なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度の我が国経済は、新型コロナウイルス(以下、「新型コロナ」という。)の感染拡大防止対策と社会経済活動の併存が常態化したことに加え、本年2月にはロシアのウクライナ侵攻により国際情勢の不安定感が広がり、予断を許さない状況が継続いたしました。国内製造業は、輸出関連産業を中心に総じて回復基調で推移しましたが、年度後半には、世界規模でのサプライチェーンの停滞や資源価格の高騰が起こり、企業業績を押し下げる要因となりました。また、個人消費は、一部で持ち直しの動きが見られたものの、依然として新型コロナが消費者の行動心理に影響を及ぼし、年度を通じて低調に推移いたしました。
このように外部環境が大きく変化する中においても、当社グループは、多様な事業領域から成る安定した収益基盤をベースに、さらなる成長に向けた構造改革や成長戦略を着実に実行してまいりました。
産業ガス関連事業においては、高い成長が見込まれるエレクトロニクス分野とインドにおける海外事業の拡大を図り、事業ポートフォリオの変革を進めたほか、ケミカル、医療、農業・食品関連事業においては、グループ会社の統合再編をはじめとした事業構造改革に取り組み、生産や販売体制等の全体最適化と今後の事業成長に向けた基盤整備を推進しました。また、新型コロナを契機に需要が拡大した感染症対策分野やエレクトロニクス分野はもとより、エネルギー、食品、物流などの各事業においても「ウィズコロナ」による市場の変化を捉えた取り組みが、持続的な事業成長の原動力となりました。さらに、カーボンニュートラルに向けた各種の実証事業やコロナ禍における医療提供体制の充実化など、社会課題に応えるソリューションの拡充に積極的に取り組みました。
また、当連結会計年度は、2019年度から2021年度までの3年間を実行期間とする中期経営計画「NEXT-2020 Final」の最終年度であり、その達成に向けた取り組みとともに、次世代の成長を見据えたグループ経営基盤の強化に注力しました。ガス製造・エンジニアリング・技術開発部門の組織改革や管理部門の体制強化を進めたほか、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により全社的な業務効率化を図り、収益基盤の強靭化が進展いたしました。さらに、中長期的な企業成長の牽引を海外に求めるグローバル戦略のもと、三井物産株式会社との戦略的提携による協業を開始するとともに、インド・北米における産業ガス・エンジニアリング分野を中心に事業推進体制の強化に取り組みました。これらの諸施策に加え、国内事業を牽引する中核会社として2020年10月に発足した地域事業会社3社は、コロナ禍から回復した需要の取り込みと統合再編による収益力の向上に取り組むとともに、農業・食品分野や環境物流分野のM&Aを実施し、地域のニーズに対応した新事業の拡大を進めました。
以上の結果、当連結会計年度における当社グループの売上収益は8,886億6千8百万円(前期比110.2%)、営業利益は651億7千4百万円(同127.2%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は432億1千4百万円(同157.9%)となり、全てのセグメントで売上収益、営業利益ともに前連結会計年度を上回り、過去最高を更新いたしました。また、売上高営業利益率も7.3%となり、全社的な業務効率化や事業の構造改革を背景に収益体質の向上が進みました。
また、中期経営計画「NEXT-2020 Final」の最終年度における業績目標との比較では、売上収益1兆円は未達となったものの、営業利益600億円、親会社の所有者に帰属する当期利益370億円の目標値を大幅に上回る結果となりました。
セグメントの業績及び概況につきましては、次のとおりであります。
<産業ガス関連事業>
当セグメントの売上収益は1,945億6千8百万円(前期比104.8%)、営業利益は215億5千8百万円(同103.3%)となりました。
事業全体の業績としては、エレクトロニクス向けのガス供給や特殊ケミカル・機器販売が好調に推移したことに加え、インドでの産業ガス事業が高水準に推移したことで事業全体の収益力が底上げされ、業績向上に寄与しました。さらに、鉄鋼向けオンサイトガス供給に加え、国内製造業の生産活動が総じて回復基調で推移したことから各種産業ガスの需要も総じて回復し、順調に推移しました。
ガス事業では、エレクトロニクス向けガス供給が、主要顧客である国内半導体メーカーの設備投資と高稼働を背景に、好調に推移しました。鉄鋼向けオンサイトガス供給は、国内製造業の生産回復と鋼材輸出に伴う粗鋼生産の増加により、ガス販売数量も増加しました。ローリー・シリンダーガス供給は、電子部品、化学、機械向けなどが堅調に推移し、前年度を上回る販売数量となりましたが、年度後半より電力料金の高騰により産業ガスの製造コストが増加した影響を受けました。炭酸ガスは、宅配向けドライアイス需要の増加を受け、順調に推移しました。
