(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況(以下、「経営成績等」という。)の概要は以下のとおりであります。
なお、当連結会計年度の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。
詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症による影響からの回復がみられたものの、物流網の混乱や半導体不足が継続したことに加え、ウクライナ情勢に起因する原燃料価格の高騰や、急速な円安の進行もあり、不安定な状況が続きました。
当社グループを取り巻く事業環境は、半導体向け製品の需要が市場拡大に伴って好調に推移したほか、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けた自動車分野等の需要も回復しました。原燃料価格が上昇するなか、メタノール等の汎用製品の市況も上昇しました。
なお、当社グループは、当期よりスタートした中期経営計画「Grow UP 2023」のもと、「環境変化に強い収益構造への転換」を目指し、「競争優位(“差異化”)事業の更なる強化」、「新規事業の創出と育成の加速」、「不採算事業の見直し・再構築」の施策による事業ポートフォリオ改革を推進しております。
当社グループの売上高は、メタノール等の市況上昇や、全般的な販売数量の回復などにより、増収となりました。
営業利益は、原燃料価格の上昇や、光学樹脂ポリマーの販売数量減少などの減益要因があったものの、半導体向け製品の販売数量増加や、新型コロナウイルス感染症拡大で影響を受けた製品の需要回復、汎用製品の市況上昇などにより、増益となりました。
経常利益は、営業利益の増加に加え、エンジニアリングプラスチックス関連会社および海外メタノール生産会社に係る持分法による投資利益が増加したことなどから、増益となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、事業再構築等に伴う減損損失などの特別損失が増加したものの、経常利益が増加したことなどから、増益となりました。
以上の結果、売上高7,056億円(前期比1,099億円増(18.5%増))、営業利益553億円(前期比108億円増(24.4%増))、持分法利益148億円(前期比97億円増(188.3%増))、経常利益741億円(前期比239億円増(47.6%増))、親会社株主に帰属する当期純利益482億円(前期比122億円増(33.9%増))となりました。
セグメント別の業績は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前期比較においては、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
〔基礎化学品事業部門〕
メタノールは、市況が前期に比べ大幅に上昇したことなどから、増収増益となりました。
メタノール・アンモニア系化学品は、原料価格の上昇があったものの、ネオペンチルグリコールの市況上昇や、修繕費が減少したことなどにより、増収増益となりました。
ハイパフォーマンスプロダクツ※1は、メタキシレンジアミン(MXDA)の需要が新型コロナウイルスの影響を受けた前年同期から回復したほか、芳香族アルデヒドの販売も堅調であったことなどから、増収増益となりました。
※1 MXDA、MXナイロン、芳香族アルデヒド等、旧特殊芳香族化学品の製品群
キシレン分離/誘導品※2は、高純度イソフタル酸(PIA)の市況が上昇したことなどにより、増収増益となりました。
※2 メタキシレン、PIA等、旧汎用芳香族化学品の製品群
発泡プラスチック事業は、フラットパネルディスプレイ保護材や自動車向け材料の販売数量が増加したものの、原燃料価格の上昇などにより、前期を下回る損益となりました。
以上の結果、売上高4,199億円(前期比918億円増(28.0%増))、営業利益257億円(前期比129億円増(101.0%増))、経常利益300億円(前期比158億円増(111.3%増))となりました。
〔機能化学品事業部門〕
無機化学品は、半導体向け薬液の販売数量が増加したことなどから、増収増益となりました。
エンジニアリングプラスチックスは、原燃料価格の上昇などによりポリカーボネートの採算が悪化したものの、ポリアセタールの販売好調や、自動車分野を中心に販売数量が回復したことなどにより、増収増益となりました。
光学材料は、光学樹脂ポリマーの需要が第1四半期を底に回復に転じたものの、上半期の顧客の在庫調整などにより販売数量が減少したことなどから、減収減益となりました。
電子材料は、主力の半導体パッケージ用BT材料において、メモリーや5Gスマートフォン向けが好調に推移したことに加え、上半期を中心にPC関連機器や家電など幅広い分野で使用される汎用材料の販売数量が増加したことなどから、増収増益となりました。
「エージレス®」等の脱酸素剤は、国内食品向けの回復等により、新型コロナウイルスの影響を受けた前期を上回る損益となりました。
