文中の将来に関する事項は、提出日現在において、当社グループが判断したものです。
当社グループは、「世界を便利に、人々を幸せに」をミッションとし、独自開発のAIアルゴリズムによる画像・動画解析と端末処理(エッジコンピューティング)技術を活用した「AIエンジニアリング事業」を展開しています。
新型コロナウイルス感染拡大を受け、生活習慣が大きく変化しています。在宅勤務・リモートワークの経常化やインターネットを通じたショッピングやエンターテイメントの広がりなど、日常生活の一部ではデジタル化が急速に進みました。
一方、街なかに目を向けてみると、デジタル化による便利さを十分に享受できる環境が十分に整ったとは言えない状況が続いています。当社グループは、街なかにAIの眼を拡げることで、より便利な社会を構成する新しいサービスを自ら発案し、サービスそのものを自社で作り上げ、また、グループ企業の拡大などを通じて事業分野を拡げてまいりました。
また、持続可能な社会を実現するために国連サミットにて採択されたSDGs(持続可能な開発目標)に則して、省資源・省エネルギーで使えるエッジAI技術、AIを活用した安心・快適な街づくりへの貢献等に取組むことにより、持続的な社会づくりに貢献し、企業価値を向上させていくことを目指しています。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、収益性を維持しながら、中長期的な成長を図るため、成長性、収益性及び効率性を重視した経営が必要と認識しています。このため、売上高、売上高総利益及びEBITDAを重要な指標と位置づけております。
2005年頃から深層学習を用いない業務のデジタル化を支援するサービス展開が始まり、2012年に機械学習研究領域において、深層学習技術が生み出されました。以来、深層学習技術の活用は、さまざまな産業にて研究が行われています。深層学習技術についての実証実験が多数の大企業やスタートアップ企業で進んできた一方、実際に事業化され、市場形成するまでに浸透したサービスが創出されることはこれまで殆どなかったと当社グループは考えています。2017年にAIを搭載できるエッジデバイスが登場し、拡張性の高いAIサービスが進展する素地が整いました。
インターネット産業においては、2000年頃に検索エンジンと広告事業の連動により、インターネット広告事業が初めて勃興し、同時に、世界を襲ったインターネットバブルとその崩壊により、優勝劣敗化が加速度的に進行し、技術力とビジネス力の双方を持ちえた企業のみが勝ち残りを遂げるに至っております。深層学習活用は現在、2000年以前のインターネット産業と同じく、黎明期にあると当社グループは考えております。深層学習活用においても、インターネットバブルと同様なことが起こり、飛躍的な成長を遂げるスタートアップが、世界で勃興しはじめていると当社グループは考えております。「人工知能が経営にもたらす『創造』と『破壊』」(EY総合研究所株式会社 2015年9月15日)によれば、卸売り・小売り・生活関連・広告・運輸・モビリティ分野でのAIサービスの市場規模は2020年の13兆円から2030年までに53兆円まで拡大すると予想されています。
こうした課題認識から、当社グループでは、高度なAIエンジニアリング力と卓越したビジネス創出力の融合こそが、深層学習技術の飛躍的な拡大に必要不可欠であると考えております。当社グループは2018年の創業以来、すでにAIが活用されている事業分野の大企業の研究開発の一部を担う受託開発ではなく、顧客企業が認識していない潜在市場を自社で掘り起こすことで市場自体を作り上げる事業開発を専業としています。独自に開発・構築したAIサービスを顧客企業に提供してまいりました。このような事業開発を推進した結果、当社グループの展開するAIサービスは「人流・防犯」、「駐車場・モビリティ」、「サイネージ広告」、「在宅勤務支援」、「ファッショントレンド解析」へと分野を拡大してまいりました。いずれも、スマートシティを構成するサービスとして展開しています。
当社グループが注力するスマートシティ分野は、特に中国や東南アジア諸国において注目され、複数の大規模なプロジェクトが進行しています。スマートシティとは建物、地形、エネルギー、交通などのデータを横断的に分析して、エネルギー効率がよく、環境に配慮した、安全安心な都市づくりで、AI技術の活用が大きく期待される分野でもあります。
"Smart Cities Market by Functional Area: Global Opportunity Analysis and Industry Forecast, 2018-2025"(Allied Market Research)によると、スマートシティの世界的な市場規模は2025年には2.4兆ドルになるとみられています。画像認識AI分野では、特に成長が著しいアジア太平洋地域について、年率平均25.4%で成長すると予想されています。当社グループはスマートシティ分野でのサービス展開を加速させてまいります。また、今後も新しい事業分野を自ら創出し、AIエンジニアリングでさまざまな課題に取組んでまいります。
当社グループのAIエンジニアリング事業の実社会での活用はスタートしたばかりです。既存サービスを成熟化させ、より社会で使われるサービスへ成長させていくとともに、当社グループの技術の活用領域を拡大させたいと考えています。今後も継続的に新規事業を生み出す事業構築力と、それを即時に実際のサービスとして実装していくAIエンジニアリング力強化のため、人材採用や人材育成などに注力してまいりたいと考えております。
当社グループは、AI技術を活用したサービス開発を主軸に事業を展開してまいりました。本連結会計年度においては、プロジェクト単位の受注積み上げによる事業モデルから、AI技術を活用したサービス開発とそれを自社でユニットとして販売する事業モデルへと急速な転換を進めております。高度なAIサービスの開発・展開を目指すにあたって、以下の3つの優位性を最大限に発揮・強化する戦略を採用しております。
