当連結会計年度におけるわが国経済は、前連結会計年度より引き続き、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が長期化した中において、感染拡大防止策に万全を期し、徐々にそれ以前の経済活動が再開してまいりました。一方で、ウクライナ情勢の長期化や原材料の供給不足に加えて、グローバルでの金利調整などを背景とした円安進行や物価上昇による家計や企業への影響や供給面での制約などもあり、国内外における経済的な見通しは不透明な状況が続いております。
当社グループにおいては、従業員の安心/安全を守る施策として全従業員へ毎日の検温測定と報告の徹底、全社的な在宅勤務の推奨、それに伴い案件従事者が在宅勤務を実現できるよう、お客様への提案活動などの対策を2020年より継続して取り組んでおります。その結果、居住地に依存しない均一な就業環境・待遇を提供することが可能となり、幅広い居住地域の応募者を対象とした人材採用を一層強化しております。当社グループは、様々な業界のお客様にサービスを提供しており、特定の業種業態に依存した構造ではないため、新型コロナウイルス感染症の業績への影響は限定的なものとなっており、現時点の経済活動状況を前提とすると、この傾向は続くものと予想しております。
当社グループがサービスを提供するソフトウェア関連市場においては、産業界全体に変革を起こすDX(デジタル・トランスフォーメーション)という概念とともに、新しい生活様式(ニューノーマル)や新しい価値観のもとで、IT投資はますます多様化し、その重要性は高まり続けております。
また、在宅勤務やリモートワークの定着によって、エンドポイントセキュリティ(社内ネットワークのみならず、利用端末に対するセキュリティ対策)を中心に社会全体におけるセキュリティ領域への需要は高まってきております。
こうした経営環境の中、当社グループでは売上高1,000億円企業に向けた成長戦略「SHIFT1000 -シフトワンサウザンド-」を掲げており、その実現に向け、引き続き営業力の強化による顧客基盤の拡大、構造化・数式化され科学されたM&A戦略の実現、IT業界の構造変化に合わせたサービス提供力の向上、多様な人材獲得手法の展開を重点課題として取り組んでおります。加えて、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)の適用を開始しております。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、以下のとおりとなりました。
当連結会計年度末における総資産につきましては、前連結会計年度末に比べ5,957,865千円増加し、40,230,021千円となりました。これは主に、納税等により現金及び預金が1,325,555千円減少しましたが、資本業務提携等により投資有価証券が3,871,699千円、売上増加により売掛金及び契約資産が2,013,690千円増加したこと等によるものであります。
当連結会計年度末における負債につきましては、前連結会計年度末と比べ2,634,667千円増加し、14,222,955千円となりました。これは主に、取引量の増加等のため買掛金が262,897千円、業務拡大に伴う新規採用を行ったことによる人件費増加等のため未払費用が1,147,118千円、未払法人税等及び未払消費税等がそれぞれ380,013千円、682,790千円増加したこと等によるものであります。
当連結会計年度末における純資産につきましては、前連結会計年度末と比べ3,323,197千円増加し、26,007,065千円となりました。これは主に、株式付与ESOP信託に充当するための自己株式取得等により自己株式が1,990,765千円増加し純資産額が減少しましたが、利益剰余金が4,974,219千円増加したこと等によるものであります。
当連結会計年度の売上高は64,873,245千円(前年度比41.0%増)、営業利益は6,913,337千円(前年度比73.1%増)、経常利益は7,552,625千円(前年度比59.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は4,974,219千円(前年度比76.5%増)となりました。なお、収益認識会計基準等を適用したことにより、売上高は1,092,164千円減少し、営業利益は1,969千円減少しております。
セグメント別の業績は次のとおりであります。
当連結会計年度では、従前より注力業界として定めていた金融・流通業界に加えて、製造業・通信業などの顧客に対して長期的な関係構築を視野に入れたプロジェクトへの参画が進み、売上高が増加してまいりました。この結果、当連結会計年度のエンタープライズ市場の売上高は60,287,778千円(前年同期比40.7%増)、営業利益は10,510,246千円(前年同期比55.8%増)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は1,095,389千円減少し、営業利益は1,969千円減少しております。
当連結会計年度では、サービスラインナップの拡充に加えて、競合との差別化を図ることによる業界内認知度の向上や、既存顧客からの売上高が増加したことにより、収益基盤の拡大を進めた結果、当連結会計年度のエンターテインメント市場の売上高は4,585,467千円(前年同期比45.9%増)、営業利益は1,191,020千円(前年同期比71.0%増)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は3,224千円増加しておりますが、営業利益への影響はありません。
<セグメント別売上高>
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は前連結会計年度末より1,248,351千円減少した結果、12,899,120千円となりました。各キャッシュ・フローの状況とその要因は以下のとおりであります。
