課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループの経営理念は、次のとおりであります。

「創業者精神を持って、空気、水、そして地球にかかわる事業の創造と発展に、英知を結集する」

当社グループの事業の原点は、社名に冠した「空気」と「水」であり、このかけがえのない地球の資源を活かして事業を創出し、社会や人々の暮らしに貢献していくことが当社グループの使命であります。当社グループは、この経営理念の下、目まぐるしく変化を続ける経営環境の中でグループの総合力を発揮し、社会の発展に役立つ多種多様な製品・サービスを提供する企業であり続けることを目指しております。

 

(2) 中長期的な経営戦略

2030年に向けた目指すべき経営の方向性として、「地球の恵みを、社会の望みに。」をパーパスと定義した上で、新たに「地球環境」と「ウェルネス」の2つの軸を設定しました。今後当社グループは、グループの強みである事業・技術・人材の多様性を活かし、シナジーを創出することで、経済価値と社会価値の両面から企業価値を高め、持続可能な成長を目指していきます。


 

 

(3) 経営環境、目標とする経営指標及び対処すべき課題

当社グループを取り巻く事業環境は、新型コロナの感染拡大状況が依然として社会経済活動に影響を及ぼすとともに、ロシアのウクライナ侵攻により国際情勢の不安定感が広がり、エネルギー価格や原材料、物流コストの高止まりに加え、円安基調の継続やサプライチェーンの混乱など、不透明な経済環境が当面の間継続すると見込まれます。

このような事業環境のもと、将来にわたって持続的な企業成長を実現するため、当社グループが展開する多様な事業領域と、気候変動影響や超高齢化社会の進展などの世界的な社会課題を踏まえ、2030年に向けた事業構想として、「地球環境」と「ウェルネス(健やかな暮らし)」という2つの成長軸を定めました。

この2つを基軸として、「国内は収益力強化、海外は成長を牽引」という成長戦略を着実に実行し、これまで以上にダイナミックな企業成長を目指します。

 

 

成長戦略

(国内戦略)

国内事業においては3つの地域事業会社が要となり、顧客に密着した全国各地の強固な事業基盤と、当社グループが展開する多種多様な商品・サービスの総合力を駆使し、グループシナジーを最大限に発揮します。その結果、既存事業の深耕による収益力の強化と、地域の課題解決に貢献する新規事業を創出します。

地元の自治体や企業、地域住民のニーズをくみ取り、新たなソリューションを提供することで、地域を支え、地域とともに生きる会社を目指します。

 

(海外戦略)

海外事業ではインドと北米を重点エリアに設定し、三井物産株式会社とのアライアンスも活かしながら、技術やビジネスモデルで強みを発揮できる産業ガスおよび関連機器・エンジニアリング分野で基盤を強化します。

インドにおいては、経済発展に伴う旺盛な鉄鋼需要を背景に、製鉄所向け大型オンサイトガス供給事業を中核とする成長戦略を推進するとともに、ガス製造プラント・充填所などの拠点を拡充し、産業ガスおよび医療用酸素の供給事業も強化します。

北米においては、産業ガスの貯蔵・輸送に係る低温機器の製造・販売やエンジニアリング事業のほか、現地ガスディーラーと連携した産業ガス供給事業への展開を視野に入れた取り組みを進めます。また、脱炭素社会に向けて水素需要が拡大しており、水素関連事業の拡大にも注力します。

 

グループ一体経営の推進と全体最適の実現

当社グループは、本年4月1日付をもって全社的な組織改革を実施し、「地球環境」と「ウェルネス」の2つの成長軸に沿って、当社グループの多様な事業領域を、4つのグループと12のユニットに再編するとともに、当社とグループ会社群がより一体となった経営体制に移行しました。

 

(新たな成長に向けた事業組織の構築)

4つのグループは、特に技術によるイノベーションを基軸とした事業間シナジーを追求し、12のユニットは、傘下の事業会社群に関わる成長戦略の策定と経営資源の最適配分を行い、当社と事業会社群が一体となった「事業ユニット経営」を推進し、収益力の強化と新規事業の創出を推し進めます。


