当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要、ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し厳しい状況が継続しました。昨年夏以降はワクチン接種率の上昇に伴い、徐々に経済活動の正常化に向けた動きがみられたものの、世界的な半導体等の部品供給不足や物流停滞の深刻化に加えて、ロシアによるウクライナ侵攻等を受けて資源価格が高騰するなど、先行き不透明な状況が続きました。
当社が属する情報サービス産業につきましては、本年4月に経済産業省が発表した2022年2月の特定サービス産業動態統計(確報)によれば、売上高合計は前年同月比5.8%増と11ヵ月連続で前年を上回ったほか、売上高の半分を占める「受注ソフトウェア」は前年同月比2.3%増と前年を上回りました。
このような事業環境のなか、当社グループは、「基盤事業※の拡大と収益向上」「新規事業の創出・育成」「社員の成長と活躍を推進」を主要方針として取り組みを進めました。
基盤事業においては、収益性の高い大型請負案件や一次請け案件の受注拡大を推進いたしました。顧客企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)実現に向けた需要を取り込むべく、当社の強みであるERPパッケージを活用した基幹システム刷新案件の提案活動を積極的に展開したほか、新たな技術や製品・ソリューションの活用を進めました。また、昨年5月に兼松エレクトロニクス株式会社およびキヤノンマーケティングジャパン株式会社、11月には株式会社JR東日本情報システムとの間でそれぞれ資本業務提携を締結しました。早期のシナジー創出に向けて各社と連携し取り組みを進めております。
新事業では、農業ICT、ヘルスケア領域での事業育成を継続するとともに、新規顧客獲得に向けてDXファーストステップソリューション(企業のデジタル化を支援する業務最適化コンサルティングや各種ITソリューション)のラインナップを拡充し提案力の強化をはかりました。また、昨年8月に農業ICT領域に特化した子会社「株式会社オーガル」を設立しました。新会社では農業ICTソリューション「OGAL(オーガル)」を活用した熟練農業者の技能継承を支援するサービスを提供するとともに、これまで蓄積した栽培ノウハウとITソリューションを組み合わせて農作物の栽培に取り組むなど活動の幅を広げ、より競争力の高いサービス・事業の創出を目指しています。
社員の成長と活躍の推進に向けては、DX、IoT等の最新技術や業務スキルの習得に向けた新たな研修プログラムを開始するなど教育・研修の充実をはかりました。また、社員一人ひとりが能力を発揮し、安心して働くことができるよう働き方改革の推進や健康経営に取り組みました。
※ 当社グループの売上高の大部分を占めるシステム開発事業とSI事業を基盤事業と位置付けております。
当社グループの当連結会計年度の受注高は18,888百万円(前年同期比390百万円増、2.1%増)、売上高は18,427百万円(同200百万円減、1.1%減)、営業利益は551百万円(同83百万円減、13.2%減)となりました。営業外収益として持分法による投資利益234百万円を計上したことなどにより、経常利益は755百万円(同0百万円増、0.0%増)となり、法人税等調整額などを計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は556百万円(同129百万円減、18.9%減)となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用しております。収益認識会計基準等の適用についての詳細は、「第5 経理の状況」の「連結財務諸表等」の(会計方針の変更)に記載の(収益認識に関する会計基準等の適用)および(セグメント情報等)に記載の(報告セグメントの変更等に関する事項)をご参照ください。
セグメント別の業績を示すと、次のとおりであります。
受注高は12,341百万円(前年同期比743百万円増、6.4%増)、売上高は11,882百万円(同70百万円増、0.6%増)、営業利益は777百万円(同134百万円増、20.9%増)となりました。
当連結会計年度におけるシステム開発事業は、安定的な収益獲得を実現すべく、事業部門を越えた体制構築を推進し、長期大型案件の獲得と遂行に取り組むとともに、今後更なる拡大が見込まれるIoTやクラウド等のDX関連の技術力強化を図るなど、積極的に取り組みを進めてまいりました。
