業績

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における国内経済は、9月末をもって3度目の新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が終了して以降、感染の収束が期待されましたが、年明けからは新たに変異型ウイルスの感染が拡大し、まん延防止等重点措置が発令され、経済活動の本格回復には至りませんでした。また、ロシアのウクライナ侵攻などの地政学的リスクの高まりや、原材料価格の高騰、半導体不足、原油価格の高騰、日米金利差による円安の進行などが景気減速の懸念材料となっており引き続き先行きが不透明な状況にあります。

新型コロナウイルス感染拡大をきっかけとしたリモートワーク等の新しい働き方の定着により、ランサムウェア等のサイバー攻撃が激しさを増していることから、サイバーセキュリティ対策製品やサービスの需要が一層高まっています。そのような状況下、当社のコア事業である情報基盤事業において、クラウド型セキュリティ対策製品の需要は引き続き好調に拡大しています。また、当社が提供する統合セキュリティ監視サービスも順調に受注を伸ばしており、付加価値向上に向けた戦略が実を結びつつあります。
 アプリケーション・サービス事業では、医療分野において、個人向けのPHR(Personal Health Record)サービス※14の利用者拡大や、AI医療画像診断支援サービス事業の加速に取り組みました。この取り組みを更に加速することを目的として、当社は、医用画像管理システム(PACS)市場において、当社の連結子会社である株式会社NOBORIと競合関係にあったPSP株式会社を株式交付により子会社化した上で、2022年4月1日を効力発生日として、両子会社の合併を行うことを2022年1月21日に発表しました。合わせて、AIの診療現場への流通を加速させることを目的として、合併後のPSP株式会社とエムスリー株式会社との合弁会社として、エムスリーAI株式会社を2022年4月1日に設立することを発表しました。
 上半期において受注の遅れが懸念されていたCRM分野は、下半期において受注が回復し、通期実績では年初の受注計画を達成しました。車載分野などの組込みソフトウェアや企業向けシステムの品質を担保するためのテストツールの需要も引き続き堅調です。
 また、当社はグループ会社5社を含めた本社機能の移転及び集約を2022年12月に予定しております。なお、第3四半期連結累計期間においては、現オフィスの資産除去債務対応資産を含む非金融資産の減損損失として、およそ1億80百万円を日本基準の適用による「特別損失」ではなく、IFRS基準による「その他の費用」として計上しましたが、第4四半期連結会計期間においても、グループ会社を含む現オフィスの原状回復費用等移転関連費用としておよそ2億65百万円を同じくIFRS基準による「その他の費用」として追加計上しております。その結果、本業による損益とは別に非連動的な営業利益の減少が発生しております。


 「より良い未来を創造するITのプロフェッショナル集団」を企業理念とする当社は、2021年5月10日に新中期経営計画「BEYOND THE NEW NORMAL」を発表しました。今後、社会の隅々にまでデジタルがビルトインされ、デジタルを活用したビジネスモデルの変革であるDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進む状況において、当社はデジタル化への急激なシフトと産業構造の劇的な変化を新たな成長機会と捉え、社会課題を解決するためのサービスの提供を通して持続可能な社会の創造に貢献することを目指します。新型コロナウイルスの感染拡大を契機に私たちの暮らしは「NEW NORMAL」と呼ばれる新しい様式へと変わりつつあります。新中期経営計画では「NEW NORMAL」の先に来る新しい社会を見据えてSDGs(持続可能な開発目標)の観点も取り入れ、社会にとって必要不可欠な領域に向けて事業を加速していきます。
 
 新中期経営計画「BEYOND THE NEW NORMAL」では、前中期経営計画「GO BEYOND 3.0」の中核的事業戦略を継続しつつ、7つの基本戦略を定めその実現を目指します。
 

■中核的事業戦略(継続)
  ・クラウド関連事業の戦略的・加速度的推進
  ・セキュリティ&セイフティ(安全と安心)の追求

■7つの基本戦略
  1)取引製品の拡大・新規サービスの立ち上げ
  2)サービス化の加速(サービス比率拡大)
  3)データの利活用(AIの利用を含む)
  4)多様なアライアンス・M&A(既存事業の拡充と新規事業の創出)
  5)海外市場での事業の拡大
  6)グループ間連携の強化によるシナジーの創出
  7)人材育成/組織開発(ダイバーシティの推進を含む)
 
  当社グループでは、上記戦略に従い、以下の取り組みを行いました。

 

◇情報基盤事業

第1四半期連結会計期間

・クロス・ヘッド株式会社、サイボウズOfficeクラウド版への移行をリモートにて支援するサービスの提供を開始

・クロス・ヘッド株式会社、サイボウズGaroonのワークフロー機能とkintoneを連携するプラグインの提供を開始

・マカフィー株式会社より 「Best Distributor of the Year」 を受賞

・ネットワークに潜む脅威を可視化し、AIによる早期検知を実現する次世代ネットワークAIセキュリティ製品Vectra AI 「Cognito Platform」の販売を開始

 

第2四半期連結会計期間

・ファイル無害化ソリューション「Votiro」がメールセキュリティ製品「m-FILTER」と連携

・クロス・ヘッド株式会社、サイボウズOfficeクラウド版への移行をリモートにて支援する「サイボウズOfficeクラウド乗り換えパック」の提供を開始

・沖縄クロス・ヘッド株式会社、リモートブラウザ powered by Ericom Shield Cloudの販売を開始

・Dell Technologies より Channel Services Delivery Excellence Award を受賞

・沖縄クロス・ヘッド株式会社、リモートワークをソフトからハードまでワンストップでサポートする「STEC on Chromebook」 の販売を開始

 

