当社の事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。ただし、これらは、当社で発生しうるすべてのリスクを網羅しているものではありません。
当社は、これらのリスクを認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応な適切に努めます。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
1. 事業環境に由来するリスクについて
(1)電子書籍市場の動向について
電子書籍市場は引き続き拡大が見込まれるなか、特に電子コミックにおいては消費者の認知が急速に広がり、今後も大きな市場成長が期待されます。また、デバイスの進化や通信環境の進歩により、電子コミックを購入・閲読する環境も年々変化を続けております。このような変化の速い市場においては、技術革新やプラットフォームの進化、新たなビジネスモデルの出現などが発生しやすいため、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、違法な海賊版や模倣品が流通することによって不利益がもたらされる可能性があります。このような事業環境の変化を的確にとらえ、機敏に対応し、常に市場での優位性を確保できるよう、経営基盤を強固なものとし、迅速な意思決定により、継続的な事業成長を実現してまいります。
(2)競合他社の参入によるリスクについて
現在、当社の事業である電子書籍ビジネスは、法令や規制による参入障壁が低く、またコンテンツを供給する出版社も非独占的に作品を提供しているため、国内外の巨大資本を有する企業の本格参入等が増加しており、大規模なマーケティング投資を行うことで新規利用者を獲得し事業拡大を図ることが可能であることから、競合他社との新規利用者の獲得競争は激しさを増しております。また、電子書籍取次の買収による寡占化、出版社の買収による力学の変化など、今後、販売競争が激化する中で、販売価格の著しい低下等が起きた場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。当社では、優れた顧客基盤およびマーケティングノウハウを有するヤフーおよび同グループ各社との連携をより一層強化することを軸に、競合他社との差別化ならびに効果的な広報・広告宣伝を含めたマーケティング活動を実施してまいります。
(3)法的規制について
当社の事業に関わる法的規制として、消費者保護に関して「特定商取引法に関する法律」が、そのほか青少年保護の側面から「東京都青少年の健全な育成に関する条例」、また電子書籍のアプリ内課金に関する「資金決済に関する法律」等があります。今後インターネットのさらなる普及とともに法改正、新たな法律及び自主ルールが整備され、当社の事業が何らかの制約を受けることとなった場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社では社内管理体制を構築し、法律、条例、関連諸規則の遵守に努めております。
2. 事業内容に由来するリスクについて
(1)コンプライアンスについて
事業運営に関する法令違反はもとより、役員および従業員による不法行為や過重労働、ハラスメント等の問題が発生した場合、業績や事業継続に影響を与える可能性があります。また、企業におけるコンプライアンスが重視されるなか、反社会勢力を利用あるいはこれに資金提供することなどは社外的批判を受けることになります。当社では関連する規程を定め、明示し、定期的な社内研修や関係者を集めた会議等で、全役員および全従業員に理解およびコンプライアンスの徹底を図っております。
(2)小規模組織であることについて
当社の従業員は、2021年3月末現在で148名(臨時従業員を除く)と組織が小さく、社内の各種管理体制もこの規模に応じたものとなっております。今後の事業展開に備え人材の登用を進めておりますが、必要な人材の採用や教育、また事業拡大に応じた管理体制の構築が順調に進まなかった場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。当社のサービスを安定的に継続し、かつ、進化させていくにあたり、今後も継続的に有能な人材の確保および育成が不可欠であり、新卒および中途採用を計画的に行うとともに、社内人材に対する教育研修制度を充実させ、また働きがいのある企業風土や職場環境を整備することにより、レベルアップを図ってまいります。
(3)個人情報保護を含む情報セキュリティについて
当社では、主にサービス提供時に個人情報を取得利用しているため、「個人情報の保護に関する法律」が定める個人情報取り扱い事業者としての義務を課せられております。当社は、個人情報を有するサーバーへのアクセス制限や情報セキュリティに関する規程類及び個人情報保護方針を制定して運用管理を行うほか、プライバシーポリシーの制定および遵守などにより、情報管理体制の整備強化に努めております。また、個人情報の漏えいのリスクを低減させるために、利用者から取得する個人情報を最低限に抑えているとともに、データは国内のサーバーにて管理しております。しかしながら、外部からの不正アクセスや、ハッキング等による情報の漏えいに関するリスクは完全には排除できないことから、個人情報が流出するような事態が発生した場合、信用の低下、損害賠償等により当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。当社では引き続き、個人情報が流出するような事態を未然に防ぐための措置とともに、万が一の事態が発生した場合の対応について十分な体制を整備してまいります。
(4)特定事業への高い依存度について
当社の事業は電子書籍に関連するものが多くを占めております。電子書籍の市場は将来の成長が見込まれていますが、まだ歴史が浅いため、今後、予期しない環境の変化により、成長に何らかの問題が生じた場合、当社の業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。今後も市場の動向を慎重に見極めつつ、市場環境が大きく変容する場合は迅速かつ的確に経営リソースをシフトさせる準備をしておく必要があると認識しております。
(5)出版社を含む著作権者との契約について
