事業の内容

 

3 【事業の内容】

 当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、当社、連結子会社5社、持分法適用関連会社1社で構成されており、『グローバル事業』と『メディカル事業』の2つのセグメントに分類されます。グローバル事業は、グローバル部門及びエンタープライズソリューション部門の2つの部門により構成され、日本及びフィリピンを中心拠点として、PC/IT機器や自動車、産業機械をはじめとする製造業や医療、金融/公共および流通/小売・サービス業など幅広い業界に対して、ITソリューションサービスを提供し続けております。

 メディカル事業では、病院等の医療機関あるいは関連施設に関わる、医療情報システムのソフトウエア商品の開発・販売、受託開発、医療データ分析及びコンサルテーションを行っております。

 また、当社グループは、国際化や少子高齢化などの社会構造の変化などの社会変革、医療生命科学やロボット・人工知能の分野における技術革新を新規ビジネス創出のチャンスと捉え、戦略的ドメインとする医療、金融/公共、自動車、製造業および流通/小売・サービス業等の分野において、「3A」(「Automation(ソフトウエアテスト等の実行・管理の自動化)」「Analytics(ビッグデータと分析)」「AI(人工知能)」)を基に進化・発展させたコア・ソリューションを次世代型ソリューションと位置付け、事業モデルを展開しております。「金融領域」においては、金融機関向け案件を中心に、業務アプリケーションの開発やフィンテック時代に向けたシステム移行需要に係る開発を支援しております。「医療領域」においては、医療事業を担う中核としてレセプト点検ソフトウエア等を開発する株式会社エーアイエスを中心に、医療情報システムのソフトウエア商品の開発・販売、医療データ分析を中心としたビジネスモデル戦略を積極的に推進する体制を整えております。

 

 当社及び当社の関係会社の事業における当社及び関係会社の位置付け及びセグメントとの関連は、次のとおりであります。なお、以下に示す区分は、セグメントと同一の区分であります。

 

(1) グローバル事業

 グローバル事業は、主に国内外のグローバル企業を主要顧客に、当社海外子会社であるAdvanced World Systems, Inc. とAdvanced World Solutions, Inc. (以下、「フィリピン子会社」という。)、および北京爱维森科技有限公司(以下「中国子会社」)、並びに持分法適用関連会社であるAlsons/AWS Information Systems, Inc.を活用したシステム開発業務を行っており、システム開発業界の競合の激化、国際化という業界環境の流れの中で、低コスト、高品質を同時に実現すべくサービスを提供し続け、フィリピン子会社は、2006年1月に当社の子会社となる以前の、前身であるAPTi Philippines, Inc.が設立された1993年以来、約30年に渡る開発実績を積み上げております。

 近年、IT製品開発は、国内から海外の事業者や海外子会社に委託する形態が広がりをみせております。従来の海外への開発委託は主として、労働集約型の業務を単価の安い海外へアウトソーシングすることにより、開発及び保守・運用コストの削減を目的としたものでございましたが、我が国における少子高齢化を背景にしたIT人材不足を背景に、AI、IoT、ロボティクスといった最先端分野も含め、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進において戦略的に海外の人材を活用することが必要な段階に差し掛かっております。

 また、急激に成長する新興国市場への投資が拡大しており、なかでもグローバルレベルでのIT統制の必要性が高まっております。当社グループが主たる事業拠点としているフィリピン共和国は、東南アジア諸国連合(ASEAN)の新興国として年6%程度の経済成長(2010-2019年の平均値)を続けており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で2020年通年の成長率は前年比マイナス9.5%と大幅に落ち込んだものの2022年以降は大幅な回復を見込んでおります(出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)「世界貿易投資報告:フィリピン編」他)。また、人口動態予測でも、消費者・就労者人口とも一貫して増え続ける予想(出典:総務省統計局「世界の統計2020」2-2 世界人口・年齢構成の推移(1950~2050年))となっております。当社グループは、ソフトウエアの設計・開発から製品保証まで、英語・日本語のバイリンガルな環境で広範なシステム開発のサービスを行っております。国内外を代表する大手製造業と協業をしている経験と実績を基に、信頼できる開発パートナーとして、確かな技術と品質を提供しております。