第3四半期連結会計期間

・丸紅ネットワークソリューションズ株式会社と次世代セキュアアクセスソリューション「AppgateSDP」の販売パートナー契約を締結

・自律型AI エンドポイントセキュリティ「SentinelOne」の販売を開始~ AI と自動化で事業継続とTCO 削減を実現するXDR ~

 

第4四半期連結会計期間

・クロス・ヘッド、kintone へ受信メール内容を取り込むプラグインの提供を開始

・パロアルトネットワークス株式会社 より2021 年度の JAPAN Distribution Partner of the Year を受賞

・統合監視とインシデント対応支援を提供するサービス「TPS」に「Cortex(R) XDR Pro per TB」 をサービス対象製品として追加

・沖縄クロス・ヘッド、リモートワークのセキュリティ課題を解決する「セキュア・ワークスペース・
ソリューション」の販売を開始

・タニウム合同会社 より2021 年度の「MVP Partner of the Year」を受賞

 

◇アプリケーション・サービス事業

第1四半期連結会計期間

・医療分野:株式会社NOBORI、自社開発PHRアプリと株式会社ミレニアが提供する「あたまの健康チェック(R)」との連携を開始

・CRM分野:コンタクトセンターCRMシステム「FastHelp5」とRevCommの音声解析AI電話「MiiTel」が連携開始

・ソフトウェア品質保証分野:ソフトウェア開発基盤構築ソリューションの販売を開始 ~CI/CD、ソフトウェア構成管理、クラウド基盤の構築を支援~

・ソフトウェア品質保証分野:テスト管理ツール「TestRail」のクラウド版の提供開始

・株式会社カサレアル、特定非営利活動法人エルピーアイジャパンのビジネスパートナー制度に参加

 

第2四半期連結会計期間

・CRM分野:ソーシャルデータ分析クラウド タイ最大手Wisesight社と資本・業務提携 ASEAN地域でのCRMソリューション事業拡大を加速

・CRM分野:コンタクトセンターCRMシステム「FastHelp5」とソフツーのクラウド型コールセンターシステム「BlueBean」が連携

・ソフトウェア品質保証分野:ソフトウェアのテスト支援サービスと検証サービスの提供を開始

・ビジネスソリューション分野:Google for Education Build パートナー認定を取得

 

第3四半期連結会計期間

・ビジネスソリューション分野:LIBOR廃止に対応するAprecciaシリーズの新製品「市場性貸出管理システム」の提供を開始

・ビジネスソリューション分野:シネックスジャパンとツムギノ再販パートナー契約締結

・ビジネスソリューション分野:教育機関向けクラウドサービス「ツムギノ」が『ASPIC IoT・AI・クラウドアワード2021』にて準グランプリを受賞

・株式会社カサレアル、クラウドネイティブ/DevOps人材育成でCTCテクノロジー株式会社と連携・相互販売

 

第4四半期連結会計期間

・株式会社カサレアル、米 GitLab 社とオープンパートナー契約を締結~国内正規代理店として、GitLab ライセンスの販売及び Git 関連支援サービスの提供を開始~

・株式会社カサレアル、Kubernetes で実現するセキュアコーディングトレーニングコースの提供を開始

・教育機関向けクラウドサービス 「ツムギノ」が APPLIC準拠登録・相互接続確認 オレンジマークを取得

 

以上の結果、当連結会計年度の売上収益は、365億13百万円前期比55億85百万円18.1%)の増加売上総利益は124億56百万円前期比12億38百万円11.0%)の増加となりました。販売費及び一般管理費は、人件費などの増加のため、82億69百万円前期比6億30百万円8.2%)の増加となりました。また、第3四半期連結累計期間においては、現オフィスの資産除去債務対応資産を含む非金融資産の減損損失として、およそ1億80百万円を日本基準の適用による「特別損失」ではなく、IFRS基準による「その他の費用」として計上しましたが、第4四半期連結会計期間においても、グループ会社を含む現オフィスの原状回復費用等移転関連費用として、およそ2億65百万円を同じくIFRS基準による「その他の費用」として追加計上しております。この結果、営業利益は37億34百万円前期比1億50百万円4.2%)の増加となりました。

以上により、税引前利益は37億18百万円前期比3億11百万円9.2%)の増加親会社の所有者に帰属する当期利益は23億71百万円前期比70百万円3.0%)の増加となりました。

売上収益、営業利益、税引前利益、親会社の所有者に帰属する当期利益、すべて過去最高となりました。

 

セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。

 

① 情報基盤事業

当連結会計年度における情報基盤事業の業績は、前期までに積み上げた受注残と新規大型案件の受注により、好調に推移しました。また、サブスクリプション型の課金モデルであるクラウド型セキュリティ対策製品の受注も拡大傾向にあります。西日本地域での販売も前期からの好調さを維持しています。当連結会計年度の連結受注高、売上収益、営業利益は期初に策定した予算額を超過達成し、コロナ特需が発生した前期を全ての指標で上回る結果となりました。製品別では、クラウド時代のセキュリティに対応したSASE(Secure Access Service Edge)※15」、「CASB (Cloud Access Security Broker)※16 」、「Cyber Hygiene※17」、「SDP (Software Defined Perimeter)※18」等、新しい世代のセキュリティ対策製品も注目度が高まってきており実績も増加しております。また、セキュリティ運用の複雑化による運用監視サービス需要の高まりにより、統合セキュリティ運用・監視サービスの新規顧客獲得が進み受注・売上収益も拡大しました。メディア・エンタテインメント業界向けのストレージ製品も好調です。
 クロス・ヘッド株式会社は、売上収益・営業利益ともに計画通り推移しました。インフラ構築案件の受注は回復傾向にありますが、半導体不足の影響によるネットワーク機器の納品遅れにより、大手SI経由の構築プロジェクトの延伸が一部で発生しました。
 沖縄クロス・ヘッド株式会社では、独自プロダクト・サービスが好調に推移し、営業利益が計画を大きく上回る結果となりました。

