課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。これらの将来予測には、不確定な変動要素が含まれており、実際の成果や業績などは、記載の見通しとは異なる可能性があります。

 

(1) グループ経営理念(ミッション、創業の精神)

 ワコールグループは、純粋持株会社である当社のもと、日本、米国、欧州、中国、東南アジアを中心に、インナーウェア事業などを展開し、従前から「人々の美しさに貢献することで、広く社会に寄与する」ことを目指して活動してきました。そして、2022年には、「世界中のあらゆる人々の豊かな生活に貢献する」こと、「画一的な外見美ではなく、内面も含めた自分らしさの実現をお手伝いする」こと、「環境や人権などさまざまな社会課題の解決に努める」ことを目指し、現代社会において私たちが果たすべき社会的使命「ミッション」を定義しました。この「ミッション」ならびに、70年を超える歴史の中で受け継いできた「創業の精神」をよりどころとして、各事業会社が複雑化・多様化する社会課題への取り組みを将来の「成長機会」として捉え、事業を通じて「社会課題の解決」と「持続的成長」の両立を目指す「サステナビリティ経営」を推進することで、企業価値の向上に努めていきます。

 また、私たちの事業活動は、一人ひとりのお客様の声に耳を傾け、謙虚に自らを変革し、人と人とが互いに信頼し合う「相互信頼」を積み重ねることで成り立っております。企業経営の透明性を高めることに継続して取り組み、公正性、独立性を確保することを通じて、「株主」「顧客」「従業員」「取引先」「地域社会」などすべてのステークホルダーとの「相互信頼」の関係を構築することで、社会になくてはならない存在を目指していきます。

 

ミッション

 

ひとりひとりが 自分らしく美しく いられるように

世の中が 自信と思いやりに あふれるように

からだに こころに

いちばん近いところで 寄り添い続けます

 

からだのここちよさ、こころの美しさ。それはまるで引力のように、自分と社会とを結びつけてくれる。

ありたい自分を知り、一歩ずつ近づくこと。そこで生まれた自信は、多様な人々を受け入れる優しさを育む。

その優しさは、やがて社会や地球へも広がり、思いやりあふれる豊かな未来へとつながっていく。

からだに こころに いちばん近いところで、一人ひとりの輝きに寄り添い続けてきたワコールだから。

変化に挑み、成長を続けることで、世界を美しくする力になれる。私たちは、そう信じています。

 

グローバル・コーポレートメッセージ

Comfortable inside. Confident outside.

 

※「グローバル・コーポレートメッセージ」は、ワコールグループ共通のコミュニケーションメッセージです。

詳しくは、当社企業情報サイトの「ワコールグループについて」(https://www.wacoalholdings.jp/group/)をご覧ください。

 

創業の精神

 

社是

わが社は 相互信頼を基調とした

格調の高い社風を確立し

一丸となって 世界のワコールを目指し

不断の前進を続けよう

 

目標

世の女性に美しくなって貰う事によって

広く社会に寄与する事こそ

わが社の理想であり目標であります

 

経営の基本方針

1. 愛される商品を作ります

2. 時代の要求する新製品を開発します

3. 大いなる将来を考え正々堂々と営業します

4. より良きワコールはより良き社員によって造られます

5. 失敗を恐れず成功を自惚れません

 

(2) 中長期的な会社の成長戦略と目標とする経営指標

①中長期経営戦略フレーム 「VISION 2030」

 当社グループは、経営理念の実践に向けて、自社が抱える事業課題やお客様の価値観、社会・環境の変化を見据えつつ、長期的なゴールからのバックキャスティングにより、2030年に向けたグループの将来ビジョンを示す「VISION 2030」を策定いたしました。「VISION 2030」では、「高い感性と品質で、ひとりひとりのからだとこころに、美しさと豊かさを提供し、『世界のワコールグループ』として進化・成長する」ことを中長期的に目指す姿として掲げており、以下の取り組み項目を通じて、持続的な成長と企業価値の向上を実現させてまいります。