この結果、受注高につきましては、金融系、医療系での案件拡大に加え、運輸系での大型案件の獲得などがあり、前期比で大幅に増加いたしました。売上高につきましては、官庁系、公共系で前期に開発した案件が運用保守工程、試験工程へ移行したことによる規模縮小などがあったものの、前述の医療系などでの案件拡大に加え、IoT関連案件の売上増などにより、前期比で増加いたしました。損益面につきましては、売上高の増加に加え利益率も改善したことなどにより、前期比で大幅に増加いたしました。
受注高は4,667百万円(前年同期比328百万円減、6.6%減)、売上高は4,686百万円(同133百万円減、2.8%減)、営業損失は194百万円(前年同期は7百万円の利益)となりました。
当連結会計年度におけるSI事業は、案件を着実に遂行し生産性の向上を実現すべく、部門横断の体制構築と技術ノウハウの共有を図るとともに、プライム案件の拡大を推進するなど、積極的に取り組みを進めてまいりました。
この結果、受注高につきましては、ERP系での新規大型案件の獲得や前期から継続している案件の維持保守工程の受注などがあったものの、前期に基幹系システム刷新の大型案件獲得があった反動減などが影響し、前期比で減少となりました。売上高につきましては、前期に開発を行った基幹系システム案件の開発が収束し保守工程に移行したことによる反動減に加え、当初見込んでいた案件の顧客都合による中断などが影響し、前期比で減少となりました。損益面につきましては、ERP系での不採算案件の発生などが影響し損失計上となりました。
受注高は1,879百万円(前年同期比24百万円減、1.3%減)、売上高は1,859百万円(同137百万円減、6.9%減)、営業損失は7百万円(前年同期は2百万円の損失)となりました。
当連結会計年度におけるその他事業は、事業拡大による継続的な成長を実現すべく既存領域の更なる拡大や新事業との連携強化を推進するとともに、特に新事業系においては、従来から推進してきた農業ICT領域において専門子会社を新規設立するなど、積極的に取り組みを進めてまいりました。
この結果、受注高および売上高につきましては、新事業が好調に推移したものの、前期まで継続していた長期大型の保守案件が終了したことによる販売系での減少、前期において既存顧客の深耕による案件獲得があったサポートサービス系での反動減などが影響し、その他事業全体では前期比で減少となりました。損益面につきましては、売上高の減少が影響し損失計上となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額は、製造原価によっております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
当連結会計年度末における資産、負債及び純資産の状況は、次のとおりであります。
流動資産残高は、7,048百万円(前連結会計年度末比25百万円減、0.4%減)となりました。主な変動要因は、現金及び預金の減少、売掛金及び契約資産の増加、仕掛品の減少であります。
固定資産残高は、3,696百万円(前連結会計年度末比460百万円増、14.2%増)となりました。主な変動要因は、ソフトウェア仮勘定の増加、投資有価証券の増加であります。
流動負債残高は、3,167百万円(前連結会計年度末比980百万円減、23.6%減)となりました。主な変動要因は、買掛金の増加、短期借入金の減少、賞与引当金の減少であります。
固定負債残高は、122百万円(前連結会計年度末比8百万円増、7.7%増)となりました。
純資産残高は、7,455百万円(前連結会計年度末比1,406百万円増、23.3%増)となりました。主な変動要因は、資本剰余金の増加、利益剰余金の増加、自己株式の減少であります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、910百万円(前連結会計年度末比184百万円減、16.9%減)となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
営業活動による資金は、持分法による投資利益の計上(234百万円)、売上債権の増加(206百万円)、賞与引当金の減少(142百万円)、法人税等の支払い(151百万円)などがあったものの、税金等調整前当期純利益の計上(755百万円)、仕入債務の増加(297百万円)などにより、552百万円の増加(前期は193百万円の減少)となりました。
投資活動による資金は、無形固定資産の取得による支出(173百万円)、投資有価証券の取得による支出(210百万円)などにより、394百万円の減少(前期は82百万円の減少)となりました。
財務活動による資金は、自己株式の売却による収入(960百万円)があったものの、短期借入金の純減(1,125百万円)などにより、343百万円の減少(前期は153百万円の増加)となりました。