 

以上により、同事業の売上収益は247億11百万円前期比37億68百万円18.0%)の増加となり、過去最高となりました。営業利益は30億54百万円前期比3億13百万円11.4%)の増加となりました。

 

② アプリケーション・サービス事業

当連結会計年度におけるアプリケーション・サービス事業の業績は、情報基盤事業と同様に、前期までに積み上げた受注残と新規案件の受注により堅調に推移しました。

医療分野では、医療関連の連結対象子会社である株式会社NOBORIの医療情報クラウドサービス「NOBORI」の順調な受注が継続し、累積契約施設数は増加しています。加えて、既存ユーザのサービス契約更新も取りこぼすことなく受注しています。一方、コンシューマ(患者)をターゲットとしたPHR(Personal Health Record)サービスの開発や、AIベンチャー・医師らと組んだ医用画像診断支援システムの共同開発等の新規事業への先行投資を継続し、順調に成果が上がっています。また、2月にPSP株式会社を連結子会社化したことによる業績の取り込みも医療分野の事業規模拡大に寄与しました。

その他、医療関連の連結対象子会社である合同会社医知悟は、今期計画を超過し堅調さを維持しています。
 株式会社A-Lineについては、診療用放射線の安全管理体制整に関する医療法施行規則の一部を改正する省令が既に施行されていますが、監督機関による監査がコロナ禍において進んでいないため、医療機関における放射線量管理システム導入に対する投資意欲が想定通りに盛り上がらない傾向にあります。そのため、受注がやや低調ですが、サブスクリプション型ビジネスであるため、売上面、利益面は概ね計画通り進捗しました。
 CRM分野では、次世代製品及び機能強化したFAQシステムの市場への投入により競争力が強化され、大手システム・インテグレーターやテレマーケティング・ベンダーとの業務提携、クラウド需要の拡大、知名度の向上と実績の拡大に伴い、新規の引き合いは堅調です。しかし、顧客における意思決定の長期化傾向により、受注のタイミングが遅れたため、売上収益、営業利益が期初計画を下回りました。下半期よりは受注の遅れも解消し、期末時点では受注高の年初計画を達成したことで、売上収益、営業利益も回復傾向にあります。また、ソーシャルデータ分析クラウド分野でタイ最大手企業であるWisesight社との資本・業務提携を足掛かりに、今後、ASEAN市場での事業展開の加速に取り組んでいきます。
 ソフトウェア品質保証分野では、前期において新型コロナウイルスの感染拡大による製造業の投資減速の影響を受けましたが、当連結会計年度に入り当該分野に対する投資は回復傾向にあります。また、自動車のIT化に伴い車載ソフトウェアを開発する製造業などで組込みソフトウェアの品質向上を目的とした需要は底堅く、引き続き好調な受注環境を維持しております。しかしながら、サブスクリプション型ライセンスの受注が増えており、売上が契約期間に応じて繰り延べられるため、売上収益及び営業利益の伸びは抑えられる傾向にあります。
 ビジネスソリューション分野では、既存顧客である学術系公共機関向けのシステム開発案件の受注が堅調でした。また、金融機関向けリスク管理分野において、LIBOR※19廃止に対応するための開発需要を着実に取り込んでいます。下半期よりは収益性も改善したため、上半期に発生した不採算案件の損失も挽回し期末では営業利益計画を達成しました。
 山崎情報設計株式会社は、売上収益・営業利益ともに計画通り推移しました。株式会社カサレアルでは、引き続き新型コロナウイルス感染症により対面での研修の提供にマイナス影響を受けていますが、受託開発部門及びクラウド関連技術に特化したコンサルティングサービスが堅調に推移し、売上収益・営業利益ともに計画を上回っています。
 新規事業である教育事業については、有名私立先進校や小規模公立校への導入が進みました。また「ASPIC IoT・AI・クラウドアワード2021」で準グランプリを受賞しました。引き続き、事業の垂直立ち上げを実現すべく営業・マーケティング活動を大幅に強化するなど、計画に沿って積極投資を継続しています。
 

以上により、同事業の売上収益は118億2百万円前期比18億17百万円18.2%)の増加となり、過去最高となりました。営業利益は6億79百万円前期比1億62百万円19.3%)の減少となりました。新規事業である教育事業への積極投資や、CRM事業における顧客の意思決定の長期化傾向による受注のタイミングの遅れ等が主な要因です。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、181億55百万円前期比35億21百万円24.1%)の増加となりました。当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローについては、契約負債の増加等により、収入は52億83百万円前期比17億66百万円50.2%)の増加となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローについては、前連結会計年度と比較して、子会社株式の取得収入等により、収入は1億95百万円前期比10億37百万円-%)の増加となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローについては、前連結会計年度と比較して、配当金の支払等により、支出が19億59百万円前期比1億69百万円(9.5%)の増加となりました。

 

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(千円)

前年同期比

(%)

情報基盤事業

14,908,155

+36.5

アプリケーション・サービス事業

5,412,777

+14.8

全社(共通)

86,409

+22.1

合計

20,407,342

+30.0

 

(注) 1 金額は、製造原価によっております。

2 セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

(2) 仕入実績

当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

仕入高(千円)

前年同期比

(%)