以上の結果、売上高2,854億円(前期比179億円増(6.7%増))、営業利益336億円(前期比11億円減(3.4%減))、経常利益454億円(前期比78億円増(21.0%増))となりました。
〔その他の事業〕
その他の事業は前期並みの、売上高は2億円、営業損失は0億円、経常利益は0億円となりました。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ922億円増加し9,286億円となりました。
流動資産は、500億円増加し4,522億円となりました。増加の要因は、受取手形、売掛金及び契約資産の増加などであります。
固定資産は、422億円増加し4,764億円となりました。増加の要因は、建設仮勘定の増加などであります。
負債合計は、428億円増加し2,977億円となりました。流動負債は、支払手形及び買掛金の増加などにより、310億円増加しました。固定負債は、長期借入金の増加などにより、117億円増加しました。
純資産は、494億円増加し6,308億円となりました。増加の要因は、利益剰余金の増加などであります。
この結果、自己資本比率は61.2%になりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ11億円増加し922億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度は、前連結会計年度に比べ33億円収入が減少し520億円の収入となりました。減少の要因は、棚卸資産の増加などであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度は、前連結会計年度に比べ245億円支出が増加し649億円の支出となりました。増加の要因は、固定資産の取得による支出の増加などであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度は、前連結会計年度に比べ88億円支出が増加し36億円の支出となりました。増加の要因は、社債の発行による収入の減少、長期借入金の返済による支出の増加などであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
基礎化学品事業部門(百万円) |
249,608 |
28.8 |
機能化学品事業部門(百万円) |
275,893 |
17.9 |
その他の事業(百万円) |
10 |
△43.3 |
合計(百万円) |
525,512 |
22.8 |
(注)生産金額は、生産総量から自家消費分を差引いた販売向けの生産量に当連結会計年度の販売単価を乗じて算出しており、セグメント間の内部振替前の数値であります。
b.受注実績
当社グループ(当社及び連結子会社)は原則として見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
基礎化学品事業部門(百万円) |
419,959 |
28.0 |
機能化学品事業部門(百万円) |
285,419 |
6.7 |
その他の事業(百万円) |
277 |
△18.6 |
合計(百万円) |
705,656 |
18.5 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
中期経営計画「Grow UP 2023」初年度にあたる当連結会計年度の経営成績ならびに最終年度(2023年度)の目標値は以下の通りです。
連結指標 |
2020年度実績 |
2021年度実績 |
2023年度目標 |
売上高 |
5,957億円 |
7,056億円 |
7,300億円 |
営業利益 |
445億円 |
553億円 |
700億円 |
経常利益 |
502億円 |
741億円 |
800億円 |
ROIC |
7.7% |
10.4% |
10%以上 |
ROE |
7.1% |
8.8% |
9%以上 |
※ ROIC=経常利益/投下資本
当連結会計年度の経営成績に関する状況の認識は「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。
中長期的な課題への対処としては、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、「Grow UP 2023」において2つの目標とそれぞれについて3つの施策を掲げるとともに、3か年の累計投融資額2,400億円、研究開発費730億円を計画しております。差異化事業への戦略投資を積極的に実行するとともに、新たな研究開発部門体制のもとグループ内外の技術・人員を最大限活用し、「環境変化に強い収益構造への転換」及び「社会的価値と経済的価値の両立」に向け、グループ一体となりまい進していきます。
セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
[基礎化学品事業部門]
基礎化学品事業部門の経営成績は以下のとおりであります。
連結指標 |
2020年度実績 |
2021年度実績 |
2023年度目標 |
売上高 ※2 |
