(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状況、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるスマートフォン市場は、新通信規格「5G(第5世代移動通信システム)」に対応した端末の出荷が好調となっています。一方で、新型コロナウイルス感染症拡大により、我が国では経済活動が停滞し景気が急速に悪化しました。世界的には段階的な経済活動の再開により一部持ち直しの傾向はみられるものの、依然として先行きの不透明感が強い状況です。
人工知能(AI)を活用した関連産業の市場は、生産性向上や製品・サービス品質向上を目指す企業ニーズの高まりを受け、良好な状況が続いております。
このような状況下において当社は、2019年10月期に開始した3カ年の中期経営計画「Vision2021」を推進いたしました。最終年度となる当連結会計年度は、引き続き「モルフォ画像技術のデファクトスタンダード化」「成長スピード加速」を中期経営目標に設定し、「経営資源の重点配分」「グローバル化加速」「経営基盤強化」を施策の柱に据え、目標達成に向けて取り組んでまいりました。2021年10月期より新しいビジョンとして「Rise above what we see, to realize what we feel -人間の目を拡張し、感動に満ちた世界を実現しよう-」を掲げ、画像処理、画像認識及びその組み合わせにより、中期経営目標の実現に向け引き続き取り組んでまいりました。
当連結会計年度においては、成長スピード加速を実現すべく、アライアンスを軸にしたオープンイノベーション推進に積極的に取り組みました。当社技術との親和性が高いと思われるテクノロジー関連企業との連携を通じ、実用的かつ付加価値が高い製品及びサービスの短期間での市場投入や、双方のノウハウ・チャネルを生かした企画及び事業機会の拡大を図りました。
主軸事業であるスマートフォン向けソフトウェアのライセンシングにおいては、米中貿易摩擦の影響に伴い、当社主要取引先の端末出荷台数が伸び悩んだこと、特定取引先において半導体不足の影響により当社製品が搭載される端末モデルの販売数量が減少したこと、並びに取引先のモバイル事業撤退等に伴い、当社が収受するロイヤリティが減少し、売上が鈍化しております。当社グループとしては、スマートフォンカメラの機能を左右する半導体メーカーとの連携を強化するとともに、引き続きグローバルな事業展開を推進してまいります。また、開発収入の領域においては、既存顧客からの車載機器向け売上高が一時的に減少しておりましたが、第3四半期連結累計期間より回復基調となっています。
新規のビジネス展開としては、引き続きスマートフォン関連ビジネスに限らない収益多様化の取り組みを活発化させ、継続的な収益獲得に向け取り組んでおります。2020年11月、防犯カメラの映像から混雑状況を判定する映像解析ソフトウェア「SECURE群衆カウントソリューション」を株式会社セキュアと共同開発し、セキュア社より提供開始されました。2021年5月には、100%子会社であるモルフォAIソリューションズが、国立国会図書館より「OCR処理プログラムの研究開発作業」の委託事業を受託しました。2021年9月には、株式会社ミックウェアと、車載機器開発におけるソフトウェアの付加価値向上に向けた相互の協力、並びに新しいビジネスの協創を目的として資本業務提携を開始しました。
費用面では、中長期的な成長に向け、優秀な人材の採用や研究開発などの先行投資に注力いたしました。
ⅰ)財政状況
当連結会計年度末における資産、負債及び純資産の状況は次のとおりであります。
(資産)
流動資産合計は、4,077,386千円(前連結会計年度末比798,670千円減)となりました。これは主に、現金及び預金が1,045,501千円、前払費用が23,017千円減少したことによるものであります。
固定資産合計は、472,777千円(同44,549千円減)となりました。これは主に、有形固定資産が21,408千円、ソフトウェアが14,354千円、投資有価証券が5,762千円減少したことによるものであります。
以上の結果、資産合計は4,550,163千円(同843,219千円減)となりました。
(負債)
流動負債合計は、362,386千円(前連結会計年度末比110,567千円増)となりました。これは主に、買掛金が68,479千円、未払金が30,946千円増加したことによるものであります。
固定負債合計は、38,065千円(同7,553千円増)となりました。これは主に、資産除去債務が376千円増加したことによるものであります。
以上の結果、負債合計は400,451千円(同118,120千円増)となりました。
(純資産)
純資産合計は、4,149,712千円(前連結会計年度末比961,339千円減)となりました。これは主に資本金及び資本剰余金がそれぞれ9,804千円増加したこと、自己株式の取得等により自己株式が199,291千円、親会社株主に帰属する当期純損失の計上により利益剰余金が793,422千円減少したことによるものであります。
ⅱ)経営成績
この結果、当連結会計年度における業績は、海外子会社の貢献などにより売上高は1,730,737千円(前連結会計年度比16.5%減)、人材確保や研究開発など将来の成長に向けた先行費用の増加により営業損失は881,603千円(前連結会計年度は営業損失143,535千円)、経常損失は841,229千円(前連結会計年度は経常損失136,625千円)となりました。なお、当社子会社であるTop Data Science社について、ロイヤリティ型ビジネスモデル構築の遅れなどにより子会社化当時に想定していた期間での投資回収は厳しい状況となったため、当子会社に係るのれん減損損失38,217千円を特別損失として計上したことなどから、親会社株主に帰属する当期純損失は793,422千円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失652,159千円)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、3,391,708千円(前連結会計年度末
比1,045,501千円減)となりました。なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は、653,580千円(前連結会計年度は62,547千円の支出)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失865,994千円、減価償却費110,701千円を計上し、法人税等の支払額42,548千円、法人税の還付額136,205千円等となった一方で、売上債権の増加額136,833千円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、175,868千円(前連結会計年度は275,111千円の支出)となりました。これは主に、預け金の支出337,200千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、257,002千円(前連結会計年度は767千円の収入)となりました。これは主に、
