文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「一人ひとりが「自分のストーリー」を生きていく世の中をつくる」という経営ビジョンのもと、個人の知識・スキル・経験を可視化し、必要とする全ての人に結びつけ、個人をエンパワーメントするプラットフォームを提供することをミッションとして、個人の知識・スキル・経験を売買するスキルのマーケットプレイス「ココナラ」を中心とした事業を展開しております。
モノの市場は2000年以降のIT勃興期の中でEコマースによるオンライン取引が進んだ結果、複数の大手企業の寡占状態であり、現在ビッグデータ等の活用により、効率性、収益性を追求する環境になっております。一方で、今後サービス市場においてもEC化が進展すると試算されております。(情報通信総合研究所「シェアリングエコノミー関連調査2020年度調査結果」)また、当社グループが属するサービスECスキル市場では、近年になってオンライン取引ができる市場が活用され始めており、EC化が進んでいくと考えております。その中で、当社は2011年に創業し、サービスECスキル市場のパイオニアとして市場を牽引するとともに先行者利益を享受することを目指しております。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、あらゆる人が自分の経験や強みの価値に気づき、それを求める人に提供できるようになることで、より自分らしい人生を歩むことができる社会を目指しております。そして、あらゆる分野において誰かの力を借りたいような困りごと、依頼したいこと等が発生した際に「困ったらココナラ」と想起され、利用されるよう、経営戦略を策定しております。当社グループサービスは、あらゆる人の多様な課題を対象としているため、各ユーザーによって数多くのカテゴリでサービス購入されることを重要な事業戦略の一つとして考えております。そのため、全体の流通高を重要な経営指標として設定し、企業規模の拡大、企業価値の向上を目指しております。
(3)経営環境及び経営戦略等
オンラインスキルシェアの潜在市場規模(個人および中小企業間のサービス売買市場のうち、オンライン取引化が可能な非対面サービスの市場)は、2030年予測で9,600億円と試算され、企業・個人事業主・個人等スキルの提供者が誰かを問わずに、一つのWebサイト・スマホアプリでレビューを見てサービスの内容や品質が分かるようになった場合や、個人が提供するサービスについて、認知度の低さや安全性に対する不安等の課題が解決した場合の2030年予測で1.6兆円との試算も出ております。(情報通信総合研究所作成のサービスEC市場規模に関する調査報告書(2021年9月))
かかる状況において、日本政府においては、厚生労働省がモデル就業規則を改訂して副業を許容する内容に変更され、経済産業省主導の「電子商取引規則に関する準則」にて、シェアリングエコノミーを活用した副業を容認する等、政府を挙げて副業解禁の流れが出来ており、日本の大企業においても副業を容認する動きが広がっております。
したがって、当社グループとしては、知識・スキル・経験を持つ出品者による副業解禁に伴う出品の増加が見込まれます。総合カテゴリ型のサービス版ECサイトとして有する出品サービス数、評価数が増加し、幅広い購入者ニーズに対応できるサービスを選択できるため、購入件数が増加すると当社グループは考えております。その結果、サービスECスキル市場の成長が大きく見込まれると考えております。
かかる環境を踏まえ、市場全体の拡大とともに、当社グループは、テイクレートを維持しつつ有料購入ユーザー数及び一人当たり購入額を拡大することで流通高を拡大し、また、中長期的には営業利益率の上昇も目指してまいります。具体的な経営戦略は以下のとおりであります。
