課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(経営方針、経営環境及び対処すべき課題)

当社は、企業理念“The Denka Value”を実現すべく、5ヵ年の経営計画「Denka Value-Up」を2018年度より強力に推進しております。4年目である2021年度の具体的な取り組みについて、その一例をご紹介いたします。

まず、「環境・エネルギー」分野では、大牟田工場に50億円の戦略投資を行い、次世代の高機能球状フィラー製造設備を増強することを決定いたしました。これにより、第5世代移動通信システムである5Gや次世代自動車であるxEV向け機能性フィラー製品群を拡充いたします。また、5G・xEV向けでは放熱シートについても新規生産設備を渋川工場に導入し、生産能力を約2倍に増強することを決定いたしました。今後は、同工場を大牟田工場とともに電子材料の中核生産拠点と位置づけ、自動生産プロセスの導入や、同工場内にある研究開発部門を強化し、車載・通信で求められる高熱伝導性・高耐熱性等を持ち合わせた次世代スペシャリティー製品の開発にも注力いたします。さらに、シンガポールの子会社において、2022年4月に放熱材料向け球状アルミナの生産設備が竣工し、本格稼働を開始するとともに、5月には半導体封止材向け充填用フィラーとして使用される球状シリカの生産能力を増強することも決定いたしました。当社は、このように「環境・エネルギー」分野において、国内・海外生産拠点の一層のスペシャリティー化を推進しております。

次に、「ヘルスケア」分野では、当社が東京大学医科学研究所の藤堂具紀教授とともに商用製剤生産技術の開発を進めてきたがん治療用ウイルスG47Δ(デルタ)製剤「製品名;デリタクト®注」(一般名:テセルパツレブ)について、2021年11月より第一三共株式会社が国内での販売を開始いたしました。当社は同社より委託を受けて本製剤の製造を担ってまいります。また、五泉事業所・新潟工場に、インフルエンザワクチンの原液を製造する新棟が竣工し、2022年3月より稼働を開始しております。これにより、生産能力が倍増し、市場にいち早く多くのワクチンを供給できる体制を確立いたしました。さらに、同事業所・鏡田工場に、約110億円の戦略投資を行い、世界の感染症対策に貢献すべく抗原検査キットを含む検査試薬製品の生産能力増強およびデジタライゼーションによるコスト競争力強化を図ることも決定いたしました。

 2021年度は、引き続き新型コロナウイルスの影響を大きく受けた1年でした。さらに、2022年2月にはロシアによるウクライナへの侵攻もあり、世界的にサプライチェーンの混乱に拍車がかかりましたが、当社は、上述の通り、経営計画「Denka Value-Up」における取り組みを着実に推進した結果、期初の目標には及ばなかったものの、営業利益は2期連続で過去最高益を更新することができました。

2022年度はいよいよ経営計画「Denka Value-Up」の最終年度となります。今までの4年間で積み上げてきた成果を基盤として、2021年度より新たに取り組んでいる「3つのValue-Up」に引き続き注力してまいります。

1つ目は、「事業Value-Up」です。常にメガトレンドを意識し、「Denka Value-Up」の中核戦略である「スペシャリティー化」を、それぞれの事業分野において追求するとともに、事業ポートフォリオの最適化を推進いたします。

2つ目は、「環境Value-Up」です。環境負荷低減を経営の根幹と位置づけ、2030年に温室効果ガス排出量50%削減(2013年比)、2050年のカーボンニュートラル達成を目指しております。そのために、事業ポートフォリオ改革、製造プロセス革新、再生可能エネルギーの導入拡大等の施策を着実に進めてまいります。

3つ目は、「人財Value-Up」です。「仕事をすることにより成長が実感できる会社」を目指し、研修制度の充実化、職場環境の整備、ダイバーシティ推進等の施策を実施してまいります。

 

前述の通り、2022年度は経営計画「Denka Value-Up」の最終年度を迎えます。5年間の集大成として、最後の直線を全社が一丸となって走りぬくとともに、SDGsを羅針盤に「誰よりも上手な仕事で全ての人がより良く生きる世界をつくる、社会にとってかけがえのない企業」となることを目指してまいります。

 

※「デリタクト」は第一三共株式会社の登録商標です。

 

 

◇The Denka Value(企業理念)

The Denka Value(企業理念)は、最上位としての「Denkaの使命(Denka Mission)」と、グループ社員一人ひ
とりが行動する上での規範となる「Denkaの行動指針(Denka Principles)」から構成されます。

The Denka Valueは経営企画を含むすべての企業活動の上位概念であり、当社は、このThe Denka Valueを実践することで、社会からの期待と信頼に応えることを目指しております。

 

・Denkaの使命(Denka Mission)

 

化学の未知なる可能性に挑戦し、新たな価値を創造(つくる)ことで、社会発展に
貢献する企業となる。

 

  *コーポレートスローガン:「できるをつくる。」「Possibility of Chemistry.」

 

   ・Denkaの行動指針(Denka Principles)

 

わたしたちは、
一、「誠意」と「チャレンジ精神」で、果敢に難題に挑みます
一、「未来」に向け、今何をすべきかを考え、行動します
一、「創造」溢れるモノづくりを通して、お客様へ新たな価値と感動を届けます
一、「環境」に配慮し、「安全」優先の明るい職場をつくります
一、「信頼」される企業としての誇りを持ち、より良い社会作りに貢献します

 


 

 

