業績

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

社会全体のデジタル化が進む中、ソーシャルメディアは社会基盤として定着し、マーケティングやリクルーティングなど、企業活動の重要な役割を担っています。インターネット広告費は引き続きプラス成長を継続し、初めてマス四媒体広告費を上回っており(電通「2021年日本の広告費」)、人々のデジタルとの接触量は増加の一途をたどっています。デジタル上を流通する情報が人々の意思決定を左右するため、それらを把握し、適切な情報発信を行うといった企業活動は、デジタル化が進む社会においてますます重要になっていきます。

このような環境下、当社グループは「健全にテクノロジーが発展する豊かなデジタル社会を守り、デジタル社会にとってなくてはならない存在になること」というビジョンを掲げ、リスクの解決だけではなく、デジタル化によって起きるさまざまな社会課題に取り組んできました。その一環として、当連結会計年度においては警備セキュリティ業界や、地方自治体のデジタルトランスフォーメーションを進めてまいりました。警備業界においては日本国内の警備員の半数以上が50歳を超えている(警察庁「令和2年における警備業の概況」)など、高齢化等の問題に直面しています。地方においては、東京一極集中などによる過疎化や空き家問題などの課題があります。健全にテクノロジーが発展する豊かなデジタル社会の実現に向け、そうした社会課題に取り組んでまいります。

 

(a) 財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ36,855千円増加し、2,470,458千円となりました。

当連結会計年度末における流動資産は、1,783,131千円となり、前連結会計年度末に比べ236,206千円増加いたしました。未収還付法人税等が34,637千円減少した一方で、現金及び預金が201,532千円増加し、受取手形及び売掛金が70,871千円増加したこと等によるものであります。

固定資産は、687,234千円となり、前連結会計年度末に比べ199,128千円減少いたしました。これは主に投資有価証券が96,735千円減少し、のれんが54,940千円減少し、敷金が28,906千円減少したことによるものであります。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ89,242千円減少し、1,070,347千円となりました。

このうち、流動負債は、前連結会計年度末に比べ33,965千円減少し、432,016千円となりました。これは主に未払法人税等が46,134千円増加し、買掛金が14,910千円増加した一方で、オフィス再編費用引当金が98,013千円減少したことによるものであります。

固定負債は、前連結会計年度末に比べ55,277千円減少し、638,331千円となりました。これは長期借入金が55,277千円減少したことによるものであります。

当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ126,097千円増加し、1,400,110千円となりました。これはその他の有価証券評価差額金が1,714千円減少した一方で、親会社株主に帰属する当期純利益127,811千円等によるものであります。

 

(b) 経営成績

当連結会計年度においては、ソーシャルリスクに関わるモニタリングやコンサルティングを主力サービスとして、企業内部のログデータ分析サービス、顧客確認サービス等、多様化するリスク要因と様々な業界の顧客需要に対応するサービスを組み合わせて提供することに注力しました。またAIセキュリティ事業においては、「警備業界を変革するための“デジタル”プロダクト創出」と「セキュリティDXを推進するため “フィジカル”な警備保障サービスの成長」を目標とし、フィジカルな警備事業を運営しつつ、その課題解決のためにセキュリティ事業のDX化プロダクトの普及に注力しました。加えてDX推進事業では、行政(自治体)との連携によるDXプロダクトと、自治体向けDXサービスでの経験を活かした企業向けプロダクトの提供に注力しました。

当連結会計年度においては想定したよりもコロナ禍における影響が継続し、また期末に一部大型案件の進捗の遅れなどもありましたが、一方で継続してきた体制見直しや内製化など提供コストの削減を継続してまいりました。これらの結果、当連結会計年度の売上高は2,682,567千円(前年同期比34.8%増)となりました。営業利益はデジタルリスクモニタリングのAI化を進めるとともに、新規サービスの開発、人材採用および育成に費用を投下し、80,367千円(前年同期は営業損失333,625千円)となりました。経常利益は、投資事業組合運用益等を計上し、94,063千円(前年同期は経常損失357,618千円)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純損益は、127,811千円の利益(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失529,517千円)となりました。

 

(c) セグメントごとの経営成績

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

(デジタルリスク事業)

 デジタルリスク事業は、主にSNSやブログ、インターネット掲示板などWeb上の様々なソーシャルメディアに起因するリスクに関連するソーシャルリスクサービスと企業内のログデータ等多種多様なデータを統合的に分析する内部脅威検知サービス等から構成されております。

 ソーシャルリスクサービスについては、デジタル上の活動が複雑に絡み合うことでリスクの複雑化が進むことを受け、デジタル上で広範な活動を行う企業からのニーズが多様化し、また案件そのものも増加しています。

 内部脅威検知サービスについては、「働き方改革」やテレワークの普及に加え、日本政府が取り組みの強化を打ち出している経済安全保障の観点も交えて、国内大手企業から中小企業まで幅広くニーズが増加しております。

 加えて、継続してきた体制見直しや内製化など提供コストの削減が利益率の向上に大きく貢献しています。

 以上の結果、当連結会計年度におけるデジタルリスク事業の売上高は1,924,645千円(前年同期比10.3%増)、セグメント利益は718,483千円(前年同期比109.9%増)となりました。

 

(AIセキュリティ事業)