 

(グループ戦略機能を高めた強いコーポレート組織の構築)

コーポレート部門においては、グループ全体の経営戦略策定と経営資源の最適配分機能を強化し、新規事業の育成、データ経営の推進、事業のDX推進、物流改革、人材活用・育成などの観点から事業部門を主導し、事業の変革と成長を推進します。

 

(技術統括部門によるグループ技術力の向上)

この度の組織改革に先行して設置したグループテクノロジーセンターとエンジニアリングセンターは、グループの研究開発とエンジニアリングの技術資源に横串を入れ一元化することで技術力の向上を図り、新規事業の創出と海外展開の拡大に向けた専門人材の育成を推進します。

 

サステナブル経営の推進とESGの取り組みの加速

当社グループの事業活動は、空気や水などの地球に存在する資源を源泉としており、地球環境に対して持続可能なものでなくてはなりません。加えて、社会環境が大きく変化する中、事業活動を通じて提供する社会価値をより重視したサステナブル経営が不可欠であり、当社はその推進により、当社のサステナブルビジョンである「地球、社会との共生による循環型社会の実現」を目指します。

 

ESGの取り組みとして、環境面では、脱炭素社会の実現に不可欠なCO2排出量削減に向けた取り組みを加速します。

当社グループは、2030年度には2020年度対比でCO2排出量を30%削減する目標を設定するとともに、2050年にはCO2排出量を実質ネットゼロとするカーボンニュートラルの実現を目指します。そのために、設備の更新や生産性の改善などによる省エネ対策を講じながら、再生可能電力への切り替えを検討するほか、CO2回収やバイオガスエネルギーなどの技術開発や事業実証も進めます。また2021年8月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明しており、その枠組みに沿った形で情報開示を進めます。

社会面では、特にHR(企業における人的資源の活用)の取り組みを強化し、これまで以上に自主自立の従業員が育つ風土を醸成します。事業戦略と人事戦略は事業の両輪であり、新しい事業や組織を支えるため、グループ人材の流動化や社員の自立的なキャリア形成を促進する人事制度改革にも取り組みます。また、引き続き、若手管理職の早期登用、女性管理職やグローバル人材の増加といったダイバーシティにより、組織力の向上に努めます。

ガバナンス面においては、独立社外役員が構成員の過半数を占める指名・報酬委員会の設置を予定するなど取締役会の実効性を一層向上させる取り組みを進めます。また、当社グループの海外展開にあわせて、海外子会社におけるグループガバナンスの強化を図ります。

 

 

なお、各セグメントの対処すべき課題は、次のとおりであります。

 

国内産業ガス関連事業においては、国内における各種コストの上昇や大規模自然災害の発生が増加する中での安定供給体制の構築が課題となっております。そのような事業環境の中、事業の拡大と収益確保を図るため、当社グループでは、その課題に対して、継続して推進してきた高効率小型液化酸素・窒素製造装置「VSU」と貯蔵・物流拠点の全国分散配置による安定供給インフラネットワークの最大活用を進めるとともに、ガス充填所の新設や更新など製造・供給インフラの拡充により販売の拡大を図っております。なお、足元では、産業ガスの製造に必要となる電力のコスト上昇が収益を圧迫する要因となるため、価格改定を行っていきます。また、さらなる拡大が期待される半導体市場を中心としたエレクトロニクス関連事業と、インドを中心とした海外での産業ガス関連事業を今後の成長領域として位置付け、事業ポートフォリオの変革を進めております。国内の半導体メーカーの増産・増設に対応したガス供給及び関連機器・工事の販売拡大、インドにおいては、ガス製造プラントのエンジニアリング技術を基軸に、鉄鋼向けオンサイト事業を拡大するとともに、産業・医療用ガスの外販事業も拡充し、事業基盤の強化を図っております。

 