 

目指す姿:高い感性と品質で、ひとりひとりのからだとこころに、美しさと豊かさを提供し、『世界のワコールグループ』として進化・成長する

基本方針:革新的な視点で新たな価値を生み、持続的成長を実現する

事業領域:「美」「快適」「健康」領域を、「高い感性と品質」で支えられた新たな商品・サービスで深耕・拡大していく

 

重点戦略:

重点戦略

マテリアリティ(重要課題)

サステナビリティ

経営の推進

国内の収益性向上と事業領域拡大

国内における着実な成長と、健康領域での新規事業創出

・CX戦略の推進を通じた国内市場シェアの回復

・「美・快適・健康」分野における事業領域の拡大

海外事業の拡大と高収益構造への変革

既存進出エリアの拡大維持と、欧州やインド市場での成長

・デジタルマーケティングの強化による新規顧客の獲得

・CRM強化による既存顧客のロイヤル化

・新規市場におけるブランド投資の強化

グループ経営力の強化

グループガバナンスの強化、多様性のある人材育成と活用

国内外の技術・生産・R&D拠点の整備

・品質基準の再定義、縫製工場のスマートファクトリー化、生産・輸送効率の追求

資本効率の高い経営への転換

資本コストを上回るROEの継続的な創出

ステークホルダーへの価値配分の最適化

・ROE10%、資本構成の最適化への取り組み

 

マテリアリティ(重要課題):

対象

目的

マテリアリティ(重要課題)

顧客

顧客への提供価値の最大化

・パーソナライゼーションの追求による顧客体験価値の向上

・事業領域拡大への挑戦

・商品品質の深化とサービス品質の構築

従業員

従業員ひとりひとりの成長と、

働きがいの高い組織の構築

・自らの可能性を広げ、自信と誇りを持ち活躍できる人材への成長

・共創・協業による高い成果を発揮できる組織づくり

・継続的な従業員の健康増進と健康意識の向上

環境

次世代に向けた地球環境の保全

・環境負荷を低減する事業活動の推進

社会

すべての人が自分らしく活躍できる社会の

実現

・社会課題を解決する共創イノベーションの推進

ガバナンス

持続的成長の実現に向けたガバナンスの強化

・透明性の高い経営の実践

・リスクマネジメント体制の強化

・収益性、資本効率の継続的改善

 

主要指標のガイドライン(2031年3月期):

売上収益

2,700億円

(うち、海外事業売上比率40%)

(参考)非連結合弁会社含むグループ売上高

3,400億円

事業利益(事業利益率)

270億円(10%)

ROE

10%

 

役員・従業員の行動指針(アクション):

「誰かの幸せを想おう」

顧客、取引先、ともに働く社員など、周囲の人の幸せを考えられているだろうか

「好奇心を持って、五感を使い観察しよう」

最近、新たな発見や気づきはあっただろうか

「なぜ?何のために?を考えよう」

真意や根本原因を理解できているだろうか

「異なる意見を尊重しよう」

謙虚に人の意見に耳を傾け、忖度抜きで、建設的に議論をしているだろうか

「未来志向で判断しよう」

目先の結果だけではなく、豊かな未来の実現のために行動しているだろうか

「まずやってみよう」

リスクを恐れて立ち止まっていないだろうか 挑戦する人を応援しているだろうか

「仲間と力を合わせよう」

大きな成果を生むために、仲間と切磋琢磨し、共創できているだろうか

「誠実に、責任を持ち行動しよう」

相手に感謝を伝えているだろうか 人のせいにしていないだろうか

 

 また、「VISION 2030」の策定にあたり、『世界のワコールグループ』の定義を以下のように、更新しております。

 

