業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 なお、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 令和2年3月31日)等を適用しております。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるサイバー・セキュリティ業界は、Emotetの再活発化などランサムウェアによる被害が再拡大した他、電気・ガスなどのエネルギー事業者や医療機関などの基幹インフラ事業者がサイバー攻撃を受け、システム停止に陥るなどの被害が発生しています。また、子会社や取引会社を踏み台に標的企業に打撃を与えるサプライチェーン攻撃と見られるサイバー攻撃の増加が確認されるなど、サイバー攻撃の高度化が進んでいます。さらに、ロシアのウクライナ侵攻に伴い国際社会の緊張が高まっており、敵対国への打撃を目的として基幹インフラ事業者などに向けたサイバー攻撃のさらなる増加が懸念されています。こうしたサイバー攻撃事案のリスクの高まりを受け、経済産業省を始めとする各省庁より国内の基幹インフラ事業者に対して対策の強化を呼びかける注意喚起がなされるなど、サイバー攻撃が社会に与える影響は大きく、警戒が高まっています。また、令和4年5月に成立した経済安全保障推進法では、基幹インフラ事業者などが重要なシステムを導入する際に、設備や部品、維持・管理の委託先などの計画について、国による事前審査が義務化されるなど、国家安全保障及び経済安全保障対策としてサイバー・セキュリティの重要性が一層高まっています。

 このような環境の中、当連結会計年度の経営成績は以下のとおりとなりました。

 

○サイバー・セキュリティ事業

(ナショナルセキュリティセクター)

 ナショナルセキュリティセクターにおきましては、国際情勢の緊張と比例してサイバー攻撃のリスクが急速に高まっており、サイバー領域における安全保障は重要な課題となっています。我が国においては、サイバー防衛能力の強化に人も予算も大幅に増やしながら変革を続けておりますが、周辺諸国に比べ未だ十分とは言えず、今後も中長期に渡って急激な市場の拡大が見込まれます。当社グループにおいては、横須賀ナショナルセキュリティR&Dセンターにて、防衛産業及び関連組織向けにセキュリティ教育及び調査・研究案件や提案活動を進めたほか、高度なスキルを持つ技術者の育成及び採用の強化など体制整備にも取り組んでおり、将来のナショナルセキュリティセクターでの大きな需要を取り込める体制構築を進めております。

 この結果、当連結会計年度におけるナショナルセキュリティセクターの売上高は54,481千円となりました。

 

(パブリックセクター)

 パブリックセクターにおきましては、「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」の改定に伴い、特に地方自治体におけるエンドポイントセキュリティの需要が増大しております。当社グループにおいては、NECやSky株式会社、NTTアドバンステクノロジ株式会社など、地方自治体向けの販売に強みを持つ販売パートナーとの連携強化を進め、OEM製品やSOCサービスの提供を開始しております。一方で、案件受注の増加を見込んでいたセキュリティ・サービスにおきましては、案件受注に必要な高い秘匿性を担保する体制の整備に時間を要したほか、当初計画に織り込んでいた案件においても新型コロナウイルス感染症の再拡大により遅延、失注するなど、計画に対して影響が生じておりました。

 この結果、当連結会計年度におけるパブリックセクターの売上高は531,510千円となりました。

 

(プライベートセクター)

 プライベートセクターにおきましては、引き続き戦略的販売パートナーとの連携強化を進めた他、FFRI yarai Home and Business EditionのOEM提供による個人・小規模事業者向けの販売が拡大しております。また、エンドユーザーの満足度向上を目的に、FFRI yaraiの構築や運用に関する知識を認定する「FFRI yarai 技術者認定制度」を設け、当社製品を熟知した販売パートナーとの連携強化を進めております。サービス案件につきましては、セキュリティ調査・研究サービス及び車載セキュリティの関連案件を中心に実施しました。

 この結果、当連結会計年度におけるプライベートセクターの売上高は901,799千円となりました。

 

○ソフトウェア開発・テスト事業

 株式取得により完全子会社となった株式会社シャインテックにおきましては、品質保証業務等を中心に堅調に推移した他、将来的なサイバー・セキュリティ関連業務の提供に向けた教育体制の整備を進めております。

 この結果、当連結会計年度におけるソフトウェア開発・テスト事業の売上高は291,553千円となりました。

 

 また、NTTコミュニケーションズ株式会社との合弁会社である株式会社エヌ・エフ・ラボラトリーズにおきましては、高度セキュリティ人材が不足する市場状況を背景に案件が増加しており、足元では教育・研修案件や調査・テストなどの案件を進めた結果、持分法による投資利益51,342千円を計上しております。また、順調にエンジニアも増加しており、さらなる人材の育成基盤強化を進めております。

 

 以上の結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高1,779,344千円、営業利益103,457千円、経常利益156,236千円、親会社株主に帰属する当期純利益120,978千円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、1,644,222千円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果支出した資金は、16,306千円となりました。これは主に、税引前当期純利益の計上156,259千円、契約負債の減少59,031千円、法人税等の支払額83,062千円等によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果支出した資金は、157,980千円となりました。これは主に、子会社株式取得による支出128,320千円、有形固定資産の取得による支出18,712千円、無形固定資産の取得による支出13,453千円によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果支出した資金は、275,076千円となりました。これは主に、自己株式の取得による支出260,581千円、長期借入金の返済による支出11,700千円によるものです。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

