(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
a 経営成績
当事業年度におけるわが国経済は、東京オリンピック2020開催という明るい話題はあったものの、度重なる新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う、「まん延防止等重点措置」や「緊急事態宣言」の影響により、極めて厳しい状況で推移しておりました。2021年秋頃からは、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の効果が徐々に表れ、日本国内の感染者数は低水準に抑えられたことから、経済社会活動は正常化に向かい、併せて、海外経済が改善の傾向にあることから、景気回復が期待されております。しかしながら、新型コロナウイルスの再拡大や半導体不足の長期化、海外における金融政策の影響による経済の下振れや金融資本市場の変動のリスクについて注視する必要があります。
このような状況において、クラウドサービスの活用、テレワーク環境の整備や組織内WiFi環境の充実など、組織のICT環境は大きく変化し、その結果、新たな情報セキュリティリスクが生まれ、サイバー攻撃の件数も日々増加の一途を辿っています。そのような中、当社は「SECURE THE SUCCESS.」のビジョンのもと、ログ管理製品「ALogシリーズ」並びに、ネットワークセキュリティサービス「クラウドVPN Verona」、「クラウド無線LAN Hypersonix」などの提供を通じて、安心・安全とともに企業の成長とイノベーションの貢献に努めてまいりました。
当事業年度においては、さらに高度化するサイバー攻撃に対応すべく、研究開発に注力し、製品・サービスの機能強化を推進することに加え、広告宣伝を積極的に行い、「ALogシリーズ」や「クラウドVPN Verona」、「クラウド無線LAN Hypersonix」などの導入企業数拡大に取り組んでまいりました。研究開発費につきましては、2020年12月期の52,657千円に対し、当事業年度は110,859千円と、2020年12月期を大きく上回る費用計上をしたことにより、当初想定を上回る税制優遇を受けております。
以上の結果、当事業年度の売上高は2,761,482千円(前期比19.3%増)、営業利益は260,498千円(前期比39.4%増)、経常利益は260,109千円(前期比40.0%増)、当期純利益は183,785千円(前期比45.9%増)となりました。
セグメント別の経営成績は次のとおりであります。
データセキュリティ事業
当事業年度におけるデータセキュリティ事業は、新型コロナウイルス感染症拡大によるログ管理製品「ALogシリーズ」の導入に対する投資抑制圧力や現地作業の延期などにより受注に影響はあったものの、第3四半期以降は、回復の兆しが見られております。また、コロナ禍において、セミナー、展示会などが制約を受ける中、当事業では積極的なウェビナー開催を通じて、新規案件の創出に努めてまいりました。さらに、ログの運用管理に対するアウトソースのニーズに対し、新たな収益の仕組みとして、ログ運用サービスの企画、開発をし、サービス提供のための体制を整備いたしました。
この結果、当事業年度における売上高は1,079,371千円(前期比2.8%増)、セグメント利益は597,923千円(前期比0.7%減)となりました。
ネットワークセキュリティ事業
当事業年度におけるネットワークセキュリティ事業は、半導体不足が多くの企業に影響を及ぼす中、「クラウドVPN Verona」や「クラウド無線LAN Hypersonix」では、先行して機器の在庫確保を行ったことが奏功し、年間を通じて安定したサービス供給が可能となったことにより、新型コロナウイルス感染症拡大や働き方の多様化に伴う、テレワーク環境整備の需要を「クラウドVPN Verona」を通じて取り込むことができました。さらに、昨今のWEB会議の急速な普及に伴う、企業や教育機関、医療機関などのWiFi環境整備についても、クラウド上の集中管理センターから導入・運用が行える「クラウド無線LAN Hypersonix」がコロナ禍における多くの組織のニーズにマッチし、多拠点/多店舗企業を中心に需要を取り込み、サービス利用が拡大いたしました。研究開発については、高度化するサイバー攻撃に対応し、より高いセキュリティサービスを提供するため、日々機能強化に取り組んでまいりました。
この結果、当事業年度における売上高は1,682,110千円(前期比33.0%増)、セグメント利益は300,686千円(前期比37.8%増)となりました。
b 財政状態
(資産)
当事業年度末における総資産は2,849,389千円となり前事業年度末と比較して986,173千円増加しました。これは株式上場時の自己株処分、及びネットワークセキュリティ事業の売上好調により現金及び預金が953,329千円増加したこと等によるものです。
(負債)
当事業年度末における負債合計は1,413,654千円となり前事業年度末と比較して23,361千円増加しました。これは株式上場費用等の未払金が19,057千円増加、及び業績好調であったため利益増加により未払法人税等が10,617千円増加したこと等によるものです。
(純資産)
当事業年度末における純資産の合計は1,435,734千円となり前事業年度末と比較して962,812千円増加しました。これは主に業績好調により利益剰余金が183,785千円増加し、また株式上場により自己株式を処分したためその他資本剰余金が753,454千円増加したこと等によるものです。
セグメント別の財政状態は、取締役会が経営の意思決定上、当該情報をセグメントに配分していないことから記載しておりません。
② キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物は、前事業年度末と比較して971,329千円増加し、1,893,149千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの変動要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の営業活動におけるキャッシュ・フローは299,486千円の収入(前事業年度は273,326千円の収入)となりました。これは主に法人税等の支払69,355千円、売上債権の増加47,265千円等があった一方で、税引前当期純利益253,029千円の計上、ストック売上の増加に伴う前受金の増加79,471千円、固定資産増加による減価償却費の計上74,973千円等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の投資活動におけるキャッシュ・フローは26,951千円の支出(前事業年度は97,302千円の支出)となりました。これは主に定期預金の払戻による収入18,000千円があった一方で、ソフトウエア購入及び販売用ソフトウエアの製作による無形固定資産30,598千円の取得、また保険金の積立による支出13,036千円等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の財務活動におけるキャッシュ・フローは698,795千円の収入(前事業年度は217,611千円の収入)となりました。これは主に長期借入金の返済による支出80,232千円があった一方で、自己株式の処分による収入778,607千円があったことによるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
