課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において、当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社の経営の基本方針は、社会基盤として重要な役割を担う先進的で高品質なインターネット接続サービスを適切な価格で安定的に提供することにあります。「接続料金」、「回線の安定性」、「回線の速度」、「サポート」といった基本的な価値の向上を図ることが重要であると考えております。また当社は教育支援サービス「manaba」を自社開発し大学などの教育機関へ提供しております。IT技術の活用によって教育の質を高めるインフラとしての価値の向上に努めてまいります。

 

(2)経営戦略等

 インターネット接続サービスは生活インフラ及び事業インフラとしての役割が益々増大しております。当社は、顧客が求める通信品質を維持しながらオペレーションの更なる向上により顧客の利便性を高めていくことが重要課題であると考えております。また、Wi-Fi、VPN、監視カメラソリューション、教育支援サービスなど、インターネット接続の周辺領域の事業も進めております。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 先進的で高品質なインターネット接続サービスを適切な価格で継続的に提供していくためには、健全な財務基盤の維持が重要であると考えており、ROE及び1株当たり純利益を収益性の指標としております。当社が運営するISP「ASAHIネット」につきましては、会員制ビジネスであることから、インターネット接続契約数の増加を図ることが将来の収益源を確保することにつながっております。こうした観点から「ASAHIネット」のインターネット接続契約数、平均退会率、第三者による顧客満足度調査などを重要な指標としております。他電気通信事業者へIPv6接続サービスをローミング提供する「v6 コネクト」につきましては、提携する電気通信事業者数を重要な指標としております。教育支援サービス「manaba」につきましては、契約ID数に応じた課金体系となっていることから、契約ID数と全学導入校数を重要な指標としております。

 

(4)経営環境

① 業界動向

 通信業界においては、インターネットの果たす役割が日常生活や企業活動において重要な位置づけになっていると考えております。新型コロナウイルス感染症により引き起こされた行動の変化により、通信を伴う非接触機会や在宅勤務等のテレワークの普及などインターネットが社会的なインフラとして担う役割が増大しております。従来から増加しているインターネット上での動画配信サービスやオンラインゲームに加え、メタバース上でのライブやイベント開催は今後も成長を続けることに加え、企業活動におけるDXを推進するためのクラウド化の動きも更に活発化すると考えております。

 

② ISP業界

 ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)業界においては、2021年12月末のFTTH(光ファイバー)の利用者数は前年同期比184万契約増(5.3%増)の3,637万契約となり増加をしております。また、FTTH契約数のうちNTT東西の卸電気通信役務(サービス卸)を利用して提供される契約数は1,613万契約となっており、FTTH全体契約数に占める割合は前年同期比1.2%増の44.4%となりました。

 MVNOサービスの利用者は、前年同期比61万契約増(2.3%増)の2,646万契約となりました。そのうち高速モバイル通信やIoT(Internet of Things)及びM2M(Machine to Machine)に利用されるSIMカード型の契約者数は前年同期比88万契約減(5.5%減)の1,516万契約となりました。eSIM(イー・シム)を含む通信モジュールの契約者数は前年同期比111万契約増(15.0%増)の849万契約となりました。

 インターネットにおけるトラフィックは、総務省が2022年2月に公開した集計結果では、固定系ブロードバンド契約者1契約当たりのダウンロードトラフィックが前年同月比73.5kbps増(15.6%増)の543.2Kbps、1ヵ月当たり170.3GBとなり増加傾向にあります。総ダウンロードトラフィックは緊急事態宣言解除後の影響もあり前回計測月よりも1.0%減となっているものの、トラフィックは引き続き増加を見込みます。国が主導するデジタル田園都市構想においても2027年に向けた国家インフラ整備計画が公表されており、光ファイバー、5G、データセンター等のデジタル基盤の整備が推進される状況下において、トラフィック増加に起因する通信速度及び通信品質の低下はISP業界に留まらず通信業界全体での課題となっております。

 

 

③ 教育業界

 大学をはじめとする教育業界においては、従来から行われている教室での対面授業を中心に、オンライン会議サービスを利用したライブ授業や、事前に録画した動画や教材を用いて学習するオンデマンド型授業も並行して行われており、学びの多様化が進行しております。多様な形態の授業を運営するためにインターネットを用いた授業支援システムの導入など教育のICT化が重要視されています。