情報基盤事業

2,977,768

△12.1

アプリケーション・サービス事業

876,734

+70.9

合計

3,854,503

△1.2

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2  当連結会計年度において、「アプリケーション・サービス事業」に著しい変動がありました。これは、PSP株式会社を当連結会計年度より連結の範囲に含めたことによるものです。

 

(3) 受注状況

当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

(千円)

前年同期比

(%)

受注残高

(千円)

前年同期比

(%)

情報基盤事業

29,916,781

+9.8

25,901,207

+25.2

アプリケーション・サービス事業

12,850,457

+21.6

14,030,715

+47.7

合計

42,767,238

+13.1

39,931,922

+32.2

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

(4) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比

(%)

情報基盤事業

24,711,247

+18.0

アプリケーション・サービス事業

11,802,371

+18.2

合計

36,513,619

+18.1

 

(注) 1 売上割合が10%以上の取引先はありません。

2 セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析は以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書の提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表の作成に用いた重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しております。

なお、当社グループにおいては、新型コロナウイルス感染症拡大により、リモートアクセスに関するセキュリティ製品など一部の取扱製品に需要の増加があったほか、連結子会社において実施している技術者向けの研修において一部受講のキャンセルがありましたが、当連結会計年度の連結財務諸表の作成においては、新型コロナウイルス感染症拡大が大きな影響やリスクを与えたとの認識はしておりません。

また、連結財務諸表の作成における見積りに与える影響について、本有価証券報告書の提出日現在においては、新型コロナウイルス感染症拡大を理由とする重要な会計上の見積りの見直し等を行っておりません。今後、経済活動の動向等により顧客業績が悪化するなどして、顧客において当社グループの取扱製品やサービスに対する購入・投資意欲の減退が見られた場合に、当社の財政状態に影響を与える可能性はございますが、本有価証券報告書の提出日時点においては、従前と比較して連結財務諸表の作成の見積りにあたり、新型コロナウイルス感染症拡大を理由として、連結財務諸表の作成に大きな影響を及ぼす事象の発生等は認識しておりません。

 

(2)経営成績の分析

情報基盤事業の売上収益は247億11百万円前期比37億68百万円18.0%)の増加となり、過去最高となりました。営業利益は30億54百万円前期比3億13百万円11.4%)の増加となりました。

当連結会計年度における情報基盤事業の業績は、前期までに積み上げた受注残と新規案件の受注により、好調に推移しました。また、サブスクリプション型の課金モデルであるクラウド型セキュリティ対策製品の受注も拡大傾向にあります。西日本地域での販売も前期からの好調さを維持しています。当連結会計年度の連結受注高、売上収益、営業利益は期初に策定した予算額を超過達成し、コロナ特需が発生した前期を全ての指標で上回る結果となりました。製品別では、クラウド時代のセキュリティに対応したSASE(Secure Access Service Edge)」、「CASB(Cloud Access Security Broker)」、「Cyber Hygiene」、「SDP (Software Defined Perimeter)」、等、新しい世代のセキュリティ対策製品も注目度が高まってきており実績も増加しております。また、セキュリティ運用の複雑化による運用監視サービス需要の高まりにより、統合セキュリティ運用・監視サービスの新規顧客獲得が進み受注・売上収益も拡大しました。メディア・エンタテインメント業界向けのストレージ製品も好調です。
 クロス・ヘッド株式会社は、売上収益・営業利益ともに計画通り推移しました。インフラ構築案件の受注は回復傾向にありますが、半導体不足の影響によるネットワーク機器の納品遅れにより、大手SI経由の構築プロジェクトの延伸が一部で発生しました。
 沖縄クロス・ヘッド株式会社では、独自プロダクト・サービスが好調に推移し、営業利益が計画を大きく上回る結果となりました。

 

アプリケーション・サービス事業の売上収益は118億2百万円前期比18億17百万円18.2%)の増加となり、過去最高となりました。営業利益は6億79百万円前期比1億62百万円19.3%)の減少となりました。新規事業である教育事業への積極投資や、CRM事業における顧客の意思決定の長期化傾向による受注のタイミングの遅れ等が主な要因です。

