(1)経営成績に関する分析
当期の世界経済は、各国において財政・金融政策による下支えが行われ、また新型コロナウイルス感染症の拡大防止のための経済活動制限措置が段階的に緩和されたことを受け、概ね回復基調で推移しました。しかし、期の後半にはロシアのウクライナ侵攻により、エネルギー価格の高騰など世界経済に大きな影響を及ぼしました。
日本経済においては、期の前半において半導体不足、東南アジアでの感染拡大に伴う部品供給不足などの供給制約が輸出や個人消費の足かせとなり、景気回復は緩やかなものにとどまりました。後半は経済社会活動の水準が段階的に引き上げられる中で、景気は持ち直しの動きがみられましたが、オミクロン株の感染拡大、ウクライナ情勢の影響を受けて不透明なものとなりました。
このような経済環境のもと、当社は「中期経営計画2025」の重点施策である「事業ポートフォリオの転換」「地球温暖化防止への貢献」「CSR経営の推進」に取り組んでまいりました。
業績につきましては、石油化学製品の販売価格が上昇したこと、及び半導体関連製品の販売が堅調に推移したこと等が売上増加の要因となりましたが、収益認識会計基準等を適用した結果、売上高は減収となりました。また、営業利益は原燃料コストの増加等により減益となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という)等を経過的な取り扱いに従って当連結会計年度の期首から適用しています。これにより、従来の会計処理方法に比べて、売上高が46,530百万円減少し、売上原価が46,530百万円減少しております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。
(売上高)
石油化学製品の販売価格が上昇したこと、及び半導体関連製品の販売が堅調に推移したこと等が売上増加の要因となりましたが、収益認識会計基準等を適用した結果、前期より8,577百万円減少し、293,830百万円(前期比2.8%減)となりました。
(売上原価)
原燃料コストの増加等はありましたが、収益認識会計基準等を適用した結果、前期より8,837百万円減少し、198,417百万円(前期比4.3%減)となりました。
(販売費及び一般管理費)
物流費及び研究開発費の増加等により、前期より6,642百万円増加し、70,872百万円(前期比10.3%増)となりました。
(営業利益)
塩化ビニルモノマーの海外市況上昇等はあったものの、原燃料コストの増加等により、前期より6,382百万円減少し、24,539百万円(前期比20.6%減)となりました。
(営業外損益・経常利益)
営業外損益は、前期より1,440百万円改善しました。
以上の結果、経常利益は前期より4,941百万円減少し、25,855百万円(前期比16.0%減)となりました。
(特別損益・税金等調整前当期純利益・当期純利益・親会社株主に帰属する当期純利益)
特別損益は、前期より1,631百万円改善しました。
以上の結果、税金等調整前当期純利益は、前期より3,309百万円減少し、27,649百万円(前期比10.7%減)となりました。
応分の税金費用を加味した当期純利益は、前期より2,854百万円増加し、28,175百万円(前期比11.3%増)となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、前期より3,466百万円増加し、28,000百万円(前期比14.1%増)となりました。
当連結会計年度より、事業セグメントの区分方法を見直し、「化成品」「セメント」「電子材料」「ライフサイエンス」「環境事業」及び「その他」の6セグメントに変更しております。
以下の前期比較については、当該変更を反映した前期の数値で比較しております。
(セグメント別の状況)
(注) 各セグメントの売上高、営業利益又は営業損失(△)にはセグメント間取引を含めております。
(化成品セグメント)
苛性ソーダは、原燃料価格の上昇で製造コストが増加したこと等により、減益となりました。
塩化ビニルモノマーは、輸出価格が上昇したことにより、増益となりました。
塩化ビニル樹脂は、国内の販売価格修正が進んだこと等により、増益となりました。
ソーダ灰及び塩化カルシウムは、原燃料価格の上昇で製造コストが増加したことにより、減益となりました。
以上の結果、当セグメントの売上高は101,482百万円(前期比24.7%増)、営業利益は14,225百万円(前期比4.7%増)で増収増益となりました。
(セメントセグメント)
セメントは、出荷は前期並みだったものの、原料価格の上昇で製造コストが増加したことにより、損益が悪化しました。
以上の結果、当セグメントの売上高は50,366百万円(前期比43.8%減)、営業損失は1,912百万円(前期は営業利益4,454百万円)となりました。
(電子材料セグメント)
半導体向けの多結晶シリコンは、5Gの普及やデータセンターの増設を背景に販売が堅調に推移し、原料価格の上昇はありましたが、増益となりました。