b.受注実績
概ね受注から役務提供の開始までの期間が短いため、受注実績に関する記載を省略しております。
c.販売実績
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当事業年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) |
前期比(%) |
データセキュリティ事業(千円) |
1,079,371 |
102.8 |
ネットワークセキュリティ事業(千円) |
1,682,110 |
133.0 |
合計(千円) |
2,761,482 |
119.3 |
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績の10%以上の相手先がないため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。財務諸表の作成に当たり、資産及び負債または損益の状況に影響を与える会計上の見積りは、過去の実績等の財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
財務諸表の作成に当たって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響に関しては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 追加情報」に記載しております。
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、特に重要なものは次のとおりであります。
(市場販売目的のソフトウエアの減価償却費)
当社は、市場販売目的のソフトウエアについて、見込販売収益及び販売可能な見込有効期間に基づき、残存有効期間(3年以内)に基づく均等配分額を減価償却費として計上しております。
見込販売収益は売上成長率及び受注金額等を基礎として見積り、見込有効期間は製品の販売予定期間を踏まえ上限を3年として決定しております。見込販売収益及び見込有効期間は将来の経済状況等によって影響を受ける可能性があり、翌事業年度の市場販売目的のソフトウエアの減価償却費の金額に重要な影響を与える可能性があります。
② 経営成績の分析
a 売上高
当事業年度における売上高は、2,761,482千円(前期比19.3%増)となりました。
セグメント別の内訳は次のとおりとなります。
データセキュリティ事業では、新型コロナウイルス感染症の影響による景気停滞のため、ソフトウエアのライセンス売上が減少したものの、ソフトウエア保守の売上が引き続き堅調に伸長したため、当事業年度売上高は1,079,371千円(前期比2.8%増)となりました。
ネットワークセキュリティ事業では、新型コロナウイルス感染症の影響で生活スタイルの変化を余儀なくされ、それとともにリモートワーク対応に伴うセキュリティやネットワークの強化などITインフラの見直しの需要が高まりました。当社が取り扱うNetwork All Cloud・Ubiquiti製品はネットワークインフラの市場ニーズにマッチし、堅調なインバウンドリードの創出、及び顧客獲得につなげることができました。そのため、ネットワークセキュリティ事業の当事業年度売上高は伸長し、1,682,110千円(前期比33.0%増)となりました。
b 売上原価、売上総利益
当事業年度における売上原価は、1,303,476千円(前期比30.3%増)となりました。これはNetwork All Cloudの売上伸長に伴うアクセスポイントなどの部材費の出庫増加、及び外注請負社員の人数増加による外注費の増加によるものです。この結果、売上総利益は1,458,006千円(前期比11.0%増)となりました。
c 販売費及び一般管理費、営業利益
当事業年度における販売費及び一般管理費は、1,197,507千円(前期比6.3%増)となりました。これは主に、従業員の増員による人件費の増加のほか、当社製品の認知度を高めるための宣伝広告投資を行ったことにより、広告宣伝費が増加したことによるものです。この結果、営業利益は260,498千円(前期比39.4%増)となりました。
d 営業外損益、経常利益
当事業年度における営業外損益は、札幌市IT・コンテンツ・バイオ立地促進補助金などの助成金、補助金収入等により営業外収益が16,424千円(前期比1,812.9%増)となりました。また営業外費用は、株式上場に関する費用の計上により16,812千円(前期比751.2%増)となりました。この結果、経常利益は260,109千円(前期比40.0%増)となりました。
e 特別損益、当期純利益
当事業年度における特別損益は、特別損失が7,080千円(前期比197.9%増)となりました。これはゴルフ会員権の評価損7,080千円を計上したことによるものであります。また法人税等は69,244千円となりました。この結果、当期純利益は183,785千円(前期比45.9%増)となりました。
③ 財政状態の分析
当事業年度の財政状態の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況 b 財政状態」に記載の通りであります。
④ キャッシュ・フローの分析
前述の「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社の事業活動における運転資金需要の主なものは、製造・開発活動に係る人件費及び外注費、販売費及び一般管理費の広告宣伝費用等による運転資金であります。これらの資金につきましては、営業活動によって得られる資金でまかなうことを基本として、必要に応じて金融機関から調達を実施する方針であります。
また、資金の流動性については、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、1,893,149千円あり、事業運営上、必要な資金は確保されていますが、今後も十分な流動性を維持していく考えであります。
⑥ 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社の経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
⑦ 経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおりであります。
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