『世界のワコールグループ』の定義

・グループの商品・サービスや社会的課題に係る取組みが、全てのステークホルダーから高い信頼を得ている

・グループの人材、資産、ノウハウ、ネットワークを最大限活用し、世界的規模で競争優位性のある事業展開を行っている

・革新的且つ高品質な商品・サービスで、新たな顧客体験を創造し続け、世界中のお客さまの生活を豊かに美しくし続けている

・全世界の従業員がグループの目標、使命を理解し、その実現に向け、常識や過去にとらわれずに挑戦している

 

②中期経営計画

 2023年3月期から2025年3月期までの3カ年は、「VISION 2030」で掲げた「高い感性と品質で、ひとりひとりのからだとこころに、美しさと豊かさを提供し、『世界のワコールグループ』として進化・成長する」ことを実現していくための礎を築く重要な期間です。グローバルベースでブランドを展開するものづくり企業として、多くの人々の豊かな生活に貢献するとともに、持続的な成長が可能な高収益企業への転換を果たすために、中期経営計画では以下の取り組みに注力します。

 

コア戦略

(国内事業)

レジリエントな企業体質への転換

<株式会社ワコール>

CX戦略とマーケティングイノベーション(再成長の実現)

・CX戦略の推進 ・ブランド力・商品開発力の強化 ・人材開発と組織開発

コスト構造改革の継続(収益性の向上)

・働き方改革、ものづくり構造改革、費用対効果の追求による収益力の向上

<連結子会社>

不採算事業の対処(収益性の向上)

・確実な利益を出し続ける体制の構築(恒常的な黒字化)

・定期的な点検(半期毎)を通じた撤退・切り離しの判断と実行

(海外事業)

グローバル成長の加速

グローバルでのDX加速(CX戦略の推進)

・オフラインとオンラインを融合した顧客体験価値の向上

・デジタルマーケティングの強化による新規顧客の獲得

・データ活用・CRM強化による既存顧客のロイヤル化

(サステナビリティ)

マテリアリティに対する取り組みの推進

・経営理念の実践と競争力強化に向けた人的資本と組織能力の強化

・深刻化する環境課題と人権課題への対応強化

・社会価値創造に向けた共創イノベーションの推進

(財務)

資本コストを上回るROEの創出

・収益力の向上と資本効率の改善

・コーポレートガバナンスの更なる透明性向上

・重大コンプライアンス違反の撲滅

 

取締役会の実効性向上に向けた取り組み

 中期経営計画では、「グループ経営の推進」「グループ力の強化」を引き続き、経営の重要課題と位置づけ、中長期での持続的成長を支える強固な経営基盤の構築を目指してまいります。また、取締役会の実効性向上に向けて、役員報酬制度の見直しに継続して取り組むほか、取締役会の役員構成の最適化(専門性・独立性・多様性の確保)に努めます。

 

中期経営計画期間における具体的な取り組み

・経営体制の見直しと事業責任者の明確化

・役員報酬制度の継続的改善

・取締役会の多様性確保

 

財務戦略

 財務戦略については、営業キャッシュフローを活用し、成長に向けてIT・デジタル投資を行うとともに、新規事業投資の機会を探ってまいります。また、収益力の向上を最優先課題として取り組むと同時に、資本効率の改善に向けて積極的な株主還元を実施することで、ROE向上に取り組んでまいります。

 

中期経営計画の基本方針

・収益力の向上を最優先課題として取り組むと同時に、資産効率・資本効率を改善させることで、ROE向上を実現

・将来成長への投資を優先すると同時に、資本効率の改善に向けて積極的な株主還元を実施

 

中期経営計画期間(23年3月期~25年3月期)のガイドライン

政策保有株式

・積極的な政策保有株式の縮減を継続して実施

・中長期的な政策保有株式の保有指標は、純資産の15%以下

株主還元

・配当性向50%以上を目安にした安定的な配当の実施

・資本効率の改善を目的に、機動的な自己株買いを実施

・適切な成長投資がない場合は、資本効率の更なる改善に向けて、追加還元を実施

成長投資

・成長に向けてIT・デジタル投資を行うとともに、新規事業への投資機会を検討

 

