(1)経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要については、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」に含めて記載しております。
② 生産、受注及び販売の状況
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため生産、受注及び販売の状況については、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 経営成績」におけるセグメントごとの経営成績に関連付けて示しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響はワクチン接種の普及に伴い、感染対策と経済社会活動の両立が進んだものの、急激な円安の進行や原燃材料価格の高騰など、依然として厳しい状況が継続しております。
世界経済は、先進国を中心に経済回復の動きが見られておりましたが、半導体をはじめとする部品の供給不足による生産活動の停滞に加え、ロシアによるウクライナ侵攻及びロシアに対する各国政府の経済制裁の影響により、原燃材料価格がより一層高騰するなど、先行きは非常に不透明な状況が続いております。
このような経済環境の下、当社グループは積極的な販売活動を展開いたしました結果、当期の売上高は206,184百万円と、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けておりました前期比8.1%の増加となりました。
損益面につきましては、経営全般にわたる業務の効率化・合理化施策を推進してまいりました結果、経常利益は前期比7,186百万円増加の11,936百万円となり、2022年4月1日に公表いたしました自動車ガラス事業の米国及び欧州子会社の株式譲渡契約締結により、関係会社株式譲渡損失引当金繰入額48,404百万円を特別損失に計上した結果、親会社株主に帰属する当期純損失は39,844百万円(前期は1,230百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
(ガラス事業)
百万円 |
売上高 |
営業損失(△) |
当 期 |
111,838 |
△2,515 |
前 期 |
112,398 |
△3,020 |
増減率 |
△0.5% |
- |
建築用ガラスにつきましては、10月に価格改定を実施しましたが、構造改善の取り組みとして不採算取引等を見直したことにより、損益の改善に寄与したものの、売上高は前期を下回りました。併せて、販売規模に合せて、生産・加工拠点の縮小、集約を進めております。
自動車用ガラスにつきましては、前期は新型コロナウイルス感染症の感染防止の為の各自動車メーカーの生産停止の影響、当期は半導体不足及び東南アジアでの新型コロナウイルス感染症の流行拡大による部品供給の混乱による各自動車メーカーの減産影響を受けました。国内については当期の減産影響が長期間に渡っていることにより売上高は前期を下回りました。海外については当期もコロナ前の水準には戻ってはいないものの、米国のアフターマーケット事業のパーツ品出荷増、欧州市場の回復により、売上高は前期を上回りました。
ガラス繊維につきましては、自動車分野において各自動車メーカーの減産影響は受けたものの、電材分野の出荷が好調に推移し、販売価格も上昇したことから、売上高は前期を上回りました。
以上、ガラス事業の売上高は111,838百万円(前期比0.5%減)となり、損益につきましては2,515百万円の営業損失(前期比504百万円の改善)となりました。
(化成品事業)
百万円 |
売上高 |
営業利益 |
当 期 |
94,345 |
9,778 |
前 期 |
78,274 |
7,084 |
増減率 |
20.5% |
38.0% |
化学品につきましては、主力のハイドロフルオロオレフィン製品が、次世代溶剤の販売が好調に推移し、断熱用発泡剤も国内外で出荷量が増加したことから、売上高は前期を上回りました。
ファインケミカルにつきましては、堅調な半導体需要により、半導体用途の特殊ガス関連製品の出荷が増加したことに加え、電子材料用途以外での特殊ガス製品のスポット需要が発生しました。農薬関連製品、リチウムイオン電池用電解液製品の販売も好調に推移し、前期は新型コロナウイルスの影響を受けた医療品関連製品の販売も回復傾向となり、売上高は前期を上回りました。
肥料につきましては、新規需要獲得による数量増と価格値上げ改定により、売上高は前期を上回りました。
以上、化成品事業の売上高は94,345百万円(前期比20.5%増)となり、損益につきましては9,778百万円の営業利益(前期比2,694百万円の増加)となりました。
② 財政状態
当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末に比べ、株価の下落などで投資有価証券が3,897百万円減少する一方、売上債権及び契約資産が1,530百万円、棚卸資産が6,078百万円、繰延税金資産が3,092百万円それぞれ増加したことなどにより、5,789百万円増加し290,696百万円となりました。
負債は借入金が7,456百万円、1年内償還予定の社債が10,400百万円それぞれ減少する一方、仕入債務が3,612百万円、コマーシャル・ペーパーの発行などによりその他流動負債が7,168百万円、関係会社株式譲渡損失引当金が48,404百万円増加したことなどにより、44,809百万円増加し160,632百万円となりました。
