(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度におけるわが国経済は、2020年11月頃から新型コロナウイルスの感染者数が再び増加に転じ、2021年1月には緊急事態宣言が発令されたことにより、消費と経済活動は再度の制限を余儀なくされました。ワクチンの接種が始まるなど一部好転の材料も見えてきていますが、未だ現時点においては感染症収束の目途は立っておらず、経済活動の先行きは依然不透明な状況にあります。
このような環境の中、当社グループの同期間における売上高は、初期売上が前期比26.0%減の746,045千円、システム利用料売上が前期比0.6%増の1,477,050千円となり、総売上高は2,223,095千円(前期比10.3%減)となりました。販売費及び一般管理費は、リモートワークの本格化による出張費等の営業関連費用が減少したことにより、前期比5.6%減となりました。その結果、営業利益は31,445千円(前期比77.1%減)となりました。また、第3四半期決算において投資有価証券評価損30,000千円を、第2・第4四半期決算において株式交付費用計30,926千円を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純損失は56,353千円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益76,775千円)となりました。
当社グループが所属する電子決済市場においては、政府が主導するキャッシュレス決済の普及推進を背景に、QR等コード決済サービスの普及、様々な事業者によるキャッシュレス決済サービスの参入・再編が続いており、市場は更なる活況を呈しています。一方で、新型コロナウイルス感染症により企業はビジネスやオペレーションの根本的な見直しを迫られており、従来よりも限られたリソースによる事業運営や、新しい生活様式に対応した価値創造を行うための施策として、デジタル化(DX)に急速に対応することの必要性が高まっております。
このような状況のもと、当社グループが事業展開している「バリューカードASPサービス」は、引き続き導入企業数、店舗数を伸ばしており、2021年6月末時点で導入企業数812社、導入店舗数88,684店舗へと増加しております。利便性や消費者へのお得感の提供による囲い込みの需要に加え、感染症予防対策の観点からも当社サービスは引き続き安定的に需要がある一方、新型コロナウイルス感染症の影響により、新規導入商談、及び受注済案件のサービス開始準備が長期化した結果、新規導入企業数は前期に比して減少いたしました。
既存顧客のプリペイド利用(取扱高)については、緊急事態宣言の再発令の影響等を受け、飲食業での利用が減少した一方、巣籠り消費を背景に、特に大規模な小売業での利用が増加した結果、前期比41.0%となりました。2020年9月より開始された「マイナポイント事業」(※1)は、2021年9月までの事業期間の延長が決定し、当社顧客企業の同事業への参加支援(参加に必要となるシステムの提供など)サービスの提供も当該期間までの延長が決定しております。
中期経営計画にて発表した、決済データを用いたデジタルマーケティングサービス領域では、2021年2月に、プリペイドサービスに特化したデータ分析・販促支援ツール「Value Insight」を開発し、既存顧客企業を中心に提供を開始しております。当社は同サービスを用い、会員毎のプリペイドへのチャージと利用頻度、購買動向等の分析により効果的なプリペイド利用の促進を行い、ハウスプリペイドの決済比率増加の支援を行います。
海外事業においては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が大きく、取扱高は前期比で19.7%減となりました。2021年4月には成長市場へのリソースの再配分を行うべく、中国の現地法人の閉鎖を決定しております。
また、中期経営計画の達成に向けて約11億円の資金を調達するべく、2020年9月に第三者割当による新株予約権の発行を行っており、第三者割当による新株予約権の発行に関わる弁護士報酬費用や財務アドバイザーに対する成功報酬フィーなどの諸費用が発生し、第2・第4四半期決算において、営業外費用に株式交付費を計上しております。なお、第3四半期決算において、当社の保有する投資有価証券における取得価額と実質価額に著しい下落がみられたため、特別損失(投資有価証券評価損)として30,000千円を計上しております。
(※1) 2020年9月~2021年9月までの間、総務省の主導により実施。マイナンバーカードを使用して申し込みを行い、申込時に選択したキャッシュレス決済サービスを使用した際、ポイントが付与される仕組み。
以上の結果、当連結会計年度は、売上高2,223,095千円(前期比10.3%減)、営業利益31,445千円(前期比77.1%減)、経常損失701千円(前期は経常利益122,687千円)、親会社株主に帰属する当期純損失56,353千円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益76,775千円)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
① ハウスプリペイドカード事業
ハウスプリペイドカード事業においては、新型コロナウイルス感染症の影響による飲食業での利用減少は当連結会計年度を通して回復が見られなかったものの、小売・量販店の利用は引き続き増加し、システム利用料売上は前期比で1.5%増となりました。初期売上においては、既存顧客におけるカード増刷やプリペイド機能を搭載したアプリ開発等の売上が発生しております。一方で、前期第3・第4四半期に発生した「キャッシュレス・消費者還元事業」のコンソーシアム関連売上(事務代行手数料)等は発生せず、また新型コロナウイルスの影響による営業活動の制限により、新規案件の獲得や既存顧客への追加商材販売に遅れが生じたことの影響から、初期売上は前期比14.3%減となりました。
販売費及び一般管理費は、採用手数料や新規導入案件の代理店手数料の増加があった一方、商談や海外子会社とのコミュニケーションの大半をリモート化したこと等によるコスト圧縮効果もあり、前期比では9.6%減となりました。
この結果、当セグメントの売上高は2,079,224千円(前期比10.5%減)、セグメント利益(営業利益)は460,473千円(前期比17.1%減)となりました。
② ブランドプリペイドカード事業
当セグメントにおいては、前連結会計年度から引き続き既存イシュア(カード発行会社)とその提携先(※2)を中心に事業を行っております。一部提携先のサービス終了などの影響により、売上高は143,870千円(前期比6.5%減)となり、セグメント損失(営業損失)は53,269千円(前期はセグメント損失45,653千円)となりました。
(※2)提携先とは、カード発行会社(イシュア)が運営する資金決済サービスを利用して、事業者自らの顧客(会員組織等)に対してプリペイドカード、会員カード等のサービスを行う事業者のことを指します。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ650,849千円増加し、1,332,773千円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
当連結会計年度において営業活動の結果得られた資金は、54,783千円(前連結会計年度は240,176千円の収入)となりました。これは、主に、減価償却費73,975千円、売上債権の減少額45,366千円、仕入債務の増加額34,913千円、未払消費税等の減少額60,618千円及び法人税等の支払額65,798千円によるものです。
