(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社および連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー
(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当社グループは、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を適用しております。
前連結会計年度と収益の会計処理が異なることから、以下の経営成績に関する説明において、増減額および前年同期比(%)を記載せず説明しております。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が続くなか、ウクライナ情勢に起因する世界的な経済活動の停滞が懸念され、サプライチェーンの混乱やエネルギー・資源価格の高騰に拍車がかかるなど厳しい状況で推移したほか、金融資本市場の変動による下振れリスクがあるなど、先行きの見通しにも強い不透明感が生じております。当社グループの主要顧客である自治体の国民健康保険、後期高齢者医療広域連合などの保険者においても感染症拡大防止のため保健事業の中止または延期を選択するなどの影響がみられました。一方で、保険財政の改善のための保険者による予防・健康づくりの推進および医療費適正化に向けての取組みは継続されており、当社の主力であるデータヘルス関連サービスの需要は底堅く推移しております。また、前連結会計年度より都道府県が実施する国保ヘルスアップ支援事業の動きが本格化しており、当連結会計年度においても都道府県単位での需要が継続しております。
このような状況下で、当連結会計年度において当社グループは、都道府県庁、市町村国保および福祉事務所などへのデータヘルス関連サービスの販売活動を積極的に推進いたしました。しかし、度重なる新型コロナウイルス感染症拡大により、自治体の職員をはじめ看護師、保健師が新型コロナウイルスワクチン接種の対応に追われるなどの影響により、お客様都合での予算削減や事業中断、重症化予防事業での指導時の感染リスクを理由とした指導人数の減少、新規のお客様からの受注減少など当社事業に影響を受けました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高は29億90百万円(前連結会計年度は33億30百万円)となりました。
一方、費用面では売上高2割増加を目指し提供体制の強化を進め、2023年6月期に新たに遠隔指導による重症化予防指導を拡大するための準備と、2024年6月期に第3期データヘルス計画の作成を中心に需要が大幅に増加することが予想されるため、営業体制とサービス提供体制の強化、自治体のDX化に対応したシステムやデータ利活用事業などの新事業への研究開発費投資を行いました。この結果、減収となるなか販売費及び一般管理費が増加し、営業損失は3億15百万円(前連結会計年度は3億48百万円の営業利益)となりました。
営業外損益では、当連結会計年度に事業拡大に備えた増床のため広島本社が入居中のビルの区分所有権を取得いたしましたが、一部賃貸不動産も所有することとなったため受取家賃ならびに賃貸収入原価が発生いたしました。また、第三者割当増資ならびに公開買付等に係るコンサル報酬等の支払手数料が多く発生したため、経常損失は3億79百万円(前連結会計年度は3億63百万円の経常利益)となりました。
特別損益では、将来の収益獲得が見込まれなくなった固定資産の減損を行い、減損損失が発生いたしました。
また、税金費用は、繰延税金資産のスケジューリングを見直し、評価性引当額の範囲が拡大しております。
これらの結果、親会社株主に帰属する当期純損失は4億10百万円(前連結会計年度は2億83百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
なお、収益認識会計基準等の適用により、当連結会計年度の売上高は1億75百万円増加、売上原価が51百万円増加し、営業損失、経常損失および税金等調整前当期純損失がそれぞれ1億24百万円減少しております。
(イ)財政状態
(資産の状況)
資産合計の当連結会計年度末の残高は、前期末に比べて13百万円減少し、22億63百万円となりました。
このうち、流動資産は収益認識会計基準等の適用により売掛金及び契約資産に含まれる契約資産が4億41百万円増加したほか、仕掛作業分の費用支払いや納税などにより現金及び預金が6億84百万円減少したことで3億54百万円減少し、当連結会計年度末の残高は10億48百万円となりました。
また、固定資産は広島本社ビルの区分所有権の一部取得による賃貸不動産の増加や社内開発によるソフトウエアおよびソフトウエア仮勘定の増加により3億40百万円増加し、当連結会計年度末の残高は12億14百万円となりました。
(負債の状況)
負債合計の当連結会計年度末の残高は、前期末に比べて2億67百万円増加し、9億77百万円となりました。
このうち、流動負債は金融機関からの短期借入金の増加4億円のほか、未払法人税等および未払消費税等の減少2億7百万円および賞与引当金の減少などにより2億45百万円増加し、当連結会計年度末の残高は9億32百万円となりました。
また、固定負債に大きな増減はありません。
(純資産の状況)