当社グループは、あらゆる知識・スキル・経験が集約されるプラットフォームを目指して、社会に対するあらゆる接点を創出することでココナラ経済圏を構築して今後も成長を実現してまいります。具体的には、サービス提供手法(オンライン、オフライン)の拡張、カテゴリ(汎用型、特化型)の拡張、マッチング手法(1対1、1対多)の拡張、ユーザー属性(プライベート、ビジネス)の拡張及び課金手法(都度課金、継続課金)の拡張の5つの軸を拡大します。当該5つの軸を拡大し、個人だけでなく、小規模事業者、中小企業及び大企業を含めた利用者の拡大を目指してまいります。特に小規模事業者は、大企業約1万社、中規模企業約27万社に対して、約356万社(経済産業省 2016年度版 経済センサス)と非常に大きな機会があります。企業の規模を問わずビジネスにおいて必要となるロゴ作成、HP作成等の多様なニーズに応えるサービスECは競合する大手がまだいない状況であると考えており、多種多様な出品者を揃える当社グループの開拓余地が大きいと考えております。特に自社のリソースでの解決が難しく、社外のリソースを活用する必要があると考えられる企業のニーズを当社グループは充足することができると考えております。具体的な施策は、下記の通りであります。
① 法人向けの高品質のサービスを提供できる高いレベルのスキルを有する出品者が出品しやすいように、段階的に出品可能な価格帯を変更しております。
② 「PRO認定制度」により、一般的に知識・スキル・経験のレベルが高い、いわゆるプロの出品者を検索可能にしており、ビジネス目的でも対応可能なサービスが増加しております。
③ ビジネス向けに特化したサービス購入プラットフォームの「ココナラビジネス」を2021年8月にリリースしております。「ココナラビジネス」の特徴として、ビジネス利用向けに厳選されたサービスの抽出、チームでの利用に便利な管理機能、プロジェクトごとの案件管理やメンバーアサインなどが行えるようになっております。
従来「ココナラ」を利用していたのは、個人の購入者が中心でしたが、「ココナラビジネス」を初めとする上記各種機能のリニューアルによって主にビジネス利用目的の購入が増えております。ビジネス利用目的で「ココナラ」を利用する場合は、個人で利用する場合と比較し、サービス単価が高額となる傾向があるため、ビジネス目的での利用を取り込んでいくことで、一人当たり購入額が上昇すると考えております。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 出品サービス数の増加に対する検索及び購入の容易さの継続的向上
「ココナラ」は多様なニーズに対応する出品を揃えることで、仕事や相談の窓口となる存在を目指しております。2022年8月末現在、出品サービス数は約72万件と、多様なニーズに対応するサービス数となっていますが、購入者が欲しいサービスをスムーズに発見できるようにし、また、サービスを検索後に購入完了まで容易にたどりつく必要があると認識しております。
かかる課題に対処するため、当社グループでは出品サービスが適切なカテゴリで出品されることを担保するために、適宜カテゴリを見直し、追加、修正を行っております。この際、ユーザーの利便性や利用頻度向上などの観点から、特定のカテゴリを異なるサービスとして独立して運営することも候補に検討を行っております。また、サービス選択後、購入者が普段から利用する決済手段がないことで、購入完了までたどりつけないことがないように、当社グループでは多様な決済手段を導入しており、クレジットカード決済、キャリア決済及び銀行振込等が利用可能となっております。
② 新規ユーザー獲得のための認知度の向上
当社グループのビジョンである「一人ひとりが『自分のストーリー』を生きていく世の中をつくる」の実現に向けて、幅広い利用者が利用できる多種多様なサービスを取り扱うマーケットプレイスとして認知されるためには、購入者、出品者ともに登録数の増加が必要と認識しております。
創業より数年間は、口コミに代表される有料広告を用いない方法によって利用者登録が増加してきましたが、2016年8月期より本格的にオンライン広告を開始し、2017年7月、2019年6月から8月、2020年7月から8月、2021年8月と複数回にわたりTVCMを放映してまいりました。当連結会計年度においては、2022年1月から新たにTVCMを開始いたしました。今後とも継続的に放映していく予定としており、積極的なマーケティング投資により購入者、出品者の登録数の拡大を行っております。なお、TVCMの実施については過去実施分の効果分析を考慮して、より効果の大きい放送局、時間帯等をターゲットとして、慎重に実施の可否及びタイミングを決定してまいります。
