当社グループが属する情報サービス産業においては、ソフトウェア・ハードウェア技術の進展、IoT(モノのインターネット)の普及、企業のデジタル化への対応等により、データセンター市場、クラウド市場等が拡大しております。
このような環境の下、当社グループは、当社グループが展開するコンピュータプラットフォーム事業、IoT/AIソリューション事業、メディアソリューション事業の3事業について、事業環境の変化に対応しながら事業運営を行っております。
なお、当社グループは、お客様や従業員の新型コロナウイルス感染防止のため、テレワークの導入や時差出勤等の必要な措置を講じております。また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が当連結会計年度の業績に与えた影響については限定的でした。
当連結会計年度におけるセグメント別の概況は以下のとおりであります。
(コンピュータプラットフォーム事業)
コンピュータプラットフォーム事業においては、データセンター、クラウド・ソリューション、データ・ソリューション、その他に分け、サービスを展開しております。
データセンターでは、大手町の新データセンター(以下、新大手町サイト)は、2021年(昨年)12月末の契約率が約75%、稼働率は約55%となり、売り上げが増加しました。他方、利益率の高い運用受託サービスは段階的に売り上げが減少し、また、運用開始から20年が経過した大手町のデータセンター(第1サイト)は、一部のお客様が新大手町サイトへの利用に切り替えたこと等により売り上げが減少しました。なお、新大手町サイトでは、昨年9月より、使用する電力をRE100(注1)準拠のトラッキング付FIT非化石証書(注2)を活用した実質再生可能エネルギー由来100%の電力に切り替え、環境負荷の低減に努めております。また、昨年12月にFarallon Capital Management L.L.C及びその関係会社が保有管理し、当社への出資及び当社との資本業務提携を行うことを目的として設立したFCJ 1 Co. Ltd.、株式会社キャピタリンク・パートナーズ及び株式会社インターネット総合研究所の間での資本業務提携契約を締結し、ハイパースケールデータセンター事業への進出に向けた準備を進めております。
クラウド・ソリューションでは、クラウド市場の拡大を背景に、当社独自のc9サービス、SaaS(Software as a Service)サービス等の売り上げは堅調に推移し、パブリッククラウドサービスの売り上げは増加しました。また、昨年12月にモバイル・キャピタルインターネット株式会社を持分法適用関連会社化し、将来性のあるSaaS事業者へのアクセスを強化してまいります。
データ・ソリューションでは、大容量化への対応、安定運用等、お客様のニーズに即したストレージの活用方法を提案することにより、当社の主力プロダクトであるDELL Technologies社製の「PowerScale(旧製品名称 Isilon)」の売り上げは堅調に推移し、大容量のデータを収容できるScality社のSDS(ソフトウェア・デファインド・ストレージ)製品については、第2四半期連結会計期間に大型案件の売り上げを計上しました。
なお、デジタル技術やデジタルサービス等の浸透により、企業のDX(デジタル変革)が加速する中、当社も事業の変革、業務プロセスの見直し、社内システムの高度化・連携等、DXへの取り組みを推進してまいります。
その他では、株式会社ティエスエスリンクが情報漏洩対策ソフトウェア製品の開発、販売等を行っており、独自製品である「パイレーツ・バスター®」、「コプリガード®」等の売り上げは堅調に推移しました。また、情報セキュリティサービスとして提供しているPCデータのクラウドバックアップサービスの売り上げも堅調に推移しました。
この結果、コンピュータプラットフォーム事業の売上高は、データセンターの売り上げ減少により9,429百万円(前年同期比5.8%減)となりました。営業損益は、主に、利益率の高い運用受託サービスの売り上げ減少に伴う利益の減少により130百万円の損失(前年同期は410百万円の営業利益)となりました。
(IoT/AIソリューション事業)
IoT/AIソリューション事業では、株式会社エーアイスクエア(以下、AI2)及びグローバルIoTテクノロジーベンチャーズ株式会社(以下、GiTV)等が事業を展開しております。
AI2では、自社開発の2つのコアシステムである企業内外の問い合わせ応答業務を支援する自動応答システム「QuickQA」と会話文から書籍まで様々な文章を要約・分類する「QuickSummary」に加え、音声認識エンジンやAIの学習に付随する各種サービスを業務の自動化・効率化・高度化を望んでいるお客様に対し提供しております。また、Webセミナー開催・展示会出展等を通じた顧客獲得活動、SIerやソフトウェアベンダーによる代理店販売により売り上げが増加しました。なお、当社は、昨年12月にAI2の一部株式を譲渡し、同社は12月末時点で、連結子会社から持分法適用関連会社となりました。
GiTVが組成したファンドであるGiTV FundⅠInvestment,L.P.は、海外のAIやIoT関連のベンチャー企業(アーリーステージの企業)等に投資を実行しており、GiTVは、2つ目のファンド組成として、昨年8月にGiTV FundⅡInvestment,L.P.を設立しました。
また、BBTOWER SAN DIEGO INC.は昨年6月に清算が結了しました。
この結果、IoT/AIソリューション事業の売上高は、AI2の売り上げ増加等により442百万円(前年同期比30.2%増)となり、営業損失は153百万円(前年同期は200百万円の営業損失)となりました。
なお、GiTV FundⅠInvestment,L.P.は、投資有価証券評価損946百万円を特別損失として計上しました。
(メディアソリューション事業)
メディアソリューション事業では、ジャパンケーブルキャスト株式会社(以下、JCC)及びその子会社である沖縄ケーブルネットワーク株式会社(以下、沖縄ケーブル)が事業を展開しております。
