当社は、2021年4月2日付で連結子会社であった株式会社トライバルメディアハウスの全株式を譲渡いたしました。これにより、当事業年度より、従来連結で行っておりました開示を非連結での開示に変更いたしました。
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けるなかで、持ち直しの動きが続いているものの、サプライチェーンの停滞などによる世界的な資源価格の上昇やウクライナ情勢等による下振れリスクが懸念されるなど、先行きは依然として不透明な状況が続いております。
当社が提供するデジタルマーケティング関連領域におきましては、「巣ごもり消費」の拡大やリモートワーク等の「新しい日常」の拡大を受け、ECサイトなどの自社チャネルで商品を直接的に販売する「ダイレクト・トゥ・コンシューマー(D2C)」や、デジタル技術を用いて製品やサービス、ビジネスモデルを変革する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に取り組む企業が増加しております。
このような事業環境の中、当社は、長期化する新型コロナウイルス感染症の対策として、リモートワークを中心とした柔軟な労働環境や制度の充実の他、営業活動やプロジェクト業務におきましても、ビデオ会議システムを活用した社内外とのコミュニケーションを推進し、新しい働き方への変革を続けております。また、過年度より取り組んできた収益体質の改善に一定の成果が得られたことから、当事業年度を事業再成長の年と位置づけ、既存の受託領域の拡大と新規領域への投資を積極的に進めてまいりました。
受託領域につきましては、大口顧客の案件が拡大するとともに、大型プロジェクトの効率的な運営等によって人員の稼働率が向上いたしました。また新しいサービスとして、オンラインサービス等を利用する際の不明点をユーザー自身で解決できる仕組みづくりを通してコールセンターコストの削減や顧客LTV(注1)の向上を実現する「セルフサポート支援サービス」を開始しております。
新規領域への取り組みとしましては、世界で175か国・170万以上のオンラインショップで採用されているEコマースプラットフォーム「Shopify(ショッピファイ)」の導入・活用を支援するサービスを新たに開始いたしました。また、国内外のShopifyアプリを紹介する新メディア「Slash App」サイトを開設するとともに、自社アプリの開発に注力し、懸賞品やサンプル品の配送業務の負荷を軽減する「懸賞・キャンペーンサポーター」や、売上向上をサポートする「ポップアップ サポーター」、新たに低価格でCRMが実現できる「サンキューサポーター」等のアプリを開発、サービスインいたしました。
一方、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)に対する投資意欲の高まりに伴い、業界を問わないデジタル人材の採用競争がますます激しくなっていることから、人材採用が計画通りに進まず、新規受注に対する制約になったこと等の課題も現れてきております。当社はデジタル人材不足の社会問題化にも目を向け、パートナー企業と協働して若手IT・デジタル人材の育成プロジェクトを開始いたしました。
用語解説
(注1)LTV
LTVとは、Life Time Value(ライフ タイム バリュー)の略で、「顧客生涯価値」と訳される。一人、あるいは一社の顧客が、特定の企業やブランドと取引を始めてから終わりまでの期間(顧客ライフサイクル)内にどれだけの利益をもたらすのかを算出したもの。
以上の結果、当事業年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当事業年度末の資産合計は、前事業年度末に比べ806百万円増加し、3,122百万円(前年同期比34.8%増)となりました。
当事業年度末の負債合計は、前事業年度末に比べ248百万円増加し、648百万円(前年同期比62.0%増)となりました。
当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末に比べ558百万円増加し、2,474百万円(前年同期比29.1%増)となりました。
b.経営成績
当事業年度の経営成績は、売上高3,416百万円(前事業年度比0.2%増)、営業利益205百万円(前事業年度比46.1%増)、経常利益205百万円(前事業年度比46.4%増)となりました。なお、当期純利益は、特別利益として関係会社株式売却益を604百万円計上、法人税、住民税及び事業税を136百万円、法人税等調整額を93百万円計上したこと等から580百万円(前事業年度比119.9%増)となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当事業年度の期首から適用しており、当事業年度の売上高及び売上原価は415百万円減少しておりますが、営業利益、経常利益、税引前当期純利益に与える影響はありません。また、同基準適用前の従来基準で算定した場合の売上高は3,831百万円、前事業年度比は12.4%増となります。詳細については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。
②キャッシュ・フローの状況
前事業年度まで連結キャッシュ・フロー計算書を作成しておりましたが、当事業年度からキャッシュ・フロー計算書を作成しているため、前期との比較は行っておりません。
