研究開発活動

5【研究開発活動】

当社グループ(当社及び連結子会社)では、「進取と共創。ガスで未来を拓く。The Gas Professionals」を企業理念として、産業ガス事業の拡大を進め持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。

技術開発において、独自のガステクノロジーを基盤とした、ガスアプリケーション、エレクトロニクス、ガス分離精製、医療・ライフサイエンス、ファインマテリアル、環境、先端技術分野に向けた新商品・新技術の開発に取り組むことで収益拡大に貢献しています。またオープンイノベーションによる海外を含めたベンチャー企業との事業提携を通じ、成長分野における先端技術の取り込みと、コア技術を最大限に利用した商材開発を促進しています。

当連結会計年度に支出した研究開発費の総額は3,569百万円であり、その内訳は「日本ガス事業」に2,872百万円、「米国ガス事業」に659百万円、「サーモス事業」に37百万円となっております。主な技術開発活動の概要は次のとおりです。

※研究開発費には消費税等を含んでおりません。

 

〔日本ガス事業〕

日本ガス事業においては、大陽日酸株式会社つくば事業所、山梨事業所、SIイノベーションセンター及び京浜事業所の4拠点が連携して技術開発を実施しています。事業部門と開発部門の連携を強化し、工業ガスビジネス、エレクトロニクスガスビジネス、プラントビジネス、メディカルビジネス、新規事業開発に向けた基盤事業を支える技術開発を推進しています。カーボンニュートラルについてはグループ共通の重点課題として取り組んでいます。

 

カーボンニュートラルに向けた取り組み

当社グループが所有する酸素燃焼技術をベースに、カーボンフリー燃料を利用する新たな酸素燃焼技術を開発しカーボンニュートラル社会の実現に貢献します。

・カーボンフリー燃料である水素ガスに注目し、工業炉分野でのCO2排出削減への貢献に取り組んでいます。数値シミュレーションと小型バーナでの実験に基づいて、天然ガス専焼から天然ガスと水素の混焼、水素専焼と燃料を変えても十分に安定した火炎を得られることを実証し、550kW規模の水素-酸素バーナを開発しました。

・カーボンフリー燃料であるアンモニア(NH3)を用いた溶融・球状化技術を、大陽日酸株式会社が球状シリカメーカーである株式会社アドマテックスと共同開発しました。アンモニア-酸素燃焼を用いることで、カーボンを含まない高品質な球状シリカの製造を可能にすると共に、製造プロセスにおけるCO2排出削減に貢献できることを示しました。

・国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「燃料アンモニア利用・生産技術開発/工業炉における燃料アンモニアの燃焼技術開発」に参画し、アンモニア-酸素燃焼技術の開発を進めています。

工業ガス分野

産業ガスの使用に関する様々な工業製品を開発しています。

<溶接技術>

・配管の自動溶接に関する市場ニーズに対応し、配管溶接倣い装置「サンアーク XZ スライダー」を大陽日酸株式会社と日酸TANAKA株式会社が共同で開発し、販売を開始しました。TIG溶接でも板厚10mm程度かつ開先なしのワンパス溶接が可能な「サンアーク DS-TIG アドバンス溶接トーチ」のオプション機器として、配管自動溶接におけるX方向とZ方向のズレに同時に追従できる倣い機能によって、エルボ配管の施工を含めた多種多形状の回転管溶接施工を自動化し、工数や消耗材の削減、回転管溶接の効率化への貢献を目指します。

<低温利用技術>

液化窒素の冷熱を利用した機器について新機種を追加しました。

・低温反応制御システムの新シリーズとして、従来機(-90℃)より低い-120℃で、かつ±2℃の高精度で制御できる新装置「クールマイスターEX」を商品化しました。不活性な液体冷媒を安定的に循環供給可能なシステムであり、従来の化学合成分野のみならずエレクトロニクス分野など広い分野で利用いただけます。

・金属熱処理に用いられるサブゼロ処理装置の新商品を上市しました。熱入れした鋼材を0℃以下に急速冷却することで金属組織を均一化することができ、経年劣化の抑制や硬度・耐摩耗性の向上の効果があります。液化窒素を冷媒とした当社グループのサブゼロ処理装置のラインアップに、自動搬送機器と組み合わせられる「ストレートスルー型サブゼロ装置」と、最大開口1.8mに対応できる「大型開口サブゼロ装置」を新たに加え、顧客の生産性向上に貢献します。

 

