当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであり、次期の見通しについては、不確実性、あるいはリスクを含んでいるため、将来生じる実際の結果と乖離する可能性があります。
当連結会計年度における国内経済は、新型コロナウイルス感染症が一時的な収束と変異株の出現等による再拡大を繰り返し、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が断続的に出されたことにより、様々な経済活動が長期にわたり制約を受け、景気回復には依然として力強さはありません。また、世界的な原油、石炭等の燃料価格の高騰は、ロシアのウクライナへの軍事侵攻による国際情勢の不安定化により長期化し、景気の先行きは極めて不透明な状況となっています。
このような状況の中で当社グループは、当連結会計年度より新たな3カ年計画である第4次中期事業計画「GEAR UP 次なる成長、新たな未来へ」(2021年5月)をスタートさせました。「強靭な事業ポートフォリオの確立」に向け、ペーパータオル生産設備の稼働(同年7月)や、衛生用紙の生産設備の増設(同年10月)等の「紙・板紙事業とホーム&パーソナルケア事業を横断した構造改革」を着実に実行し、三島工場の競争力のあるパルプを最大限に活用した高付加価値品への生産シフトを進めています。
当連結会計年度の紙・板紙事業においては、前年度のコロナ禍による経済活動の停滞から回復しつつある状況を反映して、チラシなどの広告需要が増加し、輸出向けの段ボール原紙の需要も堅調に推移したことで、洋紙、板紙・段ボールは販売数量・販売金額とも前年同期を上回りました。一方で、物流費、原燃料費の高騰、温暖化ガス削減等の環境対策費用の増加等を受け、生産体制の見直しや経費削減など徹底したコストダウンを続けるとともに当第4四半期からは販売価格の修正にも取り組んできました。
ホーム&パーソナルケア事業において、国内事業は、新たな生産設備の稼働による供給能力の強化を背景に需要が伸長しているペーパータオルやソフトパックティシュー等の衛生用紙の拡販が順調に進みました。吸収体カテゴリーでは、キャラクター商品のラインナップ拡充や幅広い生活者層に対して訴求力のある著名人や有名ブランドとのコラボレーション商品の投入、ウエットワイプやマスクなどのカテゴリーではデザイン性の高い企画品を連続投入したことで、国内事業においては販売数量・販売金額ともに前年同期を上回りました。一方、海外事業においては、主要生産拠点のあるタイ、インドネシア、ブラジルでのコロナ禍による行動制限などが影響し、販売数量・販売金額ともに期初の計画には届きませんでした。
これらの結果、紙・板紙事業では増収増益となり、ホーム&パーソナルケア事業では、パルプ、荷資材等の価格高騰によるコストアップや海外拠点での主にコロナ禍による減益の影響により、増収減益となりました。
なお、当連結会計年度の売上高、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益はいずれも前年同期を上回り、売上高については9期連続の増収且つ7期連続で過去最高を更新し、経常利益については2期連続、親会社株主に帰属する当期純利益については3期連続で過去最高を更新しました。
当連結会計年度の連結業績は、以下のとおりです。
① 売上高
売上高は、主に紙・板紙事業において、国内需要の回復や段ボール原紙の輸出が堅調であったことで、前連結会計年度に比べ49,386百万円増加(前年同期比 8.8%増)し、612,314百万円となりました。
② 営業利益
営業利益は、主に紙・板紙事業においてメディア用途の紙から需要の伸長が見込める品種へのシフトや継続的な生産性の改善、ホーム&パーソナルケア国内事業での販売が好調に推移したこと等により、前連結会計年度に比べ695百万円増加(前年同期比 1.9%増)し、37,569百万円となりました。
③ 経常利益
経常利益は、営業利益の増加及び為替差益の増加により、前連結会計年度に比べ3,217百万円増加(前年同期比 9.3%増)し、37,696百万円となりました。
④ 特別損益
特別利益は、主に為替差益の減少により、前連結会計年度に比べ628百万円減少し、3,715百万円となりました。特別損失は、主に固定資産除売却損の減少により、前連結会計年度に比べ1,282百万円減少し、4,822百万円となりました。
⑤ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ1,605百万円増加(前年同期比 7.3%増)し、23,721百万円となりました。
この結果、1株当たり当期純利益は前連結会計年度に比べ4円18銭増加し、142円91銭となりました。
セグメントの経営成績は、次のとおりです。
① 紙・板紙
新聞用紙は、広告掲載がコロナ禍による停滞から回復傾向にあり、新聞頁数が増加したことで、販売数量・販売金額ともに前年同期を上回りました。
洋紙事業(新聞を除く)では、チラシ及びパンフレット等の需要が回復しつつあることや、ワクチン接種券や受診票等のコロナ関連の需要の増加もあり販売数量・販売金額とも前年同期を上回りました。
板紙・段ボールは、コロナ禍による経済活動の制限が解除されつつある状況を反映して、国内需要が回復してきたことから販売数量・販売金額ともに前年同期を上回りました。また、段ボール原紙の輸出についても、海外での感染症の影響や直近の国際情勢の不安定化があるものの通年では需要は堅調に推移しました。