 フィリピン子会社の活用形態は、主に①フィリピン国内における事業所において開発を行う(オフショア開発)、②フィリピン子会社の開発要員を当社に出向させ、そこから日本国内の顧客の開発拠点にて直接開発を行う(オンショア開発)の二形態があります。当社グループでは、顧客の個々の要望に応じてこれらの二形態の組み合わせを基礎として最適な開発形態を都度構築しております。また、フィリピンの人件費水準、および現地従業員の英語力は、同業との競合において差別化を図れる重要な要素となっております。さらに国内においては、外部の人材についても積極的に活用することを目的として、当社が一般労働者派遣事業の免許を取得し、人材派遣業務を行っております。

 

 フィリピン子会社の従業員は当社グループの重要な経営資源であり、フィリピンおよび日本において直接クライアントとのやり取りを通じ開発を実施することから、英語と日本語のバイリンガル能力に加え、高度なIT技術を有するエンジニアの育成が必要となります。そのため、フィリピン子会社においては、毎年計画的にフィリピン全国の理工学系専攻新卒者の上位成績者を中心に採用し、戦略的人材育成を行っております。具体的には、2003年4月に設立したフィリピンのマニラとセブそれぞれの施設内に所在する社内研修センター「AWS's Center for Technology Incubation(通称:ACTION)」を活用し、4ヶ月間の集中新人研修プログラムを行い、日本語環境下での高度なソフトウエア開発ができる要員を養成しております。

 この社内研修センター「ACTION」ではIT分野の基礎技術・知識の教育に始まり、ソフトウエア開発に関わる最新技術、ビジネススキル、さらに日本人講師による日本語講座等の研修コースを設け、従業員の技術力向上を継続的に支援しております。フィリピン子会社では、高い技術力で長年、国際優良企業と協業してきた実績を基に、グローバルな市場で評価されるソリューションを創造・提供し続けた結果、子会社Advanced World Solutions, Inc. は、国際ICTフィリピン・アワード(International ICT Awards Philippines)(注1)にて、2016年3月に「Best Software Company of the Year」を受賞、翌年の2017年3月に「Best Company of the Year for Information Technology & Software Development」を受賞、また、子会社Advanced World Solutions, Inc.は、2017年10月に開催されたアジアCEOアワード2017(注2)にて「Technology Company of the Year」並びに「Service Excellence Company of the Year」の2部門においてファイナリストに選出される等、高い評価を受けております。更には、当社フィリピン子会社に在籍するエンジニア2名が、アジア版情報処理技術者試験「ITPECアジア共通統一試験」のトップ合格者の中でも特に優秀な人材として、「アジアトップガン2020」に選出されております。

 中国においては、中国子会社における当社グループの主要顧客向けの開発を核に据えつつも、幅広い新規の顧客をターゲットにした事業拡大を推進、拠点の拡充および戦略的な人材投資を積極的に実施しております。

 2019年10月に出資したシリコンバレーのベンチャーキャピタル「GoAhead Ventures」のオフィスにて、当社サテライトオフィスを開設している米国においては、今後も引き続き先進技術に係るリサーチ機能の強化を図ってまいります。

 昨今のグローバル事業の取り組みと致しましては、PC/IT機器の分野において、グローバル大手PCメーカーの取引拡大に加えて他の大手PCメーカーへの横展開を推進、また、AIチャットボット領域における大手監査法人系グローバルコンサルティンググループにて、実用段階を経て、今後の当該会社グループでの他領域における横展開を見据え、受注を順調に拡大するなど、業界を代表する大手顧客を中心に、顧客のピラー化・サブピラー化に向けた積極的な提案を継続強化しております。さらには、新たなソリューションとして取り組みを開始した IVA(インテリジェントビデオ解析)技術においては、(1) Edge IoT/AIoT/ARの分野に関して遠隔支援ソリューションをはじめとする各種先進ソリューションが実証実験を経て、モビリティ領域における顧客にて実際に採用・運用されており、また、(2) 製品外観検査装置へのAI導入支援が製造業の顧客にて採用され、今後は同技術の更なる横展開が期待されます。

 

 a.グローバル部門

グローバル事業は、主に国内外のPC/IT機器や自動車、産業機械をはじめとする製造業や医療および流通/小売・サービス業に関連する大手企業を主要顧客に、フィリピン子会社及び中国子会社と連携し、組込みソフトウエア開発、ビジネスアプリケーション開発、製品評価サービスの提供、および3Aを基に進化・発展させたコア・ソリューションによる次世代型ソリューションの提供を行っております。

