当社グループの研究開発部門は、生産技術本部下にある研究所及び生産技術部並びに機能材開発室を中心に構成され、セルロースナノファイバー(CNF)等の新機能材料の開発は機能材開発室を中心として進めております。また、各工場でも現場に立脚した新製品開発や品質改善及びコストダウン等を行っております。生産技術本部がこれらの研究開発活動を総括し、生産技術部が営業部門や工場の製造部門及び研究所と緊密な連携をとり、お客様の要望に直結した新製品開発を行っております。
紙パルプ事業の研究開発活動の項目は以下のとおりであります。
(セグメント別では、紙パルプ事業の占める割合が大きいため、その他のセグメントについては省略しております。)
(1) 洋紙及び白板紙分野
洋紙分野では、新潟工場2号抄紙機は2022年6月をもって停機いたしました。2号機の生産品種については、新潟工場、紀州工場の他抄紙機への生産移行に伴う試作を行い、品質確認を完了したものは順次移抄を進めております。
白板紙分野では、従来の紙器用途に加え、食品一次容器向けの開発を行い多数のご採用を頂いております。引き続き新たなニーズの掘り起こしと開発サイクルの短縮を図り、お客様のご要望にお応えしてまいります。
世界情勢の変化が激しく、原燃料、古紙の高騰、物流混乱による原材料入荷遅れ等がありますが、引き続き安定供給と品質確保に万全を期してまいります。
包装用紙・紙器等の脱プラスチックニーズに応えるべく、各部門との連携を密にして更に開発を強化してまいります。
(2) 機能材分野
機能紙分野では、チップキャリアテープ原紙、逆浸透膜(RO膜)支持体の品質改善及びコストダウンに取り組むと共に、需要増に応じた生産体制の構築にも継続して取り組んでおります。また、濾過・分離分野については、脱フッ素、生分解性のフィルタの開発に取り組んでおります。一方、特殊紙分野では、ポリエチレンラミネート紙の代替品として脱プラスチック紙基材「パンセ」をはじめ、脱プラスチック、減プラスチックを目標に食品包材、透明紙、紙カトラリー、フック・ハンガー等、分野を問わず環境に配慮した紙素材の開発を進めております。
(3) 段ボール原紙分野
製品品質の安定と供給体制の拡充を図り、万全な製品供給体制の構築を継続推進すると共に、採算性の高い薄物原紙や、電子部品・建材用など中芯以外の用途についても開発を進めております。
(4) 新規開発分野
機能材開発室は、これまでの新機能材料開発室を引き継ぎ、2021年4月の組織変更で誕生いたしました。機能材事業本部直轄の組織として、生産技術部や機能材事業の営業部門さらにはグループ会社各部との連携を密に行っており、開発のスピードアップだけでなく、各部署のパイプ役としても機能しております。具体的には、ナノセルロースやナノカーボンなどの先端素材の応用から、紙製のパッケージング材料の開発まで幅広い領域で活動しております。特筆すべき項目としては、超小型人工衛星を開発するベンチャー企業テラスペース株式会社の「紙で人工衛星を制作するプロジェクト」に参画したことが挙げられます。このプロジェクトでは、CNF素材である新製品「ReCell(リセル)」が実証試験用材料として採用されました。ReCellは、強度と成形性を兼ね備え、地球および宇宙環境にやさしい素材であります。今後、航空宇宙分野でのさらなる利用も期待されます。また、ナノカーボンを用いた電磁波ノイズ抑制シートは、モバイル機器等の漏洩電磁波を防止するだけでなく、回路やケーブル中を伝わる伝導ノイズまで抑制する効果が確認され、製品化の準備を進めております。この他、機能材開発室は、前述したように外部機関との連携や情報発信にも力を入れており、3年間共同研究を実施してきた新潟県工業技術総合研究所とは、ナノとマイクロのセルロースが融合したオールセルロース材料の応用開発を進め、モバイルバッテリーケース等で実用化されております。また、2020年度から参画した東京大学や大阪大学などとの国家プロジェクトでは、「セルロースナノファイバーの精密構造解析と断熱性多孔体の形成」を担当するグループの一員として透明断熱材を開発し、低炭素社会の実現に向けた革新的技術開発の一翼を担っております。2021年12月には、当社が培ってきたCNFに関する技術や知見を国際学術誌で論文発表し、製品開発だけでなく国際的な学術の発展にも貢献しています。今後も、柔軟な発想と機動力を活かして、世の中が必要としているものを創り出すことを目指していきます。
当連結会計年度の当セグメントにおける研究開発費は
なお、パッケージング・紙加工事業における研究開発費は
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