当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
また、第1四半期連結会計期間は第1四半期、第2四半期連結会計期間は第2四半期、第3四半期連結会計期間は第3四半期、第4四半期連結会計期間は第4四半期と表示します。
ウクライナ情勢が混迷を深め、目下の世界情勢の大きな波乱要因となっています。世界のパワーバランスが方向感を失い、資源エネルギー・食糧の危機、サプライチェーンの混乱など社会の構造を揺るがしています。コロナパンデミックが長期化し、ウクライナ戦争が加わりました。まったく先の読めない時代に突入しています。想定外をマネージする感性を高め、環境の変化に即応できる経営の「Adaptability」力に磨きをかけてまいります。
当連結会計年度(2021年4月~2022年3月、以下、当期)の世界経済は、ワクチン接種が進み、コロナ規制緩和と各国の財政・金融政策が後押しして回復基調となりました。しかしながら、ウクライナ問題がエネルギー・資材・食糧等の高騰の引き金となり、インフレの進行に拍車をかけています。対ロシア制裁の影響が見えず、物価高が回復しかけた景気の足どりを乱すことが懸念されます。事業環境は一層不透明な情勢となっています。日本では感染者数減少カーブは緩やかであり、エネルギー・食糧価格等の物価上昇や円安シフトが景気回復に水を差すのではないか不安が広がっています。
このような状況のなか、当社グループの当期の業績は、売上高 691,530百万円 ( 前連結会計年度(以下、前期)比19.8%増 )、 営業利益43,562百万円 ( 前期比58.2%増 )、 経常利益40,816百万円 ( 前期比85.0%増 )、 親会社株主に帰属する当期純利益26,487百万円 ( 前期比67.3%増 )と増収・増益となりました。
2022年3月 期 連結業績 (単位:百万円)
セグメント別売上高・営業利益 (単位:百万円)
① 花開いた海外オペレーション
今期は世界経済の回復は力強く、海外売上高比率は過去最高(45%)を記録しました。グローカル視点に立って運営しているオペレーション力が花開き、全社の大幅な増収増益の原動力となりました。
・Material SUおよびE & I Technology、Performance Fibers、Medical、Pharma、Supplemental Nutritionの海外需要はコロナ前をはるかに上回るモメンタムを創り、グローバルネットワーク(世界を三分割した地域統括会社制度)の現場力がグローバル販売を大きく押し上げました。
・第3四半期、第4四半期の原燃料価格の歴史的高騰に対しては機敏にスプレッドの拡大に努めました。
この結果、通期の全社売上高は過去最高を更新し、すべての事業セグメントで増収増益となりました。
② 進展したポートフォリオ変革
コア事業群がキャッシュを生み出し、先端事業群の収益が着実に拡大する好循環エコノミーの進化が続いています。
・先端事業では、MSポリマーの欧米・アジア向け販売をはじめ、Medicalの血液浄化・カテーテル新製品、Pharmaの低分子・バイオ医薬品、米州向けSupplemental Nutritionなど重点領域の販売が順調に伸びました。また、デジタル社会が急速に進展するなか、E & I Technologyのスマートフォン・PC向けポリイミド製品、大型TV向けアクリルフィルム用樹脂の販売が大きく伸びました。カーボンニュートラルに向けた再生可能エネルギー需要の伸長を追い風に、ゼロエネルギー住宅(ZEH)・ゼロエネルギービルディング(ZEB)に貢献する独自の高効率太陽電池製品の販売が拡大しました。これにより先端事業の収益は着実に拡大しました。
・コア事業では、Vinyls and Chlor-Alkali、Performance Polymersのモディファイヤー、Performance Fibersなどで生産能力を上回るほどの受注状況となり、当社のファンダメンタル事業としてキャッシュを生む力を確実にしています。これにより事業ポートフォリオの変革が着実に進んでいます。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(Material Solutions Unit)
当セグメントの売上高は299,908百万円と前期比69,399百万円(30.1%増)の増収となり、営業利益は36,385百万円と前期比13,112百万円(56.3%増)の増益となりました。
Vinyls and Chlor-Alkaliにつきましては、アジア市場の旺盛な需要拡大が続きました。海外市況が上昇し収益増に貢献しました。
Performance Polymersのモディファイヤーにつきましては、欧米亜の需要が好調に推移しました。非塩ビ用途(自動車、PC・家電向け)の販売がグローバルに拡大しています。グローバル4拠点を持つ供給体制の強みが力を発揮しました。世界的なサプライチェーン混乱のなかでPainをGainに変えました。
変成シリコーンポリマーにつきましては、欧米の需要増が続いています。加えてアジアの新しい市場(建築用途など)が拡大しています。今後の旺盛な需要を見越して、各生産拠点の生産能力増強を急ぎます。