 

 b.エンタープライズソリューション部門

 エンタープライズソリューション部門では、IBM Solutions Delivery, Inc. をはじめとする大口法人向けに、フィリピン子会社を活用し、金融や公共インフラ領域をはじめとするソリューションサービスの企画、営業及びデリバリー活動を行っております。

 

(注1)国際ICTフィリピン・アワード(International ICT Awards Philippines)

 フィリピンを代表する情報技術団体であるIBPAP(The Information Technology and Business Process Association of the Philippines)の協力のもと、在フィリピンカナダ商工会議所によって運営されており、デザイン及び開発の側面において、ソフトウエア・カンパニーとして、その年のフィリピン国内にて最も創造的な役割を担った企業に送られる賞。評価基準としては、年間売上成長率等の定量的な側面に加え、顧客への提供サービスの多様性やコンピタンス、経営管理手法、フィリピンのICT産業への貢献度等が挙げられる。 

 

(注2)アジアCEOアワード(Asia CEO Awards)

 フィリピンの通信事業最大手であるPLDT Enterprise社が主催するアジア最大級のビジネスアワードであり、ASEAN地域のビジネス拡大促進を目的に、多大な功績と貢献を果たした個人や団体を表彰するもの。

 

(2) メディカル事業

 当事業では、医療情報システムのソフトウエア商品の開発・販売、受託開発、コンサルテーションを中心としたビジネス戦略を積極的に推進する体制を整えております。

 当事業の中核を担う子会社株式会社エーアイエスは、医療現場の業務効率を改善し、経営品質を高めるため、「Mightyシリーズ」製品としてソリューションシステムを開発、1万8,000を超える医療機関の経営を支援しております。なかでも主力製品であるレセプト(注5)点検ソフト「MightyChecker®」およびオーダリングチェックソフト「MightyQUBE®」の引き合いは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で一部組込系のマーケティング活動に遅延が生じたものの、総じて引き続き順調に拡大しております。戦略的商品である、次世代レセプトチェックシステム「MightyChecker®EX」については、大手グループ内病院を含む多数の引き合いをいただいており、直販を中心に導入数は堅調に推移しております。

 また、レセプト点検ソフトのリーディングカンパニーとして、当社グループの「3A」による次世代型ソリューションのうち、「Analytics(分析)」の領域の中心的な役割の1つを担っており、医療データ分析事業への本格展開を開始しております。

 具体的には、生損保向け新ソリューションの開発、その他データ分析(健保組合・学会等)など、医療のデジタル化に関する新事業を積極的に立ち上げ、Mightyシリーズに次ぐ将来の「新たなサブスク型の収益源」の確保に向け、積極的な投資を実施し、更なる収益率向上の実現に向けた施策に取り組んでおります。これら新施策の一つである、医療データベースを活用した支払審査検索エンジン「保険ナレッジプラットフォーム」の本格的な横展開を推進しており、複数の生命保険会社との実証実験を含めた具体的な商談を実施および展開を実施しており、同時に、同プラットフォームにおける新たなDXメニューの開発にも着手しております。今後は新たなサブスクリプション型メニューとして、保険業界全体へ向けた本プラットフォームの浸透を図ってまいります。

 

 当事業の主力製品であるMightyシリーズのラインアップは、下記のとおりであります。

 

① レセプト点検ソフト「MightyChecker®(マイティーチェッカー)」

平成21年5月8日付平成21年厚生労働省令第110号「療養給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令の一部を改正する省令」により、一部例外を除き、医療機関はオンラインによるレセプトの請求が義務付けられるようになりました。審査支払機関における審査強化の動きも重なり、レセプトチェックの精度と効率を上げることは、医療機関において、経営上の重要な課題となりました。

「MightyChecker®」シリーズでは、レセプト電算処理・レセプトオンライン請求が一般化された現在、医療機関にとって必須ツールであり、院内審査(注6)における査定・返戻対策用の機能に留まらず、その後の機能強化により請求漏れのある可能性がある指導料や加算項目等の指摘を行うことを可能とし、また、グラフィック機能の搭載、査定金額順点検の実現、加えて、査定・返戻データの取り込みにより査定された該当レセプトの抽出、それに基づくスムーズなデータベース修正、集計分析機能などを追加し、業界の中でもユニークで先駆的製品として供給を続けております。

