当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりであります。
a.財政状態
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は4,509,839千円となり、前連結会計年度末に比べ716,439千円増加いたしました。これは主に、仕掛品が14,584千円、未収入金が125,351千円減少したものの、現金及び預金が569,191千円、受取手形、売掛金及び契約資産が283,037千円増加したこと等によるものであります。固定資産は1,114,327千円となり、前連結会計年度末に比べ467,215千円増加いたしました。これは、有形固定資産が7,510千円減少したものの、無形固定資産が179,095千円、投資その他の資産が295,630千円増加したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は1,464,532千円となり、前連結会計年度末に比べ224,989千円増加いたしました。これは主に、リース債務が50,567千円、未払法人税等が52,674千円、流動負債のその他に含まれる未払金が17,079千円、未払費用が24,358千円、未払消費税等が23,016千円増加したこと等によるものであります。固定負債は347,110千円となり、前連結会計年度末に比べ88,584千円増加いたしました。これは主に、退職給付に係る負債が48,100千円減少したものの、リース債務が119,245千円、繰延税金負債が17,360千円増加したこと等によるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は3,812,525千円となり、前連結会計年度末に比べ870,079千円増加いたしました。これは主に、新株予約権の行使により資本金及び資本剰余金がそれぞれ7,850千円、親会社株主に帰属する当期純利益の計上と配当金の支払により利益剰余金が751,377千円増加したこと等によるものであります。
b.経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な拡大の影響が長期化するなか、政府による段階的な経済活動の再開や、国内における全国的なワクチン接種の進展などにより経済活動の早期回復が期待されておりますが、世界的な変異株による感染症拡大やロシアによるウクライナへの軍事侵攻が開始されるなどの社会情勢不安もあり、国内外における経済の見通しは依然として先行きの不透明な状況が続いております。
このような環境のもと、当社の属する情報サービス産業におきましては、ビッグデータ、IoT、人工知能(AI)等のIT技術革新が加速度的に発展し、市場の拡大が引き続き見込まれる一方で、国内でこれらの開発を担う人材の不足が懸念されております。
このような状況のなか、グローバル事業においては、主にフィリピンを拠点とする効率の高いオフショアリソースを活用したITアウトソーシングおよびソリューション開発事業を展開しており、「ソフトウエアテスト等の実行・管理の自動化(Automation)」「ビッグデータと分析(Analytics)」「人工知能(AI)」等のコア技術を活かし、医療、金融/公共、自動車、製造業および流通/小売・サービス業等に向け、数々のソリューションを継続して提案しております。さらに、当第3四半期より伸長を開始した、既存の主要顧客や成長市場での新たなソリューションに係る受注に対応すべく、これまでの積極的な新規採用や即戦力としての中途採用に加え、高難度のプロジェクトマネジメントを担う人材や成長市場にて必須となる技術分野に特化した高度人材の獲得・育成を実施しております。
メディカル事業においては、医療機関向けレセプト点検ソフトウエア『Mighty』シリーズのシェア拡大に向けた取り組みを継続しております。2018年に発売を開始した、「レセプト点検×AI」を実現した次世代型レセプトチェックシステム「MightyChecker® EX」の引き合いおよび販売も大手医療機関を中心に好調に推移し、レセプト点検ソフト「MightyChecker®」シリーズ、オーダリングチェックソフト「MightyQUBE®」に代表されるストック型ビジネスを、盤石な収益基盤として確立しております。さらにはクラウドコンピューティングを活用したレセプト点検の推進や、学会や健保組合等へのデータ分析事業の取り組みの実施など、事業ポートフォリオの構成を変革したことにより、当初計画より前倒しにて実施した高収益モデルの確立による効果が発現しております。
また、当社事業戦略のスローガンの1つである、「当社知財等を活用した新規事業の育成」においては、2020年9月より提供を開始した保険業界向け業務効率化ソリューション「保険ナレッジプラットフォーム」の横展開を推進すべく、複数の生命保険会社との実証実験を含めた具体的な商談および展開を行っており、同時に、同プラットフォームにおける新たなDXメニューの開発にも着手しております。
この結果、当連結会計年度の業績は、売上高4,726,359千円(前期比12.6%増)、営業利益1,033,235千円(前期比12.4%増)、経常利益1,055,077千円(前期比20.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は832,144千円(前期比33.4%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
a.グローバル事業
・グローバル部門
グローバル部門においては、ソフトウエアテストやその実行・管理の自動化、製品開発支援およびアプリケーション開発分野での、日本における既存のピラー顧客からの受注が堅調に推移しております。PC/IT機器の分野では、グローバル大手PCメーカーの取引拡大に加えて他の大手PCメーカーへの横展開を推進、また、AIチャットボット領域における大手監査法人系グローバルコンサルティンググループにおいては、実用段階を経て、今後の当該会社グループでの他領域における横展開を見据え、受注を順調に拡大するなど、業界を代表する大手顧客を中心に、顧客のピラー化に向けた積極的な取り組みを継続強化しております。