海外事業は、主要エリアであるインドにおいて、粗鋼増産に伴い鉄鋼向けオンサイトガス供給が高稼働を継続し、順調に推移しました。同時に、同国内の製造業が年度を通じて堅調に推移するとともに、年度前半に新型コロナの感染拡大による医療用酸素の逼迫化に対応したことで、ローリー・シリンダーによる産業・医療用ガスの外販事業も順調に推移しました。
機器・工事事業は、半導体メーカーの増産・増設投資に伴う周辺需要の獲得に注力し、関連工事や特殊ケミカル供給機器、ガス精製装置に加え、半導体製造装置向け熱制御機器などの販売が大幅に拡大しました。
<ケミカル関連事業>
当セグメントの売上収益は391億2千9百万円(前期比117.3%)、営業利益は35億2千9百万円(同177.2%)となりました。
当セグメントにおいては、2021年10月に事業統合により発足したエア・ウォーター・パフォーマンスケミカル㈱を主体に、電子材料を中核とした機能化学品事業への構造転換を進め、生産体制の効率化と開発・販売面の強化に取り組みました。事業全体の業績としては、新型コロナを契機として需要が急拡大した電子材料や精密研磨パッドの販売が増加したことに加え、基礎化学品分野の市況が前年度に比べ大幅に上昇したため、好調に推移しました。
エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル㈱の電子材料事業は、旺盛なエレクトロニクス関連需要が継続したことで、半導体封止材用の熱硬化性樹脂や機能性モノマーの販売が好調に推移しました。また、電子材料用途を中心に受託合成事業が拡大するとともに、過年度より進めてきた事業全体にわたる生産体制の最適化により収益改善が進展しました。基礎化学品事業は、原油価格の上昇に伴い、有機酸などの製品市況が高水準に推移し、好調に推移しました。機能材料事業は、農薬向けにキノン系製品の販売が順調に推移しました。
その他事業では、㈱プリンテックの高機能回路製品の販売が産業用ロボット向けに堅調だったことに加え、㈱FILWELの主力製品である精密研磨パッドの販売がデータセンター市場の伸展によるハードディスク需要の高まりを背景に、好調に推移しました。
<医療関連事業>
当セグメントの売上収益は1,951億7千万円(前期比104.7%)、営業利益は118億5千7百万円(同112.9%)となりました。
事業全体の業績としては、新型コロナの影響を大きく受けた前年度に対して、主力である病院向けビジネスの事業環境が年度を通じて回復基調で推移したことに加え、新型コロナをめぐる治療や感染防止対策、ワクチン接種といった医療ニーズの変化に対応し、医療現場の課題解決に資する各種提案にグループ総合力を発揮して取り組んだ結果、順調に推移しました。
設備事業は、新型コロナの影響で一時控えられていた手術室など病院設備の改修工事・保守点検が復調し、堅調に推移しました。医療サービス事業は、受託滅菌分野における新規顧客の獲得やSPD(病院物品物流管理)分野における資材調達の効率化により収益改善が進展しました。医療ガス事業は、手術件数の回復や新型コロナの治療に関わる医療用酸素の需要が増加するとともに、在宅医療事業も自治体向けに酸素濃縮装置のリース台数が増加しました。医療機器事業は、一酸化窒素吸入療法の症例数が増加しました。
衛生材料事業は、前年度のような特需はなくなったものの、マスクや手指消毒剤など定着化した感染対策製品の需要を取り込み、底堅く推移しました。その他の事業では、注射針事業は、ワクチン接種用注射針の販売が増加し、堅調に推移しました。また、デンタル分野も持分法適用会社である㈱歯愛メディカルにおいて感染対策製品の需要が継続するなどし、堅調に推移しました。
<エネルギー関連事業>
当セグメントの売上収益は615億9千4百万円(前期比116.0%)、営業利益は47億7千3百万円(同104.7%)となりました。
事業全体の業績としては、LPガスの販売単価が輸入価格の指標となるCP価格に連動して上昇を続け、灯油も同様に原油高を受け需要期の冬場に販売単価が上昇した結果、売上収益が拡大しました。また、利益面でも、輸入価格の上昇を適切に販売価格へ転嫁するとともに、IoTを活用した配送効率化など業務プロセスの高度化が寄与し、順調に推移しました。
LPガス事業は、巣ごもり需要が減少したことで家庭用の販売数量は微減となりましたが、工業用需要の回復と新規拡販により、LPガス全体の販売数量は増加しました。灯油は、価格上昇により消費者の節約志向が高まった影響がありましたが、適切な販売価格の対応と仕入調達の合理化を進めた結果、堅調に推移しました。機器・工事は、半導体不足に起因するガス給湯機器の品薄による影響を受けましたが、北海道の気候に対応したガレージ製品の販売が堅調に推移しました。ベトナムでのLPガス卸売事業は、年度後半からロックダウンによる影響で充填所の操業が制限されたことから、販売数量が減少しました。
