文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループの経営の理念は「化学の力で感動の素を創り、世界に夢と笑顔を届けます」とし、経営の方針は「全員参加の経営、社会貢献と企業価値の増大、地球環境との調和、コンプライアンスの徹底、情報の開示」を骨子としております。
(2)中期的な会社の経営戦略等及び目標とする経営指標
当社グループは次の100年に向けた新たな長期経営ビジョン「MOVING-10」および4ヶ年の新中期経営計画(2020-2023年度)「MOVING-10 STAGE1」を策定いたしました。
昨年まで当社グループでは創立100周年に向けた長期経営ビジョン「Challenge100」の下、基盤事業の安定化、成長事業の強化、次世代事業の育成に鋭意取り組んでまいりました。その結果、特に成長事業である機能性化学品事業が着実に拡大し、今後の大きな柱となるまで成長しましたことで、当社グループは高収益体質の骨太の「強いテイカ」となりました。
2020年度より新たな歴史をスタートさせる10年として長期経営ビジョン「MOVING-10」を策定し、今まで以上に収益性を重視した活動を行い、汎用品から機能品へポートフォリオシフトを加速することで更なる業容拡大と収益基盤の強化に努めてまいります。
Ⅰ 長期経営ビジョン「MOVING-10」
① 基本方針
a.「まじめに感動素材」のもと、お客様と真摯に向き合い、妥協なく試行錯誤を行う中から、よりよいソリューションを実現します。
b.収益性を重視し、分野別に事業戦略を立案し実行します。要点は次のとおりです。
・当社グループの強みである、成長事業の化粧品原料、電子材料分野に経営資源をシフトし、化粧品原料の総合メーカー、医療用圧電市場のトップメーカーを目指します。(ライフサイエンス分野)
・当社グループの保有技術を展開することで、環境に優しい製品、グローバルニッチトップを目指せる製品を創出します。(環境エネルギー分野)
・汎用製品の分野については、市場環境の変化に応じ、事業構造を変革します。(ケミカル分野)
・当社グループのネットワークや技術・機能を活用し、グループのシナジーを高め、更なる発展を目指します。(インダストリアルサービス分野)
② MOVING-10の目指す経営指標
164期(2029年度)に以下の経営指標を目指します。
<目標経営指標>
営業利益率 : 15%以上
ROE : 12%以上
③ ESG・SDGsへの取り組み
当社グループが持続的社会価値と高収益を創出する企業となるためには、ESG(環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G))の3つを最重要課題と認識し、積極的に取り組むと共に、事業活動を通じてSDGsで提唱されている課題解決に貢献してまいります。
④ 研究開発方針
・事業環境変化を捉える技術開発、事業基盤強化を図ります。
・技術要素の進化をスピード感を持って進めます。
Ⅱ 新中期経営計画(2020-2023年度)「MOVING-10 STAGE1」
新中期経営計画では、2020年初に発生した新型コロナウイルス感染症による影響からいち早く回復し、全社一丸となって更なる飛躍を図るべく、より収益性を重視した活動のもと「変革による拡大」と「新素材の創出」に重点的に取り組むことで、長期経営ビジョン達成に向けた業容拡大と収益基盤の強化を図ります。
① 活動のポイント
・機能性化学品および電子材料事業の更なる拡大(ポートフォリオシフト加速)
・環境エネルギー分野の育成、上市(次世代担う2本目の柱)
・新たな素材の創出促進(キーワード:「ニッチ市場」×「伸長分野」)
・業務効率化の推進(生産性向上、自動化)
・人財育成の推進(ダイバーシティ、働き方改革)
・SDGs経営推進による企業価値向上
② 分野別事業戦略
a.ライフサイエンス分野
ライフサイエンス分野は、今後の当社の収益面での柱となるべく市場に合わせた供給体制を確立し、更なる拡大を図ります。
化粧品原料につきましては、新規素材の開発、協業他社とのアライアンス、東京ラボの活用による川下事業との連携等で、化粧品原料の総合メーカーを目指します。そのためには、素材開発力の強化や処方化技術の向上、GMP対応、ブランド化促進を図り、グローバル展開をさらに加速します。
圧電材料につきましては、従来のコンポジット材料のみならず単結晶材料の販売加速、周辺部材や川下事業への展開を図ることで、医療用圧電市場の№1を目指します。そのためには、TRS社との技術革新を進め、グローバルニッチトップを目指します。