純資産は為替換算調整勘定が6,268百万円増加する一方、株価の下落によりその他有価証券評価差額金が3,134百万円、利益剰余金が42,740百万円それぞれ減少したことなどにより、39,020百万円減少し130,063百万円となりました。また、自己資本比率は14.7%減少し43.4%となりました。
③ キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末に比べ、825百万円増加し、26,906百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金収支は、税金等調整前当期純損失38,630百万円、減価償却費12,182百万円、関係会社株式譲渡損失引当金の増加48,404百万円、投資有価証券売却益2,618百万円、法人税等の支払額2,512百万円などにより、14,872百万円の収入(前期は17,918百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金収支は、有形固定資産の売却による収入2,821百万円、投資有価証券の売却による収入3,269百万円の一方で、有形固定資産の取得による支出8,305百万円などにより、1,839百万円の支出(前期は3,737百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金収支は、コマーシャル・ペーパーの発行による収入9,000百万円、借入金の返済による支出7,625百万円、社債の償還による支出10,400百万円、配当の支払による支出3,035百万円などにより、12,744百万円の支出(前期は13,121百万円の支出)となりました。
④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
(イ)資本政策の基本的な方針について
当社は、中長期的な企業価値の向上を目指し、着実な構造改革により継続的な利益成長と株主還元を実現していくために中期経営計画(2022~2024年度)を策定しておりますが、その基盤にあります利益の配分及び資本効率等を総合的に勘案した資本政策の基本的な方針は以下のとおりとなります。
(a)資本政策
企業価値の最大化を目的として、投資と資金調達の最適化を重視した資本構成を目標とする。
<基本方針>
・調達 資金コストと継続性(リスク)のバランスを考慮し、適切な方法を組み合わせて、計画的に安定して調達を行う。
・運用(投資) 調達資金コストを上回る利益、投下資本以上のキャッシュ・フローを産みだす源泉に選別して資本を投入する。
・分配 産み出したキャッシュは、株主還元、投資、財務規律のバランスを考えた配分を基本にして適切に利益分配を行う。
(b)資本政策に関連する方針
(ⅰ)収益性・効率性について
指 標 |
目 標 |
ROE(自己資本利益率) |
8% |
資本効率性を意識し、資本コストを上回る収益性を達成すべくROE(自己資本利益率)を経営指標とし、その目標を8%といたします。
当期(2022年3月期)は目標には未達の状況となりますが、利益の増大と資産圧縮による効率化により、継続して改善を進めて参ります。
(ⅱ)財務の健全性について
指 標 |
目 標 |
自己資本比率 |
現状維持 |
資金調達は、資本・負債コストを考え、現状の金融環境(低金利)を活用して計画的に実施し、有利子負債による調達については、借入や社債発行による複数の選択肢をバランスよく組み合わせて実施して参ります。
そのためには、中長期的に事業や金融環境の変動などのリスクに耐えうる健全な財務規律により信用力を確保し、格付けを維持していくことが必要と考え、上記目標としております。
(ⅲ)利益還元の充実について
指 標 |
目 標 |
株主総還元性向 |
30%以上 |
DOE(自己資本配当率) |
2.4% |
利益配分にあたりましては、企業体質の強化をはかるため、研究開発や設備投資など将来の事業展開のための内部留保の充実を考慮しつつ、長期的視点に立って業績に見合った安定的な配当を行うことを基本方針としております。
株主への利益還元については、中期経営計画(2022~2024年度)の期間中においては、最終年度の経営目標としているROE8%をベースにしたDOEを2.4%、また株主総還元性向を30%以上という株主への利益還元の目標を設定し、基礎となる利益、純資産の変動による不足は自己株式の取得で調整することとしております。
なお、上記利益還元の目標指標は、中期経営計画策定毎にROEなどの指標設定と併せて見直すことといたします。
また、自己株式の取得は資本政策の方針に基づき判断し、市場環境を踏まえ上記利益還元を補完すべく機動的に実施して参ります。
(ロ)資金調達
当社グループの資金調達は、(イ)(b)(ⅱ)の方針に基づき、自己資金のほか、金融機関からの借入等による間接調達、資本市場からの直接調達により行っております。
間接調達については、金融機関からの借入について相対での借入枠を十分確保しており、かつ10,000百万円を借入限度額とするコミットメントラインを設定し、長期・短期のバランスを考慮して安定的に調達しております。また、直接調達については、社債の発行等により調達しております。
なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は54,570百万円、現金及び現金同等物の残高は26,906百万円、よってネット有利子負債は27,663百万円となりました。
⑤ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
⑥ 経営戦略の現状と見通し
経営戦略の現状と見通しについては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
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