業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況及び経営者の視点による分析・検討内容

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます。)の状況及び経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものですが、予測しえない経済状況の変化等さまざまな要因があるため、その結果について当社が保証するものではありません。

 

① 経営成績に関する説明

当連結会計年度の売上高は、新型コロナウイルスの感染拡大により停滞した経済活動の再開が進むにつれ、緩やかに需要が回復しつつあることに加え、パルプ販売価格の上昇もあり、前期を1,112億円(8.2%)上回る14,702億円となりました。なお、当社グループの海外売上高比率は前期を4.3ポイント上回る33.5%となりました。

営業利益は、原燃料が急騰してきましたが、販売量の増加やパルプ販売価格の上昇に加え、グループ全体でコストダウンに取り組んだこと等により、前期を353億円(41.7%)上回る1,201億円となりました。経常利益は、営業利益の増加に加え外貨建債権債務の評価替えによる為替差益の発生等により、前期を520億円(62.7%)上回る1,351億円となり、税金等調整前当期純利益は前期を484億円(59.8%)上回る1,293億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期を379億円(76.3%)上回る875億円となりました。

なお、当連結会計年度の期首から「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用し、収益認識に関する会計処理方法を変更しています。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表(1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりです。

2019年度から2021年度を対象とする中期経営計画では、「国内事業の収益力アップ」、「海外事業の拡充」、「イノベーションの推進」をグループ経営戦略の基本方針に据え、「持続可能な社会への貢献」を通じて連結営業利益1,000億円以上を安定的に継続するグローバルな企業集団を目指しました。

2021年度の経営目標として「連結営業利益1,500億円以上」、「海外売上高比率40%」、「ROE10.0%」、「ネットD/Eレシオ0.7倍」を掲げて事業運営を行い、新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済活動の停滞・回復の遅れ等があったものの、「ROE10.0%」、「ネットD/Eレシオ0.7倍」は目標達成しました。

一方、当社グループは新型コロナウイルス感染拡大により多様化する消費構造やライフスタイル・働き方を見据えた事業構造改革、及び中期経営計画に基づいた企業価値向上施策を着実に進めました。国内では、需要の変化に応じた生産体制再構築、保有設備の有効活用等によって資本効率化を行うと同時に、有望事業に経営資源を集中し、収益力の強化に努めました。海外では、主に東南アジアのパッケージング事業において既存拠点からの有機的な拡大や事業・拠点間シナジーの創出を進めました。さらに、環境・社会ニーズに対応した新事業・新製品の開発促進と早期事業化を図りました。これらの諸施策により、2021年度は営業利益1,201億円と過去最高益を達成しました。

 

当社グループの報告セグメントは、当社グループの構成単位のうち、経済的特徴、製品の製造方法又は製造過程、製品を販売する市場又は顧客の種類等において類似性が認められるものについて集約を実施し、「生活産業資材」、「機能材」、「資源環境ビジネス」、「印刷情報メディア」の4つとしています。報告セグメントに含まれない事業セグメントは、「その他」としています。

 

各セグメントの主要な事業内容は以下のとおりです。

生活産業資材・・・・・段ボール原紙・段ボール加工事業、白板紙・紙器事業、包装用紙・製袋事業、家庭紙事業、紙おむつ事業

機能材・・・・・・・・特殊紙事業、感熱紙事業、粘着事業、フィルム事業

資源環境ビジネス・・・パルプ事業、エネルギー事業、植林・木材加工事業

印刷情報メディア・・・新聞用紙事業、印刷・出版・情報用紙事業

その他・・・・・・・・不動産事業、エンジニアリング、商事、物流 他

 

 

なお、会計方針の変更に記載のとおり、当連結会計年度の期首から「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用し、収益認識に関する会計処理方法を変更したため、事業セグメントの利益又は損失の算定方法を同様に変更しています。

当該変更により、従来の方法に比べて、当連結会計年度の「生活産業資材」の売上高は25億円減少、「機能材」の売上高は134億円減少、「資源環境ビジネス」の売上高は6億円減少、「印刷情報メディア」の売上高は267億円減少、「その他」の売上高は67億円減少しています。なお、各セグメント利益又は損失に与える影響は軽微です。

 