b.環境エネルギー分野
環境エネルギー分野は、当社の将来の第二の柱となるべく、当社独自の保有技術の展開を図り、より高機能な製品の開発、育成、上市を目指します。そのためには、環境保全触媒や蓄電池用材料、導電性高分子といった当社コア技術の活かせる分野での開発促進を図り、育成、上市のスピードアップを図ります。
c.ケミカル分野
ケミカル分野は、徹底したコストダウンによる収益性の改善により利益の極大化を図ります。酸化チタンにつきましては、販売数量の維持と同時に生産効率化によるコストダウンを図り、採算性重視の販売を行います。
また、界面活性剤につきましては、マザー工場としての大阪工場を中心としつつも、タイ、ベトナムの海外両工場との連携を強化し、引き続きアジア地区でのグローバル展開を図ってまいります。
d.インダストリアルサービス分野
インダストリアルサービス分野は、商社機能や物流機能、設備保全機能といった基幹産業を支える重要な事業分野であります。当社グループのネットワークやメーカーとしての技術、機能を活用し、当社のあらゆる事業分野と連携しながら各事業の発展を図ってまいります。
③ 目標経営指標(連結)
新中期経営計画(2020-2023年度)「MOVING-10 STAGE1」における目標値と進捗状況は、以下のとおりであります。当社グループは、当連結会計年度において、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けながらも、目標値の達成に向けて経営に注力してまいりました。
|
2022年3月期実績 |
2023年3月期予想 |
最終年度:2024年3月期 |
売上高 |
463億円 |
540億円 |
550億円 |
営業利益 |
36億円 |
39億円 |
75億円 |
営業利益率 |
7.9% |
8.4% |
14% |
ROE |
5.6% |
5.6% |
9% |
EBITDA |
71億円 |
71億円 |
110億円 |
④ 設備投資計画
設備投資については、生産維持に必要な設備投資やライフサイセンス分野、環境エネルギー分野の新規生産設備の投資に約140億円を計画しております。
(3)経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
今後の経済見通しにつきましては、新型コロナウイルス感染症の新たな変異株による感染再拡大、ウクライナ情勢に伴うサプライチェーンに対する影響への懸念もあり、先行きは不透明な状況で推移すると予想されます。
新型コロナウイルス感染症拡大による影響については、今後の収束時期等を正確に予測することは困難な状況にありますが、当社グループでは、翌連結会計年度末に向けて経営環境は一定の回復に向かうものと仮定しております。2023年3月期の当社グループの業績予想につきましては、原燃料価格の高騰や償却費負担の増加による売上原価率の悪化はあるものの、販売増加及び販売価格改定が利益を押し上げ、前年同期比で増収増益となる見通しであります。
当社グループを取りまく事業環境は次のとおりであります。
Ⅰ 機能性材料事業
汎用用途の酸化チタンに関しましては、需要回復の兆しはあるものの、原燃料価格の高騰により、今後も収益面で厳しい状況になると予想しております。
機能性用途の微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛及び表面処理製品に関しましては、世界的な新型コロナウイルス感染症拡大の影響で主用途であるUVカット剤需要が激減しておりましたが、ワクチン接種の普及による経済活動の段階的な再開が進んでおり、今後欧米だけでなく、アジア地域でも需要は回復していくものと予想され、市況を注視しつつ販売維持・拡大に努めます。
Ⅱ 電子材料・化成品事業
電子材料に関しましては、国内外で需要が好調に推移するものと予想しており、特に圧電材料については、2022年1月末に完成した「圧電単結晶材料量産工場」の稼働に伴い、日本と米国の両製造拠点を確保したため、世界各国への安定的な製品供給により、更なる拡販に努めてまいります。また、化成品事業に関しましても、洗剤など日用品向けの需要は堅調に推移すると見ており、タイ・ベトナムの海外連結子会社ともに、世界各地での需要に対応に力を注ぎます。
このような状況下、当社グループは激変する環境にスピードをもって的確かつ柔軟に対応するとともに、グループ一丸となって一層の企業価値向上に努めてまいる所存であります。
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