(1)業績等の状況の概要
①財政状態の状況
(資産)
流動資産は、前事業年度末比4,989百万円の増加となりました。その主な要因は、売上債権3,991百万円、棚卸資産2,770百万円が増加した一方、現金及び預金1,225百万円が減少したことによるものです。
固定資産は、前事業年度末比133百万円の増加となりました。その主な要因は、設備投資による固定資産の取得1,985百万円に対し、減価償却費1,703百万円及び圧縮記帳159百万円を計上したことによるものです。
(負債)
負債は、前事業年度末比4,385百万円の増加となりました。その主な要因は、仕入債務4,099百万円、短期借入金2,300百万円が増加した一方、長期借入金1,500百万円が減少したことによるものです。
(純資産)
純資産は、当期純利益を計上したこと等により前事業年度末比737百万円増加の13,360百万円となり、自己資本比率は34.2%となりました。
②経営成績の状況
当事業年度における二次電池業界は、世界各地で急速に強まっている温室効果ガス削減の動きに各国の補助金政策の後押しもあり、EV市場は急拡大しております。そんな中、大手電池メーカーが積極的な増産投資の一方、自動車メーカーの内製化志向の強まりや異業種の参入など業界全体のサプライチェーン変革の動きが活発化しております。また、EVの市場拡大が続く中、電池の資源材料は需要の拡大や今後の供給懸念もあり高騰する動きをみせております。
このような市場環境の中、当社といたしましては、数年かけてインフラや組織人員含め増産対応の生産体制整備を進めてきており、現事業所で計画していた設備投資はほぼ完了しております。今後、顧客の需要増加時期に応じて順次生産稼働させるべく準備しております。
足もとの業績をみると、販売面において車載用途は前年後半より新型コロナウイルス感染症の影響からの需要回復と市場伸長に伴い、総じて増加基調で推移したものの、半導体不足による自動車の生産調整の影響もあり、まだ本格的な回復には至っておりません。また、第3四半期後半から期末にかけては中国向け一部顧客からの受注が急減しており、今後の需要動向においても不透明な状況となっております。コスト面では新規設備稼働や人員増加に伴い、減価償却費や労務費を中心に増加し、採算面においては未だ非常に脆弱な状況であります。
このような状況下において、当社製品の主原料であるニッケル及びコバルトの国際相場が、世界的な電池需要の拡大や今後の供給懸念、地政学リスクも加わりニッケルが急騰するなど、いずれも上昇基調で推移したことから、それらが反映される売上高が増加し、利益で大幅な増益要因となっております。
以上の結果、売上高40,531百万円(前事業年度比78.1%増)、営業利益825百万円(前事業年度は営業損失20百万円)、経常利益769百万円(前事業年度は経常損失30百万円)、当期純利益は731百万円(前事業年度は当期純損失414百万円)となりました。
主要な製品用途別の販売数量の概況は以下のとおりです。なお、当社は二次電池事業の単一セグメントであるため、セグメントごとに記載しておりません。
「リチウムイオン電池向け製品」
前事業年度比で48.1%の増加となりました。用途別の増減は次のとおりです。
・車載用途は、新型コロナウイルス感染症の影響からの需要回復と市場伸長に伴い、総じて増加基調で推移したものの、半導体不足による自動車の生産調整の影響もあり、まだ本格的な回復には至っておりません。また、第3四半期後半から期末にかけては中国向け一部顧客からの受注が急減しております。結果、前事業年度比で80.7%の増加となりました。
・民生用途は、最終製品の需要減少により前事業年度比で16.5%の減少となりました。
「ニッケル水素電池向け製品」
前事業年度比で17.4%の増加となりました。用途別の増減は次のとおりです。
・車載用途は、前事業年度に新型コロナウイルス感染症の影響によるHV需要の減少を背景に主要顧客からの受注が減少しましたが、足もとにおいては一定の需要が回復し、新規顧客への量産納入も開始したことから、前事業年度比で22.4%の増加となりました。
・民生用途は、市場縮小から数量自体が少量ですが、前事業年度比で93.2%の減少となりました。
(ご参考)
(ニッケル国際相場:円換算) (単位:円/kg)
|
4~6月平均 |
7~9月平均 |
10~12月平均 |
1~3月平均 |
2022年3月期 |
1,917 |
2,126 |
2,274 |
3,069 |
2021年3月期 |
1,324 |
1,525 |
1,681 |
1,883 |
(コバルト国際相場:円換算) (単位:円/kg)
|
4~6月平均 |
7~9月平均 |
10~12月平均 |
1~3月平均 |
2022年3月期 |
5,128 |
6,014 |
7,535 |
9,264 |
2021年3月期 |
3,659 |
3,527 |
3,663 |
5,096 |
※ ニッケル LME(ロンドン金属取引所)月次平均×TTS月次平均
コバルト LMB(ロンドン発行メタルブリテン誌)月次平均×TTS月次平均
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物は、前事業年度末比1,225百万円減少し、1,303百万円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローは次のとおりです。