当連結会計年度末の純資産の残高は、収益認識会計基準等の適用により、当連結会計年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の累積的影響額を期首の利益剰余金に加算したことにより、利益剰余金が1億53百万円増加した一方で、親会社株主に帰属する当期純損失4億10百万円および配当支払により利益剰余金が63百万円減少したことなどにより前期末に比べて2億80百万円減少し、12億86百万円となりました。
また、自己資本比率は53.0%となりました。
(ロ)経営成績
(売上高)
当社グループの当連結会計年度の売上高は、福祉事務所向けの被保護者健康管理支援事業の準備事業が前連結会計年度で終了したため、福祉事務所向けの売上高が減少しました。また、度重なる新型コロナウイルス感染症拡大により、自治体が対応に追われたためお客様都合での予算削減や事業中断、感染リスクを理由とした重症化予防事業での指導人数の減少、新規の受注減少などの影響を受け、市町村国保・国民健康保険団体連合会・後期高齢者医療広域連合向けの売上高は前期並みもしくは前期比減少となりました。前期から本格化した都道府県庁向けの都道府県国保ヘルスアップ支援事業は売上高を伸ばしたものの、全体では前期と比べて減少となり、29億90百万円(前連結会計年度は33億30百万円)となりました。
(売上総利益)
売上総利益は、減収による影響のほか、売上高2割増加を目指し提供体制の強化を進めたため売上原価が増加し、12億56百万円(前連結会計年度は17億79百万円)となりました。なお、売上高総利益率は42.0%となりました。
(営業損益)
営業損益は、減収による影響のほか、営業体制の強化やデータ利活用事業などの新事業への研究開発投資を行ったため、販売費及び一般管理費が増加し、3億15百万円の営業損失(前連結会計年度は3億48百万円の営業利益)となりました。売上高営業利益率は、△10.6%となりました。
(経常損益)
経常損益は、当連結会計年度に購入した広島本社が入居しているビルの区分所有権に賃貸不動産が含まれていたため、受取家賃ならびに賃貸収入原価が発生しました。また、第三者割当増資ならびに公開買付等に係るコンサル報酬等の支払手数料が多く発生したため、3億79百万円の経常損失(前連結会計年度は3億63百万円の経常利益)となりました。売上高経常利益率は、△12.7%となりました。
(親会社株主に帰属する当期純損益)
親会社株主に帰属する当期純損益は減収の影響に加えて、社内で開発したソフトウエアのうち、将来の収益獲得が見込まれなくなったものについて減損を行ったほか、繰延税金資産のスケジューリングを見直し、評価性引当額の範囲が拡大しました。これらの結果、4億10百万円の親会社株主に帰属する当期純損失(前連結会計年度は2億83百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末に比べ6億84百万円減少し、当連結会計年度末には3億79百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は、4億42百万円(前連結会計年度は3億95百万円の獲得)となりました。
これは、主に税金等調整前当期純損失4億30百万円、減価償却費1億71百万円、法人税等の支払額1億19百万円などによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、5億72百万円(前連結会計年度は3億91百万円の使用)となりました。
これは、主に固定資産の取得による支出によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の得られた資金は、3億31百万円(前連結会計年度は56百万円の使用)となりました。
これは、主に金融機関からの運転資金の借り入れによるものです。
③生産、受注及び販売の実績
(イ)生産実績
当社グループの事業は提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
(ロ)受注実績
当連結会計年度の受注保険者数および受注保険者数残高の実績は、次のとおりであります。
サービスの名称 |
受注保険者数 (件) |
前年同期比 (%) |
受注保険者数 残高 (件) |
前年同期比 (%) |
保険者向け情報サービス |
638 |
88.5 |
466 |
101.3 |
(ハ)販売実績
当連結会計年度の販売実績をサービスの区分ごとに示すと、次のとおりであります。
(単位:千円)
サービスの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年7月1日 至 2022年6月30日) |
保険者向け情報サービス |
2,844,934 |
その他 |
145,349 |
合計 |
2,990,284 |
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年7月1日 至 2021年6月30日) |
当連結会計年度 (自 2021年7月1日 至 2022年6月30日) |
||
販売高(千円) |
割合(%) |
販売高(千円) |
割合(%) |
|
ひろぎんITソリューションズ㈱ |
186,440 |
5.6 |
146,317 |
4.9 |
㈱エヌ・ティ・ティ・データ |
214,326 |
6.4 |
115,746 |
3.9 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(イ)財政状態の分析