当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、以下に記載の各キャッシュ・フローにより1,962百万円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期純利益810百万円を計上し、増加要因として、仕入債務の増加額103百万円、賞与引当金の増加額17百万円、未払金の増加額17百万円、前払費用の減少額14百万円、減価償却費の計上5百万円等があり、また減少要因として、売上債権の増加額149百万円、法人税等の支払額25百万円、関係会社株式売却益の計上604百万円等により、205百万円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、増加要因として、関係会社株式の売却による収入700百万円、投資有価証券の売却による収入7百万円があり、また減少要因として無形固定資産の取得による支出1百万円により、706百万円の収入となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、減少要因として配当金の支払い22百万円により、22百万円の支出となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社の事業内容に、生産に該当する事項がありませんので、生産実績に関する記載はしておりません。
b.受注実績
当事業年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高(千円) |
受注残高(千円) |
SIPS事業 |
3,380,158 |
723,071 |
合計 |
3,380,158 |
723,071 |
(注)1.当社は、SIPS事業の単一セグメントであります。
2.当社は、当事業年度より非連結決算に移行したことから、前年同期比については記載しておりません。
3.当社は、当事業年度より契約案件に着手した時点で受注高として集計する方法から、契約の受注時点で受注高として集計する方法に変更しております。
c.販売実績
当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
金額(千円) |
SIPS事業 |
3,416,141 |
合計 |
3,416,141 |
(注)1.当社は、SIPS事業の単一セグメントであります。
2.当社は当事業年度より非連結決算に移行したことから、前年同期比については記載しておりません。
3.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
当事業年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|
金額(千円) |
割合(%) |
|
株式会社エヌ・ティ・ティ・データ |
1,130,393 |
33.1 |
スターバックスコーヒージャパン株式会社 |
370,060 |
10.8 |
※当社は当事業年度より非連結決算に移行したことから、前事業年度については記載しておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1)財政状態
(資産合計)
当事業年度末における資産につきましては、前事業年度末に比べ806百万円増加し、3,122百万円(前年同期比34.8%増)となりました。主な増加要因は、現金及び預金の増加888百万円、売上債権の増加149百万円等によるものであります。主な減少要因としては、関係会社株式の減少95百万円、繰延税金資産の減少93百万円等であります。
(負債合計)
当事業年度末における負債につきましては、前事業年度末に比べ248百万円増加し、648百万円(前年同期比62.0%増)となりました。主な増加要因は、仕入債務の増加103百万円、未払法人税等の増加119百万円、賞与引当金の増加17百万円等によるものであります。
(純資産合計)
当事業年度末における純資産につきましては、前事業年度末に比べ558百万円増加し、2,474百万円(前年同期比29.1%増)となりました。主な増加要因は、当期純利益580百万円の計上等、また主な減少要因は、配当金の支払い22百万円であります。以上の結果、自己資本比率は、前事業年度末の82.7%から79.2%となりました。
2)経営成績
(売上高)
売上高は、前事業年度に比べ6百万円(0.2%)増加し、3,416百万円となりました。売上高の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。
(営業費用及び営業損益)
売上原価は、売上高は増加したものの人件費の減少等により、前事業年度に比べ195百万円(△7.1%)減少し、2,563百万円となりました。以上の結果、売上総利益は、前事業年度に比べ201百万円(30.9%)増加し、852百万円となりました。
販売費及び一般管理費は、前事業年度に比べ136百万円(26.8%)増加し、647百万円となりました。主な要因は、研究開発費62百万円の増加、役員報酬18百万円の増加等によるものであります。
以上の結果、営業利益は、前事業年度に比べ64百万円(46.1%)増加し、205百万円となりました。
(営業外損益及び経常損益)
営業外収益は、前事業年度に比べ5百万円(△58.4%)減少し、4百万円となりました。営業外費用は、前事業年度に比べ6百万円(△61.1%)減少し、3百万円となりました。この結果、経常利益は205百万円(前事業年度比46.4%増)となりました。
(特別損益及び税引前当期純損益)
特別利益は、関係会社株式売却益604百万円の計上等により、605百万円となりました。
以上の結果、税引前当期純利益は810百万円(前事業年度比478.1%増)となりました。
(当期純損益)