営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権・棚卸資産の増加による運転資本の増加に対して未収消費税等の減少により、145百万円の収入(前事業年度は90百万円の支出)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出等により、2,201百万円の支出(前事業年度は7,768百万円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入による純増等により、794百万円の収入(前事業年度は8,687百万円の収入)となりました。
④生産、受注及び販売の実績
当社は二次電池事業の単一セグメントであるため、品目別に生産、受注及び販売の状況を記載しております。
(生産実績)
当事業年度における生産実績を品目別に示すと、次のとおりであります。
品目 |
生産高(千円) |
前期比(%) |
リチウムイオン電池向け製品 |
39,192,820 |
198.9 |
ニッケル水素電池向け製品 |
2,446,341 |
115.7 |
その他 |
197,379 |
371.2 |
合計 |
41,836,541 |
191.3 |
(注)生産金額は販売予定価額をもって示しております。
(受注実績)
当事業年度における受注実績を品目別に示すと、次のとおりであります。
品目 |
受注高(千円) |
前期比(%) |
受注残高(千円) |
前期比(%) |
リチウムイオン電池向け製品 |
39,486,971 |
203.4 |
2,398,354 |
271.2 |
ニッケル水素電池向け製品 |
2,342,075 |
108.1 |
94,958 |
83.5 |
その他 |
- |
- |
- |
- |
合計 |
41,829,046 |
193.8 |
2,493,312 |
249.8 |
(注)受注金額は販売予定価額をもって示しております。
(販売実績)
当事業年度における販売実績を品目別に示すと、次のとおりであります。
品目 |
販売高(千円) |
前期比(%) |
リチウムイオン電池向け製品 |
37,973,068 |
194.5 |
ニッケル水素電池向け製品 |
2,360,867 |
108.3 |
その他 |
197,379 |
18.7 |
合計 |
40,531,316 |
178.1 |
(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前事業年度 |
当事業年度 |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
パナソニック㈱ |
9,903,519 |
43.5 |
16,968,330 |
41.9 |
丸紅㈱ |
2,386,737 |
10.5 |
8,544,115 |
21.1 |
STM Co.,LTD. |
- |
- |
4,348,731 |
10.7 |
L&F Co.,LTD. |
2,513,267 |
11.1 |
- |
- |
(注)1.前事業年度のSTM Co.,LTD.への販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10未満となっているため記載を省略しております。
2.当事業年度のL&F Co.,LTD.への販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10未満となっているため記載を省略しております。
3.パナソニック㈱は、2022年4月1日付でパナソニックホールディングス㈱に商号変更しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する分析・検討内容は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
①財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容
当事業年度の財政状態の分析につきましては、「(1)業績等の状況の概要、①財政状態の状況」をご参照ください。
②経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(売上高)
当社販売製品の主原料となるニッケル及びコバルトの国際相場が上下に変動したことに加え、製品の販売数量が増加したため、売上高は前事業年度比78.1%増の40,531百万円となりました。
(売上原価)
上記主原料の国際相場の変動、製品の販売数量の増加のため、売上原価は前事業年度比79.6%増の37,531百万円となりました。
(売上総利益)
以上の結果、売上総利益は2,999百万円(前事業年度は1,859百万円)となりました。また、売上総利益率は7.4%(前事業年度は8.2%)となりました。
(販売費及び一般管理費)
販売費及び一般管理費は、前事業年度と比較して294百万円増加の2,174百万円となりました。なお、販売費及び一般管理費に含まれる研究開発費は642百万円(前事業年度は547百万円)となりました。
(営業利益)
売上総利益から販売費及び一般管理費を控除した営業利益は825百万円(前事業年度は営業損失20百万円)、売上高営業利益率は2.0%(前事業年度は△0.1%)となりました。
(営業外収益・費用)
当事業年度は、有利子負債にかかる利息から受取利息を差引いた純金利負担は77百万円(前事業年度は49百万円)となりました。営業外収益として、為替差益21百万円(前事業年度は為替差益29百万円)を計上いたしました。また、営業外費用として、シンジケートローン手数料5百万円(前事業年度は10百万円)を計上いたしました。以上の結果、営業外収益から営業外費用を差引いた金額は△56百万円となりました。