JCCにおいては、主力事業であるデジタル多チャンネル配信のプラットフォームサービス「JC-HITS」は、ケーブルテレビ事業者の多チャンネル放送サービスの高画質化の進展に向け、日本初となる4Kスローテレビチャンネル「ナチュラルウインドウチャンネル」の試験放送を提供開始するとともに、ケーブルテレビ事業者のC-CASからACAS(注3)への移行を支援しております。
ケーブルテレビのコミュニティチャンネル向けデータ放送サービス「JC-data」は、地域に密着した安心・安全・防犯・防災情報の提供を行っております。
自治体からのお知らせや各種緊急情報を伝達する「IP告知システム」は、昨年新たに北海道の4町村で導入が決定し、うち北海道むかわ町、島牧村、積丹町の3町村は、昨年整備完了しサービス提供を開始しました。また、新規取り組みとして、JCCと北海道テレビ放送株式会社(以下、HTB)は、放送通信連携型データ放送サービスのHybridcast(注4)を活用し、HTBのデータ放送画面を通じて自治体の各種情報を配信するサービスの事業化に向け、昨年9月に基本合意書を締結し、本年のサービス開始に向け準備を進めております。さらに、サービスをご利用中の北海道喜茂別町には、総務省が推進する「地域おこし企業人交流プログラム」(注5)を活用し、昨年4月から同町役場へ社員派遣を実施し、加えて、JCCとむかわ町は、防災・ICTの利活用・観光推進に関し包括連携協定を昨年6月に締結しました。
今後もJCCでは、ケーブルテレビを通じたサービス提供にとどまらず、課題の多い地域の暮らしを便利にするサービスを、自治体と共創して提供に努めてまいります。
沖縄ケーブルにおいては、昨今高まるインターネット等の高速通信需要に対応するため、光回線(FTTH(注6))化工事に着手し、昨年7月に那覇市の一部で超高速インターネットサービス「ヒカリにらい」の提供を開始しました。引き続き、宜野湾市全域のインフラを順次更新してまいります。また昨年8月、株式会社地域ワイヤレスジャパン、沖縄テレビ放送株式会社等と共同で提案した「沖縄県初ローカル5Gを活用した災害時におけるテレビ放送の応急復旧に関する実証実験」が総務省に選定されました。本実証実験を通じ集合住宅向け高速FWA(注7)の商用サービス提供に向けた汎用性の高いローカル5G活用モデルの構築を目指すとともに、本実証実験で得られた知見を活用し今後もJCCと連携を図りながら、地域の発展とケーブルテレビ加入者数の増加に努めてまいります。
この結果、メディアソリューション事業の売上高は5,657百万円(前年同期比1.2%減)、営業利益は288百万円(同5.5%減)となりました。
以上の活動により、当連結会計年度における当社グループの売上高は15,529百万円(前年同期比3.4%減)、営業利益は53百万円(同89.8%減)、経常利益は、営業利益に加え、投資事業組合運用益の計上等により403百万円(同23.8%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純損益は、関係会社株式売却益を計上したものの、投資有価証券評価損の計上等により3百万円の損失(前年同期は342百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
(注1)RE100とは、英国のClimate Groupと英国ロンドンに本部を置くNGOであるCDPが実施する、事業運営に使
う電気を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げるイニシアティブ。
(注2) トラッキング付FIT非化石証書とは、自然エネルギー、バイオマスなどの非化石電源で発電された電気が
持つ「非化石価値」を取り出し証書化した非化石証書に、電源種や発電所所在地などのトラッキング情
報を付与したもの。
(注3)ACASとは、4K8K放送で新たに採用されたCAS方式。
CASとは、限定受信方式「CONDITIONAL ACCESS SYSTEM」。
(注4)Hybridcastとは、放送波の中にインターネット上のコンテンツの取得を指示する制御信号を組み込み、テレビ放送とHTML5で記述されたWebコンテンツとの融合を可能とする次世代放送サービス。
(注5)地域おこし企業人交流プログラムとは、総務省が、三大都市圏に所在する民間企業の社員がそのノウハウや知見を活かし、一定期間、地方公共団体において地域独自の魅力や価値の向上等につながる業務に従事することで地方圏へのひとの流れを創出することを目指して制定したプログラム。令和3年度からは「地域活性化地域おこし企業人交流プログラム」に名称を変更。
(注6)FTTHとは、光ファイバーを利用した家庭用の高速データ通信サービス「Fiber To The Home」。
(注7)FWAとは、固定無線アクセス「Fixed Wireless Access」。
当連結会計年度末における総資産は、売掛金の増加、投資先の上場による投資有価証券の増加等により、前連結会計年度末に比べ1,043百万円増加し24,402百万円となりました。
負債合計は、買掛金や繰延税金負債等が増加したものの、長期借入金の減少等により、前連結会計年度末に比べ255百万円減少し11,038百万円となりました。
純資産合計は、その他有価証券評価差額金、非支配株主持分の増加等により、前連結会計年度末に比べ1,298百万円増加し13,364百万円となりました。
