事業の内容

 

3 【事業の内容】

(1) ミッション・ビジョン

当社は「企業価値の中に、未来を見つける。」というミッションのもと、「中小企業にテクノロジーを届けよう。」というビジョンを掲げ、中小企業の成長を支援するBtoB・SaaS(注)モデルのビジネスプラットフォーム事業を展開しております。

 

(注)Software as a Serviceの略称。サービス提供者がソフトウエア・アプリケーションの機能をクラウド上で提供し、ユーザー側はネットワーク経由で利用する形態のサービスを指します。

 

(2) 取り巻く環境・背景

中小企業は、日本の企業全体の99.7%を占め、労働市場において、全労働者のうち約70%が中小企業に勤めており(「2016年経済センサス」総務省・経済産業省)、現在の日本経済を支えているだけではなく、将来の日本経済においても重要な存在であると当社では考えています。その一方で、中小企業は人材不足や販路開拓のリソース不足、資金不足、事業承継等多くの深刻な経営課題を抱えており、従業員一人当たり付加価値額を表す労働生産性についても大企業の半分以下に留まっています(「中小企業白書2020年版」中小企業庁)。中小企業の労働生産性を10%改善することによる経済効果は18兆円(「2016年経済センサス」及び「中小企業白書2020年版」より弊社独自に算出)とされており、中小企業の成長が地域経済や日本経済に及ぼす効果は小さくありません。

一方、中小企業の成長を支える存在である地域金融機関を取り巻く経営環境も厳しさを増しています。融資を中心とした従来のビジネスモデルでは収益性を保つことが困難な状況であり、中小企業の本業支援等によるコンサルティング業務やDX(デジタルトランスフォーメーション)(注)の実施など、地域金融機関は大きな転換点を迎えていると考えております。そのような状況の中、中小企業が地域金融機関に求めることとして、人材育成やビジネスマッチング(販売先紹介)など事業に対するソリューション提供などが挙げられます(「金融機関の取組の評価に関する企業アンケート調査」金融庁(同庁の委託に基づき帝国データバンクが2018年にアンケート調査を実施))。また、政府の「成長戦略2019」では、中小企業支援機関としての地域金融機関の機能強化が掲げられ、地域を支える金融機関の役割は益々大きくなってまいります。

上記のような「中小企業が抱える課題」と「地域金融機関が抱える課題」をテクノロジーの力で解決していくことで、当社は日本経済の発展に寄与することができると考えております。

 

(注)デジタルトランスフォーメーションとは、デジタル技術を浸透させることで人々の生活をより良いものへと変革することと定義します。

 

(3) 事業概要

当社は、日本全国の地域金融機関(2022年3月末時点83社)と連携し、各金融機関に対してSaaS形式の経営支援プラットフォーム「Big Advance」を主として提供しております。「Big Advance」は、各金融機関の取引先の中小企業に対して、課題解決や成長支援につながる機能を提供しております。地域金融機関及び中小企業のニーズを汲んだサービスの構築を実現しており、2018年4月の「Big Advance」リリース以降も継続的に金融機関及び中小企業のニーズを収集し、PDCAを回すことで、継続的な機能改善及び新機能追加を図ってまいりました。

また、当社では地域金融機関が保有する、取引先に関する各種ビッグデータや、中小企業のソリューション活用の活動ログデータを元にしたAI(人工知能)の研究を行っており、各AIをAPI(注1)で利用可能にしたAIモジュール(注2)「FAI」を開発しております。地域金融機関と中小企業の「Face to Face」の信頼感をベースにし、AIモジュール「FAI」などの先進的な「テクノロジー」を融合させてサービスを提供している点が当社事業の特徴です。地域金融機関と連携して地域の中小企業にサービスを提供することにより、経営支援プラットフォームの活用効果を最大化すると同時に、地域金融機関のビジネス変革を支援するソリューションとしても効果を発揮しており、「Big Advance」に参加する全てのステークホルダーがメリットを享受できるWin-Winのビジネスモデルを構築しています。今後も、「Big Advance」が中小企業の成長、そして地方創生に欠かせないビジネスプラットフォームとなるべく、事業を推進してまいります。

 

 

なお、当社はビジネスプラットフォーム事業の単一セグメントであるためセグメント別の記載を省略し、サービス別に記載しております。

 

