業績

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、昨秋以降は新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の普及とともに、感染者数も減少して消費回復への期待が高まりましたが、本年1月以降は、3回目のワクチン接種が高齢者から優先的に普及し始めたものの、新たなオミクロン株による感染が急拡大し、再び全国的な「まん延防止等重点措置」の発出に至り、衣料品や手芸関連品の消費マインドは腰折れする状況となりました。この先行きの不透明感を受けて日本向け衣料品の生産は引き続き慎重で、工業用縫い糸は受注の回復が鈍かった上、家庭用縫い糸も前期の手作りマスク需要などの反動に加えて店舗への来店顧客数も減少し、受注の低迷が続きました。さらに一方で、原油価格の上昇等による原材料価格や輸送費用の上昇が製造原価を押し上げるなど、売上高の減少と製造コスト上昇の両面で、縫い糸の事業環境は極めて厳しい状況となりました。
 これらにより当連結会計年度の売上高は、為替換算レート変動による増収要因があったにもかかわらず、5,417百万円(前期比7.1%減)となりました。
 一方、利益面につきましては、前期には当社新社屋に関連する一過性の費用があったことや、当期の受注低迷や営業活動制約等に伴い、販管費は前期と比較して低水準にあるものの、当社の売上高および生産高の減少と原材料価格の上昇、アジアセグメントでの生産子会社の減益が響いて、営業損失は212百万円(前期は95百万円の利益)、経常損失は168百万円(前期は146百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失は164百万円(前期は137百万円の利益)となりました。
 

 当連結会計年度におけるセグメントごとの経営成績は次のとおりです。

 

日本

当社グループにおきましては、事業年度の末日を、当社は3月末日、国内子会社は1月末日と定めております。

国内における衣料品は、昨年秋口以降の感染減少で、本格的な消費回復が期待されましたが、本年1月以降のオミクロン株の感染急拡大により、消費マインドは再び落ち込み、その生産もまだら模様で慎重な姿勢が続きました。これにより衣料用縫い糸の受注も回復の見られぬ状況が続きました。

 

またカーシート向けなど、車輛内装用縫い糸は、当期は自動車生産の回復に比例して受注も回復傾向となりましたが、昨秋以降は半導体不足や海外部品生産国でのコロナ感染拡大による調達難から国内の自動車生産が減速した影響を受けました。
 さらに国内が主な市場である手芸関連分野は、前期の手作りマスク需要などの反動に加えて、特に本年1月以降はオミクロン株による感染急拡大により、消費マインドの低下や店舗への来店顧客数が減少したこともあって、家庭用縫い糸の受注は低迷が続きました。

これらにより当セグメントの売上高は4,262百万円(前期比11.1%減)となりました。

また、利益面につきましては、前期には当社新社屋に関連する一過性の費用もあったことや、当期の受注減少や営業活動制約等に伴い、販管費は前期と比較して低水準にあるものの、当社の売上高および生産高の減少に加えて原油価格の上昇等による原材料価格や輸送コストの上昇が製造コストを押し上げ、セグメント損失は191百万円(前期は31百万円の利益)となりました。

 

アジア
 当セグメントに属する全ての海外子会社は、事業年度の末日を12月末日と定めており、当連結会計年度には、2021年1月から12月までの業績が連結されております。

 当セグメントの海外子会社は中国、タイ国、ベトナムにあり、中国におきましては、ゼロコロナ政策により、感染者数も抑制され、営業活動や工場の操業を制限されることはありませんでしたが、日本向け衣料品の生産は回復が鈍いため、それらに使用する縫い糸の受注は大きな回復が見られない状況が続きました。

 また、タイ国やベトナムにおきましては、中国同様に日本向け衣料品の生産の回復はまだら模様であった上、それぞれの国で感染の増加と減少が繰り返され、従業員の出勤や事業活動が制限される事態も発生するなど、不安定な事業環境が続きました。

 しかしながら為替換算レートの変動による増収要因があったため、当セグメントの売上高は1,154百万円(前期比11.7%増)となりました。

 一方、利益面は、円安の影響も受け、特に中国の子会社において、エネルギー価格、輸送費等の上昇などに加え、前期に実施されたコロナ禍における政府の減免措置が減少したことで製造費用、販管費が共に大幅に増加するなど、中国事業における減益が響いてセグメント損失は20百万円(前期は51百万円の利益)となりました。

 

財政状態の状況は、次のとおりであります。

 

資産の部については、流動資産は、前連結会計年度末に比べて131百万円増加し、6,749百万円となりました。これは、主として電子記録債権が42百万円減少したものの、現金及び預金が89百万円、仕掛品が47百万円、商品及び製品が35百万円増加したことなどによります。

