(1)ミッション
当社グループは「データによって人の価値を最大化する」をミッションに掲げ、世の中に溢れるデータをあらゆる生活者(注1)にとって価値のあるものとして還元し、豊かな体験を流通させることを目的に、当社グループの提供するCX(注2)(顧客体験)プラットフォーム「KARTE」をウェブサイトやスマートフォンアプリを運営する事業者に向け、クラウド方式(注3)で提供しております。
ネットショッピングはもちろんのこと、旅行や金融、人材、不動産、学習、行政など、官民問わず様々なサービスがインターネットを介して提供されるようになった今、ウェブサイトやスマートフォンアプリに生活者が求めることは、「自宅にいながら買い物できる」「予約ができる」と言った単なる利便性だけではなく、自分の興味や状況に合わせた最適な提案が受けられる良質なコミュニケーションやその先の体験へとシフトしていると当社グループは考えております。
DX(デジタル・トランスフォーメーション、注4)やデジタル投資、オンラインの顧客体験向上に取り組む企業が増える一方、企業がそれを実現するには、データを蓄積し、統合し、分析し、顧客の状態を理解し、それらに基づいてメールやウェブサイト、スマートフォンアプリ上で顧客とコミュニケーションする、あるいはメールやウェブサイト、スマートフォンアプリをそれぞれの顧客に合わせてパーソナライズ(注5)する仕組みや社内体制を構築する必要があり、この取り組みは企業にとって複雑で難易度の高いものとなっているのが現状です。
事業者は「KARTE」を活用することにより、様々なデータを、ユーザー単位で整理・解析し、オンラインの顧客を、PV(注6)やUU(注7)といった塊の「数字」として認識するだけではなく、一人ひとりの「人」として認識・理解しやすくなると当社グループは考えております。その上で、事業者は、ウェブサイト、スマートフォンアプリを顧客や顧客セグメント(注8)に合わせてパーソナライズしたり、メールやLINE、チャットを通じてコミュニケーションしたり、また、それらのコミュニケーションやパーソナライズ結果の検証を行うことなどができます。
当社グループは、データによる顧客理解からパーソナライズした多様なコミュニケーション施策までを、一気通貫で行うことのできるプラットフォームを提供し、「KARTE」を導入するすべての事業者と共に、データを通じた生活者の顧客体験の向上を実現してまいります。
(注1)世の中一般の不特定多数の人々を「生活者」、当社グループの直接の取引先である法人等を「事業者」又は「企業」、事業者が商品・サービスを提供する相手を「顧客」又は「ユーザー」と表記しております。
(注2)Customer Experience(カスタマーエクスペリエンス)の略語であり、一般的に「顧客体験」と訳されますが、顧客がよいと感じられる体験、つまり「顧客が体験して得られる価値」までも含めて定義しております。
(注3)クラウドコンピューティングの略語であり、ソフトウェア等のシステムをインターネットを経由してサービス提供することを前提とした仕組みの総称であります。
(注4)Digital Transformationの略語であり、新しいデジタル技術を活用し、企業におけるこれまでの組織やシステム、ビジネスモデル等を、より付加価値の高いものへと変貌させ、利益や生産性の向上を図ることをいいます。
(注5)ウェブサイトやスマートフォンアプリ、メールやLINE、チャットなどを顧客ごとに改変することをいいます。
(注6)Page View(ページビュー)の略語であり、ウェブサイト内の特定のページが開かれた回数を表し、ウェブサイトがどのくらい閲覧されているかを測るための指標の一つです。
(注7)Unique User(ユニークユーザー)の略語であり、特定の集計期間内にウェブサイト又はスマートフォンアプリに訪問したユーザーの数を表す数値です。
(注8)一定の条件に基づき抽出された顧客のまとまりを表す言葉です。
(2)サービス概要
当社グループはCX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE」の開発を行い事業者に対して提供しております。「KARTE」は、事業者が運営するウェブサイトやスマートフォンアプリに組み込むことにより、事業者が「KARTE」上でそれらのウェブサイトやスマートフォンアプリを訪れるユーザーのウェブサイトやスマートフォンアプリでの行動のデータを収集・解析し、ユーザー単位でデータを整理・可視化し、それらに基づいてウェブサイトやスマートフォンアプリ、メールやLINE、チャットでのコミュニケーションをユーザー又はユーザーのセグメントそれぞれにパーソナライズするための、クラウド方式で提供されるSaaS(Software as a Service)(注9)です。
(注9)サービス・プロバイダーがネットワーク経由でソフトウェアを提供し、事業者側はコンピューターにソフトウェアをインストールするのではなく、ネットワーク経由でソフトウェアを利用する形態のサービスを指します。