③2023年3月期の方針

 2023年3月期につきましては、新型コロナウイルス感染症の再拡大による一部地域での経済活動の停滞や、グローバルでのインフレ、地政学的リスクやそれに伴う原材料および輸送費の更なる高騰などが懸念されており、経済活動は依然として不透明な状況が続くことが想定されます。このような環境のもと、当社は複雑化・多様化する社会課題への取り組みを将来の「成長機会」として捉え、事業を通じて「社会課題の解決」と「持続的成長」を両立する「サステナビリティ経営」を推進することで、企業価値の向上を実現してまいります。国内事業においては、引き続き、「オンラインとオフラインの融合」、「顧客データの活用」など顧客体験価値の向上に向けた独自のCX戦略を推進するとともに、収益力の向上に向けた取り組みを強化し、レジリエントな企業体質への転換を目指します。海外事業においては、既存進出エリアでの堅実な売上拡大に加え、EC事業の拡大や新興エリアへの進出によって、更なる拡大を図ってまいります。

 上記の取り組みにより、2023年3月期の連結業績は、売上収益2,050億円、事業利益70億円、営業利益65億円、税引前当期利益80億円、親会社の所有者に帰属する当期利益55億円を見込んでおります。年間の主要な為替レートは、1米ドル=120.0円、1英ポンド=155.0円、1中国元=19.0円として計画を策定しております。

④目標とする経営指標

<主要指標のガイドライン>

 

2023年3月期

(中期経営計画初年度)

2025年3月期

(中期経営計画最終年度)

売上収益

2,050億円

2,300億円

事業利益

70億円(3.4%)

160億円(7.3%)

営業利益

65億円(3.2%)

165億円(7.5%)

税引前当期利益

80億円(3.9%)

180億円(8.2%)

親会社の所有者に帰属する当期利益

55億円(2.7%)

125億円(5.7%)

EPS

97.42円

200円以上

ROE

6%

 

<財務指標のガイドライン>

 

2023年3月期~2025年3月期

3カ年累計

政策保有株式の縮減

100億円以上

総還元性向

100%以上

株主資本

2,100億円(2025年3月末)

 

(3) 会社の対処すべき課題

 新型コロナウイルス感染症の拡大は、生活者の価値観や健康等に関する意識を変えただけでなく、テレワークの推進や様々なサービスのオンライン化など消費行動や生活様式にも大きな影響を与えました。また、少子高齢化による国内市場の縮小、ECの拡大などの流通の変化、消費者ニーズの多様化、節約志向の高まり、地政学的リスクに伴う原材料および輸送費の高騰など、当社を取り巻く経営環境も大きく変化しております。加えて、気候変動などの環境問題や人権問題への深刻さは増大しており、社会からの関心が高まっております。

 「VISION 2030」は、これら数多くの課題に対応し、事業を通じて「社会課題の解決」と「持続的成長」の両立を果たすための重要な中長期経営戦略フレームです。マテリアリティ(重要課題)のターゲットと定めた「顧客への提供価値の最大化」、「従業員一人ひとりの成長と働きがいの高い組織の構築」、「次世代に向けた地球環境の保全」、「全ての人が自分らしく活躍できる社会の実現」、「持続的成長の実現に向けたガバナンスの強化」への取り組みを通じて、「高い感性と品質で、ひとりひとりのからだとこころに、美しさと豊かさを提供し、『世界のワコールグループ』として進化・成長する」という目標を達成し、企業価値の向上に努めてまいります。

 なお、主要事業の課題や取り組みについて、以下の通りです。

 

国内事業の課題と取り組み:

売上高が減少すると収益が生まれない硬直的な高コスト構造が最大の課題です。新しい顧客体験価値の提供と新規事業の創出によって再成長を実現すると同時に、硬直的なコスト構造を見直し、事業効率を高めてまいります。また、国内連結子会社については、経営の安定化が喫緊の課題となります。将来性を見極め、事業の継続や見直しを判断してまいります。なお、新規事業の創出については、M&Aも含め、非連続の成長を実現する取り組みを検討してまいります。

 

海外事業の課題と取り組み:

主要市場においては、ECを中心に一層の事業成果を高めていく必要があります。また、インドやドイツなど、潜在的な市場規模が大きい新興エリアでの成長実現に向けては、競争優位性を確保するための投資を実施することでブランド認知の拡大に取り組みます。

 

生産・供給体制の課題と取り組み:

新型コロナウイルス感染症の拡大や地政学的リスクの高まりにより、原材料や輸送費が高騰していることに加え、感染症の拡大状況によっては不安定な操業を強いられることが想定されます。生産性の更なる向上に向けたグローバルベースでの供給体制の再整備が課題です。

 

サステナビリティの課題と取り組み:

気候変動などの環境問題や人権問題はさらに深刻さを増しており、社会からの要請はますます高まっています。社会からの要請に応えることはもちろんのこと、複雑化・多様化する社会課題への取り組みを将来の「成長機会」として捉えるための共創イノベーションの推進が必要です。同時に、当社グループの変化対応力の強化に向けて、会社のあるべき姿や使命を明確にして行動できる社員を増やすことも重要な課題です。経営理念の実践者を増やすことで、従業員一人ひとりの自己成長と企業成長を実現してまいります。

 

(参考)

①サステナビリティ推進体制

 当社グループでは、「サステナビリティ経営」を推進し、事業を通じた「社会課題の解決」と「企業成長」の両立を実現するため、2022年4月より、「サステナビリティ委員会」を設置しております。「サステナビリティ委員会」はサステナビリティ活動に関する全体計画の立案、進捗状況のモニタリング、達成状況の評価をし、定期的に取締役会に報告・提言を行います。なお、代表取締役社長執行役員が「取締役会」及び業務執行レベルの最高意思決定機関である「グループ経営会議」の責任者であり、「サステナビリティ委員会」の統括責任者(取締役副社長執行役員が委員長)を務めております。

 

カーボンニュートラル部会

 ワコールグループの事業活動における環境影響・環境リスクを低減し、自主的かつ積極的に環境保全の活動を推進するため、気候変動対応やバックオフィスの環境負荷軽減など環境課題に関する活動方針や取り組み、環境保全に関連する戦略投資案件を審議するとともに、進捗状況のモニタリングを行います。

 

資源循環部会

 資源循環型社会の実現に向けて、サプライチェーン上の資源・資材の持続可能な利用及び省資源対策、廃棄物の削減・リサイクルを推進するため、環境配慮型資材の調達方針や品質基準を審議するとともに、生産や調達活動における廃棄物削減の進捗状況のモニタリングを行います。

 

CSR調達部会

 ワコールグループのCSR調達に関する計画立案と進捗確認の責任を担い、「ワコールグループCSR調達ガイドライン」に定める内容の遵守状況を、製造委託先や原材料調達先の自己評価等によるモニタリングから、分析・評価フィードバック、是正・改善計画、フォローアップという一連のサイクルを機能させることによって、的確に把握するとともに、継続的に是正・改善を行う取り組みを主導します。

 

人権・D&I部会

 人権方針に基づく人権尊重の責務が果たされ、その業務執行が適正に行われるよう、人権擁護に関わる教育啓発活動、および人権デューディリジェンスの実行への助言・提言を行います。また、多様な社員を受け入れ、個々の能力を存分に発揮できる職場環境の実現に向けて、社内セミナーの開催をはじめとした各種施策を実施していきます。

 