エレクトロニクス分野

社会のデジタル化の加速的な普及、カーボンニュートラルな社会を支えるエレクトロニクス産業の発展に貢献するために、電子材料ガスや関連機器の販売やサービスのグローバルな提供とともに、技術開発を強化しています。

・大陽日酸株式会社とMatheson Tri-Gas, Inc.の子会社であるRASIRC, Inc.社が共同で、ALD成膜技術の開発に取り組んでいます。窒化膜ALDには無水ヒドラジンが、酸化膜ALDには過酸化水素ガスがそれぞれ既存の窒化材、酸化材よりも良好なプロセスを実現できることを実証しています。反応メカニズム推定結果と合わせて学会で報告しました。

・当社グループが製造しているジボランガスは、ロジック(演算素子)、メモリ(記憶素子)など幅広い半導体デバイスの製造において不可欠な材料です。2023年末までに日本、韓国、中国での製造能力を順次増強するため、製造システムを進化(深化)させています。

・当社グループが開発したインテリジェント・ガス・サプライングシステム(IGSS)は、IoTやRPAを活用したデジタル革新技術と、長年蓄積した当社グループのガスハンドリング・ノウハウを融合した次世代ガス供給システムです。人とロボットが共に働く協働社会の実現、新たなサービスの付加提供によって、お客様の業務効率化、省力化に貢献するべく、改良改善を進めています。

プラント分野

深冷空気分離プラントについては当社グループのコア技術の深化(高性能・高品質・低コスト)に取り組むとともに、プラント製作、工場操業、ロジスティックスに革新を起こすため、DXを推進しています。

・DX推進によって保安や品質管理、生産性の向上に努め、遠隔監視システムやプラント運転条件制御システムを深化させました。産業ガスを生産する大型空気分離装置の生産性向上と人的資源有効活用を実現する工場運営体制の目途が立ち、リモートオペレーションセンター(仮称)の2023年度開設を計画しています。

メディカル分野

高品質の医療用ガスの安定供給を行うとともに、在宅酸素療法のためのさまざまな機器の開発・製造、機器の定期点検や遠隔監視システム、医療用ガスの24時間体制の緊急配送など、トータルサポートに貢献しています。さらに、当社グループの持つガステクノロジーを応用し、生体試料の凍結保存をはじめとするバイオ分野、SI(Stable Isotope 安定同位体)や特殊ガスを利用した高度診断・治療分野にも取り組んでいます。

・医療ガス供給設備の容器(O2、N2、Air)内ガス残量などを遠隔地で監視するシステムの最新版となる次世代医療ガス監視システムTerm-3を開発しました。通信規格をLTE(4G)とし、サーバ機能をクラウド化することで、手持ちの端末による監視データの閲覧を可能にしました。信頼性の向上、ガス安定供給の強化、異常発生時の重大事故回避に貢献しています。

新規事業分野

当社グループでは、自社開発技術やオープンイノベーションにより獲得した製品・技術の事業化を加速しています。アディティブ・マニュファクチャリング(AM)事業、化合物半導体製造装置やSI(Stable Isotope 安定同位体)をはじめ、今後市場の発展が見込まれる分野の事業拡大を推進しています。

・アディティブ・マニュファクチャリング(AM)事業では技術の開発と造形物品質安定化に寄与するソリューション「3DProシリーズ製品」の拡充に注力しています。当連結会計年度においては、従来のパウダードライキャビネット、超高純度窒素発生装置に加え、アドオン型循環精製装置「3DProPrintPure™」及び統合遠隔モニタリングシステム「MiruGas™ For AM」を開発・商品化しました。

・国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業「次世代パワーデバイス向け酸化ガリウム用の大口径量産型エピ成膜装置の研究開発」において、原料となる三塩化ガリウム(GaCl3)を供給するGaCl3ジェネレータを開発しました。また、同GaCl3ジェネレータを採用した6インチ枚葉式HVPE装置を用いて、サファイア基板上へのβ-Ga2O3成膜に成功しました。6インチ基板上へのβ-Ga2O3成膜は世界初です。

・世界初の酸素蒸留による酸素安定同位体(17O、18O)濃縮技術を開発し、水や酸素ガス、それらを使用した同位体標識化合物を製造・販売しています。品質保証、製造装置性能評価の改善を目的とした開発に取り組み、TOF-MS (time of flight mass spectrometer)を用いて酸素ガス同位体成分を正確に分析する技術を開発しました。

・原子力エネルギー分野において窒化物燃料として注目されている窒素安定同位体(15N)について、窒素蒸留による分離シミュレーションを実施しました。プラント規模及びコストについて、実現可能なレベルであることを学会にて報告しました。