当社は、電子書籍の販売にあたり、著作物の使用許諾を受けており、取引先(法人および個人)との間で作品の配信に関する基本契約および個々の作品の使用を許諾する覚書を締結しております。当社はこれら著作権者と良好な信頼関係を築いており、取引の継続を維持することは可能であるものと想定しておりますが、覚書の締結の進捗が当社の想定通りに行かない場合、今後、当社が敵対的買収を受けるなど、何らかの事情が生じて契約の更新に支障をきたす場合、また、著作権の使用料が変動した場合には当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社は事業の特性により、コンテンツを提供する大手出版社からの作品の仕入が相対的に高くなっております。これらの大手出版社との取引は、今後も安定的に良質な作品を仕入れるために継続することが必要と考えておりますが、これらすべての仕入先と永続的な取引が確約されているわけではなく、将来において仕入が減少又は中断することになれば、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。出版社を含む著作権者との取引は、今後も安定的に良質な作品の取扱いを維持するための根幹であることを鑑み、著作権者向けの営業体制を整備し、関係維持・良好化のための取り組みを引き続き強化してまいります。
(6)特定サイトへの依存および特定取次先への依存について
当社は、iPhone/iPadの端末上で電子書籍を販売、閲覧できるようにするため、Apple Inc.から認可を受けて、同社の販売サイトであるApp Storeからソフトウエア(アプリ)の頒布を行っております。同様にGoogle Inc.よりAndroid端末上で電子書籍を販売、閲覧するための認可を受けております。今後、両社の何らかの方針により、当社のソフトウエア(アプリ)が拒絶等された場合、新たなユーザーがiPhone/iPad/Android端末上で電子書籍を購入、閲覧することができなくなり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。当社ではそれぞれのガイドラインの動向や技術動向を常に把握し、最新の変更に対応できるよう努めてまいります。また、当社は紙の書籍のオンライン販売サービスにおいて、商品の仕入等を特定の取次先に依存しているため、サービスの継続性に支障がないよう関係の維持等に努めてまいります。
(7)ヤフーとの関係について
ヤフーは当社の議決権を43.4%所有する親会社であり、当社の主力事業である電子書籍事業にて協力してサービスを運営しているため、当社の事業に影響力を及ぼしうる立場にあります。2018年10月よりヤフーと当社が協力して運営する新たな電子書籍販売サービス「ebookjapan」を開始し、2019年3月にはヤフー株式会社が運営する電子書店「Yahoo!ブックストア」のサービスを終了させ「ebookjapan」への統合を完了、2019年6月には旧サービス「eBookJapan」における電子書籍販売を終了し、「ebookjapan」への統合が完了したことにより、ヤフーへの依存度が高まっております。また、ヤフーおよびZホールディングス株式会社のグループ会社が提供するサービスプラットフォームや決済サービスの利用比率が高まっております。今後、同社グループの事業方針・戦略が変更された場合等、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。事業面では電子コミック分野における国内取扱高No.1の実現に向けてヤフーとの連携を強化するとともに、安定的なサービスの提供についても連携を図りつつ、一方で経営の独立性を確保するため独立社外役員を選任し、少数株主の利益を保護するためのガバナンス体制の整備に努めてまいります。
3. その他のリスクについて
(1)自然災害、事故等を含めたシステムダウンについて
当社は、インターネット環境において事業を展開しております。そのため、当社はサービスの安定供給を図るためのセキュリティ対策や、コンピューターウイルス、ハッカーの侵入等を回避するために必要と思われるファイアーウォールの設置などの対策をとっております。しかしながら、地震、火災などの自然災害など予期せぬ事象の発生により、あるいは、常に新たなコンピューターウイルスが生み出され、その対策には一定の時間を要することからその間に感染する危険性があること、ハッカーによって新しいバグが発見され常に攻撃される危険性があることなどから、当社の設備又はネットワークに障害が生じる可能性があります。そのような場合、当社のサービス提供に影響が出て、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。これらリスクを想定し、サーバーの増強やシステム脆弱性診断などを、定常的に実施するほか、ヤフーのセキュリティ強化に関する知見も取り入れ、引き続き安心安全なサービスを継続的に提供するため、システムの増強を図ってまいります。
(2)新型コロナウイルスの感染拡大について
新型コロナウイルス感染症は世界的に広がり、経済活動をはじめとして様々な影響を与えております。当社の主力事業である電子書籍事業においては、新型コロナウイルス感染防止のため自宅で過ごす時間が増加し、電子書籍に対する市場ニーズが拡大する可能性がある一方、感染拡大の状況によっては出版社など出版活動への影響も懸念されますので、今後も状況を注視してまいります。また、当社は感染拡大防止のため、迅速にリモートワーク体制を整え、緊急事態宣言発出後は全従業員リモートワークにて事業の継続を図りましたが、今後も従業員の安全を第一に、柔軟かつ迅速に対応してまいります。
(3)配当政策について
当社は現状、事業の拡大過程にあり、将来の収益拡大のために積極的な投資とそのための内部留保の充実を優先する方針であります。今後、各期の経営成績を考慮に入れて、利益還元について検討してまいる所存ではありますが、配当実施及びその実施時期等については、現時点において未確定であります。
(4)新株予約権による株式価値の希薄化について
当社はストック・オプション制度を採用しており、旧商法第280条ノ20及び旧商法第280ノ21の規定に基づく新株予約権並びに会社法第236条、第238条及び第239条の規定に基づく新株予約権を当社の役員及び従業員に対して付与しております。
当事業年度末現在における新株予約権による潜在株式数は166,000株であり、発行済株式総数5,712,700株の2.9%に相当いたします。また、今後におきましても、役員及び従業員へのモチベーション向上と優秀な人材の確保を目的としてストック・オプションによる新株予約権発行を検討しております。これら新株予約権の行使が行われた場合、当社の1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。
(5)監査上の主要な検討事項(KAM)について
当社の電子書籍事業の売上高は、全体の売上高の76.8%を占めており、電子書籍事業の収益認識を行う際には、購入や決済といった膨大な顧客との取引データの処理や会計システムとの連携等についてITシステムに依拠しております。電子書籍事業の売上高の重要性が高く、電子書籍事業にかかる収益認識はシステムへの依存度が大きいことから、監査法人より当該システムの信頼性を監査上の主要な検討事項と判断されております。
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