグメントについては、生産実績を定義することが困難であるため「生産実績」は記載しておりません。

オペレーティング・セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

ワコール事業(国内)

34,478

100.0

ワコール事業(海外)

14,566

113.9

合計

49,044

103.8

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.生産実績の金額は製造原価によっております。

 

②受注実績

 その他のうち㈱七彩の店舗内装工事部門については受注生産形態をとっております。

 当連結会計年度におけるその他の受注実績を示すと、次のとおりであります。

オペレーティング・セグメント

の名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

その他

3,887

129.1

124

60.8

(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

③販売実績

 当連結会計年度の販売実績をオペレーティング・セグメントごとに示すと、次のとおりであります。

オペレーティング・セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

ワコール事業(国内)

88,128

102.3

ワコール事業(海外)

59,678

144.3

ピーチ・ジョン事業

12,528

102.7

その他

12,526

100.1

合計

172,860

113.6

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。

 

(5)資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの資金の流動性は、主に営業活動による純現金収入によります。営業活動による純現金収入により、外部からの多額の借入や、その他の資金調達手段に頼らずに、大部分の運転資金の確保や設備投資、配当金の支払が可能となっております。ただし、金融機関に借入枠は設けており、2022年3月31日現在の借入枠の合計は584億94百万円、借入枠を設けている借入金の残高は118億53百万円となっており、主な残高の内訳としては当社が100億円、WACOAL INTERNATIONAL CORP.が13億46百万円、WACOAL EUROPE LTD.が2億27百万円となっております。

 これらの借入枠の期限は、ほとんどが自動的に更新されるものであり、現状更新を妨げるような事象は発生していないと考えております。仮にいずれかの子会社において借入が不可能になったとしても、グループの各社から資金を供給することが可能であると考えております。また、資金需要について大きな季節変動はありません。

 また、子会社からの親会社への配当に係る規制は特に無いと考えております。

 なお、感染症による影響の度合い、期間が不透明であったため、当社は2020年4月以降に金融機関に追加の借入枠を設け、手元流動資金を確保するため最大400億円の借入を行いましたが、当期までに300億円を返済しております。今後も目的や収益性を厳格に見積もることで、資金の流動性を確保していきます。

①設備投資

  「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」に記載しております。

②キャッシュ・フロー

「(3)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

(6)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、米国において一般に認められた会計基準に準拠して作成されております。これらの財務諸表の作成にあたっては、当社グループは重要な見積りや仮定を行う必要があります。会計方針の適用にあたり、特に重要な判断を要する項目は以下のとおりであります。

 なお、感染症の影響等不確実性が大きく、将来の業績予測等に反映させることが難しい要素もありますが、現時点において入手可能な情報を基に検証等を行っております。感染症による見積りへの影響は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表に関する注記 1 連結会計方針 E 見積りの使用」に記載しております。

①収益認識

 当社グループは製品の支配が顧客に移転し、履行義務が充足された時点で収益を認識しております。収益は、取引価格から値引、リベート等を控除した金額で算定しております。また、将来に予測される返品については、過年度の実績等を考慮して予想される返品を見積り、収益から控除しております。市況や消費者ニーズの変化により、値引きやリベート、返品の増加が予想される場合は、収益に影響を与える可能性があります。

②貸倒引当金

 当社グループは、売上債権等について貸し倒れの可能性を予測する必要があります。これらの債権の回収可能性を検討するにあたっては、各相手先の業績、債権残高、財政状況等を考慮して個別に信用リスクを判断する等、重要な判断が必要であります。相手先の財政状態が悪化した場合は貸倒引当金を積み増すことがあり、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

③棚卸資産の評価損

 当社グループは、原材料については先入先出法による低価法で、製品・商品及び仕掛品については総平均法による低価法で評価しております。棚卸資産の実現可能価額は、通常の事業活動による見積り販売価額から見積り直接販売費用を控除して算出されます。棚卸資産の評価は、棚卸資産が低価法に基づき正しく評価されているかどうかを確認するため、定期的に実施されております。当社グループは、必要と判断された場合、棚卸資産の簿価と実現可能価額との差額を棚卸資産の評価損として計上しております。見積り販売価額や見積り直接販売費用、廃棄率や棚卸資産の分類等は過去の状況や将来の消化予想、その他の要素を加味して算出しております。また、将来破棄する棚卸資産についても考慮しております。当社グループの棚卸資産の評価は適正であると判断しておりますが、市況や消費者ニーズが当社グループの計画と大きく乖離する場合、評価損の金額は増加し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

④繰延税金資産

 当社グループは、現在、一定期間における回収可能性に基づき相当額の繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の計上は、予測される将来における課税所得の達成の可否により影響を受けます。将来の課税所得の見積りにあたっては、過去の業績やタックス・プランニング等も考慮しております。当社グループの将来の収益性に係る判断は、将来における市場の動向その他の要因により影響を受けます。これらの状況に変化があった場合、繰延税金資産計上額に対して金額的に重要な評価性引当金を計上する可能性があります。繰延税金資産の回収可能性を見込めない場合には、回収不能と見込まれる金額に対して評価性引当金が計上され、損益に悪影響を与える可能性があります。