 

 

〔米国ガス事業〕

米国ガス事業は、技術対応力の強化、顧客へのより良いサービスの提供、及び既存ガス商圏とエレクトロニクス向け事業の拡大を目指して、コロラド州ロングモントにあるAdvanced Technology Centerにて技術開発活動に取り組んでいます。半導体市場は長期的にも強靭な経済状態が維持されており、電子チップの需要増大が続いています。あらゆるデバイスの需要が増加していますが、特に、FinFET、ゲートオールアラウンドロジック、3D-NANDメモリ、DRAMなどの最先端デバイスの需要増大が顕著です。これら3次元集積デバイスの製造には、より多くのプロセスステップが必要であることから、不活性ガス、エッチング、成膜、洗浄、ドーピングガスなどプロセス材料の消費量も増えています。

このような中で、米国ガス事業は、エレクトロニクス顧客との密接な関係を構築し、グローバル市場で日々変化する顧客の要望に応えております。研究開発においても、顧客の技術課題に協力して対応し、得られた知見を既存商品の改善や新商品の開発に活用しております。米国ガス事業はこれらの活動を通して、製造からロジスティクスまでの最適化されたサプライチェーンに基づき、高品質・高付加価値商品の開発企業としての地位を確立しています。とりわけ、研究開発活動では、事業、技術、安全、環境に関するリスクを最小限に抑えつつ、最大限の財務貢献が見込めるプロジェクトに重点を置いています。

当連結会計年度において、次世代デバイス製造企業からの要望に基づいた新商品の開発と既存商品の高純度化を進めました。例えば、不純物除去のための新規精製技術、充填ガス安定化のためのシリンダ前処理技術、ガス純度保証のための新規分析技術を開発いたしました。これらの実現には高感度・高信頼性分析技術が不可欠であったことから、シックスシグマアプローチによる混合ガスの成分分析や最適な分析技術の探索にも注力してきました。その中で、超微量成分分析設備及び分析手法の導入にも研究開発資源を投入し、ppt-ppbレベルの不純物の同定・定量を可能にしました。加えて、米国及び韓国の生産拠点において、ガス製造プロセスの品質向上に貢献するとともに、新規機器の技術開発により商品の安全性を向上してきました。

 

〔サーモス事業〕

サーモス事業においては、「人と社会に快適で環境にもやさしいライフスタイルを提案します」という理念に従い、断熱技術を利用することで省エネルギーに貢献するとともに、快適なライフスタイルを実現すべく、積極的な商品開発を推進しています。

当連結会計年度においては、保冷炭酸飲料ボトル、真空断熱チタンボトル、ケータイマグ、フライパンを開発するとともに『alfi アルフィ 』のラインアップを一新しました。

保冷炭酸飲料ボトルFJKシリーズでは、スープジャーで採用した“クリックオープン構造”を応用した新構造のフタを採用しました。ボトル内圧が上昇したときには圧力を逃すことができ、安全性にも十分配慮された商品となっています。

真空断熱チタンボトルの新商品FJNシリーズでは、容量を増やしながらも軽量化を実現するとともに、用途に応じた2種類の注ぎ口を設けて使い勝手も向上しています。

真空断熱ケータイマグでは、インクジェット印刷による加飾で消費者のデザインニーズに応えるJOMシリーズや、フタの開閉時に飲み物の飛散が少ない「なめらかオープン構造」を備えたJOHシリーズ、そして持ち運びに便利な、キャリーループと呼ばれる可動式持ち手を搭載したJOOシリーズを上市し、多様化する消費者の要望に応えています。

フライパンにおいてはKSA及びKSCシリーズを開発しました。これらのシリーズには、サーモス株式会社が開発したシンプル構造で簡単確実に固定できる着脱式取っ手を採用しています。また、これまで無かったガス火専用モデルもラインアップに加えました。取っ手を外すことで複数のフライパンをコンパクトに収納できる5点セット又は9点セットとして商品化しました。

1914年にドイツで設立された高級魔法びんブランド『alfi アルフィ 』のラインアップを一新し、真空断熱ポット(AFTH)、タンブラー(AFDD)、アルミ製フライパン(AFFB)、ステンレス製フライパン(AFFA)、オールステンレスの鍋(AFNA)を開発しました。フライパンについては底部をアルミニウムとステンレスの多層構造にすることで均熱性を向上させ、さらに内面にはプラズマ超硬質コートを施すことで耐久性に優れた商品となっております。

 

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得