天然ガス関連事業は、政府が発表した「2050年カーボンニュートラル宣言」を受け、顧客の脱炭素意識の高まりから燃料転換や供給機器の需要が増加し、北海道におけるLNG供給事業のほか、小規模LNG供給機器「Vサテライト」やLNGタンクローリーの販売が順調に推移しました。
<農業・食品関連事業>
当セグメントの売上収益は1,394億6千7百万円(前期比105.2%)、営業利益は57億1千7百万円(同141.9%)となりました。
事業全体の業績としては、飲料、スイーツ分野を中心に販売が回復するとともに、コロナ禍によって変化した「食」のニーズに対応し、市販用の商品開発と拡販に注力したことで、売上収益が拡大しました。また、製造・開発・販売面でのシナジー創出を目的として、グループ会社の統合再編により2021年10月に発足したエア・ウォーターアグリ&フーズ㈱が中心となり、生産・管理の効率化による収益改善に取り組みました。
農産・加工品事業では、ハム・デリカ分野は、市販用調理加工品の新製品が大手量販店に採用されるなど、ライフスタイルの変化に対応した商品開発に注力し、堅調に推移しました。スイーツ分野は、かねてより取り組んできた生産・物流面の収益改善が進展するとともに、巣ごもり需要や消費期限の長期化に対応した商品開発を通じて、量販店やコンビニエンスストア向けの販売が好調に推移しました。農産・加工分野は、天候不順により北海道産の農産物の収穫量が減少した影響を受けました。また、2021年11月より関西地区を主要エリアとして農産物直売所「産直市場よってって」を運営する㈱プラスを新規連結するとともに、子会社における土地売却益を計上しております。
飲料事業は、健康志向を背景に拡大した野菜系飲料や植物性ミルク飲料の生産受託が好調だったことに加え、2020年に導入した北海道・恵庭工場のPETボトル充填ラインが高稼働を継続したことも寄与し、前年度を上回りました。
その他の事業では、青果小売分野は、百貨店を中心とした店舗への来客数が回復せず、前年度並みとなりました。一方、農業機械分野は、更新やメンテナンスなどの底堅い需要を背景に堅調に推移しました。
<物流関連事業>
当セグメントの売上収益は584億4千1百万円(前期比109.7%)、営業利益は31億2千1百万円(同110.2%)となりました。
事業全体の業績としては、年度後半を中心に軽油価格の上昇や車体製造事業における車両の調達遅れによる影響を受けましたが、新型コロナを契機として需要が拡大した低温物流分野が堅調に推移するとともに、関東と北海道地区において自社物流ネットワークの構築を進めてきた結果、EC(電子商取引)に関わる幹線輸送分野の増加など、一般貨物の荷扱量が拡大しました。また、北海道地区における環境物流分野のM&Aによる新規連結効果も寄与し、順調に推移しました。
運送事業は、北関東と北海道に建設した物流センターの機能を活かした受注活動によって、ネット通販の大型受託案件を獲得するとともに、製材や建材を中心にフェリー航路におけるシャーシ輸送が順調に推移し、幹線輸送の荷扱量が増加しました。また、食品を中心とした低温物流分野の需要拡大を背景に自社倉庫の稼働率が向上したほか、2021年8月にM&Aを実施した北海道を事業エリアとする㈱リプロワークにおいて医療系廃棄物の取扱量が増加したことも収益拡大に寄与しました。
食品物流を中心とする3PL事業は、スーパーマーケットやコンビニエンスストア向けの荷扱量が堅調に推移するなか、コスト上昇を背景とした受託料金の適正化を継続しました。
トラック・ボディの設計・架装を行う車体事業は、トラック車両本体の生産遅れの影響を受け、前年度を下回りました。
<海水関連事業>
当セグメントの売上収益は461億7千5百万円(前期比112.7%)、営業利益は38億2千8百万円(同124.2%)となりました。
当セグメントにおいては、業務用塩や電磁鋼板用マグネシアなどのトップシェア製品を起点に環境、電力、食品、都市インフラ(水処理・下水管更生)など、海水から派生した多様な事業を展開し、着実に収益力を高めてきました。事業全体の業績としては、環境事業、マグネシア事業における需要回復に加え、新たに赤穂第2木質バイオマス発電所が稼働したことで順調に推移しました。
塩事業は、業務用塩や道路融雪用塩の販売が増加し、堅調に推移しました。なお、第4四半期よりエネルギーコストの上昇に対応するため、塩製品の価格改定を実施しました。また、食品事業は、環境に配慮したおにぎり用の海苔製品の販売がコンビニエンスストア向けに拡大しました。環境事業は、製鉄所向けを中心に水酸化マグネシウムの販売が回復、電力事業は、2021年1月より営業運転を開始した赤穂第2バイオマス発電所が安定稼働を継続し順調に推移しました。一方、都市インフラ事業は、水処理設備工事の着工遅れが生じた影響から前年度を下回りました。