⑤有価証券・投資の評価損

 有価証券・投資のうち負債証券については、公正価値が帳簿価額を下回り、かつ、公正価値の低下が一時的でないと判断される場合は、評価損が計上されます。当社グループは、負債証券の公正価値の下落が一時的であるかどうかを、下落の期間や程度、発行体の財政状態や業績の見通し、又は公正価値の回復が予想される十分な期間にわたって保有する意思、などを含めた基準により四半期毎に判断しております。

 また、持分証券については、公正価値により測定し、未実現の保有損益は純損益に計上しております。

 当社グループは、評価損を判断する基準は合理的なものであると考えておりますが、市場の変化や、予測できない経済及びビジネス上の前提条件の変化によって個々の投資に関する状況の変化があった場合には、有価証券・投資の評価額に影響を受ける可能性があります。

 なお、2022年3月31日現在、負債証券については保有しておりません。

⑥長期性資産の減損

 当社グループが保有する長期性資産については、帳簿価額の回収ができないという兆候を示す事象や状況の変化が生じた場合には、将来の予想キャッシュ・フローに基づき減損の判定を実施し、減損が生じたと判断した場合、当該資産の帳簿価額が公正価値を超える金額を減損損失として計上しております。

 2022年3月期において、固定資産の減損の判定をした結果、公正価値が帳簿価額を下回っていると判断されたため、㈱ワコール及びその他の子会社の建物及び構築物、機械装置・車両運搬具及び工具器具備品をそれぞれ減損しております。この結果生じた減損損失211百万円については、2022年3月期のワコール事業(国内)の営業費用に含めております。

 

⑦のれん及びその他の無形固定資産の減損

 耐用年数が確定できないのれん及びその他の無形固定資産については、少なくとも1年に一回、又は事業環境や将来の業績見通しの悪化、事業戦略の変化、リスク調整後割引率の変動等、減損の判定が必要となる兆候が発生した場合に減損の判定を行っており、報告単位の公正価値の評価にあたっては、独立した外部の評価機関を利用しております。のれんやその他の無形固定資産を含む報告単位の公正価値を評価し、公正価値が報告単位の帳簿価額を下回っていると判断される場合には、その下回る額について減損損失として計上することになります。のれん及びその他の無形固定資産の帳簿価額の回復可能性がないと判断された場合、のれんの公正価値の決定において、評価機関は観察不能なインプットを含む現在価値法を採用しております。商標権の公正価値の決定においては、評価機関は観察不能なインプットを含むロイヤルティ免除法を採用しております。

 2022年3月31日時点における評価の結果、のれんの減損は不要であると判断しております。

⑧退職金及び退職年金

 当社グループは従業員の大多数を対象とするいくつかの退職金制度を有しており、㈱ワコール及び一部の子会社は確定給付企業年金制度を採用しております。前払年金費用、退職給付に係る負債及び退職給付費用は、数理計算上の仮定に基づいて算出されております。これらの仮定には、割引率、年金資産の長期期待運用収益率、退職率、死亡率等が含まれております。当社グループは、使用した数理計算上の仮定は妥当なものと判断しておりますが、仮定自体の変更により、前払年金費用、退職給付に係る負債及び退職給付費用に悪影響を与える可能性があります。

 当社グループは、国内社債の利回りに基づいて割引率を設定しております。具体的には割引率は2022年3月31日時点における、国債のうち満期までの期間が予想される将来の給付支払の時期までの期間と同じ銘柄の利回りを基礎としております。当連結会計年度末における割引率は0.7%であります。

 当社グループは、過去の運用実績と将来収益に対する予測を評価することにより長期期待運用収益率を設定しております。かかる長期期待運用収益率は、株式及び社債等の投資対象資産グループ別の長期期待運用収益の加重平均に基づいております。前連結会計年度及び当連結会計年度末における、年金資産の長期運用利回りは、ともに2.5%であります。長期期待運用収益率は持分証券26.0%、負債証券54.0%、生保一般勘定18.0%及び短期資金2.0%の資産構成を前提として算定しております。

 これらの基礎率は退職給付債務及び費用に重要な影響を及ぼします。割引率及び長期期待運用収益率をそれぞれ0.5%変更した場合の連結財務諸表への影響は以下のとおりであります。

 

退職給付費用への影響額

退職給付債務への影響額

割引率:0.5%減少

194百万円の増加

1,416百万円の増加

割引率:0.5%増加

204百万円の減少

1,507百万円の減少

長期期待運用収益率:0.5%減少

148百万円の増加

長期期待運用収益率:0.5%増加

152百万円の減少

 

⑨新会計基準

 「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表に関する注記 1 連結会計方針 F 会計処理基準 (14)新会計基準」に記載しております。

 

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