 AIセキュリティ事業は、リアルな警備事業を運営しつつ、その課題解決のためにAIやIoTを組み合わせた警備・セキュリティ業界のDXを推進しております。2020年12月に㈱アサヒ安全業務社(現:㈱And Security)が連結子会社となった影響で、前年同期比で売上高は増加いたしました。

 また警備業界全体のDXを推進していくため、社名変更等のブランディング施策を実施するとともに、当社グループ内における機能を再編いたしました。その結果、新たな人材や新しい領域の警備案件獲得などの広がりを見せています。

 加えてDX領域に関しては、引き続き従来型の人的警備の課題や問題点を発見し、それを解決するためのサービス開発への積極的な投資を行っております。

 以上の結果、当連結会計年度のAIセキュリティ事業の売上高は、723,191千円(前年同期比255.9%増)、セグメント損失は52,646千円(前年同期は50,594千円のセグメント損失)となりました。

 

(DX推進事業)

 DX推進事業は、地方自治体等の行政や企業のDXを推進し、DX人材の育成や、自治体と企業のマッチングなども手掛けております。

 当連結会計年度においては、引き続き包括連携協定を結んだ岩手県紫波町との取組みを進めており、第一弾となる住民総合ポータルアプリ「しわなび」と、健康増進アプリである「よりみちしわ」をリリースいたしました。

DX推進事業では今後の全国展開に向けた足掛かりの整備に注力しており、モデルケースとなる紫波町において、㈱ピーシーデポコーポレーションと取り組む移動車両によるデジタル支援策や、地域密着型ポイントカードとのデジタル連携などを推進いたしました。

 以上の結果、当連結会計年度におけるDX推進事業の売上高は38,694千円(前年同期比11.2%減)となり、セグメント損失は65,695千円(前年同期は101,678千円のセグメント損失)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ245,577千円増加し、1,266,586千円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、190,775千円(前年同期は、412,443千円の支出)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益151,045千円、投資有価証券売却益117,194千円、投資有価証券評価損65,204千円、オフィス再編費用引当金の減少額98,013千円、売上債権の増加額56,234千円等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果得られた資金は、128,834千円(前年同期は、457,728千円の支出)となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出51,517千円、投資有価証券の取得による支出37,022千円、敷金の差入による支出47,464千円の一方で、定期預金解約による収入44,044千円、有形固定資産の売却による収入36,178千円、投資有価証券の売却による収入164,282千円等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果支出した資金は、74,063千円(前年同期は、568,101千円の獲得)となりました。これは、長期借入れによる収入40,000千円、長期借入金の返済による支出111,988千円、手数料の支払額2,075千円によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

 

(a) 生産実績

当社グループの事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

(b) 受注実績

当社グループの事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

(c) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメント名の名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

デジタルリスク事業

1,924,158

10.3

AIセキュリティ事業

720,244

258.5

DX推進事業

38,165

△12.4

合計

2,682,567

34.8

 

(注)1 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

   販売実績の総販売実績に対する割合が10%を上回っている相手先がないため、記載を省略しております。

3 セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析、検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、次の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表の作成に当たり、資産及び負債又は損益の状況に影響を与える会計上の見積りは、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表の作成に当たって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。

また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響については、連結財務諸表作成時に入手可能な情報等を踏まえ、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響が少なくとも一定期間継続しつつも緩やかに回復するとの仮定のもと、自治体向けDXの支援サービス提供に係るソフトウエアの評価、投資有価証券(非上場株式等)の評価等の会計上の見積りを行っております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の分析

経営成績の分析については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要」をご参照ください。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

「第2 事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社グループの資金需要は、運転資金に加え、新規事業への事業投資や投資有価証券の取得であります。

現状、これらの資金需要につきましては、自己資金、金融機関からの借入れによって調達しておりますが、必要に応じて、増資や社債発行等により柔軟に対応することとしております。

 

(3) 経営戦略の現状と見通し

当社グループの事業に関連する市場においては、新型コロナウイルス感染症による顧客の投資優先度の見直しや活動制限等の影響が続くものの、昨年と比較し改善が続いております。特に、ポストコロナに加えて、経済安全保障などにも関連し、社会全体でデジタル化とそれに伴うセキュリティに対する関心が高まっており、利便性と両立する安全なデジタル化に関する需要が増大していると考えられます。中核事業が立脚するインターネット市場においても、引き続きデジタル化施策は注目されており、市場は堅調な回復傾向にあるものと考えております。

このような経営環境の中、当社グループは中期経営計画「The Road To 2024」を策定し、中長期的な企業価値の向上を目指しております。中核事業であるデジタルリスク事業においては、価値訴求による差別化を図り、独自色の強いサービスにより顧客基盤と収益基盤の増大に注力しております。また、次代の中核事業とすべくグループ全体でAIセキュリティ事業の規模を拡大するとともに、デジタル化を推進し警備業界へプロダクト展開を図っております。加えて、デジタル田園国家都市構想などと歩調をあわせながら自治体及び企業のDXを支援し、堅守速攻の総合デジタルソリューション企業として、DX推進事業を将来の中核事業とすべく基礎作りを行っております。

なお、新型コロナウイルス感染症の影響について、市場及び顧客動向を慎重に見極めながら事業活動や計画の適時見直しを実施し進めますが、ワクチン普及の進捗や大規模イベントの開催状況など、長期化に対する懸念や企業活動の更なる制約等が与える影響は不透明であり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 

 

(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について

「第2 事業の状況 2事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

(5) 経営者の問題認識と今後の方針

「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

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