マグネシア事業は、中国産原料の価格高騰や海上輸送費の上昇による影響を受けたものの、家電向けを中心としたヒーター用電融マグネシアや半導体需要の増加に伴うセラミック製品の販売数量が増加し、総じて順調に推移しました。
<その他の事業>
当セグメントの売上収益は1,541億1千9百万円(前期比127.0%)、営業利益は101億1千万円(同208.3%)となりました。
エアゾール事業は、巣ごもり需要を取り込んだ殺虫剤や模型用塗料の生産受託が高水準を継続しましたが、前年度に特需のあったアルコール除菌剤の減少と原油高を背景とした原材料価格の上昇を受けて、前年度並みの水準となりました。
情報電子材料事業は、世界的な半導体・電子部品の需要拡大を受けて、顧客における在庫積み増しの動きが継続し、国内外ともに好調に推移しました。
海外エンジニアリング事業における産業ガス関連機器分野は、液化水素タンクなど脱炭素化を背景とした設備機器の需要拡大に加え、炭酸ガス関連機器や水処理関連機器などの受注も増加し、順調に推移しました。高出力UPS分野は、メンテナンスをはじめとするサービス領域は堅調に推移したものの、主にアジアにおいて周辺国への移動や経済活動の制限が年度を通じて継続したため、進行中の工事遅延や新規プロジェクトの着工遅れが相次いだ影響を受けました。
電力事業は、2021年4月より営業運転を開始した福島県いわき市の木質バイオマス専焼発電所が安定稼働を継続したことから、売上・利益面ともに前年度を大幅に上回りました。
その他の事業は、半導体製造装置向けの製品販売が大幅に増加したOリング事業が、好調に推移しました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
(注) 金額は、販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
製品のほとんどが見込生産であります。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については、相殺消去しております。
(2) 財政状態
(資産の部)
総資産は、有形固定資産の増加などにより前連結会計年度末に比べて952億1千万円増加し、1兆220億3千1百万円となりました。
負債は、社債及び借入金の増加などにより前連結会計年度末に比べて477億4千3百万円増加し、6,021億7千4百万円となりました。
資本は、その他の資本の構成要素の増加及び親会社の所有者に帰属する当期利益の積み上げなどにより前連結会計年度末に比べて474億6千7百万円増加し、4,198億5千7百万円となりました。
以上の結果、1株当たり親会社所有者帰属持分は前連結会計年度の1,584.86円から1,744.42円に増加しております。また、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度の38.6%から38.7%となりました。また、親会社所有者帰属持分当期利益率は前連結会計年度の7.9%から11.5%となっております。
(3)キャッシュ・フロー
① 資本政策の基本的な考え方
当連結会計年度は設備投資の厳選、投資有価証券の売却に取り組み、フリーキャッシュ・フローの創出を意識した経営を行ってまいりました。今後については、2010年度から取り組んでいる長期成長ビジョン「NEXT-2020 1兆円企業ビジョン」を早期に達成するために、投資効率や財務バランスを考慮しつつM&Aや設備投資等の成長投資を積極的に継続する考えでおります。必要資金については、自己資金と有利子負債を中心に賄ってまいります。また、これまで以上に運転資本の効率化を推進することで営業活動によるキャッシュ・フローの創出にも取り組んでまいります。
中長期的には積極投資の回収が進むことに加え、事業規模の拡大からより収益性・効率性を重視した成長戦略を想定しております。従って、配当性向は親会社所有者に帰属する当期利益の30%を目標とした上で、親会社所有者帰属持分比率の向上とネットD/Eレシオの改善を目指し、安定的にフリーキャッシュ・フローを稼げる収益構造を構築していきます。
② キャッシュ・フローの状況