当社グループは、事業運営上必要な資金を安定的に確保することを基本方針とし、運転資金および設備資金につきましては、自己資金または取引金融機関からの借入により調達しております。このうち、借入による資金調達につきましては、短期の運転資金の調達は短期借入金を基本とし、大規模な設備投資や長期の運転資金の調達は長期借入金を基本としております。
当社グループは、運転資金の効率的かつ安定的な調達を行うため、取引銀行との間でコミットメントライン契約および当座貸越契約を締結しております。これら契約に基づく当連結会計年度末における極度額および借入金残高は、次のとおりであります。なお、コミットメントライン契約には、財務制限条項が付されております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しておりますが、グループの事業内容なども踏まえ会計方針を定めております。
連結財務諸表の作成は、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これら見積りについて、現在入手可能な情報や過去の実績などを勘案して合理的に見積りを行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、主なものは次に記載にとおりであります。なお、そのうち特に重要なものにつきましては、「第5 経理の状況」の「連結財務諸表等」の「重要な会計上の見積り」をご参照ください。
① 収益及び費用
受注制作のソフトウェア開発に係る収益は、履行義務の充足に係る進捗度に基づき認識しております。履行義務の充足に係る進捗度の見積り方法は、見積総原価に対する発生原価の割合(インプット法)で算出しております。なお、進捗度を合理的に見積もることができないが、当該履行義務を充足する際に発生する費用を回収することが見込まれるものについては、原価回収基準により収益を認識しております。また、契約の開始日から完全に履行義務を充足すると見込まれる期間がごく短い案件については、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識しております。
サポートサービス等の役務提供に係る収益は、履行義務の充足に係る進捗度に基づき認識しております。履行義務の充足に係る進捗度の見積り方法は、顧客との契約等に基づくアウトプット法で算出しております。なお、進捗度を合理的に見積もることができないが、当該履行義務を充足する際に発生する費用を回収することが見込まれるものについては、原価回収基準により収益を認識しております。
債権の貸倒による損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率法により、貸倒懸念債権および破産更生債権等については財務内容評価法により計上しております。
受注案件の損失に備えるため、当連結会計年度末時点で将来の損失が見込まれ、かつ、当該損失額を合理的に見積もることが可能なものについて、翌連結会計年度以降に発生が見込まれる損失額を計上しております。
従業員に対する賞与支給に備えるため、将来の支給見込み額のうち当連結会計年度において負担すべき金額を計上しております。
⑤ 投資有価証券
取引関係等の維持・強化のため、特定の取引先に対する投資を行っております。当連結会計年度末における市場価格のない株式等の評価については、投資先の資産状況、経営状況などを勘案し、必要と判断した場合には減損処理を行っております。投資先の資産状況、経営状況がさらに悪化した場合には、追加の減損処理が必要となる可能性があります。
⑥ 無形固定資産
無形固定資産のうち子会社の株式取得により発生したのれんについては、20年間で均等償却しております。当該子会社の将来における収益によっては、減損処理が必要となる可能性があります。
また、市場販売目的のソフトウェアについては、見込販売数量に基づく償却額と見込有効期間(3年)に基づく均等配分額とを比較し、いずれか大きい額を償却しております。販売が見込数量に達しない場合は、見込販売数量の見直しによる償却額の見直しが必要となる可能性があります。
⑦ 繰延税金資産
企業会計上の収益・費用と課税所得計算上の益金・損金の認識時点が異なることから、会計上の資産・負債と課税上の資産・負債の額に一時的な差異が生じる場合において、一定期間内における回収可能性に基づき連結貸借対照表上に繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存しますので、その見積りが減少した場合は、繰延税金資産が減額され、税金費用が計上される可能性があります。
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