(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の全世界的蔓延の影響等により、経済活動の停滞が継続し、厳しい状況で推移しました。先行きにつきましては、感染拡大の防止策を講じつつ、経済社会活動のレベルが段階的に引き上げられていく中で、持ち直しに向かうことが期待されますが、資源価格の高騰等による景気の下振れリスクが高まるなど、今後の動向に注視する必要があります。
また、化学工業界におきましては、コロナ禍からの回復を背景に持ち直しの動きが継続し、需要の増加が見られております。
このような状況の下で当社グループは、2020年11月期より、長期経営計画「Next Stage 10」の後半となる、第2次5ヶ年中期経営計画をスタートさせ、その目標達成に向けて、各種施策に取り組んでおります。化成品事業におきましては、選択と集中による製品の新陳代謝を図り、採算性の向上に努めるとともに、グローバルに市場が拡大するUVインクジェットプリンター向け特殊インク用原料の拡販に注力いたしました。電子材料事業におきましては、次世代半導体材料開発の強化によるトップシェアの確保及び新規ディスプレイ材料の拡販に努めてまいりました。機能化学品事業におきましては、機能性ポリマーの開発を促進するとともに、化粧品原料や高純度特殊溶剤の拡販に取り組んでまいりました。
この結果、当連結会計年度の売上高は350億2千7百万円(対前年同期比22.1%増)、営業利益は58億5千2百万円(対前年同期比31.8%増)、経常利益は62億5千3百万円(対前年同期比35.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は49億9千8百万円(対前年同期比50.9%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。(セグメント間取引を含んでおりません。)
なお、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項(セグメント情報等)2 報告セグメントごとの売上高及び利益又は損失、資産その他の項目の金額の算定方法 (報告セグメントの変更等に関する情報)」に記載のとおり、当連結会計年度より事業セグメントの利益又は損失の算定方法を変更しております。
化成品事業におきましては、アクリル酸エステルグループは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けた自動車塗料用や光学材料向け粘着剤用を中心に販売が回復し、売上高は増加いたしました。メタクリル酸エステルグループは、塗料や粘着剤用などの販売が堅調に推移し、売上高は増加いたしました。また、売上高の増加等により、セグメント利益は大幅に増加いたしました。この結果、売上高は120億5千7百万円(対前年同期比22.5%増)、セグメント利益は9億3千8百万円(対前年同期比108.1%増)となりました。
電子材料事業におきましては、半導体材料グループは、主力であるArFレジスト用原料の販売が引き続き好調に推移し、売上高は増加いたしました。表示材料グループは、テレワークやリモート授業などによるディスプレイの需要が好調に推移し、売上高は増加いたしました。また、売上高の増加等によりセグメント利益は増加いたしました。この結果、売上高は145億8百万円(対前年同期比15.4%増)、セグメント利益は34億3千万円(対前年同期比14.6%増)となりました。
機能化学品事業におきましては、化粧品原料グループは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により低迷した需要が緩やかな回復基調にあることや、2021年2月1日付で三菱ケミカル株式会社より、頭髪化粧品用アクリル樹脂の製造・販売の事業譲渡を受けたことにより売上高は増加いたしました。機能材料グループは、受託品の販売が堅調に推移し、売上高は増加いたしました。また、利益率の高い製品比率の増加等によりセグメント利益は大幅に増加いたしました。この結果、売上高は84億6千2百万円(対前年同期比35.0%増)、セグメント利益は14億9千万円(対前年同期比44.9%増)となりました。
当連結会計年度の総資産は、前連結会計年度に比べて45億4千3百万円増加し、498億6千8百万円となりました。主として現金及び預金の増加24億1百万円、受取手形及び売掛金の増加13億5千4百万円、製品の増加11億9千7百万円及び有形固定資産の減少6億8千9百万円などによるものです。
当連結会計年度の負債は、前連結会計年度に比べて4億4千4百万円増加し、107億4千3百万円となりました。主として支払手形及び買掛金の増加9億9千1百万円、未払金の減少5億1千4百万円、未払法人税等の増加9億円及び長期借入金の減少5億3千4百万円などによるものです。
当連結会計年度の純資産は、前連結会計年度に比べ40億9千9百万円増加し、391億2千5百万円となりました。主として利益剰余金の増加39億3千5百万円及びその他有価証券評価差額金の減少6千6百万円などによるものです。
有利子負債(短期借入金・長期借入金)は、長期借入金の返済等により前連結会計年度に比べ7億4千3百万円減少し、株主資本は、利益剰余金の増加等により39億4千1百万円増加した結果、デット・エクイティ・レシオ(有利子負債/株主資本)は、6.1%(前年同期は9.2%)となりました。