固定資産は、前連結会計年度末に比べて62百万円減少し、4,026百万円となりました。これは、主として投資有価証券が59百万円減少したことなどによります。

これらの結果、総資産は、前連結会計年度末に比べて68百万円増加し、10,775百万円となりました。

 

負債の部については、流動負債は、前連結会計年度末に比べて14百万円増加し、588百万円となりました。これは、主として未払法人税等が34百万円減少したものの、買掛金が68百万円増加したことなどによります。

固定負債は、前連結会計年度末に比べて10百万円減少し、741百万円となりました。これは、主として役員退職慰労引当金が21百万円増加したものの、繰延税金負債が22百万円、退職給付に係る負債が8百万円減少したことなどによります。

これらの結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べて4百万円増加し、1,330百万円となりました。

 

純資産の部については、前連結会計年度末に比べて63百万円増加し、9,445百万円となりました。これは、主として利益剰余金が260百万円減少したものの、為替換算調整勘定が284百万円、非支配株主持分が71百万円増加したことなどによります。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は2,170百万円となり、前連結会計年度末より100百万円増加いたしました。活動別キャッシュ・フローの状況は、次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失169百万円(前期は純利益146百万円)があったものの、減価償却費をはじめとする非資金項目が223百万円(前期は226百万円)、売上債権の減少額126百万円(前期は47百万円)となったことなどにより、127百万円の流入(前期は569百万円の流入)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の払戻による収入667百万円(前期は668百万円)があったものの、定期預金の預入による支出634百万円(前期は590百万円)、有形固定資産の取得による支出44百万円(前期は267百万円)となったことなどにより、13百万円の流出(前期は173百万円)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額が96百万円(前期は86百万円)となったことなどにより、103百万円の流出(前期は113百万円)となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

 a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(千円)

前期比(%)

日 本

2,563,474

△18.2

アジア

1,227,979

3.5

合 計

3,791,454

△12.2

 

 

 b. 受注実績

当社グループは、需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。

 

 c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前期比(%)

日 本

4,262,717

△11.1

アジア

1,154,735

11.7

合 計

5,417,452

△7.1

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積り、判断及び仮定を必要としております。これらの見積りについて過去の実績や合理的と判断される入手可能な情報等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
 なお、新型コロナウイルス感染症の影響等不確実性が大きく、将来の業績予測等に反映させることが難しい要素もありますが、現時点において入手可能な情報を基に連結財務諸表の作成を行っております。

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、「第2 事業の状況3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1) 経営成績等の状況の概要① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおり、売上高5,417百万円(前期比7.1%減)、営業損失212百万円(前期は95百万円の利益)、経常損失168百万円(前期は146百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失は164百万円(前期は137百万円の利益)となりました。
 この経営成績等の状況に関する経営者の認識につきましては、前連結会計年度から一転して大幅な損失を計上することとなったうえ、次期の見通しにおきましても、アジア各国のロックダウンなどを始めとする新型コロナウイルス感染対策が、今後の事業におよぼす影響は引き続き不透明なことに加え、急激な円安を背景とした原材料価格やエネルギー価格のさらなる上昇等がもたらす製造コストへの影響はもちろん、日本国内の諸物価の上昇がもたらす衣料品や手芸関連品の消費マインドへの影響も懸念されるなど、当社グループの経営環境は国内外ともにさらに不透明で厳しさを増すものと予想されます。

 現時点での中長期の経営環境の見通しは上述の通りであり、引き続き対処すべき課題に取り組んでまいりますが、先ずはグループとして現状の大幅な損失の解消が重要な課題であると認識しております。

また上記より、今後の業績と課題に重要な影響を与える要因といたしましては、以下の点があると認識しております。

・国内外における新型コロナウイルス感染症の当面の推移と、とりわけアジア諸国のロックダウンなどを始めとする感染防止対策や当社グループの事業への影響

・原油を始めエネルギー価格や原材料価格の動向

・わが国における今後の個人消費の動向(とりわけ衣料品や手芸関連品の消費マインドや消費志向、購買行動)

・消費動向に伴う衣料品の国内外の生産と縫製業の動向

・関連業界におけるサスティナブル対策とアジア各国の環境保全対策の動向

・為替レートの今後の推移

・海外合弁先企業の動向

なお、セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「第2 事業の状況3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1) 経営成績等の状況の概要① 財政状態及び経営成績の状況」及び「第5 経理の状況1 連結財務諸表等注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりであります。

③ キャッシュ・フローの状況の分析、検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関する情報

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、外部借入に依存しない財務体質を基盤として、自己資金を財源に今後の事業投資を考えており、また、流動性については現金及び預金の保有状況からみて十分に確保されているものと考えております。当連結会計年度のキャッシュ・フローの概況につきましては、「第2 事業の状況3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります 。

 

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