(経常利益)
以上の結果、営業利益に営業外収益・費用を加減算した経常利益は769百万円(前事業年度は経常損失30百万円)となりました。売上高経常利益率は1.9%(前事業年度は△0.1%)となりました。
(特別利益・損失)
当事業年度は、特別利益として、補助金収入200百万円、投資有価証券売却益3百万円を計上いたしました。
特別損失として、固定資産圧縮損159百万円、固定資産除却損3百万円を計上いたしました。
(税引前当期純利益)
経常利益から特別利益・損失を加減算した税引前当期純利益は809百万円(前事業年度は税引前当期純損失37百万円)となりました。
(当期純利益)
以上の結果、当期純利益は731百万円(前事業年度は当期純損失414百万円)となりました。売上高当期純利益率は1.8%、1株当たり当期純利益は22円50銭、自己資本当期純利益率は5.6%となりました。
なお、当事業年度の目標とする経営指標である経常利益の黒字化を達成しております。
③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(キャッシュ・フロー)
当事業年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)業績等の状況の概要、③キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
当社の運転資金需要のうち主なものは、原材料の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資によるものであります。
当社は、事業運営上必要な流動性と資金を安定的に確保するよう努めております。
また、事業活動に必要な資金の流動性を確保するため、取引金融機関と総額2,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております。(借入未実行残高1,200百万円)
設備投資の長期的な資金につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。
なお、当事業年度末における借入金の残高は14,600百万円、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は1,303百万円となっております。
(契約債務)
2022年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。
|
年度別要支払額(百万円) |
||||
契約債務 |
合計 |
1年以内 |
1年超3年以内 |
3年超5年以内 |
5年超 |
短期借入金 |
2,300 |
2,300 |
- |
- |
- |
長期借入金 |
12,300 |
1,500 |
3,000 |
3,000 |
4,800 |
(注)1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めております。
(財務政策)
当社は、運転資金及び設備投資資金の調達を行うため主要取引金融機関とシンジケートローン契約及び借入契約を締結しております。
・借入残高(運転資金の調達) 5行 1,500百万円(借入未実行残高 -百万円)
・借入残高(設備投資資金の調達) 7行 10,800百万円(借入未実行残高 -百万円)
・借入残高(設備投資資金の調達) 1行 1,500百万円(借入未実行残高 -百万円)
・コミットメントラインの借入実行残高 5行 800百万円(借入未実行残高1,200百万円)
④経営成績に重要な影響を与える要因についての分析
(棚卸資産)
当社は、「棚卸資産の評価に関する会計基準」を適用しており、将来需要及び市場環境の変化により評価損の計上が必要となる可能性があります。
(固定資産の減損)
当社が有する固定資産のうち、「固定資産の減損に係る会計基準」において対象とされるものについては、損益報告や経営計画などの企業内部の情報、経営環境や資産の市場価格などの企業外部の要因に関する情報に基づき、資産又は資産グループ別に減損の兆候の有無を確認し、企業環境の変化や経済事象の発生によりその帳簿価額の回収が懸念されているかなど、減損損失の認識を判定しております。
この判定により減損損失を認識すべきと判断した場合には、その帳簿価額を回収可能価額まで減損処理を行っております。事業計画や経営・市場環境の変化により、回収可能価額が変更された場合には、減損損失の金額の増加又は新たな減損損失の認識の可能性があります。
⑤重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されております。財務諸表の作成にあたっては、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、これらについては、過去の実績や現在の状況等を勘案し、合理的と考えられる見積り及び判断を行っております。ただし、これらには見積り特有の不確実性が伴うため、実際の結果と異なる場合があります。
なお、財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
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