(3)当社グループとして考える、「KARTE」が必要とされる理由
1.企業におけるデジタル人材の枯渇
「KARTE」を導入、活用することで、社内エンジニアや外注先に仕事を依頼せずに、ウェブサイトやスマートフォンアプリにおけるユーザー分析や多様なマーケティング施策及び、ユーザビリティの改善を実施することが可能です。エンジニアや外注による開発を経ずに、実行や検証のサイクルを素早く回すことによるウェブサイトやスマートフォンアプリの差別化などを目的として、「KARTE」を活用する企業が増えています。
2.統合された顧客体験の提供
店舗に加えてウェブサイトやスマートフォンアプリ、メールやLINEなど、顧客接点が増えるに従い、企業はメール配信ツールや分析ツールなど様々なサービスを導入した結果、顧客に関わるデータが企業内で分散・サイロ化し、顧客体験を分断してしまう弊害が生まれています。「KARTE」では、店舗などオフラインのデータを含む多種多様なデータの収集・蓄積からパーソナライズした施策の実施までを一気通貫して行うことが可能なので、より良い顧客体験に繋がるコミュニケーションが実現します。
3.幅広い部署・部門で利用が可能
デジタルマーケティング部やCX戦略部等はもちろんのこと、カスタマーサポートや新規事業開発など、企業内の幅広い部門で「KARTE」を活用することが可能です。活用のノウハウや成功事例を社内外で発信・共有する場も多く、「KARTE」を媒介とした社員同士や企業間の繋がりが生まれています。
4.事業シナジーの創出
多様な事業、サービスを展開する企業が「KARTE」を導入することで、グループ企業共通の顧客及びマーケティング基盤を構築することが可能です。グループ全体の膨大な顧客接点を統合して顧客の解像度を上げ、新たなニーズを発見して新規事業を生み出すといった、中長期の経営計画やDX(デジタル・トランスフォーメーション)戦略の一環として、「KARTE」が採用されています。
5.「KARTE」が企業の環境変化に寄り添いアップデートし続けるSaaSであること
当社グループは「KARTE」の核となるリアルタイムのデータ解析基盤はもちろんのこと、大部分の開発を自社のエンジニアが行っており、毎日のようにサービスが改善されたり、新機能が追加されています。「KARTE」を利用する企業は、オプションとして提供される以外の機能はすべて月額料金の中で利用することができ、高い技術力を用いたサービスの進化を享受し続けることが可能です。
6.「人」の良さを活かすというプロダクトコンセプトへの共感
人は数字よりも人を直接見ることで、何かを考えたり、新しい発想をすることに長けていると当社グループでは考えており、事業に携わる人自身に備わる発想や創造力を発揮できる環境を作ることこそが、企業の競争力の源泉になると確信し、「KARTE」を開発しています。デジタル化がもたらす効率化や定量化、自動化といった技術の恩恵は取り入れつつも目的とせず、人の能力を拡張することを主眼におき、人が介在することの価値を高めることを目指した「KARTE」のプロダクトコンセプトが、多くの企業に受け入れられています。
また、当社グループサービスの料金体系は、以下のとおりです。
「KARTE(for Web)」(注10)、「KARTE for App」及びその他のオプションのサービス契約期間は原則単年(12ヶ月)契約であり、料金体系としては、毎月一定のプロダクト利用料をいただく月額課金型(サブスクリプションモデル)を採用しております。「KARTE(for Web)」及び「KARTE for App」は原則として事業者のサービス(ウェブサイト等)のMAU数(注11)に応じて料金が決定されます。「KARTE Datahub」については「KARTE(for Web)」及び「KARTE for App」のオプション商品の位置付けとなり、事業者のサービス(ウェブサイト等)のMAU数及びレコード総数(注12)に応じて料金が決定されます。
(注10)SaaS事業分野のサービスの総称である「KARTE」と同名称のため、ウェブサイト向けのサービスについては、わかりやすくするために(for web)を付記しております。
(注11)Monthly Active Users(マンスリーアクティブユーザーズ)の略語であります。ウェブサイトやネットサービス、スマートフォンアプリなどで、ある一ヶ月の間に一回でも利用や活動のあった利用者の数の合計を指します。
(注12)データファイルの行数の総計を指します。
当社グループは、SaaS(Software as a Service)事業の単一セグメントであり、セグメント情報を記載していないため、事業分野別に記載しております。当社グループの事業分野は①SaaS事業、②その他周辺事業となり、SaaS事業分野のサービスは、a.KARTE(for Web)、b.KARTE for App、c.その他のオプションで構成されます。