当期純利益は、法人税、住民税及び事業税136百万円の計上の他、法人税等調整額93百万円を計上したことから580百万円(前事業年度比119.9%増)となりました。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社は、顧客企業から依頼を受け、デジタルマーケティング関連のサービスを提供する受託型のビジネスモデルを主な収益源としております。デジタルマーケティングのコンサルティング、ウェブサイトやソーシャルメディアのコンテンツやデザインの制作、マーケティングシステムの開発や運用、データ分析等のサービスを、大企業を中心とする法人に対してプロジェクト形式で提供しております。
各プロジェクトの収益は、売上からプロジェクトに関わった人件費や外注費等を差し引いた額となります。プロジェクトの管理が適切に行われない場合、顧客企業の要望と当社が制作する成果物との間に不整合が生じ、既に制作した成果物の改修等に人件費、外注費等のコストを追加投入することになり、プロジェクトの収益は悪化します。また、売上総利益には人員の稼働率も大きな影響を及ぼします。当社の固定費は主に人件費であり、受注の低迷等によって稼働率が低下した場合、会社の収益性は悪化します。当社が安定的に利益を創出するためには、適正な稼働率を確保した安定的な受注と、プロジェクトの適切な管理が重要な要素になります。
当事業年度におきましては、プロジェクトの管理を強化することで外注費等のコストが抑制され、収益性は前期比較で向上しております。しかしながら、プロジェクトの多くが下半期に偏重していることから、業績も下半期に偏重しており、収益の安定性において課題は残っております。当社では、業績の季節偏重性を緩和するため、継続的な稼働を見込めるサービスを強化するとともに、人員の稼働に依存しないツールやSaaS等の資本集約型ビジネスの開発に積極的に取り組んで行く方針です。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況・検討内容
当事業年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期純利益810百万円を計上したことを主な要因として205百万円の収入となりました。当事業年度末における現金及び現金同等物は1,962百万円であり、通常の運転資金として不足のない水準と認識しております。2022年度における当社の主な短期的な資金需要としましては、営業活動上の運転資金の他、配当支払い等を見込んでおります。
当社の短期的な資金調達の源泉は、主に営業活動によって獲得した現金となります。また緊急に資金が必要となる場合や金融市場の混乱など不測の事態に機動的に対応するため、金融機関との間でコミットメントライン契約および当座貸越契約を締結し、資金の流動性を確保しております。新型コロナウイルス感染症やウクライナ情勢等の影響による国内外経済の悪化により、顧客企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)活動やマーケティング活動が停滞し、ひいては当社の業績および財政状態に影響を受ける可能性がありますが、将来の予測可能な資金需要に対して不足が生じる事態に直面する懸念は少ないと認識しております
b.資本の財源及び資金の流動性
当社の事業活動における運転資金需要の主なものは、人件費及び外注費であり、運転資金については、主に内部資金により調達しております。また、当社では、サービスの拡充に向けた体制強化や、中長期的な資本集約型ビジネスの開拓を目的として必要に応じてM&Aを行っていくことを方針としており、将来的な資金需要が発生する可能性がありますが、報告日現在において、発表すべき事象はございません。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。作成においては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。当社は、特に次の重要な会計方針が当社の財務諸表の作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
なお、財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
a.貸倒引当金
当社は、売上債権等の貸倒損失に備えて回収不能となる見込額を貸倒引当金として計上することとしております。
将来、顧客企業の財務状況が悪化し支払能力等が低下した場合には、引当金の計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。
b.受注損失引当金
当社は、顧客企業より受注済みの案件のうち、当該受注契約の履行に伴い、翌事業年度以降に損失の発生が見込まれ、かつ、当該損失額を合理的に見積もることが可能なものについては、将来の損失に備えるため翌事業年度以降に発生が見込まれる損失額を受注損失引当金として計上することとしております。
c.固定資産の減損処理
当社は、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、減損の要否を検討しております。
将来の事業計画や市場環境の変化により、減損の兆候が発生した場合、減損損失を計上する可能性があります。
d.繰延税金資産の回収可能性の評価
当社は、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、将来の課税所得を合理的に見積っております。
繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存しますので、その額に変動を生じた場合には、繰延税金資産の取崩し又は追加計上により、利益が変動する可能性があります。
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