当連結会計年度におけるアプリケーション・サービス事業の業績は、情報基盤事業と同様に、前期までに積み上げた受注残と新規案件の受注により堅調に推移しました。

医療分野では、医療関連の連結対象子会社である株式会社NOBORIの医療情報クラウドサービス「NOBORI」の順調な受注が継続し、累積契約施設数は増加しています。加えて、既存ユーザのサービス契約更新も取りこぼすことなく受注しています。一方、コンシューマ(患者)をターゲットとしたPHR(Personal Health Record)サービスの開発や、AIベンチャー・医師らと組んだ医用画像診断支援システムの共同開発等の新規事業への先行投資を継続し、順調に成果が上がっています。また、2月にPSP株式会社を連結子会社化したことによる業績の取り込みも医療分野の事業規模拡大に寄与しました。
 その他、医療関連の連結対象子会社である合同会社医知悟は、今期計画を超過し堅調さを維持しています。
 株式会社A-Lineについては、診療用放射線の安全管理体制整に関する医療法施行規則の一部を改正する省令が既に施行されていますが、監督機関による監査がコロナ禍において進んでいないため、医療機関における放射線量管理システム導入に対する投資意欲が想定通りに盛り上がらない傾向にあります。そのため、受注がやや低調ですが、サブスクリプション型ビジネスであるため、売上面、利益面は概ね計画通り進捗しました。
 CRM分野では、次世代製品及び機能強化したFAQシステムの市場への投入により競争力が強化され、大手システム・インテグレーターやテレマーケティング・ベンダーとの業務提携、クラウド需要の拡大、知名度の向上と実績の拡大に伴い、新規の引き合いは堅調です。しかし、顧客における意思決定の長期化傾向により、受注のタイミングが遅れたため、売上収益、営業利益が期初計画を下回りました。下半期よりは受注の遅れも解消し、期末時点では受注高の年初計画を達成したことで、売上収益、営業利益も回復傾向にあります。また、ソーシャルデータ分析クラウド分野でタイ最大手企業であるWisesight社との資本・業務提携を足掛かりに、今後、ASEAN市場での事業展開の加速に取り組んでいきます。
 ソフトウェア品質保証分野では、前期において新型コロナウイルスの感染拡大による製造業の投資減速の影響を受けましたが、当連結会計年度に入り当該分野に対する投資は回復傾向にあります。また、自動車のIT化に伴い車載ソフトウェアを開発する製造業などで組込みソフトウェアの品質向上を目的とした需要は底堅く、引き続き好調な受注環境を維持しております。しかしながら、サブスクリプション型ライセンスの受注が増えており、売上が契約期間に応じて繰り延べられるため、売上収益及び営業利益の伸びは抑えられる傾向にあります。
 ビジネスソリューション分野では、既存顧客である学術系公共機関向けのシステム開発案件の受注が堅調でした。また、金融機関向けリスク管理分野において、LIBOR廃止に対応するための開発需要を着実に取り込んでいます。下半期よりは収益性も改善したため、上半期に発生した不採算案件の損失も挽回し期末では営業利益計画を達成しました。
 山崎情報設計株式会社は、売上収益・営業利益ともに計画通り推移しました。株式会社カサレアルでは、引き続き新型コロナウイルス感染症により対面での研修の提供にマイナス影響を受けていますが、受託開発部門及びクラウド関連技術に特化したコンサルティングサービスが堅調に推移し、売上収益・営業利益ともに計画を上回っています。
 新規事業である教育事業については、有名私立先進校や小規模公立校への導入が進みました。また「ASPIC IoT・AI・クラウドアワード2021」で準グランプリを受賞しました。引き続き、事業の垂直立ち上げを実現すべく営業・マーケティング活動を大幅に強化するなど、計画に沿って積極投資を継続しています。

 

以上の結果、当連結会計年度の売上収益は、365億13百万円前期比55億85百万円18.1%)の増加となり、過去最高となりました。売上総利益は124億56百万円前期比12億38百万円11.0%)の増加となりました。販売費及び一般管理費は、人件費等の増加や新規事業である教育分野への積極投資など販売管理費が増加したことにより、82億69百万円前期比6億30百万円8.2%)の増加となりました。また、第3四半期連結累計期間においては、現オフィスの資産除却債務対応資産を含む非金融資産の減損損失として、およそ1億80百万円を日本基準の適用による「特別損失」ではなく、IFRS基準による「その他費用」として計上しましたが、第4四半期連結会計期間においても、グループ会社を含む現オフィスの原状回復費用等移転関連費用として、およそ2億65百万円を同じくIFRS基準による「その他費用」として追加計上しております。その結果、営業利益は37億34百万円前期比1億50百万円4.2%)の増加となりました。

以上により、税引前利益は37億18百万円前期比3億11百万円9.2%)の増加親会社の所有者に帰属する当期利益は23億71百万円前期比70百万円3.0%)の増加となりました。

 

(3)財政状態の分析

当連結会計年度末の流動資産の残高は、前連結会計年度末(以下「前年度末」という。)から110億97百万円35.6%)増加し、422億67百万円となりました。前渡金が41億42百万円増加したことが主な要因であります。非流動資産の残高は、前年度末から14億10百万円16.0%)増加し、102億36百万円となりました。繰延税金資産が7億30百万円増加したことが主な要因であります。以上により、総資産は前年度末から125億7百万円31.3%)増加し、525億3百万円となりました。
 流動負債の残高は、前年度末から90億87百万円48.1%)増加し、279億89百万円となりました。契約負債が62億84百万円増加したことが主な要因であります。非流動負債の残高は、前年度末から4億27百万円9.0%)減少し、43億11百万円となりました。リース負債が9億26百万円減少したことが主な要因であります。以上により、負債の残高は、前年度末から86億60百万円36.6%)増加し、323億1百万円となりました。

資本合計の残高は、前年度末から38億47百万円23.5%)増加し、202億2百万円となりました。利益剰余金が16億98百万円増加したことが主な要因であります。以上により、親会社所有者帰属持分比率32.4%となりました。

 

(4)戦略的現状と見通し

2021年5月10日に発表した新中期経営計画「BEYOND THE NEW NORMAL」の1年目にあたる当連結会計年度(2022年3月期)は、グループ全体の既存事業のオーガニックな成長に加え、2022年2月に連結子会社化したPSP株式会社の業績の取り込みもあり、売上収益、営業利益ともに計画値を上回る結果となりました。(受注高、売上収益、営業利益ともに過去最高を更新しました。)
 上記の定量的な成果に加え、新中期経営計画の基本戦略に沿った取り組みにも注力しました。例えば、2022年12月にグループ会社5社を含めた本社機能の移転及び集約を実施します。この本社機能の集約により、中期経営計画の基本戦略にも掲げている「グループ間連携の強化によるシナジーの創出」を追求し、中期経営計画の着実な遂行と持続的成長の実現を目指します。
 同じく中期経営計画の基本戦略にも掲げている「多様なアライアンス・M&A」「データの利活用(AIの利用を含む)」の実現を目的として、医療分野において株式会社NOBORIの競合企業であったPSP株式会社を2022年2月に連結子会社化し、2022年4月1日には両社が合併して新生PSP株式会社が誕生しました。また、同日にはAI診療の現場への流通を加速させることを目的として、合併後のPSP株式会社とエムスリー株式会社との合弁会社としてエムスリーAI株式会社を設立しました。また、「海外市場での事業の拡大」に向けて、CRM分野においてソーシャルデータ分析クラウド分野でタイ最大手企業であるWisesight社との資本・業務提携を実施しました。

