業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当期のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の再拡大により個人消費や輸出などで一進一退の状況が続き、景気は力強さに欠ける動きとなりました。また、世界経済は、依然として感染症の影響が残るなか、全体としては回復に向かいましたが、年明け以降ロシアによるウクライナ侵攻の影響により資源価格が高騰したほか、物流の混乱も深刻化するなど、先行きに対する懸念が高まりました。

このような経済環境のもと、当社グループは、企業理念“The Denka Value”を実現すべく、3つの成長ビジョン「スペシャリティーの融合体」「持続的成長」「健全な成長」を掲げ、2018年度より5か年の経営計画「Denka Value-Up」における2つの成長戦略「事業ポートフォリオの変革」と「革新的プロセスの導入」を推進し、業容の拡大と収益性向上に注力いたしました。また、2021年度からの2年間では、次期経営計画のありたい姿へ飛躍するための大切な準備期間と位置づけ、「社会にとってかけがえのない存在」になるための第一歩として、「事業」「環境」「人財」に関する3つの「Value-Up」に取り組んでおります。

この結果、当期の業績は、感染症で落ち込んだ需要が全般的に回復したことに加え、重点成長事業の電子・先端プロダクツ製品や新型コロナウイルス抗原迅速診断キットが伸長し、販売数量が増加しました。このほか、原燃料価格の上昇に応じた販売価格の見直しを行い、売上高は3,848億49百万円と前年同期に比べ304億58百万円(8.6%)の増収となりました。利益面では、スペシャリティー製品の伸長により、営業利益は401億23百万円(前年同期比53億93百万円増、15.5%増益)と過去最高益となり、売上高営業利益率は10.4%(0.6ポイント増)となりました。また、経常利益は364億74百万円(前年同期比43億31百万円増、13.5%増益)、親会社株主に帰属する当期純利益は260億12百万円(前年同期比32億27百万円増、14.2%増益)となり、それぞれ過去最高を更新しました。

なお、2021年4月1日付で、報告セグメントを従来の5部門から「電子・先端プロダクツ部門」、「ライフイノベーション部門」、「エラストマー・インフラソリューション部門」、「ポリマーソリューション部門」の4部門に変更しており、当期の比較・分析は変更後の区分によって行っております。

 

セグメントの経営成績は、次の通りであります。

 

<電子・先端プロダクツ部門>

球状アルミナや高純度導電性カーボンブラックはxEV関連を中心に販売が伸長しました。また、電子部品・半導体関連分野向け高機能フィルムや球状溶融シリカフィラーは5G関連やデータセンターなどの世界的な需要の拡大により好調に推移しました。このほか、自動車産業用向けの金属アルミ基板“ヒットプレート”や工業用テープの販売は増加し、LED用サイアロン蛍光体“アロンブライト”の販売も概ね堅調となりましたが、高信頼性放熱プレート“アルシンク”は電鉄向けの需要が低調となりました。

この結果、当部門の売上高は901億52百万円(前年同期比124億3百万円(16.0%)増収)となり、営業利益は186億56百万円と前年同期に比べ44億46百万円(31.3%)の増益となりました。

 

<ライフイノベーション部門>

新型コロナウイルスの抗原迅速診断キット“クイックナビ™-COVID19 Ag”は、感染症対策の一環として迅速な抗原検査体制の充実を図る厚生労働省の配布事業に供給したほか、年明け以降の感染症の再拡大により販売数量が増加しました。また、その他の試薬についても国内、輸出とも順調な販売となりました。一方、インフルエンザワクチンは、世界的な新型コロナウイルスワクチンの増産により生産用資材が不足したことに加え、ワクチン製造株の増殖性等の影響により生産数量が前年を下回ったことから、出荷が前年を下回りました。

この結果、当部門の売上高は46098百万円(前年同期比3151百万円(7.3%)増収)となり、営業利益は15495百万円と前年同期に比べ6億58百万円(4.4%)の増益となりました。

 

<エラストマー・インフラソリューション部門>

クロロプレンゴムの販売は、世界経済の回復とともに産業用途や自動車用途など全般的に需要が増加に転じ前年を上回りましたが、米国の子会社デンカパフォーマンスエラストマー社はハリケーン「アイダ」による上流サプライチェーンの混乱があり、生産停止を余儀なくされるなど影響を受けました。また、セメントは原燃料価格高騰に対して価格転嫁が一部にとどまったほか、特殊混和材の販売も前年を下回りました。

この結果、当部門の売上高は1,06879百万円(前年同期比15027百万円(16.4%)増収)となり、3473百万円の営業損失(前年同期は営業損失3553百万円)となりました。

 

<ポリマーソリューション部門>

ABS樹脂、デンカシンガポール社のMS樹脂やスチレンモノマーの販売は堅調に推移しました。また、合繊かつら用原糸“トヨカロン”や雨どい、食品包材用シートおよびその加工品の販売は概ね順調となりました。