この結果、自己資本比率は、前連結会計年度の76.5%から77.5%へと1.0ポイントの増加となりました。なお、1株当たり純資産額は、1,744円45銭となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動により獲得した58億3千7百万円から、投資活動に10億4千3百万円投資し、財務活動において18億3千万円減少となったことなどにより、30億8千1百万円増加し、95億9千3百万円(対前年同期比47.3%増)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益71億7千7百万円、非資金損益項目である減価償却費24億3千5百万円、売上債権の増加額12億9千4百万円、たな卸資産の増加額12億9千3百万円及び法人税等の支払額12億8千6百万円などにより、58億3千7百万円の増加(前年同期は47億9千9百万円の増加)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、10億4千3百万円の減少となりました。これは、主に設備新設等に伴う有形固定資産の取得による支出23億1千3百万円及び投資有価証券の売却による収入12億3千6百万円などによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、設備新設資金等の長期借入れによる収入2億5千万円、長期借入金の返済による支出9億9千3百万円及び配当金の支払額10億6千3百万円などにより、18億3千万円の減少(前年同期は6億4千8百万円の減少)となりました。
当企業集団のキャッシュ・フロー指標のトレンド
(注) 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注1)いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
(注2)株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
(注3)キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを使用しております。
(注4)有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利息を支払っているすべての負債を対象としております。
当社及び子会社は原則として見込生産を行っております。また、生産実績につきましても当社及び子会社の製品は多種多様にわたり、同種の製品でも仕様が一様でなく、通常の取引の単位が大幅に異なるものが混在するため、金額及び数量表示は妥当性を欠くので記載を省略いたします。
b. 販売実績
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されておりますが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っていますが、見積りには不確定性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがあります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、第5〔経理の状況〕1連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記事項の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に以下の事項・項目が連結財務諸表における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
(たな卸資産の評価)
当社グループは、各顧客の厳格な品質要求に対応した製品供給が求められるとともに、品質要求充足後も顧客による長期の製品検証プロセスを経て販売が可能となる製品があります。また、多品種を少量販売する事業であるため、生産効率の観点から一定の見込み生産を行い、長期間をかけて製品を販売する特性もあります。そのため、製品の滞留が発生する他、最終製品に至る中間生産品として在庫する仕掛品や特定製品の製造のために保有する原材料及び貯蔵品についても滞留が発生します。長期滞留のたな卸資産の評価にあたって、一定の滞留期間を超える場合に規則的に帳簿価額を切り下げるとともに顧客による製品検証プロセスの経過期間や進展状況を継続的に把握する他、滞留期間や需要動向等の外部環境の変化を勘案して貸借対照表価額を算定しております。たな卸資産の評価にあたっては信頼性をもって見積もっておりますが、顧客による製品検証プロセスの進展状況や外部環境に重要な変動が生じた場合には、損益に影響を与える可能性があります。
(固定資産の減損)
当社グループは、市場価格、営業活動から生ずる損益等から減損の兆候が識別された場合、将来の事業計画等を考慮して、減損損失の認識及び測定を行い、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失を計上しております。将来の市況悪化や事業計画の変更等があった場合、減損損失を計上する可能性があります。
(繰延税金資産)
当社グループは、繰延税金資産については、事業計画等を考慮して将来の課税所得を合理的に見積り、繰延税金資産の回収可能性を検討の上、回収可能額を計上しております。市況悪化や事業計画の変更等により将来の課税所得の見積りが減少した場合、繰延税金資産を取り崩し、当該会計期間において税金費用が発生する可能性があります。
(投資有価証券)
当社グループの保有する株式について、時価のある有価証券は、連結会計年度末における時価が取得原価の50%以下に下落したときに、回復可能性があると認められる場合を除き、減損処理を行っております。また、連結会計年度末における時価の下落率が取得原価の30%以上50%未満であるときは、回復可能性があると認められる場合を除き、連結会計年度末以前1年間の時価の推移等を勘案して、減損処理を行っております。時価のない有価証券は、発行会社の財政状態の悪化等により実質価値が著しく低下した場合には、回復可能性があると認められる場合を除き、必要と認められた額について減損処理を行っております。
(退職給付に係る資産及び負債)