新たなソリューションとして取り組みを開始した IVA(インテリジェントビデオ解析)技術においては、(1) Edge IoT/AIoT/ARの分野に関して遠隔支援ソリューションをはじめとする各種先進ソリューションが実証実験を経て、モビリティ領域における顧客にて実際に採用・運用されており、また、(2) 製品外観検査装置へのAI導入支援が製造業の顧客にて採用され、今後は同技術の更なる横展開が期待されます。
また、昨今のコロナ禍におけるDXを更なるチャンスと捉え、さらには来年にかけて見込まれる旺盛な需要に対応すべく、引き続き踏み込んだ戦略的投資を継続して実施いたしました。先端IT技術およびプロジェクトマネジメントスキルを中心とした人材に係る投資につき計画を繰り上げて実施し、既存のコア技術と併せて、ソリューションの横串的展開を推進してまいります。また、中国の拠点においては、コロナ禍の影響によるグローバル規模での在宅勤務が定着したことによるPC需要の大幅拡大およびMicrosoft社のWindows11の出荷等を受けて、新製品開発を見据えたグローバル大手PCメーカーの戦略に沿った取引深耕を見据え、拠点拡充および人材採用を含めた海外投資を前倒しで実施いたしました。さらには、その他グローバル・ピラー顧客候補の獲得が奏功し、当第3四半期より売上損益が大幅に伸長にするなど大きく業容を拡大しております。また、当社が出資を行っているシリコンバレーのベンチャーキャピタル「GoAhead Ventures」のオフィスにて、当社サテライトオフィスを開設している米国においては、引き続き先進技術に係るリサーチ機能の継続強化を図ってまいります。
・エンタープライズソリューション部門
エンタープライズソリューション部門においては、金融セクターおよび製造・公共セクターの新規案件の立ち上げを推進しております。来期にかけて見込まれる大型案件の拡大を見据え、更に今後は金融領域の老朽化したレガシーシステムの更新・運用・保守案件の更なる拡大も見込まれることから、予想される人材リソースの不足に対応すべく、人材の再教育および中途を含めた積極的な人材投資を実施しており、当社グループの成長戦略に沿った取り組みを継続しております。
引き続きグローバル事業の両部門において、盤石な既存事業のキャッシュを、新たなソリューションの開発、さらには優秀な先端IT人材への積極的な採用・投資に振り向けることにより、今後更なる成長を見据えた戦略の実現を目指してまいります。さらには第3四半期より、人材を育成するための独自研修プログラム「ACTION」での採用および研修を再開し、優秀な人材の獲得・育成を進めております。このような取り組みのもと、当連結会計年度におけるピラー顧客候補が新たに見込まれるなど、次なるピラー顧客候補の獲得と顧客内横展開の推進を行っております。
既存の主要顧客の売上高の伸長および高度な新ソリューションに係る受注獲得により、当社従業員の生命/安全を最優先に考え、実施した各種施策に係るコストやこの度の変異株拡大による渡航制限、フィリピンでの災害対応および世界的なIT人材の争奪激化に伴うリテンション施策を含む人件費の増加に関する影響を最小限に留めることができました。
この結果、グローバル事業の売上高は3,241,610千円(前期比17.4%増)、セグメント利益は495,567千円(前期比0.6%増)となりました。
b.メディカル事業
メディカル事業においては、子会社である株式会社エーアイエスの主力製品であるレセプト点検ソフト「MightyChecker®」およびオーダリングチェックソフト「MightyQUBE®」の引き合いは、引き続き順調に拡大しております。戦略的商品である、次世代レセプトチェックシステム「MightyChecker®EX」については、大手グループ内病院の引き合いをいただくなど、直販を中心に導入数は堅調に推移いたしました。これら大手医療グループ内における横展開に加え、新型コロナウイルス感染症対策としてWEBを活用した営業・サポートを含めた営業促進により、更なるダイレクトアカウント(直接販売)獲得、価格政策の実行およびソリューションの重ね売り(顧客単価アップ)の推進を行ってまいります。さらには、クラウド型レセプト点検サービス「Mighty Checker ®Cloud」のOEM提供を本格化が奏功し、当サービスに係る売上は順調に拡大しております。
また、医療クラウド新サービスSonaM(そなえむ)や、生損保向け新ソリューションの開発、その他データ分析(健保組合・学会等)など、医療のデジタル化に関する新事業を積極的に立ち上げ、Mightyシリーズに次ぐ将来の「新たなサブスク型の収益源」の確保に向け、積極的な投資を実施し、更なる収益率向上の実現に向けた施策に取り組んでまいります。これら新施策の一つである、医療データベースを活用した支払審査検索エンジン「保険ナレッジプラットフォーム」の本格的な横展開を推進しており、複数の生命保険会社との実証実験を含めた具体的な商談を実施および展開を実施しており、同時に、同プラットフォームにおける新たなDXメニューの開発にも着手しております。今後は新たなサブスクリプション型メニューとして、保険業界全体へ向けた本プラットフォームの浸透を図ってまいります。
このように、医療の効率化や病院の経営改善ニーズの高まりを背景に、レセプト点検ソフトウエア市場におけるリーディングカンパニーとして、サブスクリプションモデルによる盤石な収益基盤が構築されたことに伴う利益の増加が、開発や人員強化、さらには2024年の医師の働き方改革に向けた新ソリューションや知財戦略に係る戦略的投資に伴う支出の増加をこなし、セグメント利益は計画を上回る水準で推移しております。
利益面につきましては、前倒しにて実現した高収益構造の確立と、プロジェクト毎の徹底した収益管理及び継続的なコスト削減等が奏功し、売上高セグメント利益率が57.0%と過去最高の高収益性を達成いたしました。
