課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループは『世界で最もたくさんの人に報酬を届ける会社になる』というビジョンを掲げ、インターネットを活用して個人が報酬を得るための仕組みであるクラウドソーシングを中心としたオンライン人材マッチング事業を推進しております。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは上記に掲げたビジョン実現に向け、「個のためのインフラになる」というミッションのもと、すべての働き手に対する報酬の獲得機会や働く選択肢の拡大を行うだけでなく、人手不足に悩む企業に柔軟な人材調達方法の提供を通して市場拡大に努めております。こうした中、当社グループはサービス上で取引される契約の総額である流通取引総額と売上総利益の最大化を最優先事項と捉え、その流通取引総額から生み出される売上総利益を成長原資として事業に再投資することで、継続的な成長と利益拡大を実現していく方針を採用しております。特に、少子高齢化により深刻化する人手不足の問題に対し、企業のフレキシブルな人材活用ニーズは年々高まっていくと考えており、2022年9月期についても引き続きマッチング事業への集中と生産性向上に取り組み、成長率の向上と利益拡大を図ってまいりました。

 

(2) 事業環境

 政府の働き方改革のもと、企業および個人の働き方に対する価値観は多様化する中、当社サービスの登録者はクライアント・ワーカーともに順調な伸びを示しております。

 クライアントにおいては、従来の画一的な正社員採用だけでなく、プロジェクト単位で活躍するフリーランスのエンジニアやデザイナー、事務アシスタントを併せて活用する企業が増加しており、当社を取り巻く事業環境は追い風という認識です。また、ワーカーにおいては「クラウドワークス」のプラットフォームを中心に国内最大級のオンライン人材を有しており、顧客が求めるスキルや経験にマッチする様々な人材を提供できるだけでなく、業界トップクラスのブランド認知とデジタルマーケティングにより、自然流入を中心とする効率的なワーカー獲得を実現しております。

 このほか、コロナ禍によるリモートワークの普及や企業の副業解禁の動きが加速したことを背景に、新規事業「クラウドリンクス」のワーカー登録者も7万人を突破するなど急拡大しております。

 少子高齢化を背景に、人手不足に悩む企業の多くは今後も柔軟な働き方を取り入れる意向を示しております。このため、フリーランスや副業者といった働き手を柔軟に活用する企業は長期的に拡大していくものと捉えております。

 

(3)中長期の成長に向けて対処すべき課題等

 今般は新型コロナウイルス感染症が継続する中、世界情勢不安による物価高やインフレ加速などにより、経済環境は不透明な状況が続いております。こうした中で、当社グループは中長期目標として「売上総利益のCAGR(年平均成長率)20%以上成長を10年継続」を掲げ、継続的な増収増益を図ることが重要と捉えております。2022年9月期は生産性向上3ヵ年計画最終年度を迎え、売上高・売上総利益の成長が30%を超えるとともに、営業利益についても過去最高と大きく利益拡大いたしました。今後も中長期目標の達成に向け、生産性向上を意識しながら事業成長のための投資と利益拡大をバランスよく実施してまいります。
 

①マッチング事業の発注社数と発注単価の拡大

 当社グループは持続的な成長の実現に向けて、マッチング事業における発注社数と発注単価の拡大を図ることが重要と捉えております。発注社数の拡大については、プラットフォームにおける登録クライアントや登録ワーカー資産をグループ内で有効活用することで顧客接点の最大化を図るとともに、営業体制を強化し新規発注社数の拡大を図ってまいります。発注単価については、エンジニアデザイナー領域や事務アシスタント領域における認定ワーカー制度や料金改定といった施策により単価向上を目指してまいります。 

 

 

②新規事業への投資とコア事業化 

 当社グループは中長期目標の達成に向け、新規事業のサービス開発と継続投資が不可欠であると考えております。特に、マッチング事業の副業求人領域を担う「クラウドリンクス」や「リンクスエージェント」といった新規事業の広告投資や営業体制を強化し、ハイクラスの副業人材をマッチングする機会を創出しながら、コア事業化を進めてまいります。また、ビジネス向けSaaS事業として展開する「クラウドログ」についても、企業規模を問わず導入が進み、工数管理のSaaSサービスとして着実な成長を遂げており、今後は大手顧客の拡大による契約単価向上と継続率の維持に注力してまいります。
 