3,357億円 |
4,253億円 |
4,100億円 |
営業利益 |
128億円 |
257億円 |
250億円 |
経常利益 |
142億円 |
300億円 |
310億円 |
※1 セグメント間の内部売上高又は振替高を含む
※2 2021年度より、事業セグメントの区分方法を見直し、「その他の事業」に含まれていたエネルギー等に関連する事業を「基礎化学品事業部門」に移管しております。2020年度のセグメント情報についても変更後の区分方法により作成しております。
「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績等の状況の概要」に記載のとおり、2021年度実績は、新型コロナウイルスの影響を受けた製品の需要回復、ハイパフォーマンスプロダクツの販売数量増加や、メタノール市況の上昇などにより、大幅な増収増益となりました。
今後は、メタキシレンジアミンや芳香族アルデヒドといった特殊芳香族化学品の製造設備の新設など、差異化製品を中心とした積極投資を進めるとともに、環境循環型製品としてのメタノールの製造技術開発推進、物流・生産の効率化によるコスト削減など、基盤事業についても、引き続き高付加価値化・効率化に向けた施策を推進してまいります。また不採算・要再構築事業についても、ホルマリン・ポリオール系事業を中心に、更なる構造改革・見直しなどに取り組んでまいります。
[機能化学品事業部門]
機能化学品事業部門の経営成績は以下のとおりであります。
連結指標 |
2020年度実績 |
2021年度実績 |
2023年度目標 |
売上高 ※ |
2,678億円 |
2,855億円 |
3,300億円 |
営業利益 |
348億円 |
336億円 |
490億円 |
経常利益 |
375億円 |
454億円 |
530億円 |
※ セグメント間の内部売上高又は振替高を含む
「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績等の状況の概要」に記載のとおり、2021年度実績は、エンジニアリングプラスチックスはポリカーボネートの採算が悪化したものの、ポリアセタールの販売好調などにより、増収増益となりました。また電子材料も、メモリーや5Gスマホ向けが好調に推移したことなどから増収増益となりました。一方、光学材料は、光学樹脂ポリマーが上半期の顧客の在庫調整などの影響を受けたことなどにより、減収減益となりました。
今後は、超純過酸化水素などエレクトロニクスケミカルズの既存・新規生産拠点のグローバル展開の強化、事業再編などによるポリアセタールの市場プレゼンス向上、電子材料の海外製造子会社の生産能力増強等によるBT材料の拡販、光学樹脂ポリマーの生産能力増強、原料モノマープラント新設など、差異化製品の成長に向けた各種施策を進めて参ります。また三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社の株式取得による連結化を発表したポリカーボネートをはじめ、機能化学品事業部門の基盤事業についても高付加価値化の推進等による環境変化に強い収益構造への転換に取り組んで参ります。
② 経営成績等に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
長引く新型コロナウイルス感染症に伴う経済活動の制限や、半導体不足に伴う生産活動への影響に加え、直近ではウクライナ情勢を巡る地政学リスク等が、自動車関連、住宅・インフラ、電気・電子機器など幅広い分野における需要の減退につながる可能性があり、これらの分野で原材料として使用される当社グループ製品へ悪影響を及ぼすことも見込まれます。基礎化学品事業部門においては、発泡プラスチック、特殊芳香族化学品、メタノールなどへの影響が懸念されます。機能化学品事業部門においては、半導体パッケージ用BT材料や、光学樹脂ポリマー、エンジニアリングプラスチックス、脱酸素剤などへの影響が懸念されます。
③ 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。
投資を目的とした資金需要は設備投資等によるものであります。これらの資金の調達につきましては、自己資金及び金融機関からの借入、社債等を基本としております。
なお、当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
また、当連結会計年度末における有利子負債の残高は1,176億円、現金及び現金同等物の残高は922億円となっております。
④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。事業に対する投資や撤退判断等、経営の意思決定を迅速に行うため、売上規模や利益額に加え、資本効率を分析値に加えております。
⑤ 重要な会計上の見積り及び見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
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