 また、文部科学省は「教育の質保証」の取り組みを推し進めております。文部科学省は大学に対して「密度の濃い主体的な学びの機会」を学生に提供し、学修者が「何を学び、身につけることができたのか」を実感できる教育を行っていくように求めています。学校教育法に基づき7年以内に1回実施される評価機関による第三者評価(認証評価)や助成金等の調査項目においても、大学が取り組む重要な課題として「学修成果の可視化」を取り上げています。大学は「教育の質保証」を実現するために、学生が授業で提出した成果物、出席情報、成績などの学修履歴に関するデータや学修行動ログの取得並びに分析及び、学生へのフィードバックを行う必要があります。大学ではこれらの営みに活用する基礎情報の蓄積ができる授業支援システム(ラーニング・マネジメント・システム)やポートフォリオシステムの活用が重要度を増しております。

 

④ 業績の見通し

 我が国が抱える様々な課題に対応するために社会の様々な分野におけるICTの効果的な利活用が不可欠であると考えております。総務省が進める様々な施策として、IoT/データ活用、テレワーク、サーバーセキュリティ、医 療・健康・介護、教育・人材、防災等の具体的な活用が推進されることで通信業界は引き続き拡大を続けると見通 しております。総務省の統計調査によると2021年は1契約あたりのダウンロードトラフィックは前年同期比で年 15.6%増加の伸びを示しており、今後10年間で数倍から数十倍の伸びが予測されており、動画配信サービスやオン ラインゲームの利用者は増加し、インターネット上での活動は今後も拡大の一途をたどると考えております。

 ISP「ASAHIネット」においては、FTTH接続サービス並びにモバイル接続サービスに重点的に取り組むことで接続サービスの契約数増加を目指します。FTTH接続サービスは引き続き「光コラボ」を中心として契約数の増加を見込みます。モバイル接続サービスは2022年3月から5Gに対応した新サービス「ASAHIネット WiMAX +5G」の提供を開始しました。2022年5月には固定IPアドレスに対応した「WiMAX +5G」のサービスリリースを行いました。遠隔で設置している機器にインターネット経由でアクセスするIoTの利用や、監視カメラを用いたマーケティング活動などIT/DX化の利用用途と当社のサービスを組み合わせることで契約数拡大を見込みます。また、メールサービスをより使いやすく安全性の高いサービスにするため、2022年8月に向けてシステム更改を予定しております。

 VNE「v6 コネクト」においては、引き続き提携事業者との協業関係を維持すること及び新たなVNO事業者との提 携を拡大させることに注力してまいります。

 教育支援サービス「manaba」においては、文部科学省が大学に求める「教育の質保証」を実現するためにサービ スの強化や提案を行います。「教育の質保証」の取り組みに対応したポートフォリオ機能を拡充し、大学へパイロ ット版の提供を開始しました。利用する大学がどのような形で活用するかの事例を収集することで更なる機能強化 につなげてまいります。また、2022年4月から出席管理機能を提供開始しました。学生が授業に参加したかを示す 出席情報は大学にとって学生の学修成果や「教育の質保証」を測るひとつの指標となります。これらの「教育の質 保証」を実現する新しい機能の提案と併せて導入校数と契約ID数の増加に取り組んでまいります。

 以上により、2023年3月期の業績予想については、売上高12,400百万円(前年同期比822百万円増、7.1%増)、営業利益は 2,000百万円(同165百万円増、9.0%増)、経常利益は2,000百万円(同160百万円増、8.7%増)、当期純利益は 1,300百万円(同44百万円増、3.6%増)を見込みます。配当金は、中間配当11円00銭、期末配当11円00銭の年間1 株あたり22円00銭(配当性向47.3%)を予定しております。

 なお、上記の業績予想は、本資料の発表日現在において入手可能な情報に基づき作成したものであり、実際の業績は今後の様々な要因によって予想値と異なる可能性があります。

 

(5)事業上及び財務上の対処すべき課題

① お客様に満足いただける品質のサービス維持と通信コストの抑制

 インターネットにおけるトラフィックは、総務省が公開した2022年2月に公開した集計結果によると固定系ブロードバンド契約者1契約当たりのダウンロードトラフィックは前年同期比73.5kbps増(15.6%増)の543.2kbps、1ヵ月当たり170.3GBとなり増加傾向にあります。

 当社はNTT東西のフレッツ網(NGN)と直接接続し、シンプルにインターネット接続ができるネイティブ方式でのIPv6接続サービスを「ASAHIネット」会員向けに提供することにより、トラフィックが増加する中でも高い品質を維持し続けております。第三者機関による顧客満足度評価においては8年連続第1位の評価をいただいております。売上に対する通信原価においては売上原価率を維持することができております。

 今後もお客様に対して満足いただけるサービスの提供と利益の増大を図ってまいります。

 