ICケミカルは、海外向けを中心として販売数量が増加したものの、原料価格の上昇等により、減益となりました。
乾式シリカは、半導体用研磨材用途を中心に販売数量が増加し、原料価格の上昇はありましたが、増益となりました。
放熱材は、販売数量は堅調に推移したものの、先進技術事業化センターの研究開発費の増加等により、前期並みの業績となりました。
以上の結果、当セグメントの売上高は74,996百万円(前期比21.2%増)、営業利益は7,232百万円(前期比1.8%増)で増収増益となりました。
(ライフサイエンスセグメント)
歯科器材は、海外向けを中心に出荷が増加したことにより、増益となりました。
プラスチックレンズ関連材料は、メガネレンズ用フォトクロミック材料の海外向けを中心とした出荷が増加したことにより、増益となりました。
医薬品原薬・中間体は、ジェネリック医薬品向けの販売数量が堅調に推移し、増益となりました。
以上の結果、当セグメントの売上高は33,564百万円(前期比17.1%増)、営業利益は6,036百万円(前期比72.6%増)で増収増益となりました。
(環境事業セグメント)
当セグメントは、環境事業を将来の一つの柱とするために、グループ内に点在していた環境関連事業を集約し、新たな事業展開を目指すセグメントとして当連結会計年度から新設しました。
当セグメントの10,305百万円(前期比7.6%増)、営業損失は468百万円(前期は営業損失368百万円)となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1 金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 当連結会計年度より、事業セグメントの区分方法を見直し、「化成品」「セメント」「電子材料」「ライフサイエンス」「環境事業」及び「その他」の6セグメントに変更しております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。
3 前期比は、前年同期の数値をセグメント変更後に組み替えて算出しております。
環境事業セグメントの一部を除いて受注生産を行っておりません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2 当連結会計年度より、事業セグメントの区分方法を見直し、「化成品」「セメント」「電子材料」「ライフサイエンス」「環境事業」及び「その他」の6セグメントに変更しております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。
3 前期比は、前年同期の数値をセグメント変更後に組み替えて算出しております。
(注) D/Eレシオ :有利子負債/自己資本
ネットD/Eレシオ :(有利子負債-現金及び現金同等物)/自己資本
自己資本比率 :自己資本/資産合計
時価ベースの自己資本比率 :株式時価総額/資産合計
(資産)
有形固定資産が15,576百万円、原材料及び貯蔵品が8,335百万円、受取手形及び売掛金が7,300百万円、投資その他の資産が5,848百万円、商品及び製品が4,519百万円、仕掛品が3,268百万円、その他流動資産が1,302百万円増加しました。
以上の結果、資産は前連結会計年度末に比べ46,415百万円増加し、433,210百万円となりました。
(負債)
長期借入金及び1年内返済予定の長期借入金が2,936百万円、その他流動負債が1,491百万円、短期借入金が1,386百万円減少した一方、社債が15,000百万円、支払手形及び買掛金が9,507百万円増加しました。
以上の結果、負債は前連結会計年度末に比べ18,758百万円増加し、200,292百万円となりました。
(純資産)
親会社株主に帰属する当期純利益の積み上げ等により利益剰余金が23,202百万円、為替換算調整勘定が2,683百万円増加しました。
以上の結果、純資産は前連結会計年度末に比べ27,656百万円増加し、232,917百万円となりました。
(財務指標)
当連結会計年度におきましては、有利子負債が10,782百万円増加しましたが、自己資本が25,945百万円増加したことにより、D/Eレシオは前連結会計年度末に比べ0.01改善し、0.49倍となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税金等調整前当期純利益が27,649百万円となり、減価償却費19,716百万円、棚卸資産の増加額15,704百万円などにより、営業活動の結果得られた資金は、25,986百万円(前期比17,328百万円の減少)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