(4)当社グループの事業分野別の内容
①SaaS事業
a.KARTE(for Web)
「KARTE(for Web)」は、ウェブサイト向けに提供している「KARTE」であります。主な特徴は以下のとおりです。
ア.顧客一人ひとりを可視化
ウェブサイト等に来訪する顧客の行動データを顧客ごとに蓄積します。一人ひとりのウェブサイト等における顧客行動を把握することにより、事業者が顧客の状態やニーズを直感的に理解し、より良い体験を得られるような様々な施策を実行・検証することが可能になります。
イ.リアルタイム解析基盤
過去のデータではなく、「会員登録の途中で迷っている」「特定の商品で長時間悩んでいる」など、ウェブサイトに来訪する顧客の「今」を解析することが可能であり、顧客の購入意向の高まりなどを見逃すことなく、適切にコミュニケーションすることができます。
ウ.ワンストップで施策実行
顧客分析やメール配信、ウェブチャットやSMS(注13)など様々なマーケティングツールがありますが、「KARTE」は「顧客分析」と「施策制作・配信・自動化」を同サービス上でまとめて実行することができます。ツールやデータを社内で分散・分断させることなく、一元化することが可能です。さらに、PDCAを通じた分析や施策アクションは、ナレッジとしてKARTEに蓄積していきます。また、顧客分析、企画、デザイナーへの依頼、エンジニアへの依頼など、複数部署に依頼をして、数週間要していたようなサイト上のマーケティング施策の実行が「KARTE」担当者1名でも可能になるので、デジタル人材の不足に悩む企業にも活用されています。
具体的には、行動によるセグメンテーションから、ユーザーをリアルタイムに可視化することで、施策制作・配信を行い、データを収集するというPDCAを通じたナレッジの蓄積を行うことができます。
(注13)Short Message Service(ショートメッセージサービス)の略語であります。一般的に、携帯電話番号だけで手軽にメッセージが送られるサービスのことを指します。
b.KARTE for App
「KARTE(for Web)」とほぼ同じ機能をスマートフォンアプリ上で実現するサービスであり、iOS、Androidのスマートフォンアプリ向けのSDK(注14)であります。
「KARTE for App」を導入することで、事業者はスマートフォンアプリを利用する顧客の行動をリアルタイムに解析し、「アプリインストール直後のユーザー」や「ロイヤルカスタマー(注15)」など、個々の顧客を柔軟な条件を元にグループ化してプッシュ通知やアプリ内メッセージを配信できるようになります。
また、現代の消費者行動として同一サービスのウェブサイトとスマートフォンアプリを行き来しながら情報取得や購買行動を行うことが一般的になりつつあります。なお、「KARTE for App」とあわせて「KARTE(for Web)」を導入している事業者は、共通の「KARTE」管理画面からウェブサイトとスマートフォンアプリ双方を使う顧客の行動を一覧で可視化・解析することも可能であります。さらに、メールやSMS、ウェブチャット、LINEなど、様々な顧客接点を統合したコミュニケーションを作り、届けることが可能になります。
(注14)Software Development Kit(ソフトウェア開発キット)の略語であります。特定のソフトウェアを開発するために必要となるプログラムやツール等をひとまとめにしたパッケージのことを指します。
(注15)ある商品又はサービスに対しての忠誠心が高い顧客を指します。
c.その他のオプション
「KARTE(for Web)」及び「KARTE for App」に付随して利用いただくオプションであります。主なオプションは、「KARTE Datahub」であります。
「KARTE Datahub」は様々なデータを用いて事業者が顧客理解をさらに深め、より良い体験を顧客に提供することの実現を目指しております。具体的には、事業者は「KARTE(for Web)」及び「KARTE for App」で蓄積した顧客の体験データを自社の顧客データベースなどと統合・分析したり、外部CRM(注16)ツールへ連携して、チャネルを横断したマーケティング活動全体での顧客体験の設計を行うことが可能となります。上記(3)2.において記載した顧客に関わるデータが企業内で分散・サイロ化し、顧客体験を分断してしまう弊害に悩む事業者の課題を解決することにも繋がると考えております。
システムの統合やデータ環境の構築、ツール導入・活用のコンサルティングを行うパートナー企業が「KARTE Datahub」を扱うことで「KARTE(for Web)」や「KARTE for App」と合わせて「KARTE」をパートナー企業が持つソリューション全体像の中心部分として活用する可能性が広がるものと認識しております。