なお、当社は、新大手町サイトの投資に伴う資金需要に対し、機動的な資金調達を行うため、2018年3月に取引銀行等5社と総額40億円のコミット型シンジケートローン契約を締結しており、当連結会計年度末の本契約に基づく借入金残高は33億75百万円です。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は前連結会計年度末と比較して583百万円減少し、5,534百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失となったものの、減価償却費、投資有価証券評価損、仕入債務の増加等により1,595百万円の収入(前年同期は2,284百万円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産、投資有価証券、関係会社株式等の取得による支出により1,419百万円の支出(前年同期は984百万円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、非支配株主からの払込みによる収入はあったものの、長期借入金の返済等により763百万円の支出(前年同期は1,082百万円の支出)となりました。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは、次のとおりであります。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注) 1. 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
2. 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
3. キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いにつきましては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
当社グループは、生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載はしておりません。
当社グループは、受注生産を行っておりませんので、受注実績に関する記載はしておりません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
3 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりでありま
す。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
売上高は前年同期比3.4%減となる15,529百万円となりました。売上高を事業別(セグメント別)に区分すると、コンピュータプラットフォーム事業が約61%、IoT/AIソリューション事業が約3%、メディアソリューションセグメントが約36%となっております。連結売上高における事業別の構成比率は、概ね前連結会計年度の構成比率並みとなりました。
営業損益は53百万円の営業利益(前年同期は524百万円の利益)となりました。営業利益を事業別に区分すると、コンピュータプラットフォーム事業が130百万円の損失、IoT/AIソリューション事業が153百万円の損失、メディアソリューション事業が288百万円の利益となっております。コンピュータプラットフォーム事業は、主として利益率の高い運用受託サービスの売り上げ減少に伴い利益が減少したことによるものです。IoT/AIソリューション事業は、主としてAI事業の売り上げが増加し赤字額が減少しました。メディアソリューション事業は僅かに減益となりました。
経常損益は403百万円の経常利益(前年同期は530百万円の利益)となりました。投資事業組合運用益の計上により営業外収益は前年同期に比べ増加しましたが、前年同期に比べ営業利益が減益になったことから、経常利益も前年同期に比べ減益となりました。
税金等調整前当期純損益は388百万円の損失(前年同期は391百万円の利益)となりました。損失となった理由は、関係会社株式売却益を352百万円を計上したものの、主として投資有価証券評価損を1,006百万円計上したことによるものです。
親会社株主に帰属する当期純損益は3百万円の損失(前年同期は342百万円の利益)となりました。税金等調整前当期純損失に、法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額、非支配株主に帰属する当期純損失を加減算した結果です。
当社グループは、事業に必要な資金を安定的に確保することを基本方針としており、資金調達及び資金の流動性については、自己資金のほか、金融機関からの借入により行っております。なお、新大手町サイトへの投資資金として機動的な資金調達を行うため、2018年3月に取引銀行等5社と総額40億円のコミット型シンジケートローン契約を締結しており、当連結会計年度末の本契約に基づく借入金残高は33億75百万円です。また、ハイパースケールデータセンター事業への進出のため、2021年12月21日開催の取締役会において、第三者割当による新株式及び第11回新株予約権の発行を決議し、資金需要の充足を図っております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。特に次の重要な会計方針が、連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
a)投資有価証券
当社グループは、時価のない有価証券について、投資先の財政状態等に基づき実質価額を評価し、当該価額が著しく低下し、回復可能性が見込めないものについて減損の対象としております。
回復可能性の評価にあたっては、決算時点で入手可能な情報に基づき合理的に判断しておりますが、経営環境等の変化により、個々の投資先に関する状況の変化があった場合、投資有価証券の評価に影響を及ぼす可能性があります。
b)有形固定資産
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。
経営環境の変化等により見積りの見直しが必要となった場合、減損損失が必要となる可能性があります。
c)のれん及び顧客関連資産
当社グループは、のれん及び顧客関連資産が帰属する資産グループに減損の兆候がある場合、当該資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、その帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。
経営環境の変化等により見積りの見直しが必要となった場合、減損損失が必要となる可能性があります。
なお、会計上の見積りにおいて、新型コロナウイルス感染症の影響は軽微と判断し見積りを行っております。
お知らせ