当連結会計年度において営業活動によるキャッシュ・フローは7,392,491千円の収入(前年同期は4,758,005千円の収入)となりました。これは主に、売上債権の増加1,999,793千円や法人税等の支払額2,167,213千円等の資金の減少要因があったものの、税金等調整前当期純利益の計上7,460,654千円、のれん償却額892,666千円、未払金及び未払費用の増加1,604,243千円等の資金の増加要因があったことによるものであります。
当連結会計年度において投資活動によるキャッシュ・フローは5,605,937千円の支出(前年同期は5,432,861千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出651,523千円や投資有価証券の取得による支出4,195,740千円等によるものであります。
当連結会計年度において財務活動によるキャッシュ・フローは3,082,587千円の支出(前年同期は8,286,168千円の収入)となりました。これは主に、長期借入れによる収入1,000,000千円等の資金の増加要因があったものの、長期借入金の返済による支出1,695,517千円や自己株式の取得による支出1,999,590千円等の資金の減少要因があったことによるものであります。
該当事項はありません。
当社グループの提供するサービスは、受注から販売までの所要日数が短く、期中の受注高と販売実績とがほぼ一致するため、記載を省略しております。
当連結会計年度の販売実績をセグメント毎に示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引はありません。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
3. 当連結会計年度において、販売実績に著しい増加がありました。この増加の内容は、① 財政状態及び経営成績の状況 b.経営成績に記載のとおりであります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループにおける経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されております。
この連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。なお、当社グループの連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。また、新型コロナウイルス感染症の影響につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(追加情報)」に記載しております。
当連結会計年度の連結業績は、売上高成長を伴った業績予想値という目標のなか、売上高、売上総利益、営業利益の各水準は、目標値に対して達成いたしました。また、顧客単価、顧客数、エンジニア単価、エンジニア数なども引き続き堅調に増加・拡大をしております。
当連結会計年度の売上高は、64,873,245千円となり、前連結会計年度に比べ18,868,676千円増加(前年度比41.0%増)となりました。これは、エンタープライズ市場・エンターテインメント市場の両市場において、営業組織の細分化によって営業の活動量が向上し、取引社数が増加したことが主な要因であります。特に、エンタープライズ市場において、主力のソフトウェアテスト以外のサービスの提供も拡大したことも要因であります。同時にグループ内における多様なサービスの組み合わせによる案件の獲得が順調に進んだことにより顧客単価も上昇し、売上高の増加に寄与いたしました。
なお、当連結会計年度における顧客月額売上単価及び顧客数並びに2017年8月期からの四半期ごとの推移は以下のとおりであります。
*顧客月間売上単価は、以下の二つの数値となります。
単体顧客単価は①単体売上を②単体顧客数で除した数値となります。
①単体売上:ライセンスや教育サービスなどの顧客を除き、月次で稼働がある、もしくは計上された売上高を四半期で合計した数値
②単体顧客数:ライセンスや教育サービスなどの顧客を除き、月次で稼働がある、もしくは売上が計上された顧客数を四半期で合計した数値
連結顧客単価は①単体売上と③連結子会社売上を合算したものを②単体顧客数と④連結子会社顧客数の合計で除した数値となります。
③連結子会社売上:月次で売上計上があった売上高を四半期で合算した数値
④連結子会社顧客数:月次で売上計上があった顧客数を四半期で合算した数値
なお、顧客単価を算出するに当たっては、連結損益計算書に計上されている売上高から、顧客単価として業績を管理することが適切ではないと認められる一部の事業に係る売上高を控除しております。
*連結月間取引顧客数は⑤単体顧客数と⑥連結子会社顧客数の合算数値です。
⑤単体顧客数:月次で稼働・売上計上があった顧客数の三か月の平均値
⑥連結子会社顧客数:月次で売上高を計上した顧客数の三か月の平均値
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度の売上原価は43,773,113千円となり、前連結会計年度に比べ11,681,515千円増加(前年度比36.4%増)し、また、売上総利益は21,100,131千円となり、前連結会計年度に比べ7,187,160千円の増加(前年度比51.7%増)となりました。売上総利益率については、当連結会計年度で32.5%となり、前連結会計年度30.2%に対して2.3ポイント向上いたしました。
当社グループでは、「SHIFT1000-シフトワンサウザンド-」において、2024年8月期までにエンジニア数10,000人を目標として掲げております。この目標に対して、当連結会計年度末時点では、8,415人(全社共通部門に所属する従業員数を除き、雇用契約を締結しない協業パートナー及び有期契約雇用者の雇用契約が有効な人員数を含む)のエンジニア数となり、前連結会計年度より2,300人増加いたしました。これは、在宅勤務の拡充、首都圏以外の全国各地での採用の活発化などの各種施策を推し進めた結果であります。