 

新中期経営計画「BEYOND THE NEW NORMAL」の2年目にあたる2023年3月期は、引き続きグループ全体の既存事業のオーガニックな成長を加速させるとともに、株式会社NOBORIとの吸収合併により2022年4月1日に誕生した新生PSP株式会社の戦略的事業展開に取り組んでいきます。具体的には、従業員数400人規模の事業会社となる同社のPMI(Post Merger Integration)に取り組みます。また、当社の連結子会社になる前のPSP株式会社の契約施設に対して医用画像管理システム(PACS)のクラウドシフトを推進していきます。ストック型ビジネスに転換することから、売上・営業利益の一時的な減少要因となりますが、将来を見据えた経営判断としてクラウドシフトを積極的に推進していきます。

 

■情報基盤事業部門

クラウド時代に対応し、従来のITインフラストラクチャー(企業ネットワーク等)のサイバー攻撃の防御に留まらず、より広範囲なクラウド及び仮想化された環境下の防御を実現する次世代のネットワークセキュリティ関連商材及びサービスの拡充を目指します。クラウドサービスやSNSが普及し、スマートフォンユーザが増加したことにより、インターネット上の通信量は飛躍的に増加しており、情報セキュリティに関する脅威が増している状況の中、データセンター事業者、クラウドサービス事業者や一般企業における情報基盤への設備投資は前向きな状態が続くと判断しています。最先端のネットワークセキュリティ関連技術の動向を先取りし、積極的に新規商材を発掘し、各種自社サービスと組み合わせ、競合他社との差別化を推進して行きます。

昨今、セキュリティ関連技術自体がクラウド化してきており、またエンドポイントにおける防御・検知技術の進歩も加速度的に進んでいます。また、サイバーセキュリティ対策は、より高度化、巧妙化するサイバー攻撃の脅威とのイタチごっこでもあります。企業は継続的に検知及び監視に費用を投じざるを得ず、また、より高度化する脅威に対して、より専門的な人材による対応も必要になってきています。その専門性故、企業が個別に対応していくことに限界が見えてきているため、サイバー攻撃の防御を行うセキュリティ機器の販売だけでなく、マネージドサービス等付加価値の高いサービスの開発に積極的に投資してまいります。当該セグメントにおける連結子会社との事業連携も加速させ、情報基盤のライフサイクル全般をカバーする総合的なサービス提供力の向上に努めます。

企業や官公庁・自治体にとって、情報資産を守るためのサイバーセキュリティ対策の重要性はより増しています。サイバーセキュリティ対策は、もはや国家戦略、企業戦略の一部となっており、官民を挙げて対策を加速させるべき状況が継続しています。サイバー攻撃に対する防衛と検知に対する投資は、今や国家の安全保障の一部、企業の経営責任の一部とも言え、サイバーセキュリティ対策市場は今後も堅調に拡大することが想定されます。

 

 <新中期経営計画における主な基本戦略>

『デジタル化を支える情報基盤・技術・サービスの提供』

・取扱製品/サービスの拡大

・代理店(パートナー)と戦略アカウントの深掘り

・プロダクト組織とアカウント組織のマトリックス化

・専門性の更なる強化と技術力の可視化(保守対応の可視化、技術情報発信など)

・統合監視セキュリティサービス(TPS)の拡販

・センター集約型ビジネスの拡大(付加価値の追求)

・サブスクリプション販売への移行促進(ストックビジネス強化)

 

■アプリケーション・サービス事業部門

医療分野、CRM分野、ビジネスソリューション分野、ソフトウェア品質保証分野夫々において、クラウドサービス(SaaS)を加速度的に推進します。また、顧客企業でソフトウェア開発の内製化が進む中で、顧客向けの受託開発を担当していた技術リソースの一部を「自社独自サービス開発(ベストプラクティスのクラウドサービス)」や「自社付加価値を高める既存クラウドサービスの拡充」に戦略的にシフトしていきます。

医療分野においては、当社グループが他社に先行してサービスを開始した医療情報クラウドサービス「NOBORI」は、クラウド型PACS(医用画像管理システム)市場において圧倒的なシェアを獲得しており、同市場を牽引しています。「NOBORI」は医用画像データの管理に留まらず、医療情報クラウドサービスのプラットフォーム「NOBORI PAL」として、当社及びパートナー企業の新たなクラウドサービスの拡充を目指します。また、戦略的業務提携によって、医用画像診断支援のAIプラットフォーム事業を積極的に推進しており、蓄積されたデータの利活用を加速させています。また、医療機関のみならずコンシューマ(患者)をターゲットとしたPHRサービスは、患者個人への課金をスタートし、本格的な普及と事業の収益化を目指しています。

CRM分野においては、従来の電話やメールといったコミュニケーション手段にとどまらず、SNS等の多様なチャネルに対応したコンタクトセンターCRMソリューションを提供しています。AIを活用したチャット・ボット等の最先端技術を活用し、コンタクトセンターの運用効率化に貢献していきます。当該分野においても、クラウド化を推し進めると同時に、民間のみならず自治体の広聴業務向けの事業拡大に取り組みます。また、ソーシャルデータ分析クラウド分野でタイ最大手企業であるWisesight社との資本・業務提携を足掛かりに、急速に発展しているASEAN(特にタイとインドネシア)地域での顧客拡大に取り組み、ビジネスのグローバル化を推進していきます。