③ プロダクト展開の拡張
当社グループサービスの利用を促進するためには、「サービス提供手法の拡張」、「カテゴリの拡張」、「マッチング手法の拡張」、「ユーザー属性の拡張」及び「課金手法の拡張」が重要であると認識しております。サービス提供手法の拡張としましては、サービスの購入後に出品者と購入者の2人のみが閲覧できる非公開のページの「トークルーム」の管理機能やコミュニケーション機能を拡充しております。「制作・ビジネス系」・「相談・プライベート系」カテゴリ双方においては、ユーザーニーズに応じたカテゴリの拡張を随時実施しております。サービスの直接購入に加え、「見積り相談」「公開依頼」「コンテンツ購入」を強化することによって、マッチング手法を拡張し、ユーザー属性の拡張のため制作・ビジネス利用に適した新機能やサポート体制の拡充・強化を行っております。課金手法の拡張としましては、高単価・長期プロジェクトをスムーズに決済いただくための手法や定期購入などの機能の拡充を行ってまいります。これら5方面への拡張によりユーザー体験を更にアップデートし、利用を促進してまいります。
④ 安心・安全なサービス体制の強化
当社グループの営む「ココナラ」は、取引が出品者及び購入者であるユーザー間で行われるため、サービスを提供する出品者の信頼性の確認が容易ではなく、トラブル対応等に不安があることを理由に、「ココナラ」の利用を控えるといったことが起こりうると考えております。
当社グループでは、「ココナラ」が安心・安全に取引を行える場所であり続けることを非常に重要な課題として認識しており、カスタマーサクセスのスタッフが中心となり、安心・安全なサービス購入体験を担保するため、利用規約、ご利用ガイドの見直し、サービスやメッセージの監視や出品者の本人確認などを行っております。また、出品サービスの健全性を保つために、専任のスタッフを配置しております。専任スタッフは週次で定例ミーティングを実施し、出品サービスの理解を深めるとともに、新たな論点などを議論しております。このような取り組みに関して、2017年11月には一般社団法人シェアリングエコノミー協会が定めるシェアリングエコノミー認証制度を取得いたしました。当該認証制度は、シェアリングエコノミーに基づくサービスが、内閣官房IT総合戦略室がモデルガイドラインとして策定した「遵守すべき事項」に基づいており、一般社団法人シェアリングエコノミー協会が認定した自主ルールに適合していることを証明する制度です。今後も利用者が安心・安全に「ココナラ」を利用できるように継続的な取り組みを行ってまいります。
⑤ 情報管理体制の強化
当社グループが運営する「ココナラ」では、利用者の個人情報を取り扱っており、強固な情報管理体制の確保が重要であると認識しております。
情報セキュリティ管理規程及び情報セキュリティ管理マニュアルを制定し、また、情報システムにおける管理体制強化を目的として情報システム開発・運用管理規程及び情報システム開発・運用管理マニュアルを制定し、運用をしておりますが、今後も情報管理体制を重要な課題として認識し、情報管理体制を強化するべくサイバーセキュリティに関する各種施策を推進してまいります。
⑥ システムの安定稼動
当社グループが運営する「ココナラ」は、インターネットを通じたサービスであり、システムの安定稼動が不可欠であります。
かかる課題に対処するために、登録者数の増加によるデータ量の増加に対応するためのシステム投資をはじめ、リアルタイムでの各種KPIモニタリングと対応ガイドラインによるサイトアクセスやデータ量増加への初動の強化など運用監視体制の強化を引き続き行ってまいります。
⑦ 経営管理、内部管理、及びコンプライアンス体制の強化
継続的な事業拡大に向けて、経営管理、内部管理体制及びコンプライアンスの強化が不可欠であります。経営管理では会議体の運営を通じて、KPIのモニタリングを適切に実施していきます。内部管理及びコンプライアンスでは、社員に対する継続的な研修及び啓蒙活動を行うことで、内部管理体制の強化を図り、コンプライアンスの徹底に努めてまいります。
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