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期利益及び減価償却費などから法人所得税等の支払などを差し引いた結果、前連結会計年度に比べ50億2千8百万円収入が減少し、715億7千2百万円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出の減少や投資有価証券の売却による収入が増加したものの、投資有価証券の取得による支出が増加したことにより、前連結会計年度に比べ4億5千5百万円支出額が増加し、531億5千4百万円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金による収入が減少したものの、社債の発行による収入の増加や借入の返済による支出が減少したことなどにより、前連結会計年度に比べて142億6千6百万円支出額が減少し、66億2千2百万円の支出となりました。
(現金及び現金同等物)
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ135億7千万円増加し、595億5千4百万円となりました。
③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
「NEXT-2020 1兆円企業ビジョン」及び、その後のさらなる成長を実現するために必要な成長投資の資金については、事業で創出されるキャッシュ・フローを充当し、不足する分は銀行借入或いは社債発行による負債調達を基本としております。
手元資金については、資金効率を重視し事業継続に必要な適正水準を維持する方針としております。
なお、資金の機動的かつ安定的な調達に向け、取引銀行3行との間に総額200億円のシンジケーション方式によるコミットメントライン契約を締結しております。
成長投資については、経済活動の停滞が長期化した局面に備えて十分な財務の安全性を維持するため、今後のM&A投資及び設備投資は、事業環境の変化を慎重に見極めながら厳選していきます。
株主還元については、配当性向の目標を親会社所有者に帰属する当期利益の30%を目安としており、中長期的な成長のための戦略的投資等に必要な内部留保の充実に留意しつつ、将来にわたって業績に見合った安定的な配当を行うことを基本方針としております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績や現状を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、会計上の見積りに対する新型コロナの影響に関して、当社が現時点までに把握している情報をもとに、合理的であると判断した一定の前提に基づいております。翌連結会計年度の事業環境については、新型コロナウイルスの感染拡大状況は悪化と改善を繰り返し、依然として社会経済活動への影響は避けられない見込みであります。また、ウクライナ情勢による地政学的リスクの顕在化が世界経済全体に悪影響を及ぼしており、エネルギー価格や原材料、物流コストの高止まりに加え円安基調の継続やサプライチェーンの混乱など不透明な経済環境が当面の間継続することを仮定しております。その前提に基づき、当連結会計年度において会計上の見積りを行った結果、当連結会計年度における連結財務諸表に及ぼす影響は軽微なものと判断しております。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記」の「3.重要な会計方針」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が連結財務諸表における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
① 非金融資産の減損
当社グループは決算日において、棚卸資産及び繰延税金資産を除く非金融資産が減損している可能性を示す兆候があるか否かを判定し、減損の兆候が存在する場合には当該資産の回収可能価額に基づき減損テストを実施しております。のれんは償却を行わず、減損の兆候の有無にかかわらず年に一度、又は減損の兆候がある場合はその都度、減損テストを実施しております。資産の回収可能価額は資産又は資金生成単位の処分コスト控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い金額としており、資産又は資金生成単位の回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には、 当該資産は回収可能価額まで減額し、減損損失を認識しております。使用価値の算定に際しては、資産の耐用年数や将来キャッシュ・フロー、成長率、割引率等について一定の仮定を用いております。
これらの仮定は過去の実績や当社経営陣により承認された事業計画等に基づく最善の見積りと判断により決定しておりますが、事業戦略の変更や市場環境の変化等により影響を受ける可能性があり、仮定の変更が必要となった場合、認識される減損損失の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