ソフトウェア品質保証分野においては、様々なデバイスがインターネットで相互接続されるIoTやM2M(機器間の通信)の拡がりにより、組込みソフトウェアの品質向上は社会的にも非常に重要な課題となってきています。医療機器、自動車、鉄道、電子機器等様々な分野で機能安全の国際規格への対応が必要となってきています。組込みソフトウェアの品質向上・機能安全(セイフティ)に対する需要を的確に捉えて行くと同時に、複雑化、大規模化する企業内情報システム分野におけるソフトウェア品質向上のニーズにも応えて行きます。DevOps※20やOSS※21に対応した開発支援ツールの提供にも力を入れます。当該分野においても、クラウド型のサービスの提供を推進しています。

ビジネスソリューション分野では、従来の特定顧客向け受託開発ビジネスで積み上げてきた技術力を活かし、新しい分野でのベストプラクティスをシステム化したクラウドサービスの創出に取り組んでいます。政府のGIGAスクール構想※22により急速にデジタル化が進む教育分野においては、10年振りに改訂された学習指導要領において「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング)や「個別最適な学び」の実現が謳われています。その目標を実現するためには、これまでの発想とは全く違う新しいコミュニケーション・プラットフォームや校務支援クラウドサービスが必要です。この市場の変化と新しいニーズに対応するため、当社ではクラウドサービス「ツムギノ」を積極的に拡販していきます。また、当社が知見を蓄積した学術分野や、金融工学の技術を活用した金融機関向けのリスク管理分野でのビジネス拡大にも取り組んでいきます。

当該セグメントにおける連結子会社は、単体事業との事業シナジーを追求しつつ、夫々の専門分野で事業の拡大を図ります。

 

<新中期経営計画における主な基本戦略>

『最善の手法である「Best Practice」を誰にも使いやすいUXを通してクラウド型で提供』

・AI医療診断支援サービス事業の加速

・PHR事業の拡大

・CRMサービスのワンストップ化に向けた他ベンダーとの連合・グループの組成

・グローバル展開(ASESAN)の加速

・AI技術を活用した製品/サービスの創出

・ポートフォリオの拡充(ソフトウェア開発基盤ソリューションの独自開発等)

・ツールを活用した第三者テスト/検証市場への参入

・独自のビジネス分析ソリューションの開発・提供

 

(5)資本の財源及び資金の流動性についての分析

 ① キャッシュ・フロー

キャッシュ・フローの状況については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 ② 資金需要

当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金、取扱い製品であるネットワーク関連機器の保守用機材の購入等の設備投資資金及び販売用ソフトウェアの開発費等であります。

 ③ 資金の源泉

当連結会計年度末において181億55百万円の現金及び現金同等物の残高があり、当面の資金需要に充当し得る十分な資金を保有しております。

 

(6)経営者の問題認識と今後の方針について

当社グループが成長を続けていくためには多くの課題が残されていると考えております。具体的には、①業界動向や顧客ニーズ等の「外部環境変化への対応力強化」と、②人材面や業務プロセスの効率化等の「内部の課題解決」の二つに大別されます。

 

 ① 外部環境変化への対応力強化

・ 持続的な成長シナリオの構築

現在、当社グループの事業セグメントにおいては、ニッチ市場ながらも競争力の高い製品やサービスを展開しておりますが、今後も持続的に成長するためには、市場ニーズに対応した新しい製品やサービスを切れ目なく立ち上げていく必要があります。

・ ビジネスモデルの多様化

企業のITシステム投資の方向性が、設備の「所有」からサービスの「利用」へと加速度的に変化しております。IT資産においてもオフバランス化が進み、「持たざる経営」がITの分野にも浸透しつつあります。
 これまで、企業はITシステム(ハードウェア、ソフトウェア、開発)を資産として購入・運用してきましたが、ITシステムを資産として保有せず、外部事業者のサービスをインターネット越しに活用するクラウドサービスの利用が広がっております。これにより、企業側はITシステムの初期投資や運用・保守等の負担を低減することができます。当社グループでは、アプリケーション・サービス事業において、自社開発ソフトウェア・パッケージの販売、保守を行ってまいりましたが、これらソフトウェアの機能をインターネット経由のサービスとして提供するクラウドサービス事業に参入しております。売り切り販売中心のフロー事業に加え、継続的に収入が得られるサービス事業によるビジネスのストック化を更に推進します。クラウド時代の顧客企業ニーズの変化に積極的に対応し、ストック型ビジネスを中心戦略とした「持たざる経営」を支えるサービス・プロバイダー、サービス・クリエーターとしての地位の確立を進めてまいります。

・ サービスのフルライン化

上述のとおり、IT業界ではクラウドという新しいビジネスモデルへの対応が必要となる一方で、従来どおりITシステムの自社所有を希望する企業があります。このため、当社グループは、システム導入以降に必要となる保守・運用サービスについても積極的に拡充し、システムのライフサイクル全てをカバーするフルラインのサービス提案を行ってまいります。また、グループ経営を一層強化することにより、システムのフルアウトソーシングの請負にも注力し、継続的な取引機会の確保に努めてまいります。24時間対応のオンサイト保守やリモート監視業務については、外部委託からクロス・ヘッド株式会社への委託へ切り替え、グループ内での機能の自活、内製化を進めております。また、株式会社カサレアルの完全子会社化によりソフトウェアの開発要員を拡充しておりますので、開発業務についても同社技術力を活用した効率化を進めます。以上の取り組みにより、グループの総合力を発揮するとともに、サービスのフルライン化を進めます。

