当社は、今後の当社グループの中長期的な成長を実現していくため、より機動的な経営体制を構築し事業を推進することを目的に、当社と株式会社セルシスを合併させ、統合会社の商号を事業会社としての認知度が高い株式会社セルシスに変更することを決議しております。
また、当連結会計年度では、期末12月に、日本では「LINEマンガ」韓国では「NAVER WEBTOON」等のサービスをグローバルに提供するWEBTOON Entertainment社と、業務資本提携を締結しました。
当社グループは、デジタルによるコンテンツの創作から利用・活用に至るまでの諸活動をトータルに支援できる環境の提供を経営理念に掲げ、事業を推進しております。
当連結会計年度におきましても、ソフトウェアIPを核とした経営に重点を置き、開発リソースの戦略的配置等、経営効率向上に注力しております。
その結果、当社グループの当連結会計年度の売上高は6,890,802千円(前年同期比8.1%増)、営業利益は1,378,753千円(前年同期比78.3%増)となりました。
また、経常利益につきましては、助成金収入53,278千円、為替差益5,339千円を計上、株式交付費7,856千円を計上したこと等により、1,419,431千円の経常利益(前年同期比89.8%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、株式会社エイチアイの株式譲渡により関係会社株式売却益205,651千円を計上したこと、法人税等402,956千円を計上したことにより、1,222,560千円の親会社株主に帰属する当期純利益(前年同期は475,407千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
なお、これまで株主の皆様に事業へのご理解を深めていただくため、積極的かつ継続的なPR活動を通して事業活動をお伝えしてまいりましたが、これに加え、2021年2月度より、月次事業進捗レポートのリリースを開始しました。月次事業進捗レポートは、当社ホームページのアンケートにお寄せいただいたご意見をもとに、内容を改善しております。
また、より多くの皆様に中長期的に当社株式を所有していただくことを目的として株主優待制度を新設いたしました。
事業別セグメントにつきましては、以下のとおりであります。
<クリエイターサポート事業>
子会社のセルシスがイラスト・マンガ・アニメーション制作アプリ「CLIP STUDIO PAINT」の機能向上を目的とした開発投資を行いながら、海外利用ユーザー及びサブスクリプション契約の増加を目的とした、全世界に向けたプロモーション活動を実施しました。
「CLIP STUDIO PAINT」は、2021年12月末現在の累計出荷本数は1,659万本(前年同月比58.5%増)、そのうち70%以上が日本語以外の海外に向けた出荷となっております。また、同月のサブスクリプション契約数は47.8万契約(前年同月比87.5%増)となり、ARR(当社がサブスクリプションから年間ベースで得られると期待できる金額)は1,768,000千円(前年同月比63.1%増)となりました。
セルシスが注力しているサブスクリプションモデルでのライセンス提供は、廉価な価格で利用開始の敷居を下げる反面、一括でまとまった金額のライセンス料を徴収する買い切りモデルに比べ、短期的には収益効果が低くなります。しかしながら、「CLIP STUDIO PAINT」への開発投資を続け、継続して利用頂くことで中長期においては安定した収益が期待できるため、引き続きサブスクリプションモデルでのライセンス提供に注力してまいります。
「CLIP STUDIO PAINT」は、デバイスメーカーと多くのコラボレーションを実施しました。4月には、サムスンのSペン付属NotePC「Galaxy Book Pro 360」に、8月には、サムスンのペン付きAndroidタブレット「Galaxy Tab S7 FE」に、10月には、ワコムのWacom Intuos及びWacom Oneに、バンドルされて提供開始されています。バンドルされた「CLIP STUDIO PAINT」は、無料利用期間後にサブスクリプション契約を行うことで継続利用できる形となっており、サブスクリプション契約の増加が期待されます。また、いずれのコラボレーションもグローバルでのバンドルになっており、海外ユーザーの増加も期待できます。
12月には、海外ユーザーの増加も目的に、日本では「LINEマンガ」韓国では「NAVER WEBTOON」等のサービスをグローバルに提供するWEBTOON Entertainment社と資本業務提携を、親会社アートスパークホールディングスを通じて行いました。今後、全世界で大きな支持を急速に得ている縦読みフルカラー形式のマンガである、ウェブトゥーンコンテンツの制作・翻訳・流通の効率化とマーケットの活性化を目指して様々な協業を行ってまいります。
引き続き、海外に向けたプロモーションや、協業パートナーとのコラボレーション等を積極的に行い、活動の主軸を海外売上の拡大とサブスクリプションモデルの売上拡大に向けた施策に重点を置き活動してまいります。
以上の結果、売上高は5,807,509千円(前年同期比20.8%増)、営業利益は1,777,148千円(前年同期比21.5%増)となりました。
<UI/UX事業>
UI/UX事業の主要な顧客である自動車関連分野は、新型コロナウイルス感染症に端を発した、新車開発の遅れによるモデルチェンジサイクルの長期化や、半導体不足等による生産台数の減少等を受け、厳しい事業環境が続きましたが、子会社のカンデラは、2022年後半以降の市場回復・拡大を睨み、研究開発投資と、パートナーとの提携を積極的に行いました。
研究開発投資においては、主力のHMIツールである「CGI Studio」及び「UI Conductor」それぞれの強みを統合し、自動車関連に限らず、液晶デバイスの普及により今後市場拡大が見込まれる、産業・民生機器等の幅広い分野で利用可能になることを目指した、次世代のHMIソリューションの開発に注力いたしました。