生分解性バイオポリマー Green Planet®は、2月に大型能力増強を決定しました。新製品開発の加速と次世代のユニークな生産プロセス革新技術を導入し、生産性の向上やコストダウンを実現します。次期増設に向けて生産技術を進化させます。国内では「プラスチック資源循環促進法」が大型需要の呼び水になっています。ホテル、コンビニなどのカトラリー用途やショッピング袋など引き合いが急拡大しています。コンポストをめざす国や地方自治体などから強い期待が寄せられています。また、海外では環境負荷低減に関心の高い世界中のブランドホルダーとの大型共同商談が進展しています。
(Quality of Life Solutions Unit)
当セグメントの売上高は169,067百万円と前期比28,091百万円(19.9%増)の増収となり、営業利益は16,942百万円と前期比6,292百万円(59.1%増)の増益となりました。
Foam & Residential Techsのスチレン系発泡樹脂及び押出発泡ボードは、原燃料価格の高騰などの影響を強く受けました。発泡ポリオレフィンは、世界的に自動車の減産が続くなか需要回復が遅れています。低温輸送でワクチンを安全に運ぶ「Tack Pack®」は各自治体で採用になり、コロナ対応ソリューションとして貢献しました。
PV & Energy managementにつきましては、再生可能エネルギーの普及促進が国のエネルギー安保の重要テーマに位置付けられ、太陽光発電の実装化に弾みがついています。当社の住宅向け高効率太陽電池も搭載率アップにより販売が拡大し、ZEBの社会実装化に適した「発電する窓(シ-スルー型太陽電池)」、「発電する壁(壁面設置型太陽電池)」への需要も加速しています。次世代型太陽電池として期待される高性能「ペロブスカイト太陽電池」開発への国の助成金交付決定を受け、実用化技術開発を加速します。
E & I Technologyにつきましては、スマートフォンや有機ELディスプレイ用のポリイミドフィルム、ポリイミドワニス、大型TV向けのアクリルフィルム用樹脂の販売が好調に推移しました。デジタル化の波が加速し、拡大する需要に応える供給体制の整備が必須です。生産能力増強を検討しています。
Performance Fibersにつきましては、アフリカ向け頭髪製品の旺盛な需要が継続し、難燃資材向けの需要も回復基調となりました。さらなる需要の伸長に対応するため、次期能力増強を検討しています。
(Health Care Solutions Unit)
当セグメントの売上高は58,936百万円と前期比6,513百万円(12.4%増)の増収となり、営業利益は12,662百万円と前期比1,226百万円(10.7%増)の増益となりました。
Medicalは、新製品ASO治療用血液浄化器の治療効果が高く、販売が大幅に増加しました。カテーテルでは脳動脈瘤塞栓コイルなど海外向けを中心に販売が拡大しました。また、迅速な開発力を活かしてコロナウイルス変異株に対応したPCR検査キットをいち早く上市し、感染拡大の防止に貢献しました。1月には、プロセス革新による自動化・高度化をデザインしたフィールドオペレーション・ゼロの最新鋭医療機器工場の新設(北海道苫小牧市)を決定しました。医療器事業のグローバル展開を加速してまいります。
Pharmaは、バイオ医薬品では、カネカユーロジェンテック増設ラインでのコロナワクチンの受託製造が業績に寄与しました。研究試薬・検査診断サービスも順調でした。低分子医薬品では抗ウィルス薬新規大型案件の販売が開始され業績に貢献しました。
(Nutrition Solutions Unit)
当セグメントの売上高は162,554百万円と前期比10,186百万円(6.7%増)の増収となり、営業利益は5,084百万円と前期比205百万円(4.2%増)の増益となりました。
Supplemental Nutritionにつきましては、「免疫力アップ」意識の高まりを背景に、還元型コエンザイムQ10の販売が好調に推移しました。国内は新たな機能性表示食品である「わたしのチカラ」還元型コエンザイムQ10配合シリーズのラインナップを強化しました。乳酸菌事業は、市場認知が進んだ米国での生産体制強化を進め、販売を拡大してまいります。
Foods & Agrisにつきましては、油脂等原料価格の大幅上昇の影響を強く受けました。新たにスタートしたモール型ECサイト「ぱん結び」は好評で、「パン好きの牛乳®」、「ベルギーヨーグルト」「わたしのチカラ®Q10ヨーグルト」と合わせてSNS他メディア戦略を強力に進めてまいります。また、北海道別海で展開中の有機酪農・乳製品事業は好評で生産体制の強化を検討中です。
(その他)
当セグメントの売上高は1,062百万円と前期比87百万円(7.6%減)の減収となり、営業利益は501百万円と前期比96百万円(16.1%減)の減益となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 生産金額は売価換算値で表示しております。
2 連結会社間の取引が複雑で、セグメント毎の生産高を正確に把握することが困難なため、概算値で表示しております。
主として見込み生産であります。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度末の総資産は、売掛金や棚卸資産の増加等により前連結会計年度末に比べて59,530百万円増加し726,959百万円となりました。負債は、買掛金の増加等により前連結会計年度末に対して28,366百万円増加し314,755百万円となりました。また、純資産は、利益剰余金や為替換算調整勘定の増加等により前連結会計年度末に対し31,163百万円増加し412,204百万円となりました。この結果、自己資本比率は53.3%となりました。