当連結会計年度の財政状態の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(ロ)経営成績の分析
当連結会計年度における売上高は29億90百万円(前連結会計年度は33億30百万円)となりました。売上高が減少した大きな要因は次の2点と認識しております。
a.新型コロナウイルス感染症拡大の影響
当連結会計年度においては、度重なる新型コロナウイルス感染症拡大により、自治体の職員をはじめ看護師、保健師が新型コロナウイルスワクチン接種の対応に追われるなどの影響により、お客様都合での予算削減や事業中断、重症化予防事業での指導時の感染リスクを理由とした指導人数の減少、新規のお客様からの受注減少などの影響を受けました。
前連結会計年度に引き続き、他県への移動制限などにより営業活動が制限されるなか、電話やWebも積極的に活用し営業活動を進めましたが、新型コロナウイルス感染症拡大による影響をカバーするほどの新規受注や既存先への提供サービス追加に結びつけることができず、全体では大きく減少となりました。
なお、前連結会計年度に需要が本格化した都道府県庁からの受注については当連結会計年度も受注を伸ばしており、47都道府県のうち、約4割の19の都道府県庁から受注いたしました。
b.補助金終了に伴う福祉事務所向け売上の減少
生活保護受給者への被保護者健康管理支援事業の準備事業に対し、2020年12月まで補助率10/10の補助金が支給されていましたが、当該補助金は前連結会計年度で終了したため、準備事業で多く受注していた福祉事務所向けの売上高が大きく減少となりました。補助金終了後の受注対策として、新たにタブレットシステムの導入を進めてまいりましたが、計画通りの受注とならず、売上高の減少を食い止めることができない結果となりました。
減収となったものの、当初計画に基づき売上高2割増加を目指し提供体制の強化を進めたほか、将来の売上拡大を目指した積極的な新商品・新事業の開発や営業体制とサービス提供体制の強化のための人員採用により、研究開発費と人件費を中心に販売費及び一般管理費が増加し、営業損失は3億15百万円(前連結会計年度は3億48百万円の営業利益)となりました。また、経常損失は第三者割当増資ならびに公開買付等に係るコンサル報酬等の支払手数料が多く発生したため、3億79百万円(前連結会計年度は3億63百万円の経常利益)となりました。売上高経常利益率は△12.7%であり、期首の予想値を大きく下回りました。
なお、親会社株主に帰属する当期純損失は、上記の要因に加え減損損失の計上や繰延税金資産のスケジューリングの見直しにより4億10百万円(前連結会計年度は2億83百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(イ)キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析につきましては「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
(ロ)資本の財源及び資金の流動性
当社グループの主な資金需要は事業運営上必要な人件費および業務委託費などの運転資金ならびに研究開発投資に必要な人件費および外注費などであります。
当社グループの当連結会計年度末の現金及び預金は3億79百万円、有利子負債(短期借入金のみ)は4億円であり、当社グループの資金の流動性は当面十分であると考えております。なお、当社グループは、自治体との契約が中心となるため、自治体の年度末である3月末までを契約期間とする業務が多く、営業収入の入金が第4四半期に集中いたします。このため、期中は運転資金の外部調達が必要になりますが、複数の取引銀行と当座貸越契約を締結しており、機動的な資金確保が可能であります。また、当座貸越契約の借入枠についても十分な金額を確保しております。
なお、将来大規模な投資資金などの資金需要が発生した場合には、エクイティファイナンス等による調達手段を検討してまいります。
株主還元については、財務体質の強化および積極的な事業展開に備えるため必要な内部留保を確保しつつ、配当性向30%程度を目安として業績に対応した配当を行うことを基本方針としております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりまして、見積りや仮定によることが必要になります。経営者は、過去の実績や状況および現在入手可能な情報を総合的に勘案し、その時点でもっとも合理的と考えられる見積りや仮定を継続的に採用しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、新型コロナウイルス感染症について、当社においては、主要顧客である自治体が新型コロナウイルス感染症拡大への対応に追われることでお客様都合での予算削減や事業中止、感染リスクを理由とした重症化予防事業での指導人数の減少、感染拡大防止のための移動の自粛等の事業活動に制限が出たことによる新規受注の減少などの影響を受けております。
新型コロナウイルス感染症の収束時期を予測することは困難でありますが、一定の影響はあるものとして、繰延税金資産の回収可能性等の会計上の見積りを行っております。
当社グループが採用しております会計方針のうち、重要となる事項につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
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