自己株式取得による支出198,236千円によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
ⅰ)生産実績
当社グループは、生産に該当する事項がありませんので、生産実績に関する記載はしておりません。
ⅱ)受注実績
当連結会計年度の受注実績は次のとおりであります。
(単位:千円)
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2020年11月1日 至 2021年10月31日) |
|||
受注高 (千円) |
前年同期比 (%) |
受注残高 (千円) |
前年同期比 (%) |
|
ソフトウェア関連事業 |
682,941 |
125 |
223,967 |
198 |
合計 |
682,941 |
125 |
223,967 |
198 |
(注)1.当社の事業は単一セグメントであります。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
ⅲ)販売実績
a. 当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。
(単位:千円)
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2020年11月1日 至 2021年10月31日) |
前年同期比(%) |
ソフトウェア関連事業 |
1,730,737 |
83.5 |
合計 |
1,730,737 |
83.5 |
(注)1.当社グループの事業は単一セグメントであります。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2019年11月1日 至 2020年10月31日) |
当連結会計年度 (自 2020年11月1日 至 2021年10月31日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
Motorola Mobility LLC |
265,523 |
12.8 |
326,595 |
18.9 |
株式会社デンソー |
245,233 |
11.8 |
214,479 |
12.4 |
Huawei Device Co.,Ltd. |
397,751 |
19.2 |
85,282 |
4.9 |
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b. 主な製品別の販売実績は、次のとおりであります。
ソフトウェア製品名 |
前連結会計年度 (自 2019年11月1日 至 2020年10月31日) |
当連結会計年度 (自 2020年11月1日 至 2021年10月31日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
Morpho Panorama Giga Pixel |
469,813 |
22.7 |
199,109 |
11.5 |
Morpho HDR |
202,526 |
9.8 |
162,241 |
9.4 |
PhotoSolid |
200,473 |
9.7 |
153,745 |
8.9 |
SuperResolution |
50,458 |
2.6 |
86,797 |
5.0 |
Morpho Effect Library |
68,769 |
3.3 |
69,010 |
4.0 |
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、上記「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。また、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容ならびに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの概況につきましては、上記「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
資金需要及び資金調達につきましては、当社グループの属するソフトウェア業界は、事業の特性から常に新しい技術が創出され技術の陳腐化が早い事業環境にあります。またスマートフォンの急速な普及等、ハードウェアの進化により大幅な事業環境の変化が起こり得ます。
このような環境の中で、当社グループは、常に環境の変化に適応した革新的な技術やサービスの提供が求められております。従いまして、研究開発投資について継続的に実施していくことが求められ、かつ投下した研究開発投資等は比較的短期間のうちに成果に結実しなければならないものと認識しており、必然的に資金の循環は早くなるものと考えております。
今後につきましては、引き続き積極的に先行投資的な事業資金を投じていく方針であることから、現状の事業資金は、手元流動性の高い現金及び現金同等物として保持していく方針であります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成されており、連結財務諸表の作成に当たって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況」の「連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」及び「財務諸表等 注記事項(重要な会計方針」に記載しております。
連結財務諸表の作成に当たり、資産及び負債又は損益の状況に影響を与える会計上の見積りは、過去の実績等の財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
会計上の見積りが必要となる項目のうち、特に当社グループの財政状態又は経営成績に対して重要な影響を与える可能性があると認識している主な項目は以下のとおりです。
ⅰ)繰延税金資産
当社グループの繰延税金資産の回収可能性は、将来の収益力やタックスプランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得の発生状況等に基づき判断しております。当該見積り及び当該仮定において、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌事業年度以降の財務諸表において認識する繰延税金資産の金額に影響を与える可能性があります。
ⅱ)固定資産の減損
当社グループは、減損損失の認識の判定及び測定を行う単位として資産のグルーピングを行い、減損損失を認識する必要のある資産又は資産グループについて、その帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。将来の当該資産又は、資産グループを取り巻く経営環境の変化による収益性の変動や市況の変動により、回収可能価額を著しく低下させる変化が見込まれた場合、減損損失の金額に影響を与える可能性があります。
なお、新型コロナウイルス感染症の会計上の見積りに対する影響は、「第5 経理の状況」の「連結財務諸表等 注記事項(追加情報)」において記載しております。
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