当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は、59,202千円(前連結会計年度は67,604千円の支出)となりました。これは、主に、有形固定資産の取得による支出2,978千円、無形固定資産の取得による支出46,864千円、関係会社株式の取得による支出4,900千円があったためであります。
当連結会計年度において財務活動の結果得られた資金は、651,730千円(前連結会計年度は108,046千円の収入)となりました。これは、主に、長期借入による収入300,000千円、長期借入金の返済による支出190,004千円、新株予約権の行使による収入531,620千円によるものです。
キャッシュ・フロー関連指標の推移は以下のとおりであります。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注) 1.いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2.株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計上しております。
3.キャッシュ・フローは営業キャッシュ・フローを利用しております。
4.有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。
5.利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は、仕入価格によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、受注状況の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.上記金額には、消費税は含まれておりません。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりまして、見積りが必要な事項につきましては、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる要因に基づき、見積りや判断を行っております。しかしながら、見積り及び判断は不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。
重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。また、新型コロナウイルス感染症の影響につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
当連結会計年度末における総資産合計は、前連結会計年度末に比べて554,783千円増加し、2,019,426千円となりました。これは主として、現金及び預金が650,849千円増加した一方、売掛金が44,850千円、有形固定資産が47,105千円減少したことによるものです。
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べて44,623千円増加し、662,699千円となりました。これは主として、長期借入金(一年以内返済予定長期借入金を含む)が109,996千円増加した一方、未払法人税等が51,728千円減少したことによるものです。
当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べて510,159千円増加し、1,356,726千円となりました。これは主として、親会社株主に帰属する当期純損失56,353千円を計上したこと、新株予約権の行使による新株発行に伴い資本金及び資本剰余金がそれぞれ289,557千円増加したことによるものであります。また、2020年11月の欠損填補を目的とした減資により、資本金が579,867千円減少した一方、利益剰余金が579,867千円増加しております。
当連結会計年度の売上高は2,223,095千円(前連結会計年度比254,156千円減)となりました。この主な内訳は、ハウスプリペイドカード事業2,079,224千円(前連結会計年度2,323,316千円)、ブランドプリペイドカード事業143,870千円(前連結会計年度153,934千円)であります。
当連結会計年度の売上原価は1,184,859千円(前連結会計年度比87,836千円減)となりました。この主な要因は、カード製造費用等に係る仕入高の減少によるものであります。
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は1,006,790千円(前連結会計年度比60,150千円減)となりました。この主な要因は、リモートワークの本格化による旅費交通費等の減少によるものであります。
当連結会計年度の営業外収益は9,330千円(前連結会計年度比8,917千円増)となりました。この主な要因は、為替差益の発生によるものであります。
また、営業外費用は41,477千円(前連結会計年度比26,138千円増)で、この主な要因は、新株予約権の発行及び行使に伴う株式交付費の発生によるものであります。
以上の結果、当連結会計年度における業績は、売上高2,223,095千円、営業利益31,445千円、経常損失701千円、親会社株主に帰属する当期純損失56,353千円となりました。
キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
② 資金需要
当社グループの資金需要のうち主なものは通常の運転資金のほか、海外事業展開の拡充に資するM&Aやシステム開発等に伴う投資資金であります。
③ 財務政策
当社グループの運転資金につきまして、自己資金または金融機関からの借入にて資金調達をしております。金融機関からの資金調達につきましては、安定的かつ低金利を前提として信頼関係及び取引の継続性などを総合的に勘案した調達を実施しております。
当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社グループは、ブランドプリペイドカード事業を2013年7月より開始いたしました。システムの安定稼動と投資資金の早期回収に向けた対応が最大の課題だと認識しております。また、国内でのハウスプリペイドカード事業収益を拡大すると共に、早期にアジアマーケットへ着手し、急速に伸びるアジア市場に先行投資して、プリペイドカードの取扱高・導入店舗数においてトップシェアを占め、アジアナンバーワンのポジションを獲得していく方針であります。
今後につきましては、スマートフォン決済によるキャッシュレス化がさらに進むことを想定し、ポイント・プリペイド機能を中心としたスマートフォンアプリの提供や、それにより蓄積したデータを活用した販促支援サービスを展開し、プリペイド会員と取扱高の増加施策などにも取り組むとともに、プリペイドのシナジーを見込めるサービス事業者との業務・資本提携等も視野に入れ、事業の拡大を図って参ります。
また、新型コロナウイルス感染症の拡大を背景に、企業は急速にデジタル化(DX化)への対応を迫られております。当社においても企業のデジタル化支援に向けて、ポイント・プリペイド機能を中心としたスマートフォンアプリに加え、デジタルギフトサービスの「Value Gift」や蓄積した会員・購買データの分析ツールである「Value Insight」のリリースを行っており、消費者コミュニケーション領域のデジタル化(マーケティングDX)の支援を本格的に開始して参ります。
(7) 経営者の問題認識と今後の経営方針について
経営者の問題認識と今後の経営方針については、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
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