有形固定資産の取得による支出31,887百万円などにより、投資活動の結果使用した資金は、33,797百万円(前期比14,520百万円の増加)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
長期借入金の返済による支出9,150百万円、配当金の支払額5,034百万円、社債の発行による収入14,926百万円、長期借入れによる収入6,218百万円などにより、財務活動の結果得られた資金は、5,118百万円(前期比27,648百万円の増加)となりました。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(経営目標の状況)
当社グループでは2021年度を初年度とする5年間の「中期経営計画2025」を策定し取り組んでおります。当社が経営上の目標として掲げる指標については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)「中期経営計画2025」達成目標」に記載のとおりです。
(重点施策の状況)
「中期経営計画2025」では、重点施策として、「事業ポートフォリオの転換」、「地球温暖化防止への貢献」、「CSR経営の推進」の3つを掲げており、それぞれについての取り組み状況については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)対処すべき課題」に記載のとおりです。
(経営成績等の分析)
経営成績の分析については「(1)経営成績に関する分析 ① 当期の業績全般に関する概況」に記載のとおりです。
財政状態の分析については「(2)財政状態に関する分析 ① 当期の資産、負債及び純資産の状況に関する分析」に記載のとおりです。
(新型コロナウイルス感染症に関する想定される当社グループ業績に与える影響)
新型コロナウイルス感染症が再拡大することにより想定される各セグメントへの影響は、以下のとおりです。
化成品セグメントにおいては、輸出先のロックダウン等による塩ビの輸入停止や、自動車生産減による石化製品の販売数量減など、建設・製紙・自動車向け用途の販売への影響を想定しています。
セメントセグメントにおいては、建設工事中断、作業所閉所などにより国内外のセメント販売数量への影響を想定しています。
電子材料セグメントにおいては、半導体市場について、5Gの導入やリモートワークの増加を背景に堅調な推移が予想され、関連する当社製品の需要増加が見込まれます。
ライフサイエンスセグメントにおいては、影響は限定的であるものの、歯科材料やメガネ関連製品等、一部の販売については、欧米のロックダウンが発生した場合による影響を想定しています。
環境事業セグメントにおいては、影響は限定的であるものの、営業活動の制限による影響を想定しています。
(中期経営計画2025(2021年度~2025年度)の目標達成状況)
当連結会計年度については、成長事業の売上高成長率(CAGR)は、電子材料セグメントにおける半導体関連製品の販売数量増加・販売価格の上昇、及びライフサイエンスセグメントにおける歯科器材などの海外向け出荷の増加等により19.9%となり、目標の10%を上回りました。ROEは13.2%となり、前期並みの水準を維持しました。
(セグメントごとの経営成績分析)
セグメントごとの内容は、「(1)経営成績に関する分析 ② 当期のセグメント別の状況」に記載のとおりです。
(キャッシュ・フローの状況の分析)
キャッシュ・フローの状況の分析については「(2)財政状態に関する分析 ② 当期のキャッシュ・フローの状況に関する分析」に記載のとおりです。
(資本の財源の分析)
当社グループでは、事業活動のための適切な運転資金の確保、及び事業ポートフォリオの転換を目的とした成長分野への重点投資、地球温暖化防止への貢献を目的とした合理化・省エネ・CO2対策投資等の設備投資、戦略的投資を推進するために一定の資金を必要としています。主な資金手当ての手段としましては、継続的な事業収益の計上による自己資金の積み上げの他、金融機関からの借入、社債の発行等となります。なお、次期の投資予定額は46,298百万円であり、主に自己資金及び金融機関からの借入金で充当する予定です。
(資金の流動性の分析)
当社グループの当連結会計年度末の現金及び現金同等物は82,496百万円となっており、当社グループの事業活動を推進していく上で充分な流動性を確保していると考えています。また、金融機関との間にリボルビング・クレジット・ファシリティ契約や当座貸越契約、債権流動化契約も締結しており、流動性に一部支障をきたす事象が発生した場合にも、一定の流動性を維持できると考えています。加えて、不測の事態に備え流動性資金の確保のため、コミットメントラインの設定も必要に応じて実施してまいります。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
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