(注)1.Application Programming Interfaceの略称であり、ソフトウエアコンポーネントが互いにやり取りするために使用するインターフェイスの仕様を指します。APIを活用することにより、ソフトウエアの機能を共有することが可能となります。

   2.モジュールとは、ソフトウエアを構成する機能のことであり、仕様が規格化・標準化された個々の構成要素をいいます。

 

(4) サービス概要

① 中小企業向け経営支援プラットフォーム「Big Advance」

当社は地域金融機関と連携し、中小企業の経営支援プラットフォーム「Big Advance」を金融機関ごとに「○○ Big Advance」という名称で提供し、各金融機関がそれぞれの取引先中小企業に対してサービスを提供しています。金融機関ごとにサービスを展開するものの、各金融機関の取引先の枠を超えて全国の会員企業の情報を連携していることから、地域や金融機関の枠を超えて会員企業同士の新しいビジネスが創出されるなどのネットワーク効果を発揮し、「Big Advance」はこれまでにない形での金融機関による中小企業への経営支援を実現しております。「Big Advance」は「Face to Face」と「テクノロジー」の融合をコンセプトに掲げ、金融機関と会員企業のリレーションをさらに強化し、各金融機関が会員企業に対してより充実した経営支援を可能にするサービスの提供を目指しています。

「Big Advance」では金融機関より、サービス導入時の初期導入費用に加えて、毎月運用・保守費を受領しております。

運用・保守費はサブスクリプション型(継続課金型)であり、金融機関より月額固定形式で受領する収益、金融機関と会員企業との間の月額利用料に対するレベニューシェア方式を採用した収益により構成されています。そのため、金融機関数の増加による収益拡大に加えて、「Big Advance」会員企業数の増加が、当社と金融機関双方の収益の最大化につながるため、win-winの関係を築いております。また、導入金融機関においては、「Big Advance」月額利用料及びマッチング成約手数料等が収益を押し上げると同時に、「Big Advance」を通して中小企業への本業支援を行った結果として、貸出残高の増加に寄与しております。

新規の会員企業の増加に加え、既存の会員企業が継続的に利用し、解約しない限りは、当該利用料が積み上がるストック型の収益モデルであり、新規の会員企業数が解約数を下回らない限り収益は前事業年度を上回ることから、安定的に収益を確保することが可能です。そして会員企業にサービスを継続利用してもらうことで関係性を深め、アップセル・クロスセル(注)による更なる収益機会の獲得を見込むことができます。

「Big Advance」の基本機能は以下の通りです。中小企業にとって事業及び日常業務の運営に有用な機能が多数搭載されている中で、高価なソフトウエアに対する大きな初期費用をかけずに、月額利用料は3,000円(税抜)と安価な設定にてワンパッケージの機能を提供しており、中小企業にとって導入し易い形で業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)を実施することが可能となっております。

 

(注)アップセルとは、当社が現在提供している商品やサービスに加えて、質及び金額ともにより上位の商品やサービスを提供し、利用者が現在利用する商品やサービスに代わり上位の商品やサービスを購入することであります。一方でクロスセルとは、利用者が現在利用している商品やサービスに追加して、別の商品やサービスも購入することをいいます。

 

 

 

本書提出日における「Big Advance」基本機能(月額3,000円)は以下の通りです。

機能名

内容

ビジネスチャット

金融機関とチャットで連絡が可能。また社内チャットとしても利用可能。

*社内チャット:ID数は無制限、ルーム数は上限10

ビジネスマッチング

地域や金融機関の枠を越え、会員企業同士すなわち「Big Advance」を導入しているすべての取引先とマッチングが可能

オープンイノベーション

1,800社以上の大手パートナー企業(注1)とのマッチングが可能

福利厚生「FUKURI」

従業員向けクーポンサイト。会員企業は使用するだけなく、自社も新規顧客を増やすツールとしてクーポンを発行することが可能

ホームページ自動作成

フォーマットに文言を記載するだけで、簡単にホームページの作成が可能

共通ドメインでの多数のサイト運営によりSEO効果(注2)を発揮し、ホームページ13,062件(2022年3月末)を作成

補助金・助成金

毎週更新される全国の補助金・助成金の情報を取得。士業相談を活用することにより、補助金・助成金の申請も可能

士業相談

全国2,668名(2022年3月末)の士業(注3)に24時間相談可能

安否確認

災害時に、従業員の安否確認が可能

事業承継

金融機関へ事業承継の相談が可能

従業員アカウント

従業員用のアカウントを発行することで、ビジネスチャット、福利厚生「FUKURI」、安否確認などの機能を各従業員向けに提供。また、従業員アカウントは無制限に追加可能