なお、ROA(総資産経常利益率)は5.9%となり前連結会計年度(3.3%)を上回りました。ROE(自己資本当期純利益率)は7.1%となり前連結会計年度(4.6%)を上回りました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)の残高は、前連結会計年度末に比べ5,647百万円減少し、40,712百万円となりました。
区分毎の概況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、34,106百万円の収入(前期比39,933百万円減)となりました。税金等調整前当期純利益36,405百万円、減価償却費37,953百万円等による資金の増加がその主な内容です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、39,595百万円の支出(前期比3,633百万円減)となりました。有形固定資産の取得による支出37,329百万円等がその主な内容です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、1,105百万円の支出(前期比20,798百万円減)となりました。配当金の支払6,523百万円等による資金の減少がその主な内容です。
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
当社は、付加価値のある新しい事業を生み出しポートフォリオの変革を実現することで成長を続ける研究開発型企業を目指しています。基盤事業により十分なキャッシュを確保し、新事業創出のための研究開発や設備投資資金に活用していくことを基本とし、更なる成長投資に必要な資金については、その目的・規模や金融環境に応じ最も適切な調達方法を採ることとしています。
資金需要に応じ有利かつ円滑な資金調達ができるよう信用格付の維持・向上や金融機関・資本市場との良好な関係維持に努めるとともに、緊急な資金需要に備え融資枠や社債発行登録枠の設定を含め十分な手元流動性を確保しています。また、資金調達の方法については、自己資本など財務の安全性を確保しながら、資本効率の向上につながる資本・負債構成を考慮し、社債や借入金のいわゆる負債による資金調達を実施しています。
株主還元については、毎期の業績、中長期の収益動向、投資計画、財務状況を総合的に勘案し、連結配当性向30%を目安に、自己株式の取得も状況に応じ機動的に実施し、安定的に継続することを基本方針としています。
(4) 重要な会計上の見積り及び当期見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
① 減損会計における将来キャッシュ・フロー
減損損失を認識するかどうかの判定及び使用価値の算定において用いられる将来キャッシュ・フローは、中期経営計画を基礎として、資産グループの現在の使用状況や合理的な使用計画等を考慮し見積っております。中期経営計画の見積期間を超える期間の将来キャッシュ・フローは、中期経営計画を基礎として、それまでの計画に基づく趨勢を踏まえた一定の仮定をおいて見積っております。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において減損損失が発生する可能性があります。
② 棚卸資産の評価
棚卸資産は、収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定しており、正味売却価額が帳簿価額よりも下回っている場合は、帳簿価額を正味売却価額まで切り下げております。入庫日から1年超経過している棚卸資産については、需要予測等に基づく収益性の低下の事実を反映するように、個別に回収可能性を見積っております。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において認識する棚卸資産の金額に重要な影響を与える可能性があります。
③ 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産の回収可能性は、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかで判断しております。当該判断は、将来減算一時差異に対する将来の課税所得等に関する予測に基づいております。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。
④ 退職給付債務の算定
確定給付制度の退職給付債務及び関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率等の計算基礎があります。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において認識する退職給付に係る負債及び退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。
なお、当連結会計年度末の退職給付債務の算定に用いた主要な数理計算上の仮定は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係) 2 確定給付制度 (9)数理計算上の計算基礎に関する事項」に記載のとおりであります。
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