継続的な研究開発投資の成果として、7月には、Car HMI Europe が主催する「CarHMI Europe賞2021」の「自動車のHMI + UXにおける機械学習とAIの最も革新的なアプリケーション部門」において、カンデラのHMIツールの機能が、独ダイムラー社などを退けて第1位を受賞しました。
また、将来の市場拡大を見据えて、半導体メーカーやハードウェアメーカーとパートナーシップを結び、HMIツールの利用促進を進めました。6月には、世界的な自動車部品メーカーであるVarroc社と、TFTメータークラスター開発のための戦略的提携を、7月には、エッジコンピューティングのグローバルリーダーである ADLINK Technology社とパートナーシップ契約を、8月には、インドの大手自動車部品及び精密工学製品メーカーのPricol Limited社と戦略的提携を、それぞれ行いました。さらに、世界的な半導体メーカーである ST マイクロエレクトロニクス社より、「CGI Studio」が、2D/3Dのグラフィカル・ユーザー・インターフェースを作成する理想的なツールであると評価され、カンデラがパートナー認定されました。
引き続き、HMIソリューションの積極的な開発及び営業活動を推進してまいります。
以上の結果、売上高は1,070,793千円(前年同期比31.7%減)、営業損失は498,019千円(前年同期は812,242千円の営業損失)となりました。なお、2021年12月期第1四半期連結累計期間において、連結孫会社であった株式会社エイチアイの全株式を売却したことにより、第2四半期連結会計期間以降につきましては、同社の数値は連結財務諸表に含まれておりません。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ2,797,929千円増加し、5,693,279千円となりました。なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、1,972,356千円(前連結会計年度は1,820,864千円の獲得)となりました。これは主として、法人税等の支払額464,261千円や関係会社株式売却益205,651千円等の資金の減少要因があったものの、税金等調整前当期純利益1,625,517千円の計上や減価償却費の計上705,925千円等の資金の増加要因があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、473,506千円(前連結会計年度は778,846千円の使用)となりました。これは主として、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入299,920千円等の資金の増加要因があったものの、ソフトウエア等の無形固定資産の取得による支出665,274千円、有形固定資産の取得による支出100,189千円等があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、1,283,902千円(前連結会計年度は46,282千円の使用)となりました。これは主として、配当金の支払額81,560千円や自己株式の取得による支出182,811千円等があったものの、株式の発行による収入1,549,186千円等があったことによるものであります。この結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、5,693,279千円となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1. 金額は、当期製造費用によっております。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1. 金額は、仕入価格によっております。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当連結会計年度における生産業務は、ライセンス販売を目的とした見込生産であり、個別受注生産の占める割合が低いため、受注金額の記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.調整額12,500千円は、主に内部取引の調整によるものであります。
3.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
4.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、有価証券・固定資産の減損、たな卸資産の評価、貸倒引当金の設定、ビューア利用料売上の見積り計上等の重要な会計方針及び見積りに関する判断を行っています。当社の経営陣は、過去の実績や状況等に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行い、それらに対して継続して評価を行っております。また実際の結果は、見積りによる不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。また、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものにつきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(2) 財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べて2,706,391千円増加し8,344,670千円となりました。この主な要因は、売掛金が111,539千円、償却により技術資産が102,311千円減少した一方で、現金及び預金が2,801,529千円、ソフトウエアが99,420千円増加したこと等によるものであります。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末と比べて150,881千円増加し1,768,484千円となりました。この主な要因は、未払金が55,377千円、未払法人税等が42,465千円減少した一方で前受金が167,817千円、退職給付に係る負債が29,202千円増加したこと等によるものであります。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べて2,555,509千円増加し6,576,186千円となりました。この主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により利益剰余金が1,141,000千円、新株の発行により資本金及び資本剰余金がそれぞれ780,570千円増加したこと等によるものであります。なお、自己資本比率は、78.5%となりました。