売上高及びセグメント利益は、原燃料価格の高騰の影響を大きく受けているものの、収益性の高い品種へのシフトや生産性改善、徹底したコスト削減等によって、前年同期を上回りました。
② ホーム&パーソナルケア
国内事業において、衛生用紙は、川之江工場の生産能力増強を背景に、需要が伸長するペーパータオル、キッチンペーパー、長尺トイレットを中心とした新商品の上市や、基幹商品である「エリエールティシュー」のリニューアルの効果もあり、販売が順調に拡大し、販売数量・販売金額ともに前年同期を上回りました。
ベビー用紙おむつは、好評のディズニーデザインを「スイミングパンツ」「グーンプラス」にも採用し、より親しみ易い商品ラインナップにするとともに、「グーンまっさらさら通気」のデザイン企画品を投入し、いずれも生活者から高評価を得ました。これらの結果、販売数量・販売金額ともに前年同期を上回りました。
大人用紙おむつは、市販ルートで販売している「夜1枚安心パッド」シリーズ及びリニューアルした「下着爽快プラス」の拡販が順調に進みました。業務ルートでは、「Sケア夜1枚安心パッド」による交換回数削減の提案が多くの病院・施設で受け入れられ、新規配荷が大きく伸長しました。これらの結果、販売数量・販売金額ともに前年同期を上回りました。
フェミニンケア用品は、写真家・映画監督の蜷川実花氏やフィンランドのテキスタイルブランド「Finlayson(フィンレイソン)」とコラボレーションした「エリスコンパクトガード」の企画品が好評を得ました。これらの結果、販売数量は前年同期を大きく上回りましたが、市況単価下落の影響を受け、販売金額は前年同期並みとなりました。
ウエットワイプは、「キレキラ!」ブランドのフロア用ウエットシートやキッチンクリーナー、抗菌成分をプラスした除菌ウエット等、当期にラインナップ化した新商品がいずれも好評で、販売数量については前年同期を上回りましたが、市況単価下落の影響により、販売金額は前年同期を下回りました。
マスクは、国内の需給が安定する中、通気性の高い「ハイパーブロックマスクムレ爽快」、カラーマスク等の新商品が好調で、販売数量・販売金額ともに前年同期を上回りました。
海外事業において、中国では、ベビー用紙おむつの販売は、伸長が著しいパンツタイプの拡販と、出生人口が減少する中でも経済発展により市場伸長が見込まれる地方都市での展開商品の拡充と販促強化に取り組みました。また、複合事業化として品揃えや配荷拡大を進めた紙製品、ウエットワイプ、ナプキン等の売上増加により、販売金額は前年同期を上回りました。
東南アジア諸国では、タイではウエットワイプやナプキン等の拡販を進め、インドネシアでは伸長しているEコマースでの販売を強化しましたが、コロナ禍の行動制限によるベビー用紙おむつの販売減少の影響が大きく、販売金額は前年同期を下回りました。
海外事業全体では、前年第1四半期末から連結範囲に含めたブラジル・トルコの子会社の業績が、当期では期首より寄与したこともあり、販売金額は前年同期を上回りました。
これらの結果、ホーム&パーソナルケア事業では、売上高は、前年同期を上回りましたが、パルプ等の原材料価格の高騰や、海外事業の販売減を国内事業で補いきれず、セグメント利益は前年同期を下回りました。
③ その他
主に売電事業、機械事業、木材事業及び物流事業であり、売上高は前年同期を上回り、黒液発電設備の電力販売や、海外での木材チップの販売が順調であったこと等により、セグメント利益も前年同期を上回りました。
(2) 財政状態
当連結会計年度末の総資産は、現金及び預金の減少等により、前連結会計年度末に比べ9,360百万円減少し、840,441百万円となりました。
負債は、長期借入金の減少等により、前連結会計年度末に比べ29,275百万円減少し573,736百万円となりました。
純資産は、利益剰余金の増加等により前連結会計年度末に比べ19,915百万円増加し266,704百万円となりました。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べて2.6ポイント上昇し、30.8%となりました。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比較して41,403百万円減少し、88,897百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、71,395百万円の収入(前連結会計年度比7,184百万円の増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益36,588百万円、減価償却費37,810百万円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、62,420百万円の支出(前連結会計年度比41,281百万円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出63,789百万円、無形固定資産の取得による支出3,314百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、50,609百万円の支出(前連結会計年度比114,198百万円の減少)となりました。これは主に、長期借入の返済による支出65,157百万円によるものです。