③M&Aによる事業拡大

 当社グループは中長期目標の達成に向けて、マッチング事業の事業基盤をより強化し発展させるためのM&Aが重要と捉えております。中でも当社グループが保有する国内最大規模のクライアント・ワーカーデータベースを活用し、シナジーを生み出す企業等のM&Aを積極的に検討してまいります。特に当社グループが2022年9月期までの生産性向上3ヵ年で培ってきた企業文化や経営ノウハウを活用したPMIを実施することにより、継続的な事業成長と利益拡大を実現し、将来の企業価値向上につながるものと考えております。

 

④サービスの認知向上、新規ユーザーの獲得

 当社グループはインターネットを介した人材マッチング市場におけるリーディングカンパニーでありますが、今後も高い成長率を持続していくために、当社グループ全体のブランドイメージの強化と各サービス認知を向上させ、新規ユーザーを獲得することが重要と考えております。このため、メディアに向けた積極的な広報活動に加え、インターネットを活用したマーケティング・広告活動等により認知の向上に向けた取り組みを一層強化・推進してまいります。
 

⑤成長のための人員強化・採用の積極化
 当社グループは、「売上総利益のCAGR(年平均成長率)20%以上成長を10年継続」を中期的な目標として掲げており、持続的な成長のために人員強化に取り組んでおります。国内の人手不足により採用環境は厳しい状況が続いておりますが、当社グループのミッション・ビジョンへの共感を通じて、採用ブランディングの強化を図るとともに、リファーラル採用を取り入れるなど、従来の採用方法にとらわれず、採用体制を強化してまいります。
 

⑥採用した人材のオンボーディング

 当社グループは上記⑤に挙げたように、積極的な採用活動を展開しておりますが、新たに採用する人材の育成ならびに育成のための組織体制整備が重要な課題と認識しております。当社グループでは、企業文化の浸透を目的とした「カルチャーブック」を通じて、当社グループのミッション・ビジョンと個人の目標を接合するとともに、日々の業務課題に対するポリシーやソリューションの提供により、社員それぞれが「個」として成長できる枠組みを作っております。当社グループでは社員の増加と合わせて企業文化を発展させていくとともに、社員一人一人が一層活躍できるような組織体制を整えてまいります。
 

⑦内部管理体制の強化

 当社グループは、さらなる事業拡大を推進し、企業価値を向上させるためには、効率的な業務遂行体制を基盤としながら、内部管理体制を強化していくことが重要な課題であると認識しており、コンプライアンス体制及び内部統制の充実・強化を図ってまいります。
 

⑧システムのアップデート・安定性強化

 当社グループはインターネットを介したサービス提供を行っているため、そのシステムおよび機能のアップデートと並行して安定的に稼働させることが重要となっております。そのために、突発的なアクセス増加にも耐えられるようなサーバー設備の強化や、システム安定稼働のための人員確保、継続的かつ効率的な開発体制の構築等に努めてまいります。

 

(4)その他経営における重要な取り組み

①生産性向上に関する取り組み

 当社グループは、2020年9月期に策定した生産性向上ポリシーに則り、継続的な生産性の改善活動を行っております。主な取り組みとして週1回開催する全社朝会において生産性向上ピッチを実施し、部門を横断してナレッジを共有するなど、全社最適で生産性向上に取り組んでおります。
 

②人材に関する取り組み  

 当社グループは、柔軟な働き方を実現・体現する企業として、「フルフレックス」「フルリモートワーク」といった人事制度や「副業制度」を導入し、社員の働き方の柔軟性を高めるだけでなく、社員のリスキリングの機会や能力向上を図るための「書籍購入制度」を設けるなど、生産性を最大化する取り組みを行っております。

 

③環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する取り組み  

 当社グループは、環境・社会・ガバナンス(ESG)において、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に対応した取り組みとして、社内における人種・ジェンダー平等や女性活躍の環境整備や、当社グループのサービスを利用するすべての働き手に対する機会均等を目指しております。特に、オンラインコミュニティ型の学びの場である「みんなのカレッジ」を運営し、クラウドワーカーのスキル向上を支援しております。経営体制においては、ガバナンス強化のため経営と業務執行機能を明確にする執行役員制度を導入しており、原則毎週1回経営会議を開催し、経営上の重要事項に対する十分な議論と迅速な意思決定を行う体制をとっております。経営会議では、取締役会決議事項及び報告事項の事前審議を行い、取締役会で決定された戦略・方針に基づき、その業務執行の進捗状況等について議論し、意思決定を行っております。

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