②具体的なサステナビリティの取り組みについて

気候変動への対応

 地球や企業活動に重大な影響を及ぼす気候変動は、当社グループの経営にとってリスクであると同時に、新たな事業機会をもたらすものと考えております。当社グループは、環境課題の解決や改善に取り組むことが、健全な企業としての発展と持続可能な社会を実現するとの認識のもと、2021年9月、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同を表明し、TCFDに沿った開示に向けて取り組んでおります。

 

環境目標2030

 ワコールグループでは、深刻化する気候変動課題の解決と脱炭素社会の実現に向けた取り組みを進めるため2030年に向けた独自の環境活動の目標を設定しました。なお、海外事業については、温室効果ガスの自社排出量(Scope1&2)の把握から開始し、2025年3月期までに目標を開示する計画です。

1.自社排出量(Scope1&2)「ゼロ」(対象:国内事業所)

温室効果ガスの自社排出量実質ゼロを目指し、順次再生エネルギーへの切り替えを実施

2.製品廃棄「ゼロ」(対象:㈱ワコール)

製品廃棄ゼロを目指すとともに、工場での残材料破棄削減に向けた取り組みを推進

3.環境配慮型素材の使用比率「50%」(対象:㈱ワコール)

再生繊維やリサイクル糸などに切り替えるなど、環境配慮型素材の使用比率を「50%」までに高める

4.サプライチェーン排出量(Scope3)「20%削減」(対象:ワコール事業(国内))

温室効果ガスのサプライチェーン排出量20%削減を目指し、パートナー企業との取り組みを推進

 

温室効果ガス排出量の削減に向けて

 脱炭素社会の実現に向けた取り組みを進め、サプライチェーンにおける温室効果ガスの排出量削減をより確実なものにするため、当社グループは、2021年7月、「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」に従い、ワコール事業(国内)のサプライチェーン全体における温室効果ガス排出量(Scope3)を初めて算定しました。その後、2021年10月には、国内事業における温室効果ガス排出量(Scope1&2)の削減目標を開示しております。

 

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同

 当社グループは、2021年9月、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言へ賛同を表明しました。TCFDの提言に沿った、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4項目についての情報については、2022年6月末に開示しております。

詳しくは、当社企業情報サイトの「サステナビリティ(環境)」ページをご覧ください。

(https://www.wacoalholdings.jp/sustainability/environment/)

 

消費者と地球にやさしい事業活動の推進

 環境やサステナビリティに対する関心が高まる中、「良い商品を長く使いたい」「環境に配慮した商品を使用したい」という消費者の要望も高くなっています。当社グループでは、消費者に長く愛していただけるものづくりに努めるとともに、「地球環境を守ることは企業の責務である」との認識に立ち、環境保全に配慮した事業活動を推進しております。

 

長く愛されるものづくりと、独自の総生産・総在庫・総販売システムによる製品廃棄ロスの低減

 当社グループの基本方針である「愛される商品づくり」を支えているのは、品質と安全への取り組みと在庫を残さない仕組みです。 品質管理体制については、ISO9001をベースとして構築しており、材料調達から商品企画、製品設計、生産に至るすべての段階において、厳しい基準を設定して品質向上に向けた活動を行っております。また、当社グループでは総生産・総在庫・総販売の考え方のもと、利益創出しつつ、廃棄を極力少なくする仕組みを構築しており、㈱ワコールにおける製品廃棄率(生産数に対する廃棄数)は約1%となっております。

 

持続可能な地球環境の実現に向けた「環境配慮型の商品」の開発

 ㈱ワコールでは、持続可能な地球環境の実現と「環境に配慮した商品を使用したい」という消費者の要望に応えるため、環境配慮型の商品や資材開発を進めております。2021年9月に「Wacoal」ブランドから登場した商品グループ[Nature Couture(ナチュレクチュール)]は、アメリカ産のオーガニックコットンやマニラ麻から採れるセルロース繊維を主原料とする和紙を使用した、人にも自然にもやさしいインナーウェアです。無染色のカラーや、オリーブの葉やバラの花など植物から抽出した色素を使用しているほか、デザインとパターンを工夫することで、通常よりも廃棄材料を少なく抑えております。今後は生地の裁断時に発生する廃棄材料を国内工場で回収し、糸に再生して次シーズン以降の商品材料として再利用する“廃棄材料リサイクルシステム”の確立を目指します。また、2022年春夏シーズンに直営店を中心に発売予定の環境配慮型ブラジャー[L∞Ping(ルーピング)]は原材料にリサイクル糸を使用しており、将来的には製品回収後の再資源化も視野に入れております。