当社グループは、数理計算上で設定される前提条件に基づき退職給付に係る資産及び負債並びに退職給付費用を計上しております。これらの前提条件には、割引率、発生した給付額、利息費用、年金資産の長期期待運用収益率などの要素が含まれております。実際の結果がこれらの前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来の会計期間にわたって償却されるため、将来の退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響につきましては、化成品事業に関連する自動車産業の生産減少に伴う自動車塗料用や展示会の中止に伴う印刷インキ用の販売は概ね回復しております。また、機能化学品事業に関連する化粧品国内需要の落ち込みも徐々に回復しております。現時点でのこれらの仮定は、会計上の見積りに重要な影響を与えるものではないと判断しております。
a. 財政状態
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(売上高と営業利益)
当連結会計年度における売上高は、電子材料事業の半導体材料グループで需要が好調に推移し、化成品事業及び機能化学品事業も新型コロナウイルス感染症の影響から回復し増収となり、350億2千7百万円(前連結会計年度比22.1%増)となりました。
当連結会計年度における営業利益は、原油価格高騰により原材料費が上昇したものの、売上高の増加により、58億5千2百万円(前連結会計年度比31.8%増)となり、営業利益率は16.7%(前連結会計年度15.5%)となりました。
(営業外損益と経常利益)
当連結会計年度における営業外収益は、補助金収入や為替差益等により前連結会計年度より1億8千3百万円増加し、4億8百万円となりました。営業外費用は、前連結会計年度にあった為替差損や寄付金がなくなったこと等により前連結会計年度より4千7百万円減少し、7百万円となりました。
その結果、当連結会計年度における経常利益は62億5千3百万円(前連結会計年度比35.6%増)となりました。
(特別損益と税金等調整前当期純損益)
当連結会計年度における特別利益は、固定資産売却益や投資有価証券売却益の増加等により前連結会計年度より8億3千2百万円増加し、9億3千3百万円となりました。特別損失は、固定資産除却損の減少等により前連結会計年度より1億1千3百万円減少し、9百万円となりました。
その結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は71億7千7百万円(前連結会計年度比56.4%増)となりました。
(税金費用と非支配株主に帰属する当期純損益と親会社株主に帰属する当期純損益)
当連結会計年度における税金費用は、法人税、住民税及び事業税21億5千1百万円と法人税等調整額△8千9百万円を計上し、20億6千1百万円(前連結会計年度比69.5%増)となりました。
当連結会計年度における非支配株主に帰属する当期純利益は1億1千6百万円(前連結会計年度比93.2%増)となりました。
その結果、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は49億9千8百万円(前連結会計年度比50.9%増)となりました。
資金需要
主として設備投資、運転資金、借入金の返済及び利息の支払並びに配当金及び法人税の支払等に資金を充当しております。
資金の源泉
主として営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入金により、必要とする資金を調達しております。なお、当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高は95億9千3百万円であり、十分な手元流動性は確保できているものと認識しております。
キャッシュ・フロー
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
有利子負債
当連結会計年度末の有利子負債(長期借入金)は22億5千4百万円であります。このうち金融機関からの長期借入金(1年内返済予定の長期借入金を含む)が22億5千4百万円であります。
事業の「選択と集中」を軸に収益力の強化、設備投資の選択的実施による資金効率化によるフリー・キャッシュ・フローの拡大を目指すとともに、次世代材料や新規分野開拓への戦略的研究開発投資を行い更なる高収益製品への拡大を図ってまいります。
資金調達活動につきましては、健全な財務体質の維持、資本効率の向上、株式価値の希薄化等への十分な配慮と調達コスト・スピード等を考慮し、資金調達を行ってまいります。
当連結会計年度末において財務状況は健全性を保っており、現金及び現金同等物等の流動資産に加え、営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入金等による資金調達により、事業拡大に必要な資金は十分に賄えると考えておりますが、引き続きこれらの政策を進めることにより、株主への利益還元と財務体質の一層強化を図ってまいります。
当社グループの経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案するよう努めておりますが、コロナ禍による世界経済の不確実性は大きく、当社グループを取り巻く経営環境は引き続き予断を許さない厳しい状況にあります。しかし、そのような状況下においても、生産コスト及び経費の削減により競争力を高めるとともに、市場のニーズにマッチした新規製品を迅速に上市することにより、継続的な業績の向上を目指してまいります。
また、当社グループは、安全の確保を最優先と考え、災害対策の徹底、コンプライアンス及び情報セキュリティの強化など、重大リスクの低減に努めております。また、品質管理の強化とサプライチェーンの強靭化によって安定供給を実現することで、お客様からの信頼を一層高めていくことに尽力いたします。
一方、環境への取り組みも当社グループの重要な使命と認識し、カーボンニュートラルの実現に向けてエネルギー原単位、廃物量、CO2排出量をKPIに定め、これらの削減に取り組んでおります。さらに、当社グループは、働き方改革によるワークライフバランスの実現や、ダイバーシティを推進するとともに、教育制度を拡充することで、次代を担う優秀な人材を確保し、育成してまいります。
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