 

(注)1.当社及び導入金融機関が承認した無料で会員登録を行うことが可能な企業であり、会員企業とのマッチングや情報発信を希望する企業・団体です。上場企業や地方公共団体等が該当します。

2.Webサイトが、検索サイトの検索順位の上位に表示されることです。

3.士業は、弁護士、公認会計士、税理士、弁理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、中小企業診断士の8士業を指します。「SHARES」に参加する全ての士業について、国家資格を保有していることを確認しています。

 

ビジネスチャット機能により、企業における業務時間の多くを占めるコミュニケーションを効率化し、中小企業の経営課題であった労働生産性の改善を実現していると考えます。また、地域金融機関におけるIT化の遅れ等により電話若しくは対面が基本であった当該金融機関とのコミュニケーションもチャットで行うことができるようになるため、金融機関との情報共有の頻度が増え、一層のリレーション強化に加えて、適切な金融サービスを受けることにつながります。

ビジネスマッチング機能は、会員企業が自社の案件ニーズを入力することにより、他の会員企業から商談依頼を受けたり、他の会員企業へ商談依頼をすることができます。従来、金融機関が行なってきたビジネスマッチングは、その金融機関内における企業同士の案件ニーズのマッチングに留まっておりますが、「Big Advance」では、金融機関を越えて、「Big Advance」を利用している全会員企業の案件ニーズが検索できるため、地域や金融機関の枠を越えた広域マッチングを実現しています。結果として、導入金融機関へのヒアリング等を通じて、従来マッチングの意向を示した企業のうち、実際に面談を実施した企業の割合は、「Big Advance」導入後に向上していることを確認できており、地域金融機関の収益機会の増加に寄与しています。

そのため、新たなビジネスマッチングの機会の創出により、新たな付加価値が創造され企業の業績が向上することはもちろん、地方創生にもつながるものと考えます。

また当社が2015年6月にリリースした士業相談プラットフォーム「SHARES」と「Big Advance」をAPI連携することにより、「Big Advance」を利用する企業が法務、労務、税務などの経営課題をスムーズに士業に相談することが可能になりました。

 

 

「SHARES」には弁護士、税理士、行政書士などの8士業が2,668名(2022年3月末)登録しており、企業が見積りを依頼してから、およそ1時間で適した士業を紹介することが可能です。気軽に相談ができる顧問を持たない中小企業にとって、単発で安価に士業に相談し、スピーディーに経営課題を解決できることは非常に重要であり、サービス開始以降順調に利用企業数を伸ばしています(2022年3月末の「Big Advance」会員企業数は72,050社)。

そのほか、「FUKURI」は会員企業の従業員に対する福利厚生に役立つ、旅行やレジャー、グルメ、ショッピング等のお得なクーポンを掲載したサイトであり、2022年3月末時点では1,400件以上のクーポンを登録しており、会員企業の従業員満足度の向上に寄与していると認識しております。

また、ホームページの自動作成機能を活用することにより、15分程度で簡単にスマートフォンに対応したホームページを開設することが可能です。手軽に情報発信することができる上に、共通ドメインで多数のサイトを運営することによりSEO効果を発揮するため、2022年3月末時点では13,062件のホームページ作成に寄与しており、会員企業の認知度向上に貢献しております。

補助金・助成金機能においては、従来は各中小企業が個別に官庁のホームページ等を確認し情報収集する必要があったものの、中小企業に代わり当社が補助金及び助成金に係る情報を官庁より収集し週次で更新していることから、会員企業にとって効率的な情報取得を可能としています。さらに補助金等の申請時に相談したい事項がある場合、「SHARES」を活用することにより、士業への相談も可能です。

「Big Advance」は月額3,000円の価格水準で提供しております。会員企業は月額3,000円で様々な経営支援サービスを利用することができるため、会員企業の発展に貢献できるものと考えています。

 

なお、2020年3月期から2022年3月期までの当社における「Big Advance」の導入金融機関数、会員企業数の推移は以下の通りです。

2018年6月末から2022年3月末にかけて、導入金融機関数は1社から83社、会員企業数は1,036社から72,050社と継続的に増加しております。結果として42都道府県(2022年3月末)の導入に至っております。