 

「MightyChecker®」の特徴については、下記のとおりであります。

製品名

特徴

MightyChecker® EX

(マイティーチェッカーイーエックス)

・AI検知を備えた次世代型レセプト点検ソフトウエア

・マルチレセプト表示機能で2つのレセプトを同時に確認

・レセプト点検後のエラーメッセージをクリックすると、点検ポイントが表示され、わかりやすく保険ルールを解説

・患者ごとに付箋・ステータスが入力でき、レセプト点検の作業効率が大幅に向上

MightyChecker® PRO Analyze
(マイティーチェッカープロアナライズ)

・医科レセプト点検ソフトウエアの上級システム

・点検結果を分析し、効率的な点検業務を提案

・査定・返戻対策に加え、レセプト点検結果を活用した、より効率的な点検結果の活用が可能

・査定返戻データ取り込みによりスムーズなデータベース修正を実現し、査定返戻の抑止を強化

MightyChecker® PRO Advance
(マイティーチェッカープロアドバンス)

・医科レセプト点検ソフトウエアの普及型システム

・病名・医薬品・医療行為の適応症を点検

・査定・返戻対策の点検(突合点検・縦覧点検・算定日チェック等)

・算定支援機能による点検(指導料等で算定できる可能性がある項目をチェック)

Mighty Checker® for ORCA(注7)
(マイティーチェッカーフォーオルカ)

・MightyChecker® PRO Advanceが日医標準レセプトソフト「ORCA」と連携

・ORCAで入力されたデータを、Mighty Checker PRO Advanceと同じ点検機能でスムーズに点検することが可能

MightyChecker® DENTAL
(マイティーチェッカーデンタル)

・歯科レセプト点検ソフトウエア

・MightyChecker® PROとの併用で医科・歯科トータルな点検が可能

MightyChecker® Cloud
(マイティーチェッカークラウド)

・インターネット版レセプト点検サービスの提供

・PCにアプリケーションがインストールされてなくても、サーバーへアクセスすることで、レセプト点検ソフトを利用することが可能

 

 

② オーダリングチェックソフト「MightyQUBE® PRO(マイティーキューブプロ)」

「MightyChecker®(マイティーチェッカー)」のデータベースを活用し、疾患と診療行為・投薬の適応性、投与量・日数等を処方オーダー時に点検し、不適応のもの、病名が漏れているケースへエラーを出す仕組みとして、国立大学法人東京大学と共同開発したものであり、オーダリング時の人為的な誤入力・誤操作を防ぐことで、医療事故(ヒヤリ・ハット)や査定(減額)を防止します。

 

③ レセプト点検ソフト+オーダリングチェック「MightyDouble®(マイティーダブル)」

 ①レセプト点検機能を搭載した「MightyChecker® PRO」による「収益改善」と、②オーダー点検機能を搭載した「MightyQUBE® PRO」による「ヒヤリ・ハット防止」をダブルでサポートすることにより、オーダーチェック情報、レセプトチェック情報を一元管理でき、医療の安全管理及びリスクマネジメント対策を実現し、総合的なチェック体制を構築することで、病院経営の健全化にも効果的であり、また、審査支払機関における審査強化に対応しております。

 

 ※「MightyChecker®」「MightyQUBE®」「MightyDouble®」は、株式会社エーアイエスの登録商標であります。

 

(注5)レセプト

 患者様が受けた診療について、医療機関が市町村や健康保険組合等の公的機関に対し、保険負担分の支払いを請求する医療診療の明細書。医科・歯科の場合には「診療報酬明細書」、薬局における調剤の場合には「調剤報酬明細書」と呼ばれる。

 

(注6)院内審査

 医療機関自らが内部で実施する自己点検業務。

 

(注7)ORCA(オルカ)

 日本医師会が会員のために開発・提供している無料レセプトソフト。2022年5月15日現在、18,077施設で稼働している(出典:「ORCA PROJECT 日本医師会ORCA管理機構」ホームページ)。

 

 

 事業の系統図は、次のとおりであります。

 なお、Ubicom U.S.A., Inc. については、量的重要性が乏しいため、記載を省略しております。


 

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