当社グループは、経験豊富なコンサルファーム出身者と、世界トップのインターネット企業でプロジェクトや営業を統括したメンバーを擁しています。
顧客の委託ニーズを伺う受け身の営業活動を行わないことで、主体的に付加価値を作りだす事業創出と事業展開のみに注力することが可能となっています。外資系コンサルティングファームにおいてグローバル企業のでAI/IoTの活用や事業化をリードした経験を有する当社代表取締役社長をはじめ、国内外を代表する企業で新規事業を統括したメンバーの豊富な経験を元に、事業構築を行っております。
当社グループの深層学習の開発にあたっては、汎用なオープンアルゴリズムを転用せず、独自開発のアルゴリズムと自社で生成した学習データやコンピュータグラフィックスといった先端技術を活用し、高い精度のAIアルゴリズムを作り上げています。当社グループは、環境負荷を軽減させながら広く街まかで活用いただけることを前提に、端末処理(エッジコンピュータによる処理)に対応するAIライセンスの開発に注力しております。
当社グループには、世界各国からAIエンジニアが集まってきております。国籍を限定せず、能力を重視した採用を進め、外国籍のエンジニアを多く採用してきた結果、英語で自由に開発活動ができる環境が構築されております。本邦の限られたAIエンジニア数を成長の律速要因とせず、博士号を保有するエンジニアや、国際学会での多数の論文発表経験を持つエンジニアを複数擁しております。
スイスの欧州原子核研究機構(CERN)で、ノーベル賞研究であるヒッグス粒子の発見に、共同研究者として貢献した当社取締役CTOを始めとし、優秀なエンジニアを引き付ける開発能力を有し、かつ、日々の業務において研鑽をしております。
機械学習の検知を有する事業戦略部メンバーと高い専門性を持つ研究開発部のエンジニアが協業することで、より実社会に求められる技術をスピード感をもって開発しております。2022年2月末日現在、15件の特許を取得しており、9件が出願中です。
当社は、国内外の多様な企業との法人営業経験を豊富に保有する当社の代表取締役が創業しております。また、AI技術にも精通した多様なバックグラウンドをもった営業人材を確保しており、AI企業が苦手とする営業活動を戦略的に行える体制を構築しております。事業創出に当たり、高度な法人営業力を基に、ソフトバンクのようなブルーチップ企業のオープンイノベーションを積極的に推進し、レベニューシェア注のスキームにて協働することで、AIエンジニアリング事業に不可欠なスピード力と資金力を得るに至っております。
(注)取引先により運用・販売されるサービスから得られる売上等収益の一定割合を、当社グループサービスの対価として収受すること。
IV. M&Aを通じた事業領域の拡大
当社グループは、事業成長を急速に加速するため、M&Aを通じたグループ拡大による積極的な成長を目指しており、着実に実績を積み上げてまいりました。コンサルティングファームとPEファンドで多くのM&Aを手掛けてきた取締役CFOの種良典を中心としたM&Aチームが事業成長に資するM&Aの迅速な実施と早期のシナジー効果を創出する統合プロセスの推進を担っています。
2021年11月1日には、ハイグレードマンション向けのサイネージ広告領域で独占的に事業展開していた株式会社フォーカスチャネルを子会社化し、サイネージ広告事業の基盤となるサイネージ筐体の設置台数を急拡大させました。フォーカスチャネルのグループ取り込みにより、AIサイネージサービスを自社の広告事業として展開していくための組織体制、人員体制を短期間で確立することができました。
また、2022年2月21日には、屋外電子看板大手の株式会社ネットテンを子会社化しました。これにより、ネットテンの電子看板を活用し、スマートシティ領域において新たな事業展開を見込んでおります。
当社グループは引き続き、積極的なM&A戦略により、加速的な事業成長を目指しております。
独自の深層学習技術のライブラリの開発や、深層学習モデルを低コスト活用できる端末処理(エッジコンピューティング)は当社グループの競争力の源泉の一つであり、継続的な強化が重要であるものと認識しております。今後も、国籍を問わずに卓越した能力を持つAIエンジニアの採用及び育成に努め、重点的に投資してまいります。
当社グループのビジネスモデルは、特定のバーティカル(産業)に依存せず独立性・独自性が高く、既存の事業・サービスに限らず、まだAIの活用が始まっていない新たな産業分野においても適用可能であると考えております。当社グループはエッジコンピューティングによるAI解析の優位性を最大限に活用し、AIエッジプラットフォーマーとして、既存事業・サービスで培った独自の成功モデルから得た知見を取り入れたさらなる新規事業を発掘し、早期の事業化により、当社グループの技術の活用の場を広げてまいります。
当社グループは、一層の事業拡大を見込む成長段階にあり、事業の拡大・成長に応じた内部管理体制の強化が重要な課題であるものと認識しております。経営の公正性・透明性確保のためにコーポレート・ガバナンスを強化し、適切な内部統制システムの構築を図ってまいります。
当社グループは海外への事業展開を進めており、海外企業向けに多様な販売チャネルを活用した営業活動を展開しております。
当社グループが主力サービス分野の一つとして進めるスマートシティにおいては、成長著しい東南アジアの潮流を捉える必要性が高いとの認識のもと、同地域への事業拡大の拠点として2020年4月30日にシンガポール支店を登記いたしました。新型コロナウイルス感染拡大の影響が緩やかなマレーシアやタイでの事業展開を見据え、基盤整備を進めております。
今後も、特に東南アジア各国の規制や現地ニーズ等に合わせ、効率的かつ効果的な進出方法を検討し、推進していきたいと考えております。
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