この結果、当部門の売上高は、原材料価格の上昇に応じた販売価格の見直しもあり、1,265億78百万円(前年同期比166億94百万円(15.2%)増収)となり、営業利益は79億5百万円と前年同期に比べ4億94百万円(5.9%)の減益となりました。

 

<その他部門>

YKアクロス株式会社等の商社は、需要の回復により取扱高は増加しましたが、収益認識に関する会計基準の適用により減収となりました。

この結果、当部門の売上高は151億40百万円(前年同期比168億18百万円(52.6%)減収)となり、営業利益は19億4百万円と前年同期に比べ11億85百万円(165.0%)の増益となりました。

 

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ316億10百万円増加の5,576億46百万円となりました。流動資産は、棚卸資産の増加などにより前連結会計年度末に比べ174億37百万円増加の2,181億64百万円となりました。固定資産は有形固定資産の増加などにより、前連結会計年度末に比べ141億72百万円増加の3,394億82百万円となりました。

 負債は、仕入債務の増加などにより、前連結会計年度末に比べ95億53百万円増加の2,655億52百万円となりました。

 非支配株主持分を含めた純資産は前連結会計年度末に比べ220億57百万円増加の2,920億94百万円となりました。 

 以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末の50.8%から51.7%となり、1株当たり純資産は3,101円92銭から3,345円34銭となりました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、202億9百万円となり、前連結会計年度末と比べ57億円の減少となりました。なお、当連結累計期間におけるキャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の増加などにより、426億30百万円の収入となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資の支払などにより、368億39百万円の支出となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、株主還元による支払などにより、123億41百万円の支出となりました。

 

なお、キャッシュ・フロー指標のトレンドは以下のとおりです。

 

2018年3月

2019年3月

2020年3月

2021年3月

2022年3月

自己資本比率(%)

50.5

51.0

50.0

50.8

51.7

時価ベースの自己資本比率(%)

65.9

57.3

39.2

72.5

52.6

債務償還年数(年)

2.2

3.4

3.2

3.4

3.2

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

77.1

42.6

49.3

49.8

45.4

 

自己資本比率………………………………自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率………………株式時価総額/総資産

債務償還年数………………………………有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ……営業キャッシュ・フロー/利息支払額

(注) 1.いずれの指標も連結ベースの財務数値により算出しております。

2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

3.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。

 

 

③生産、受注及び販売の実績

当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品がほとんどであるため、セグメントごとに生産規模および受注規模を金額あるいは数量で示すことは行っておりません。

このため「生産、受注及び販売の実績」については、「①財政状態及び経営成績の状況」におけるセグメントの経営成績に関連付けて記載しております。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度における財政状態及び経営成績は、国内では、新型コロナウイルス感染症の再拡大により個人消費や輸出などで一進一退の状況が続き、景気は力強さに欠ける動きとなりました。また、世界経済は、依然として感染症の影響が残るなか、全体としては回復に向かいましたが、年明け以降ロシアによるウクライナ侵攻の影響により資源価格が高騰したほか、物流の混乱も深刻化するなど、先行きに対する懸念が高まりました。

このような経済環境のもと、当社グループは、企業理念“The Denka Value”を実現すべく、3つの成長ビジョン「スペシャリティーの融合体」「持続的成長」「健全な成長」を掲げ、2018年度より5か年の経営計画 「Denka Value-Up」における2つの成長戦略「事業ポートフォリオの変革」と「革新的プロセスの導入」を推進し、業容の拡大と収益性向上に注力いたしました。また、2021年度からの2年間では、次期経営計画のありたい姿へ飛躍するための大切な準備期間と位置づけ、「社会にとってかけがえのない存在」になるための第一歩として、「事業」「環境」「人財」に関する3つの「Value-Up」に取り組んでおります。

この結果、当期の業績は、感染症で落ち込んだ需要が全般的に回復したことに加え、重点成長事業の電子・先端プロダクツ製品や新型コロナウイルス抗原迅速診断キットが伸長し、販売数量が増加しました。このほか、原燃料価格の上昇に応じた販売価格の見直しを行い、売上高は増収となりました。利益面では、スペシャリティー製品の伸長により、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は、それぞれ過去最高を更新しました。

 

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容は、以下のとおりであります。なお、2021年4月1日付で、報告セグメントを従来の5部門から「電子・先端プロダクツ部門」、「ライフイノベーション部門」、「エラストマー・インフラソリューション部門」、「ポリマーソリューション部門」の4部門に変更しており、当期の比較・分析は変更後の区分によって行っております。