また、エンジニア数の増加にあわせて、売上原価に含まれるエンジニアの労務費も増加しております。これには、人員数の増加に伴うものに加えて、エンジニアの給与の上昇によるものも含まれております。当社グループでは、IT業界の構造課題である多重下請け構造を打破することも目指しており、発注の大元であるエンドユーザー企業との案件数を増加させて、エンジニアの確保に伴う真に業務能力のある開発会社へ直接発注することにより、売上総利益を確保しております。
なお、当連結会計年度におけるエンジニア単価及びエンジニア数並びに2017年8月期からの四半期ごとの推移は以下のとおりであります。
*エンジニア単価推移は、以下の二つの数値となります。
単体エンジニア単価は、①単体売上高を②単体エンジニア数で除した数値となります。
①単体売上高:主に準委任契約をしている案件の売上高
②単体エンジニア数:売上計上がある案件の稼働をしていたエンジニアとその管理に携わった人員の工数を合算し人月換算した数値
連結エンジニア単価は、①単体売上高と③連結子会社売上高を合算した売上高を②単体エンジニア数と④連結子会社エンジニア数を合算したエンジニア数で除した数値となります。
③連結子会社売上高:月次の売上高を四半期で合算した売上高
④連結子会社エンジニア数:月次の所属エンジニア数を四半期で合算した所属エンジニア数
なお、エンジニア単価を算出するに当たっては、連結損益計算書に計上されている売上高から、エンジニア単価として業績を管理することが適切ではないと認められる一部の事業に係る売上高を控除しております。
*連結エンジニア数推移は、四半期末時点において、売上原価の労務費・外注費として計上される当社グループの正社員、契約社員、アルバイトの所属人数及び協力会社の従業員契約者数の合算数値であります。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は14,186,793千円となり、前連結会計年度に比べ4,268,749千円の増加(前年度比43.0%増)となりました。これは、前述の採用活発化の施策に伴い、採用費は3,775,153千円(前連結会計年度2,174,407千円)となり、1,600,746千円(73.6%)増加しました。また、2016年より継続的に実施してきたM&Aの結果として、のれん残高が増加しております。当連結会計年度では、のれん償却額を892,666千円計上しており、前連結会計年度に比べ131,808千円増加いたしました。販売費及び一般管理費の増加は、当社グループの今後の成長のための積極的な投資の結果であり、今後もこの成長のための投資を継続する予定であります。
この結果、営業利益は6,913,337千円となり、前連結会計年度に比べ2,918,411千円の増加(前年度比73.1%増)となりました。営業利益率については、当連結会計年度で10.7%となり、前連結会計年度8.7%に対して2.0ポイント向上いたしました。これは、前述の売上総利益率向上による利益の確保ができたためであります。
なお、当社グループでは、販売費及び一般管理費を「戦略コスト」と「運用コスト」に分類しております。「戦略コスト」は将来の成長のために必要な投資のことを指し、上述の顧客数を増加させるために必要な営業活動に要する費用、エンジニア数を増加させるために必要な採用のための費用、エンジニア単価を向上させることに寄与するエンジニアに対する教育のための費用が含まれます。「運用コスト」は、「戦略コスト」に含まれない販売費及び一般管理費全般を指します。当連結会計年度の戦略コストと運用コストの売上高対する割合は以下のとおりであり、成長のための投資である戦略コストの比重を高めるとともに、運用コストの効率的な活用が進んでいると考えております。
当連結会計年度において、受取配当金105,983千円及び助成金収入577,196千円を含め営業外収益を763,711千円計上いたしました。一方で営業外費用を124,423千円計上いたしました。この結果、経常利益は7,552,625千円となり、前連結会計年度に比べ2,815,924千円の増加(前年度比59.4%増)となりました。
当連結会計年度において、税金等調整前当期純利益は7,460,654千円(前期比64.8%増)となり、法人税等が2,355,376千円、非支配株主に帰属する当期純利益が131,058千円計上された結果、親会社株主に帰属する当期純利益は4,974,219千円(前期比76.5%増)となりました。
当社グループは、中長期的に持続的な成長を図るため、従業員等の採用にかかる費用や人件費等の売上原価、販売費及び一般管理費の営業費用への資金需要があります。
当連結会計年度における資金の主な増減要因については、「第2 事業の概況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しておりますが、M&A資金や経常的な運転資金、事業規模拡大による設備投資等につきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入により調達された資金を財源としております。また、機動的な資金調達及び資本効率の改善のため、当社グループ全体で総額14,350,000千円を限度とした当座貸越契約及びコミットメントライン契約を締結しております。
当社グループは、「新しい価値の概念を追求し、誠実に世の中に価値を提供する」という企業理念のもと、持続的に社会改題を解決する会社としての成長を目指しております。その実現のマイルストーンとして売上高目標を設定しており、具体的な指標として、2023年8月期から2024年8月期に売上高1,000億円の達成を目指す「SHIFT1000」、2027年8月期から2028年8月期に売上高2,000億円を目指す「SHIFT2000」や、2028年8月期から2030年8月期に売上高3,000億円を目指す「SHIFT3000」を掲げ、企業理念の実現と企業価値の最大化を図ってまいります。なお、当連結会計年度における売上高成長を伴った業績予想値、実績値及び達成率は以下のとおりであり、また、顧客単価、顧客数、エンジニア単価、エンジニア数なども引き続き堅調に増加・拡大をしております。
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