 

2020年3月

2021年3月

2022年3月

第1

四半期

第2

四半期

第3

四半期

第4

四半期

第1

四半期

第2

四半期

第3

四半期

第4

四半期

第1

四半期

第2

四半期

第3

四半期

第4

四半期

導入金融機関数(社)

12

23

26

34

42

57

60

71

75

82

83

会員企業数

(社)
(注)

3,174

5,271

9,087

12,792

15,999

27,914

38,773

49,783

56,787

63,788

67,550

72,050

 

(注)会員企業数は、パートナー企業数(無料会員企業数)を除いた有料会員企業数を指します。

 

  また、2018年4月以降の会員企業数の四半期推移は以下の通りです。


 

 

② AI(人工知能)モジュール「FAI」について

「FAI」は、企業の様々なビッグデータから意味や妥当性を抽出し、最適な結果を分析・予測するAIモジュールの総称です。主にニューラルネットワーク(注1)のアルゴリズムを用いて、精度の高いモデル(特許取得済)(注2)を実装しています。「FAI」の各モジュールは以下の通りです。

モジュール名

出力(アウトプット)の提供先

内容

(a)企業評価モジュール

金融機関

企業のデフォルト確率や格付劣化確率を算出

(b)レコメンドモジュール

中小企業

企業ごとに、最適なビジネスマッチングニーズ情報を提示

(c)融資判定モジュール

金融機関

企業の融資可能金額や融資可否を算出

(d)資金ニーズ予測モジュール

金融機関

企業の借入ニーズを予測

(e)経営インテリジェンスモジュール

中小企業・金融機関

企業の経営戦略に基づいた経営課題等を提示

(f)OCRモジュール

金融機関

決算書のPDFデータを高い頻度で読み取り

 

 

(a) 企業評価モジュール

財務データや口座入出金データ、定性情報から、対象企業のデフォルト確率や、格付が劣化する確率を出力するAIモジュールです。独自のアルゴリズムを開発しており、高い精度を実現しております。

 

(b) レコメンドモジュール

「Big Advance」のビジネスマッチング機能の中において、企業ごとに最適なマッチング先を提示するAIモジュールです。大量に登録される各社のニーズデータの中から最適なニーズを検索する手間を省き、マッチングの質と量を向上させることでより効率的な経営支援が可能になります。

 

(c) 融資判定モジュール

財務データや口座入出金データ、定性情報から、対象企業に対する融資可能金額や融資可否を出力するAIモジュールです。金融機関が保有する企業の口座入出金データから融資可能な金額を算出するため、中小企業は決算書を提出する必要がなくなることに加え、よりリアルタイムに近い業況にて融資審査を受けることが可能となります。

 

(d) 資金ニーズ予測モジュール

財務データや口座入出金データ、定性情報から、企業の借入ニーズを予測するAIモジュールです。金融機関において、企業の借入ニーズを精度高く把握することができるため、中小企業は最適なタイミングで金融機関からの融資提案を受けることが可能となります。

 

(e) 経営インテリジェンスモジュール

財務データや口座入出金データ、定性情報から、企業の経営課題の提示や類似企業を抽出するAIモジュールです。出力された経営課題を金融機関あるいは中小企業に提示することにより、早期の課題発見と課題解決を実現します。

 

(f) OCRモジュール

企業の決算書をOCRを使って高い精度で読み取るAIモジュールです。金融機関は企業の与信判断に利用する決算データを効率的に活用することができます。

 

 

  (注)1.人間の脳の構造を模倣した数理的モデルのことを指します。

     2.特許取得済:特許第6354059号「財務情報分析システム、及びプログラム」

        特許第6516309号「財務分析システム及び財務分析プログラム」

        特許第6581282号「人工知能を利用した倒産確率算出システム」

 

③ ITサポートサービスについて

士業が効率的に企業を支援できるよう、税理士の業務・顧問先管理ツールの提供等を行なっています。

士業の業務効率化や顧問先企業へのコンサルティング業務に貢献することで、間接的に中小企業の活性化に寄与できるものと考えております。

 

 

 事業系統図

 


 

(注)システムインテグレーターの意味で、システム開発業務を引き受ける企業のことをいいます。

 

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