② ISP「ASAHIネット」会員の獲得

「ASAHIネット」会員数を増加させるためには、当社を利用する新規会員の増加を図ることが課題です。

 FTTH接続サービスにおいては、新規回線敷設または他ISPから当社への乗換を希望する会員に対して効率的な販促施策を行なってまいります。引き続き当社への入会チャネルの強化や法人向け施策など顧客満足度の高い「ASAHIネット」の認知度を向上させることで会員数増加を目指します。特に、NTT東西の光コラボレーションモデルを活用したサービスとしてアクセス回線とISPサービスをセットにした「AsahiNet 光」や「ASAHIネットドコモ光」、NTT東西と協力して提供している「ASAHIネット マンション全戸加入プラン」においては、より一層の品質向上が実現できるサービスとして注力をして施策を行います。

 モバイル接続サービスにおいては、コンピュータなどの情報・通信機器だけではなく、世の中に存在する様々なモノに通信機能をもたせるIoTやM2Mの市場規模が引き続き増加しており、当社ではこれらの需要に対して先進的なサービスを提供し、お客様の利便性をさらに高めていくことが重要だと考えております。また、在宅勤務等のテレワーク拡大など今後も需要が継続すると考えております。

 当社の収益構造は会員からのインターネット接続料収入を基礎としているため会員獲得の増加が収益基盤の向上につながります。

 

③ 「v6 コネクト」の拡販

 当社はNTT東西のフレッツ網(NGN)と直接接続し、シンプルにインターネット接続が出来るネイティブ方式でのIPv6接続サービスを「v6 コネクト」として他電気通信事業者へローミング提供をしております。

 2022年3月末の累計提携事業者数は11社、売上高は1,383百万円となりました。「v6 コネクト」を利用する顧客は集合住宅向け事業者やISP事業者などの電気通信事業者を想定しており、今後は新たな事業領域を開拓する取り組みを進めております。通信トラフィックが継続的に増加する状況下において、電気通信事業者は自社事業を継続するためのサービス品質維持と必要な費用の均衡を保ちたいという需要や、IPv6接続サービスを活用して自社サービスや顧客サポートを作り上げることでビジネス領域や規模の拡大を目指したいという需要に対して「v6 コネクト」の付加価値を高めたサービス開発を行なってまいります。

 「v6 コネクト」の売上高は、主として基本料金及び従量料金をそれぞれ算定してサービス利用料を定めております。このうち従量料金は利用帯域において「95%タイル値」(※)として測定された最大通信量と基準通信量とを比較衡量して算定されます。最大通信量の測定及び最大通信量に基づいた従量料金の算定には複雑性が伴うため、「v6 コネクト」のサービス利用料が正しく行われず請求機会の逸失や遅れが発生する場合があります。

 

(※)「95%タイル値」とは、月初から月末までの通信量を当社が定めた一定時間間隔で分割して測定し、分割した各通信量を昇順で並べ替え上位から95%に位置する一意の値を算定するものです。

 

④ 教育支援サービス「 manaba 」の拡販

 主に大学などの教育機関に提供している教育支援サービス「 manaba 」につきましては、今後も教育現場のニーズを取り込み、教育の質を高めるイノベーションに貢献するためのサービス開発を進めてまいります。

 2022年3月期における大学の状況はインターネットを活用したライブ型授業やオンデマンド型授業から対面授業へ戻りつつあります。当社は文部科学省が大学に求める「教育の質保証」を実現するために機能開発としてポートフォリオ機能の拡充と出席管理機能の開発を進めております。このような需要に応えることで「manaba」の付加価値を更に高めていきます。

 

⑤ ブランドの構築と顧客満足度の維持、向上

 2022年3月期のISP「ASAHIネット」の平均退会率は0.71%となりました。退会率は同業他社と比較し、低い水準を維持しております。今後も退会を抑止し、更に競合各社からの乗り換えを促進していくことが重要であると認識しております。そのためには、質の高い会員サービスと安定した接続環境を提供していくことによって、信頼できるブランドを構築し、顧客満足度の維持・向上に努めることを重要な課題としております。

 

⑥ 情報セキュリティへの取り組み

 当社は、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格であるISO/IEC27000:2013を取得しております。ISMS関連規則等を遵守し、当社が保有する個人情報及び情報資産を適切に管理・運用すると共に、社内での継続的な取り組みを推進してまいります。また、一般社団法人日本情報経済社会推進協会より、個人情報の適切な取り扱いを行う事業者に付与されるプライバシーマークを取得しているほか、インターネット接続サービス安全・安心マーク推進協議会が発行する「安全・安心マーク」使用許諾を得ております。今後も継続的に情報セキュリティや個人情報保護の認識を徹底させる教育を行い、適切な情報管理を行う管理体制を維持・強化していきます。

 

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