 

ブラリサイクル活動

 ㈱ワコールで実施する「ワコールブラリサイクル」活動は、「ブラジャーは捨てにくい」というお客さまの声から生まれた、不用になったブラジャーを回収・リサイクルする企画です。日本環境設計(株)の「BRING」に参加して実施しており、回収されたブラジャーは生活雑貨などのパーツに生まれ変わります。2022年3月期は、2021年10月1日から2022年3月31日までの期間で活動を行い、回収総重量は25.7トンでした。

 

サプライチェーンにおける社会的責任の推進

 当社グループは、サプライチェーン全体での社会的責任を果たすため、世界各地のお取引先とともに、責任ある調達に取り組んでおります。社会の期待に応え、相互信頼と協働の考え方に基づいて、製造委託先とともにCSR調達を推進することが、製造委託先と当社共通の利益を最大化し、双方の持続的成長に資するものと考え、積極的な取り組みに努めております。

 

相互信頼と協働に基づくCSR調達の推進

 繊維・アパレル産業のサプライチェーンは、販売する国や地域での商品企画・設計に始まりますが、原材料の生産・調達、製品の工場での生産は、ほとんどが中国やASEANの新興諸国で行われ、輸送されてくる国際的なネットワークになっております。当社グループは、2017年10月に制定した「ワコールグループCSR調達ガイドライン」において、「社会的責任を果たしていくためには、商品の生産に関わるすべてのお取引先と緊密なパートナーシップを築き、『品質』『価格』『納期』のみならず、『人権』『労働慣行』『環境』『倫理』などの社会的要求事項についても、お取引先とともに遵守・尊重しなければなりません」と宣言し、2018年2月からガイドラインに定める内容の遵守状況を的確に把握することで、継続的な是正・改善につなげるサイクルの運用を開始しました。また、2018年5月からは開示に賛同していただいた製造委託先工場の基本情報を当社企業情報サイトで公開しております。

 

公開している製造委託先工場の基本情報(2021年8月現在)

会社名

工場数

対象工場による製造が仕入高に占める割合

更新回数

ワコール

150

96.5%

インナーウェア、パジャマ、ルームウェア、ベビー・マタニティウェア、レッグウェア、スポーツウェアの仕入高に対する割合

4回

ルシアン

12

99.5%

インナーウェア仕入高に対する割合

4回

ピーチ・ジョン

31

90.0%

インナーウェア、ルームウェア、ファッションウェア仕入高に対する割合

4回

Ai

12

78.0%

スイムウェア、インナーウェア仕入高に対する割合

3回

ウンナナクール

4

98.9%

インナーウェア、パジャマ、ルームウェアの仕入高に対する割合

1回

主要な海外子会社*

32

100%

インナーウェアの仕入高に対する割合

1回

 *米国ワコール、中国ワコール、ワコールヨーロッパ

 

2022年3月期のCSR調達活動の内容

・コロナ禍における現地監査手法(リモート監査)の確立

・CSR調達活動の対象範囲拡大(衣料品以外の品種を製造する委託先工場を調査対象に追加予定)

・自己評価を通じた「CSR調達ガイドライン」に定める内容の遵守状況の確認

㈱ワコール(ワコールブランド、ウイングブランドのインナーウェア以外、及び第3ブランドグループ(アンフィブランドなど))の仕入先工場を対象に2度目の自己評価を実施

・現地監査は感染症の影響を確認の上、実施予定

 

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