「KARTE」を利用しているウェブサイト及びスマートフォンアプリにおける業界別割合(注17)と導入企業例は下図のとおりです。サービス開始当初より導入されているファッション、美容・健康などの各種EC事業者にとどまらず、金融、人材サービス、不動産、メディア・ポータルウェブサイトなどの運営事業者にまで導入が広がっており、特定の業界を問わない幅広い事業者に利用されています。
(注16)Customer Relationship Management(カスタマーリレーションシップマネジメント)の略語であり、一般的に「顧客関係管理」の意とされます。顧客の情報を一元管理することで、顧客と密接でより良い関係を構築し、顧客の満足度を上げるための活動を指します。
(注17)2022年9月末時点における、各業界の導入ウェブサイト及びスマートフォンアプリ数の合計をすべての導入ウェブサイト及びスマートフォンアプリ数の合計で除して算出しております。
2015年3月に正式リリースして以来、SaaS事業における各サービスは継続的に成長し、2022年9月期第4四半期会計期間におけるARR(注18)は、6,638,342千円、サブスクリプション売上高(注19)は、1,641,650千円に達しており、サブスクリプション売上高比率(注20)は87.5%となっております。また、顧客社数(注21)も成長を続けており、2022年9月期第4四半期会計期間末では725社となっております。なお、各指標の過去推移は下表のとおりであります。
各指標の推移
|
2020年9月期 第1四半期 |
2020年9月期 第2四半期 |
2020年9月期 第3四半期 |
2020年9月期 第4四半期 |
ARR(千円) |
3,480,724 |
3,714,011 |
4,091,264 |
4,390,499 |
サブスクリプション売上高(千円) |
840,190 |
910,077 |
994,426 |
1,074,937 |
サブスクリプション売上高比率(%) |
94.9 |
95.2 |
94.6 |
96.3 |
顧客社数(社) |
412 |
436 |
453 |
474 |
|
2021年9月期 第1四半期 |
2021年9月期 第2四半期 |
2021年9月期 第3四半期 |
2021年9月期 第4四半期 |
ARR(千円) |
4,773,065 |
5,169,000 |
5,426,679 |
5,807,400 |
サブスクリプション売上高(千円) |
1,163,458 |
1,256,104 |
1,338,882 |
1,432,740 |
サブスクリプション売上高比率(%) |
96.2 |
95.0 |
95.5 |
94.9 |
顧客社数(社) |
500 |
502 |
517 |
538 |
|
2022年9月期 第1四半期 |
2022年9月期 第2四半期 |
2022年9月期 第3四半期 |
2022年9月期 第4四半期 |
ARR(千円) |
6,377,440 |
6,637,596 |
6,463,285 |
6,638,342 |
サブスクリプション売上高(千円) |
1,578,629 |
1,627,292 |
1,625,654 |
1,641,650 |
サブスクリプション売上高比率(%) |
89.7 |
87.7 |
90.2 |
87.5 |
顧客社数(社) |
686 |
699 |
691 |
725 |
(注18)Annual Recurring Revenue(アニュアルリカーリングレベニュー)の略語であり、各期末の月次サブスクリプション売上高を12倍することにより算出しております。既存の契約が更新のタイミングで全て更新される前提で、既存の契約のみから、期末月の翌月からの12ヶ月で得られると想定される売上高を表す指標です。
(注19)売上高のうち、経常的に得られる「KARTE」の利用料の合計額を指します。
(注20)売上高に占める、サブスクリプション売上高の割合を指します。
(注21)各期末時点のプロダクト導入顧客社数の合計を指します。
②その他周辺事業
当社グループ事業で重要視しているCX(顧客体験)という考え方をより広く伝え、世の中の共感を増やしていく目的から「XD(クロスディー)」というメディア運営を通じてインターネット上で情報の提供をしております。
「XD」はCXをテーマに、様々なサービスと消費者の間に生まれる「体験(Experience)」にフォーカスしたビジネスメディアであり、「世の中のあらゆる体験を魅力的に」をコンセプトに、企業が消費者に提供する体験をよりよくするためのヒントとなる情報を、様々な観点からお届けしており、CX(顧客体験)の考え方を広めることに寄与していると考えております。また、オフラインの大規模イベント「CX DIVE」を開催し、CXを考え、広げていくコミュニティとしての活動を行っております。
[事業系統図]
当社グループの事業を事業系統図によって示すと以下のとおりとなります。
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