(ご参考)
経営計画「Denka Value-Up」 ~Specialty-Fusion Companyを目指して~
 
 2017年11月、デンカは2018年度から2022年度までの5ヵ年の経営計画「Denka Value-Up」を策定いたしました。
 前経営計画「Denka100」では、「生産体制の最適化」「徹底したコストの総点検」「成長ドライバーへの集中と次世代製品開発」の3つの成長戦略を立て、重点分野である「健康、環境・エネルギー、インフラ」を中心に、計画前と比べて着実に成長への種まきとして積極的な投資を行い、個々の事業の収益力向上の基盤固めを進めてきました。
 新経営計画「Denka Value-Up」では、企業の成長持続に必要不可欠な「安全最優先」「環境への配慮」「人財の育成・活用」「社会貢献」を基本精神に掲げ、グローバルで飛躍的な成長を遂げるための新たな成長戦略により、当社が「スペシャリティーの融合体“Specialty-Fusion Company”」となり、持続的且つ健全な成長を目指します。

 また、2021年5月には「Denka Value-Up」の中間レビューを行い、今後2年間で注力する取り組みと、2022年度の数値目標を決定いたしました。

 

 

経営計画「Denka Value-Up」中間レビューの概要

 

<数値目標>

・営業利益・利益率・スペシャリティー化率:


 

<スペシャリティーの定義>

 ・ESGの取り組みに整合し、独自性と高付加価値を兼ね備え、外部環境に左右されにくくトップクラスのシェ

 アを有する事業、及び近い将来その可能性を有する事業。

・なおヘルスケア、環境・エネルギー、高付加価値インフラの重点3分野に加え、18年度より機能樹脂を中心とし

た基盤事業のスペシャリティー化を図っている。

 

<利益配分>

・投資:戦略投資を積極的に推進

5カ年計画:2,000億円(戦略投資750億円・通常投資1,250億円)

5カ年見込:2,100億円(戦略投資850億円・通常投資1,250億円)

 

・株主還元:2021年度、2022年度も当初計画通り「総還元性向50%を基準とする」を継続

※総還元性向=(配当+自己株式取得)÷連結当期純利益

 

 

 <当社のありたい姿実現に向けた今後2年間の取り組み>

デンカでなければ出来ない方法で、SDGs を羅針盤とした様々な社会課題の解決に挑戦し、社員とステークホルダーが誇りに思い、「社会にとってかけがえのない存在」となる、その第一歩として、3つの「Value-Up」の取り組みに注力する。

 

Ⅰ.事業Value-Up
「誰よりも上手にできる仕事への集中」によるポートフォリオ変革と、更なるスペシャリティー化の実現

 

(1) ポートフォリオ変革

① スペシャリティー事業の成長加速

環境・エネルギー

・xEV、5G、半導体、再生可能エネルギー関連市場への拡販

・時代を先取りした新しい製品群の開発に注力

ヘルスケア

・新興・再興感染症対策への積極的な貢献

・遺伝子検出による診断、診療分野のデジタル化対応

高付加価値インフラ

・海外展開・新規製品開発・不採算製品の抜本的改革加速

・引き続き重点分野として位置付ける為の新たな成長軌道へ

 


 ② 基盤事業のスペシャリティー化・コモディティー事業の位置付け再定義
 再構築が必要な事業については、残り2年間で確実にポートフォリオ変革の目途を付ける。

 

(2)革新的プロセス

生産プロセス改革

・新規プロセス開発、目視検査の自動化、ロボット導入

・ビッグデータ解析による操業安定化(異常予知検知等)

研究開発プロセス改革

・DX 全社展開の鍵となる研究開発支援システムの構築

・マテリアルインフォマティクスの本格的活用

業務プロセス改革・
働き方改革

・新しい働き方実現への会議オンライン化、書類・決裁のデジタル化

・生産・研究現場の創造的業務への転換を目指した3K職場の撤廃

 

 

Ⅱ.環境Value-Up
 経営の根幹に環境経営を位置付け、温室効果ガス排出量2030年度に50%削減(2013年度比)、2050年度カーボンニュートラル実現を追求

 

<取り組み>
① ポートフォリオ変革
② クリーンエネルギー利用拡大や高効率ガスタービン発電の導入
③ 環境貢献製品や環境負荷低減技術
④ CCUS(二酸化炭素の回収・貯留・有効利用技術)の開発と実装展開
⑤ ケミカルリサイクル技術
⑥ 製品ライフサイクル(LCA)全体の温室効果ガス排出量削減

 

Ⅲ.人財Value-Up
 人財教育、ダイバーシティ、健康などの人財戦略を最重要と位置付け、社員が働きがいや仕事を通じた成長を実感出来る企業に

 

<取り組み>
① 「スペシャリティー人財の確保」、「ダイバーシティの推進」「働き方改革」のKPI 設定
② 評価・採用・育成・労働環境等の制度改革
③ 将来の経営幹部候補早期育成への人財教育と大胆な組織・人財の新陳代謝
④ 健全な成長に向け、社員が存分に能力を発揮できる環境づくり等、健康経営の推進

 

※文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

 

 

 

(株式会社の支配に関する基本方針)

当社は、当社の企業理念である“The Denka Value”のもと、収益力や業容の拡大による事業基盤の強化を図る一方、社会の信頼と共感を得られる企業であり続けようとする姿勢をさらに徹底することで、中長期的な観点から当社の企業価値ひいては株主共同の利益を向上させるよう努めております。

また、この基本方針のもと、経営計画「Denka Value-Up」(2018年度から5年間)を策定し、持続的かつ健全な成長の実現に取り組んでおります。

当社は、いわゆる買収防衛策は定めておりませんが、当社の企業価値を毀損するおそれのある大量買付けや、これに応じるか否かを判断するために株主の皆様に十分な情報と時間が提供されない大量買付けなどについては、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を損ねることのないよう、法令等、金融商品取引所の規則などが認める範囲内において適切に対応してまいります。

 

 

 

 

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