(3) 経営成績の分析
当連結会計年度における当社グループの計画の達成状況は以下のとおりです。
当連結会計年度における連結売上高は、期初では6,735,000千円、連結営業利益では922,000千円の計画を見込んでおりました。第2四半期連結累計期間までの好調な実績に基づき、7月28日に通期における連結売上高を7,077,000千円、連結営業利益を1,377,000千円へ上方修正いたしました。修正前計画に対し連結売上高では155,802千円増(2.3%増)となり、修正後計画に対し連結売上高は186,198千円減(2.6%減)となりました。また、連結営業利益は修正前計画に対し456,753千円増(49.5%増)、修正後計画に対しては1,753千円増(0.1%増)となりました。
クリエイターサポート事業を展開している当社子会社株式会社セルシスが提供する、イラスト・マンガ・アニメーション制作アプリ「CLIP STUDIO PAINT」の機能向上を目的とした開発投資を行いながら、海外利用ユーザー及びサブスクリプション契約の増加を目的とした、全世界に向けたプロモーション活動を実施し、販売が好調に推移しました。利益面につきましては、上記のとおり売上が好調に推移し、会社予想を上回りました。
一方、UI/UX事業では、 前事業年度に続き、自動車関連分野は、新型コロナウイルス感染症に端を発した、新車開発の遅れによるモデルチェンジサイクルの長期化や、半導体不足等による生産台数の減少等を受け、厳しい事業環境が続きました。完成車の生産も回復傾向には至らず、自動車業界における新たな設備投資には慎重な姿勢が見られました。
こういった状況をふまえ、当連結会計年度においては経常利益は1,419,431千円、子会社売却益205,651千円を合わせ、親会社株主に帰属する当期純利益は1,222,560千円となりました。
(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループが主に事業展開しているソフトウェア業界は、技術革新の速度及びその変化度が著しい業界であり、新技術、新サービスが次々と生み出されております。当社としては、担当部門において当該技術革新に対応するよう研究開発に努めております。
しかしながら、当社グループが想定していない新技術、新サービス等が普及した場合には、当社グループの提供するソフトウェア、サービス等が陳腐化し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、継続的に研究開発に注力し、競争力を維持するために魅力ある製品、サービス等を提供していく所存であります。
(5) キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析は、「経営成績等の状況の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(6) 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、ソフトウェア開発に係る人件費のほか、外注費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資及びM&A等によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資及びM&A等の資金調達につきましては自己資金及び金融機関からの長期借入を基本とし、場合によっては新株予約権の発行等を行うなど、資金調達の多様性を図っております。
なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高はありません。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は5,693,279千円となっております。
(7) 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的指標等
当社グループは、連結営業利益を経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等とし、目標数値を設定しております。
連結会計年度におきましては、連結売上高は修正後の目標7,077,000千円に対して6,890,802千円の実績となり、目標に対して186,198千円下回りました。また、連結営業利益は修正後の目標1,377,000千円に対して1,378,753千円の実績となり、目標に対して1,753千円上回りました。クリエイターサポート事業が堅調に推移しましたが、一方UI/UX事業では、前事業年度に続き、自動車関連分野は、新型コロナウイルス感染症に端を発した、新車開発の遅れによるモデルチェンジサイクルの長期化や、半導体不足等による生産台数の減少等を受け、厳しい事業環境が続きました。
当連結会計年度において、子会社売却益205,651千円を特別利益として計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は1,222,560千円となりました。双方の事業状況を勘案しますと、当社グループ全体としては順調に推移しております。
今後も当指標を目標として経営を行うことにより、当社グループの企業価値の向上を図ってまいります。
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