○生活産業資材

当連結会計年度の売上高は前期比8.2%増収7,007億円、営業利益は同31.4%減益261億円となりました。

国内事業では、段ボール原紙・段ボール、白板紙、包装用紙等、多くの品種において全体的な需要回復がみられることに加え、段ボール原紙・段ボールでは新型コロナウイルス感染拡大防止のための外出自粛等から通販向けが引き続き堅調に推移していること等により、売上高は前年に対し増収となりました。また、紙おむつは前年に対し減収となりましたが、家庭紙は前年に引き続き堅調に推移しました。

海外事業では、紙おむつはマレーシアでの同感染拡大に伴い大手小売店の販売が不調に推移しましたが、段ボール原紙・段ボールで主に東南アジアでの販売が好調だったことに加え、段ボールの値上げが浸透した影響等により、売上高は前年に対し増収となりました。

 

連結売上高:

7,007

億円(前期比

8.2%増収

)

連結営業利益:

261

億円(前期比

31.4%減益

)

 

 

○機能材

当連結会計年度の売上高は前期比1.3%増収1,847億円、営業利益は同33.0%増益153億円となりました。

国内事業では、電動車向けのコンデンサフィルムや一般工業用フィルム、食品・雑貨等の包装用フィルムが堅調に推移しましたが、収益認識に関する会計基準の適用による減収の影響等もあり、売上高は前年に対し減収となりました。

海外事業では、感熱紙は、同感染拡大防止のための外出自粛や経済活動停滞の影響等が継続したものの、需要は回復傾向にあり、売上高は前年に対し増収となりました。

 

連結売上高:

1,847

億円(前期比

1.3%増収

)

連結営業利益:

153

億円(前期比

33.0%増益

)

 

 

○資源環境ビジネス

当連結会計年度の売上高は前期比28.2%増収3,145億円、営業利益は同233.1%増益555億円となりました。

国内事業では、エネルギー事業は、国内各工場の操業率向上により自家使用電力が増加したことから売電量が減少しましたが、パルプ事業では主に溶解パルプの中国向け輸出が同感染拡大に伴う経済活動停滞から回復がみられることにより、売上高は前年に対し増収となりました。

海外事業では、パルプ事業は販売量が前年に対し減少しましたが、パルプ販売価格の上昇を受けて、売上高は前年に対し増収となりました。

 

連結売上高:

3,145

億円(前期比

28.2%増収

)

連結営業利益:

555

億円(前期比

233.1%増益

)

 

 

○印刷情報メディア

当連結会計年度の売上高は前期比0.2%増収2,445億円、営業利益は同59.5%増益178億円となりました。

国内事業では、新聞用紙及び印刷用紙の出版用途は需要の減少傾向が継続しているものの、印刷用紙の商業印刷用途における前年の同感染拡大に伴う経済活動停滞の反動もあり、販売量は前年に対し増加しましたが、収益認識に関する会計基準の適用により、売上高は前年に対し減収となりました。

海外事業では、江蘇王子製紙有限公司において、中国国内が同感染拡大に伴う経済活動停滞から回復がみられることから、売上高は前年に対し増収となりました。

 

連結売上高:

2,445

億円(前期比

0.2%増収

)

連結営業利益:

178

億円(前期比

59.5%増益

)

 

 

○その他

当連結会計年度は全体的な需要回復がみられ、商事事業、物流事業等で増収となった結果、当連結会計年度の売上高は前期比9.8%増収2,965億円、営業利益は同3.8%増益70億円となりました。

 

連結売上高:

2,965

億円(前期比

9.8%増収

)

連結営業利益:

70

億円(前期比

3.8%増益

)

 

 

② 生産、受注及び販売の実績
(a) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメント毎に示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

生活産業資材

739,867

6.4

機能材

178,003

7.5

資源環境ビジネス

253,238

36.0

印刷情報メディア

230,579

△11.6

報告セグメント計

1,401,688

7.2

その他

9,113

0.7

1,410,802

7.1

 

(注) 生産高は自家使用分を含めて記載しています。

 

(b) 受注実績

当社グループは、エンジニアリング等一部の事業で受注生産を行っていますが、その割合が僅少であるため、記載を省略しています。

 

 

(c) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメント毎に示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

生活産業資材

642,402

7.9

機能材

171,471

0.9

資源環境ビジネス

275,113

27.9

印刷情報メディア

200,126

△4.9

報告セグメント計

1,289,115

8.2

その他

181,046

7.9

1,470,161

8.2

 

(注) セグメント間取引については相殺消去しています。

 