・ 業界構造

一般的に、ソフトウェア開発会社は人的資源中心のビジネスであり、大規模な初期投資を必要としないことから、少人数の企業から大手のシステム・インテグレーターまで多数の企業が存在します。業界全体が多重の下請け構造になっているため、下請け構造の下層に位置する企業は、規模の大小にかかわらず苦しい経営を強いられております。このため、生き残りを図るためには、付加価値の高いサービスを提供し、顧客企業への直販、直接契約を志向することが重要であり、フルラインでのサービス提供と総合力の発揮、一定規模の開発体制が求められます。当社グループは、今後もM&Aの活用を経営の選択肢に取り入れ、スピード感を持って付加価値の向上、総合力の発揮、規模の拡大を目指してまいります。

 

 ② 内部の課題解決

・ 人材の採用と育成

当社グループは、これまで即戦力の中途入社社員の採用により事業の拡大を図ってまいりましたが、中堅社員層の比率が相対的に高くなっているため、将来的なコストアップを防ぐためにも、今後は、若手社員の拡充に軸足を移し、新卒や第二新卒の採用活動に力を入れていく必要があります。
 また、一般的な労働集約型ビジネスではない、高付加価値なストック型ビジネスの拡大や、新規事業の創発等の事業戦略の実現に向け、今後のIT の技術革新や業界を取り巻く環境変化にキャッチアップし、新たな価値を創造できる人材育成計画の策定及び実現を進めてまいります。

・ 品質カイゼン活動

ITシステムは、社会インフラ化しており、また、企業経営にとっても経営戦略を具現化するためのツールとして、ITシステムの果たす役割は一層重要性を増しております。ITシステムを構成するハードウェアの性能は日進月歩で向上しておりますが、人的資源に依存するソフトウェアの開発においては、依然として属人的な要素が少なくありません。開発プロセスの標準化や科学的手法によるテストの合理化、既存ソフトウェア部品の有効活用等、さまざまな努力を重ね、ソフトウェア品質、サービス品質の向上に努めなければなりません。高品質な製品・サービスの提供は勿論のこと、企業業績の安定化のためにも、品質カイゼン活動を積極的に推進してまいります。

・ 社内ITシステムの充実

業務プロセスを効率化、合理化していくため、また、事業上の迅速な意思決定を促進するためにはITシステムの積極的な活用が不可欠であると認識しております。経営者のリーダーシップのもと、当社のIT推進部において、デジタル技術の活用による社内生産性の向上及び事業活動の質の向上に向けて自社ITシステム戦略を策定しております。また、月次単位の定期会議を開催し、経営者や他部署を交え、課題の把握及び今後の施策の検討を行っております。具体的には以下のような取り組みテーマがあります。

 

1 開発・導入のスピードアップ、品質向上

2 人材の育成、充実、体制の再構築

3 能動的な企画・提案活動

4 投資対効果の計測

5 クラウド化の促進

6 セキュリティの安心・安全の追及

上場企業として求められる内部統制を着実に実行していくためにも、ITによる業務統制は重要な役割を担っていると考えております。当社グループは、社内ITシステムの継続的な開発を通じて、業務プロセスの効率化、企業活動の可視化を図ってまいります。

 

 

 

(用語解説)

 

※14

PHR

PHR(Personal Health Record)とは、個人が自らの健康に関する情報を、自己管理のもとに情報集約化を実現するツールやシステムのことをいう。

※15

SASE

SASE(Secure Access Service Edge)とは、ネットワークとセキュリティの機能を包括的にクラウドから提供すること。クラウドサービスの普及が進む中で、これまでクラウドのポリシーは利用サービス別に適用されることが多かったが、SASEは単一のクラウドに集約し包括的に管理するという、新しい概念。

※16

CASB

CASB(Cloud Access Security Broker)とは、クラウドサービスのユーザーとクラウドサービスのプロバイダー間に位置し、クラウド利用状況の可視化や制御を行い、全体として一貫性のあるセキュリティポリシーを実施できるようにすること。

※17

Cyber Hygiene

Cyber Hygieneとは、定期的なパスワード変更やソフトウェアのアップデートなど、ユーザ単位でIT環境を健全に保つための取り組みを行い、セキュリティ・インシデントを防ぐこと。

※18

SDP

SDP(Software Defined Perimeter)とは、ネットワークを経由した様々な脅威に応じた境界線をソフトウェア上で構築し、アプリケーションインフラや機密情報への柔軟 なアクセス制御を可能にするセキュリティフレームワークのこと。

※19

LIBOR

LIBOR(London Interbank Offered Rate)とは、ロンドン市場における金融取引にお ける銀行間取引金利のこと。本指標の恒久的な公表停止が確定しており、参照する取 引を行っていた金融機関や企業は代替金利指標への移行などの対応を進めている。

※20

DevOps

DevOps(デブオプス)とは、ソフトウェア開発手法の一つ。開発 (Development) と運用 (Operations) を組み合わせたかばん語であり、開発担当者と運用担当者が連携して協力する(さらに両担当者の境目もあいまいにする)開発手法をさす 。

※21

OSS

OSS(Open Source Software)とは、人間が理解しやすいプログラミング言語で書かれたコンピュータプログラムであるソースコードを広く一般に公開し、誰でも自由に扱ってよいとする考え方。また、そのような考えに基づいて公開されたソフトウェアのこと。

※22

GIGAスクール構想

GIGAスクール構想(「GIGA」は「Global and Innovation Gateway for All」)とは、2019年に開始された、全国の児童・生徒1人に1台のコンピューターと高速ネットワークを整備する文部科学省の取り組み。

 

 

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