② 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は、税務上の繰越欠損金、繰越税額控除及び将来減算一時差異のうち、将来の課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しております。繰延税金資産は毎決算日に見直し、税務便益の実現が見込めないと判断される部分について減額しております。
当社グループは、将来の課税所得及び慎重かつ実現性の高い継続的なタックス・プランニングの検討に基づき繰延税金資産を計上しており、回収可能性の評価に当たり行っている見積りは合理的であると判断しておりますが、見積りは予測不能な事象の発生や状況の変化等により影響を受ける可能性があり、実際の結果が見積りと異なる場合、認識される費用及び計上される資産に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(5) 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、「革新=イノベーションの実行」を基本コンセプトに据えた3カ年中期経営計画「NEXT-2020 Final」において、下記の指標等を主要な目標として取り組んでおりました。
今後の見通しにつきましては、新型コロナの感染拡大状況は悪化と改善を繰り返し、依然として社会経済活動への影響は避けられない見込みであります。また、ウクライナ情勢による地政学的リスクの顕在化が世界経済全体に悪影響を及ぼしており、エネルギー価格や原材料、物流コストの高止まりに加え、円安基調の継続やサプライチェーンの混乱など、不透明な経済環境が当面の間継続することが見込まれます。
当社グループでは、こうした変化が激しく、先行き不透明な経済環境に対応しながら、将来にわたって持続的な企業成長を実現するため、当社グループが展開する多様な事業領域と、気候変動影響や超高齢化社会の進展などの世界的な社会課題を踏まえ、「地球環境」と「ウェルネス(健やかな暮らし)」という2つの成長軸を定めました。また、本年4月1日付をもって、この2つの成長軸に沿って、従来の社内カンパニーと事業部門を4つの事業グループと12の事業ユニットに再編するとともに、コーポレート部門のグループ経営戦略機能を強化するための組織改革を実施いたしました。過年度までに体制を整備した地域事業会社とエンジニアリング・技術開発部門も併せて、当社とグループ会社群がより一体となった経営体制に移行することによって、M&Aを通じて拡大したグループ経営資源の最適化を図るとともに、事業間の枠組みを越えたシナジーの創出に取り組み、さらなる収益力の強化と次世代の成長を牽引する新事業の創出を進めてまいります。また、事業戦略と人材戦略は両輪であることから、グループ人材の流動化や社員の自立的なキャリア形成を促進する人事制度改革にも取り組んでいきます。さらに、当社グループのサステナブルビジョンである「地球、社会との共生による循環型社会の実現」を目指し、さらなるCO2排出量の削減や地産地消による再生可能エネルギー供給モデルの確立などに取り組んでまいります。
今後の事業戦略としましては、「国内は収益力強化、海外は成長を牽引」を基本方針とし、引き続き積極的なM&Aや設備投資を実施してまいります。海外事業は、インド・北米における産業ガス供給事業を重点領域として、長年築き上げてきたガス供給に関わるエンジニアリング力や三井物産株式会社とのアライアンスを活かし、積極的な事業拡大を進めてまいります。国内事業は、新組織である4つの事業グループが技術によるイノベーションを基軸とした事業間シナジーを追求し、時代の潮流を捉えた新たな成長を目指すとともに、地域事業は、当社グループの多様な事業領域と地域に密着した事業基盤を活かし、地域の課題解決に貢献する新事業の創出とさらなる収益力の強化に取り組んでまいります。
また、事業全般において徹底した原価低減に取り組みつつ、電力料金の高騰により製造コストが増加した産業ガスをはじめ、ケミカル、物流、加工食品、塩、工業用マグネシアなどの事業領域においても、世界的な原材料や燃料価格の上昇に対応した価格改定の取り組みを遅滞なく実行してまいります。
今後の事業環境とこうした状況を踏まえ、次期の業績見通しにつきましては、売上収益1兆円、営業利益700億円、税引前利益680億円、親会社の所有者に帰属する当期利益440億円を見込んでおります。
※1 親会社所有者帰属持分当期利益率
(親会社の所有者に帰属する当期利益÷親会社の所有者に帰属する持分(期首期末平均))
※2 資産合計税引前利益率 (税引前利益÷資産合計(期首期末平均))
※3 新しい中期経営計画につきましては、本年7月に当社ホームページ等において公表を予定しております。
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