この結果、メディカル事業の売上高は1,484,748千円(前期比3.4%増)、セグメント利益は846,976千円(前期比15.4%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ569,191千円増加し、3,342,526千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果獲得した資金は874,138千円(前期比5.2%減)となりました。これは主に、売上債権の増加、投資事業組合運用益の計上および法人税等の支払等があったものの、税金等調整前当期純利益及び現金支出を伴わない減価償却費の計上、未収入金の減少等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は202,877千円(前期比235.2%増)となりました。これは主に、投資有価証券の取得、有形固定資産および無形固定資産の取得による支出等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果使用した資金は151,537千円(前期比99.2%増)となりました。これは主に、新株予約権の行使による株式の発行による収入があったものの、リース債務の返済による支出、自己株式の取得による支出および配当金の支払い等によるものであります。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.金額は、製造原価(売上原価)によっております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引については相殺消去しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
3.当連結会計年度のIBM Solutions Delivery, Inc. については、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に際し、資産・負債及び収益・費用の決算数値に影響を与える見積り項目について、過去の実績や状況に応じて合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
特に以下の事項は、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。
(繰延税金資産)
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、以下のとおりであります。
a.経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度の売上高は4,726,359千円となり、前連結会計年度に比べ528,243千円増加いたしました。これは主に、グローバル事業において、大手新規顧客の増加および自動化や分析等の当社のコア技術を活用したソリューション案件が伸長したこと、また、メディカル事業において、主力製品であるMightyシリーズの導入医療機関の順調な増加により、サブスクリプションモデルによる盤石な収益基盤が構築されたことによるものであります。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は4,726,359千円(前期比12.6%増)となりました。
(営業利益)
当連結会計年度の売上原価は2,722,884千円となり、前連結会計年度に比べ347,592千円増加いたしました。また、当連結会計年度の販売費及び一般管理費は970,239千円となり、前連結会計年度に比べ66,940千円増加いたしました。
これらの増加は主に、グループ全体で、開発需要に対応するため戦略的に人員強化を実施したことによる、人件費の増加等によるものであります。
以上の結果、当連結会計年度の営業利益は1,033,235千円(前期比12.4%増)となりました。
(経常利益)
当連結会計年度の営業外収益は56,223千円となり、前連結会計年度に比べ37,230千円増加いたしました。これは主に、投資事業組合運用益および契約解除金の計上等によるものであります。
当連結会計年度の営業外費用は34,381千円となり、前連結会計年度に比べ26,806千円減少いたしました。これは主に、為替差損が減少したこと等によるものであります。
以上の結果、当連結会計年度の経常利益は1,055,077千円(前期比20.3%増)となりました。
(税金等調整前当期純利益)
当連結会計年度の特別損失は15,683千円となり、前連結会計年度に比べ15,563千円増加いたしました。これは主に、投資有価証券評価損および貸倒引当金繰入額の計上によるものであります。
以上の結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は1,039,393千円(前期比18.5%増)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の税金費用(法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計)は207,248千円となり、前連結会計年度に比べ46,193千円減少いたしました。
以上の結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は832,144千円(前期比33.4%増)となりました。
b.資本の財源及び資金の流動性についての分析
資本政策につきましては、財務の健全性や資本効率など当社にとって最適な資本構成を追求しながら、事業成長と将来の成長を見据えた戦略的投資と、株主への利益還元との最適なバランスを考え実施していくことを基本としております。
当連結会計年度末における有利子負債残高は327,983千円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は3,342,526千円となっております。
内部留保については、安定した配当を継続しつつ、将来の成長のための事業展開と経営体質の強化に優先的に充当してまいります。既存事業の成長に加え、今後の事業展開の過程において、出資、アライアンス、M&A等の投融資の可能性も積極的に追求してまいります。
なお、当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります
c.当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因
「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
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