 電子・先端プロダクツ部門は、球状アルミナ、高純度導電性カーボンブラックがxEV関連を中心に販売が伸長し、電子部品・半導体搬送用部材の高機能フィルムや球状溶融シリカフィラーが5G関連やデータセンターの世界的な需要拡大により好調に推移したことなどにより、大幅な増益となりました。
 ライフイノベーション部門は、インフルエンザワクチンの出荷が前年を下回ったものの、新型コロナウイルスの抗原迅速診断キット“クイックナビ™-COVID19 Ag”やその他検査試薬の販売数量が前年を上回ったことなどにより、増益となりました。

エラストマー・インフラソリューション部門は、クロロプレンゴムの販売が世界経済の回復とともに需要が増加に転じ前年を上回りましたが、米国の子会社デンカパフォーマンスエラストマー社におけるハリケーン「アイダ」による影響や、セメントが原燃料価格高騰に対して価格転嫁が一部にとどまったことなどにより、前年に引き続き営業損失となりました。

ポリマーソリューション部門は、ABS樹脂、MS樹脂やスチレンモノマーの販売が堅調に推移し、また原材料価格の上昇に応じた販売価格の見直しもあり、前年並みの利益となりました。
 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの当連結会計年度におけるキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローは426億30百万円の収入となりましたが、経営計画「Denka Value-Up」における2つの成長戦略である「事業ポートフォリオの変革」と「革新的プロセスの導入」にもとづく積極的な投資による支出をおこない、また株主還元方針にもとづく配当を実施した結果、当連結会計年度末のネット有利子負債残高は前連結会計年度末に比べ45億41百万円増加し1,168億22百万円となりました。なお、自己資本比率は51.7%、ネットD/Eレシオは0.40倍と引き続き良好な財政状態を維持しているものと判断しております。

資本の財源及び資金の流動性については、当社グループでは将来の安定的な成長を持続するため、良好な財務バランスを維持することが重要と考えており、資金需要に見合った資金調達を行うことを基本的な方針としております。
 当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金、設備投資資金等であり、必要資金の調達については、自己資金を主とし、運転資金の一部を短期借入金やコマーシャル・ペーパーによって、設備資金等の長期資金の一部を長期借入金や社債によって外部調達しております。
 資金の流動性については、適正な水準の現預金を保持した上で、不測の事態に対応するため、取引金融機関と貸出コミットメント契約を締結することで流動性を確保しております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に準拠して作成されております。連結財務諸表の作成にあたっては、重要な会計方針と合理的と考えられる見積りに基づき、収益、費用、資産、負債の計上について判断しております。

当社グループの連結財務諸表の作成においては、例えば一般債権に対する貸倒引当金の引当については主として過去の貸倒実績率を、繰延税金資産の計上については将来の税務計画を、退職給付債務については、昇給率、割引率などを使用して見積っておりますが、見積りにつきましては不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、主なものは以下のとおりであります。

なお新型コロナウイルス感染症拡大の影響については、その収束時期等を正確に予想することが困難ではありますが、当社グループは、翌連結会計年度においても一定の影響が継続するとの前提に基づいて会計上の見積りをおこなっております。しかしながら、新型コロナウイルス感染症拡大による影響は、世界経済に与える影響をはじめ不確定要素が多いことから、翌連結会計年度の当社の財政状態、経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。


 (a)固定資産(のれんを含む)

当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産または資産グループについて、当該資産または資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローを見積り、その総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失として計上しております。また、年次の減損テストが必要な場合、のれんを含む資産グループの公正価値を算定し、その帳簿価額が公正価値を超過する場合には、公正価値まで減額を行います。将来キャッシュ・フローの見積りにあたっては、事業計画をもとに最新の事業環境に関する情報等を反映しているほか、必要に応じて外部専門家による評価を活用しております。

減損損失の認識及び測定に当たっては、慎重に検討をおこなっておりますが、将来の予測不能な事業環境の著しい悪化等により見直しが必要となった場合、減損損失が発生する可能性があります。


(b)繰延税金資産の回収可能性

繰延税金資産の回収可能性は、収益力もしくはタックス・プランニングに基づく将来の課税所得の十分性により判断しており、課税所得の算定にあたっては、各納税主体の事業計画をもとに最新の事業環境に関する情報等を反映し見積っております。
 当該見積り及び当該仮定について、将来の予測不能な経営環境の著しい悪化等により見直しが必要となった場合、評価性引当額が変動し損益に影響を及ぼす可能性があります。


(c)退職給付債務の算定
 当社グループでは、簡便法を採用している連結子会社を除き、確定給付制度の退職給付債務および関連する勤務費用について、数理計算上の仮定を用いて算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、昇給率、期待運用収益率等の計算基礎があり、これらの計算基礎については、例えば期待運用収益率であれば前提となる企業年金の運用方針などを、定期的かつ合理的な見直しをおこなっております。
 当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、退職給付債務および関連する勤務費用が変動する可能性があります。

 

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