(イ)生産実績

 当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

(ロ)受注実績

 当社グループは概ね受注から役務提供までの期間が短いため、受注実績に関する記載を省略しております。

 

(ハ)販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

サービスの種類

当連結会計年度

(自 令和3年4月1日

至 令和4年3月31日)

前年同期比(%)

サイバー・セキュリティ事業(千円)

1,487,790

ソフトウェア開発・テスト事業(千円)

291,553

合計(千円)

1,779,344

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

2. 連結会計 年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

当連結会計年度

(自 令和3年4月1日

至 令和4年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

株式会社ソリトンシステムズ

189,913

10.7

3.当連結会計年度より連結財務諸表を作成しているため、前年同期との比較分析は行っておりません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(資産)

 当連結会計年度末における資産合計は、2,453,912千円となり、流動資産合計1,952,153千円、固定資産合計501,758千円となりました。

  流動資産の主な内訳は、現金及び預金1,644,222千円、売掛金244,372千円等であります。

 固定資産の内訳は、有形固定資産38,529千円、無形固定資産166,941千円、投資その他の資産296,287千円であります。

(負債)

 当連結会計年度末における負債合計は、730,516千円となり、流動負債合計720,581千円、固定負債合計9,935千円となりました。

 流動負債の主な内訳は、契約負債625,735千円、未払金31,873千円等であります。

 固定負債の内訳は、資産除去債務9,935千円であります。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は、1,723,396千円となりました。

 

(売上高)

 当連結会計年度における売上高は、1,779,344千円となりました。内訳としましては、ナショナルセキュリティセクターが54,481千円、パブリックセクターが531,510千円、プライベートセクターが901,799千円、ソフトウェア開発・テスト事業が291,553千円であります。

(売上原価)

 当連結会計年度における売上原価は、553,311千円となりました

(販売費及び一般管理費)

 当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、1,122,575千円となりました。

(営業外収益及び営業外費用)

 当連結会計年度における営業外収益は、持分法の投資利益等の計上により53,075千円、営業外費用は、自己株式取得費用等の計上により296千円となりました。

(特別利益)

 当連結会計年度における特別利益は、投資有価証券売却益の計上により22千円となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、120,978千円となりました。

 

 なお、当連結会計年度より連結財務諸表を作成しているため、前年同期との比較分析は行っておりません。

② キャッシュ・フローの分析

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる当社の会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載のとおりであります。

 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。当社は、これらのリスク要因について、分散又は低減するよう取り組んでまいります。

 

⑤ 経営者の問題意識と今後の方針

 当社グループでは、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載の各リスク項目について顕在化することがないよう常に注意を払っております。また、当面の当社の課題として「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の各事項に対応していくことで、企業価値向上に努める方針であります。

 

⑥ 経営戦略の現状と見通し

○サイバー・セキュリティ事業

(ナショナルセキュリティセクター)

 ナショナルセキュリティセクターにつきましては、国家関連組織や防衛産業企業、電気・ガス・医療・金融機関などの基幹インフラ事業者を狙ったサイバー攻撃が世界中で発生していることに加え、ロシアのウクライナ侵攻に伴ってこれらのサイバー攻撃のリスクが急速に高まっています。そのため、国家安全保障を支えるサイバー防衛能力に加え、経済安全保障の実現に向けた国内産業育成など政府の取り組みも加速しています。当社グループは、国内でほぼ唯一サイバー・セキュリティの基礎技術研究を行う企業として、研究開発能力やリサーチ能力を提供してまいります。また、将来の需要を取り込むための先行投資として、エンジニアを中心とした採用強化及び体制整備も継続するため、採用コスト及び人件費の増加を見込んでおります。

 

(パブリックセクター)

 パブリックセクターにつきましては、地方自治体向けのガイドライン改定に伴い、足元では地方自治体における需要が増加しております。さらに、行政のデジタル化が推進されることにより中長期的な需要の増加が見込まれます。当社グループは、地方自治体に強い販売力を持つ販売パートナーへOEM提供することで、付加価値の高い製品やサービスの提供を進めております。また、これらのOEM製品について、販売パートナー各社と連携した販促活動を進め、販売を拡大してまいります。

 

(プライベートセクター)

 プライベートセクターにつきましては、引き続きFFRI yaraiの機能強化による商品力の向上を図る他、特に当社グループの製品販売を積極的に行う戦略的販売パートナーとの連携強化を継続してまいります。セキュリティ・サービスにつきましては、セキュリティ調査・研究及び情報提供などの案件を実施してまいります。

 

○ソフトウェア開発・テスト事業

 ソフトウェア開発・テスト事業につきましては、子会社である株式会社シャインテックにおいて品質保証業務およびテスト業務を中心に実施してまいります。また、将来的なサイバー・セキュリティ関連業務の提供に向けて教育体制の整備を進めてまいります。

⑦ 資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、ソフトウェア開発に伴う人件費、その開発用のパソコン及びソフトウェア等の購入費用のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。これらについてはすべて自己資金により対応しております。

 当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

 なお、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は1,644,222千円となっており、十分な財源及び高い流動性を確保していると考えております。

 現時点では新型コロナウイルスの影響を見通すことが困難なため、上記の資本の財源及び資金の流動性についての分析には織り込んでおりません。

 

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