当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金源泉を安定的に確保することを基本方針としています。
事業活動における資金需要の主なものは、運転資金需要と投資資金需要です。運転資金需要のうち主なものは、生産・販売活動における原材料及び商品仕入、製造費や販売費及び一般管理費等の営業費用です。投資資金需要の主なものは、事業戦略の遂行に必要な投資や品質改善・安全・環境のために必要な設備投資等です。
運転資金につきましては主に金融機関からの短期借入金で調達し、投資資金につきましては主に長期社債及び金融機関からの長期借入金により調達しています。また、今後の資金需要や金利動向等の調達環境、既存借入金や長期社債の償還時期等を総合的に考慮し、調達額及び調達手段等を適宜判断して実施することとしています。
なお、当社は国内子会社との間で導入しているキャッシュマネジメント・システムの一層の機能充実による資金効率化により、成長投資を進めながらも財務規律の維持に努めています。
当社グループの連結財務諸表及び財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。なお、新型コロナウイルス感染症による経済活動への影響は、ワクチンの普及や治療薬の開発等により緩和されつつありますが、オミクロン株による世界的流行は継続しており、感染対策と経済活動の両立は過去に例の無い課題となっています。また、ロシア・ウクライナ情勢に起因した原材料価格の高騰等、国際情勢に重大な影響を及ぼす事象の発生は続いており、現時点で予測することは困難な状況です。これら外部環境の変化による業績予想及び会計上の見積りへの影響については、世界的な経済低迷やイベントの自粛、テレワークの拡大等によって洋紙の需要は縮小しているものの、一方では生活者の衛生意識の向上によりマスクやウエットティシューの需要は拡大しており、コロナ禍が一時的な拡大と収束を繰り返すことと連動して各製品の需給も変化しながら、状況は徐々に回復に向かうと仮定した見積りに基づき、固定資産の減損等の会計上の見積りを行っています。しかし、世界的な景気の回復には相当の時間を要する見込であること、また、コロナ禍の拡大や国際情勢の変化による経済活動への影響は不確定要素が多いことから、上記の仮定に変化が生じた場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。
(注)金額は製造原価によっています。
紙・板紙事業及びホーム&パーソナルケア事業の製品については、需要を予測して見込生産を行っており、特に受注生産は行っていません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。
(注)セグメント間の取引については相殺消去しています。
なお、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がないため、「相手先別の販売実績」は記載していません。
(9) 次期の見通し
国内においては、新型コロナウイルス感染症は一時的な収束と再拡大を繰り返しながら経済活動が一定の制約を受けるウィズ・コロナの生活スタイルは、制約は緩やかになりながらもしばらくは続くものと予想しています。また、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻によって国際情勢が不安定化し、国際物流の滞留や長期的な資源価格高騰により物価が上昇する等、国内外における景気の先行きは極めて不透明な状況です。紙パルプ業界においても、洋紙の市場はさらなる縮小が見込まれ、重油、石炭等の価格高騰による原燃料費、物流費などの急激なコストアップが影響し、過去にないほどの厳しい経営環境が続くものと予想します。
このような状況の中、当社グループは、紙・板紙事業では、三島工場のコスト競争力のあるパルプを最大限活用した高付加価値な紙製品への生産シフトを継続するとともに、堅調な板紙のさらなる拡販やSDGsの取組みに対応した脱プラスチック・減プラスチック商品の開発に取り組みます。また、梱包・包装用途の紙では、川上(原紙)から川下(最終製品)までトータル提案が可能な当社のグループ力を最大限に活用して拡販につなげていく考えです。
一方、ホーム&パーソナルケア事業については、2021年10月に川之江工場での2台目となる衛生用紙の生産設備の増設により、高付加価値商品をより安定供給できる体制を構築し、トップブランドとしての地位を盤石なものとしました。また、コロナ禍での新たな生活様式に対応したマスクや除菌ウエット、ペーパータオルの生産体制の強化などにより、今後も需要動向の変化に柔軟に対応して参ります。海外では、主力であるベビー用紙おむつを中心として、フェミニンケア用品や紙製品、大人用紙おむつ、ウエットワイプなど多様なカテゴリー商品の生産・販売による複合事業化を推進し、ブラジルの子会社サンテルなどの新たな生産拠点での事業拡大を進め海外売上高の構成比を高めていきます。
これらの取り組みにより、2023年3月期の連結業績については、売上高650,000百万円、営業利益25,000百万円、経常利益21,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益10,000百万円を予想しています。
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