③ 財政状態

当連結会計年度は、原燃料価格が急騰してきたものの、新型コロナウイルスの感染拡大により停滞した経済活動の再開が進むにつれ、緩やかに需要が回復しつつあることに加え、パルプ販売価格の上昇やコストダウン等により、当社グループの売上高及び営業利益は前連結会計年度に対し増収増益となりました。また、営業利益の増加に加えて、外貨建債権債務の評価替えによる為替差益の発生等により、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益についても大幅な増益となりました。このような中、同感染拡大による影響の収束を見据え、将来のための成長戦略を進めており、2021年5月にはCelulose Nipo-Brasileira社の親会社である日伯紙パルプ資源開発株式会社が非支配株主の保有する株式を自己株式として取得し、当社グループは同社の全議決権を保有しました。この取得に当たっての必要資金は、外部からの調達と手許現金により充当しました。

この結果、当連結会計年度末の純有利子負債(有利子負債-現金及び現金同等物等)は前連結会計年度末に対し833億円増加し、5,947億円となり、ネットD/Eレシオ(純有利子負債残高/純資産残高)は0.7倍となりました。

当連結会計年度末の総資産は、現金及び預金等が減少しましたが、売掛金、棚卸資産及び有形固定資産等の増加等により、前連結会計年度末に対して723億円増加し、20,538億円となりました。負債は支払手形及び買掛金、未払法人税等の増加により、前連結会計年度末に対して625億円増加し、11,783億円となりました。純資産は、非支配株主持分等が減少しましたが、利益剰余金及び為替換算調整勘定等の増加により、前連結会計年度末に対して99億円増加し、8,755億円となりました。

 

④ キャッシュ・フローの状況

当社グループでは、市場が縮小している事業では、生産体制再構築等によってコスト削減を徹底し、キャッシュ・フローの確保を図る一方、需要の伸びが期待できる国内事業や海外の経済発展が見込まれる地域へ投資を行い、ポートフォリオの拡充を図っています。

当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、555億円(前連結会計年度末は1,357億円)となりました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に対して165億円収入が増加し、1,436億円(前連結会計年度は1,271億円の収入)となりました。主なキャッシュの増加は、税金等調整前当期純利益に減価償却費を加えた1,951億円(前連結会計年度は1,436億円)及び仕入債務の増加339億円(前連結会計年度は119億円の減少)であり、主なキャッシュの減少は、売上債権の増加210億円(前連結会計年度は19億円の減少)、棚卸資産の増加260億円(前連結会計年度は202億円の減少)及び法人税等の支払額223億円(前連結会計年度は392億円の支払)によるものです。

 

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得による支出等により、926億円の支出(前連結会計年度は916億円の支出)となりました。有形及び無形固定資産の取得による支出の主な内容は、能力増強・更新や品質改善、省力化、生産性向上、安全及び環境のために必要な設備投資です。

財務活動によるキャッシュ・フローは、子会社の自己株式の取得による支出、連結範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出等により、1,360億円の支出(前連結会計年度は199億円の収入)となりました。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(a) 資金需要の主な内容

当社グループの営業活動に関する資金需要は、生産・販売活動のために必要な運転資金(製品製造のための原燃料の購入・製造費や人件費、製品の輸送・保管費等)や研究開発費等が主な内容です。投資活動に関する資金需要は、経営戦略の遂行に必要な投資や品質改善・省力化・生産性向上・安全・環境のために必要な設備投資等が主な内容です。

今後も海外事業や有望な事業等の成長分野に対しては、M&Aや設備投資、研究開発投資等を積極的に行っていく予定であり、所要資金の調達については、自己資金と外部調達との最適なバランスを検討し実施していきます。

 

(b) 財務政策

営業活動を通じて獲得したキャッシュ・フローは配当及び投資資金に充当し、有利子負債残高を適正水準に保ちながら、不足資金については借入金やコマーシャル・ペーパー、社債の発行等による外部からの資金調達を行い、余剰資金については有利子負債の削減に充当します。

なお、長期借入金や社債等の長期資金については、中期経営計画に基づく資金需要見通しや金利動向等の調達環境、既存の借入金や社債償還時期等を総合的に勘案の上、調達規模、調達手段等を適宜判断して実施することとしています。

当社は、主要連結子会社との間でグループファイナンスを行い、資金の一元管理を行うことにより、運転資金の効率的な運用を図っています。

 

⑥ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

 

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