ケミカル関連事業においては、電子材料を中心とした機能化学品事業への構造転換を進めております。その中核的な取り組みとして、2021年10月に当社の電材開発事業部と当社グループの川崎化成工業㈱ならびに大東化学㈱を統合し、新会社「エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル」を発足させました。同社を中心として、基礎化学品、食品化学、医農薬中間体を含む化学品事業全般において、超スマート社会・循環型社会に向けた需要の変化を先取りすべく、開発体制の強化と生産・物流体制の統合を図り、さらなる成長を目指しております。

 

医療関連事業においては、医療ガスや医療機器を中心とした「高度医療」分野から、デンタルや衛生材料といった「くらしの医療」分野に至るまで、多様な事業領域による総合力を活かした新しい医療の形を追求しております。急性期病院の減少や医療費削減の圧力等により、医療用ガスや医療機器事業が大きく拡大することは見込みにくい状況でありますが、在宅医療や急性期治療後の回復期分野など市場成長が見込まれる事業領域において、地域事業のネットワークと多様な商材・技術を活用し、さらなる事業拡大を図っていきます。また、コロナ禍を経て、医療機関における感染防止対策のニーズが高まるとともに、社会全体でマスクの着用や手指消毒などの習慣が定着化しました。衛生材料や口腔ケア製品などの商材の充実化を図り、拡大した需要に対応していきます。さらに、新規事業として、歯髄幹細胞を活用した歯髄再生事業についても、事業化に向けて引き続き取り組んでまいります。

 

 

エネルギー関連事業においては、国内のLPガス事業は中長期的にLPG単位消費量の低下と配送業務にかかわる人材不足への対応を課題としており、IoTを活用した自動検針システム等を導入することで、配送や検針業務の効率化とともに、より顧客が安心できるサービスを提供していきます。また、脱炭素・低炭素化に向けた社会ニーズが高まる中、LNG関連機器の販売や液化バイオメタンなどの新たなエネルギー供給モデルの確立に注力していきます。 

さらに、人口増加・経済成長の著しいASEANでは今後も市場の拡大が見込まれており、ベトナムにおいては、日本式の安全性に優れた供給技術を現地に適した方法で普及させることで、LPガス事故の減少と安全な生活の実現に貢献していきます。

 

農業・食品関連事業においては、新型コロナの影響で外食や観光産業の停滞が続いているため、業務用冷凍・加工食品の本格的な需要回復が未だ道半ばの状況である一方、宅配、オンライン販売のように外食から中食への需要の転換が急速に進みました。こうした需要の変化とそれに伴う顧客の多様なニーズに応えるため、事業領域の多様性と商品開発力を活かして、事業の拡大を進めてまいります。農産加工分野では、相次ぐ天候不順や農業の担い手不足を背景に、原料野菜の安定調達力を高めることが重要な課題となっており、産地の分散化や契約栽培農家との関係強化を進めております。また、足元の事業環境としては、原材料のコストが上昇しているため、生産・物流面のさらなる効率化とともに、製品価格の改定に取り組んでいきます。

 

物流関連事業においては、引き続き、業界全般におけるドライバー不足と人件費上昇という課題がある中、今後も市場成長が見込める低温物流領域を中心に、自社物流拠点ネットワークの拡充、倉庫内でのICTやAI導入による作業の省力化と合理化を図り、荷物の小ロット化などの多種多様なニーズに応えられる体制づくりを推進しております。また、足元の事業環境としては、軽油価格の上昇が収益を圧迫する要因となっているため、そのコスト上昇に対応した料金適正化に取り組んでいきます。

 

海水関連事業においては、人口減少や減塩志向を背景に国内の塩需要が減少する中、技術開発力の強化と海水事業のさらなる深耕、環境分野での社会貢献等を喫緊の課題として取り組んでおり、老朽化した上下水道管の更新などを通じて、人の生活に不可欠な水の安全・衛生を守るための事業を引き続き展開していきます。また、製塩工程において必要となる熱源の一部に石炭を利用しておりますが、昨年後半から石炭価格が上昇し収益を圧迫する要因となっているため、塩製品の価格改定に取り組んでいます。

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